卒業や別れを回想する小説オススメ10選!【後編】〜懐かしいあの頃を思い出せる物語〜

こんにちは、ブクログ通信です。

ブクログのみなさんに、読めばきっと、懐かしいあの頃を思い出し、胸がキュンとしたり心が震えたりする小説を紹介します。春風のように爽やかな物語、散りゆく桜のように儚い物語など、珠玉の作品ばかりです。甘く切ない気持ちに浸りたいとき、ぜひチェックしてみてください。

6.『長いお別れ』 認知症の父との、穏やかな別れを描いた介護小説

長いお別れ
中島京子さん『長いお別れ
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あらすじ

東家の大黒柱である東昇平は、かつては区立中学の校長や公立図書館の館長を務めた立派な人物だ。しかし、十年ほど前から認知症を患っている。迷子になって遊園地に迷い込んだり、入れ歯を頻繁に失くしたり……。一方で、難読漢字はすらすらわかるし、妻の名前を忘れても顔を見れば安心する。少しずつ記憶をなくしていく昇平と、日々起こる不測の事態に振り回される家族の姿を通じて、一つの幸福の形を描き出す名著。

オススメのポイント!

第10回中央公論文芸賞、第5回日本医療小説大賞受賞作です。2019年に映画化され、東昇平役は、山﨑努さんが好演しました。認知症の父と、その家族の10年間を描いた物語です。徐々に認知症が進行し、思いもよらないトラブルを巻き起こす昇平と、介護を続ける妻・娘たちの様子がユーモアある筆致で描写されています。昇平の最期は、温かく明るく、しんみりとした気持ちで迎えられます。「悲しすぎないお別れ」を巧みに描いた小説です。

中島京子さんの作品一覧

久々に本を読んで泣いた。大変な日々でも、いつかお別れが来る。その大変な日々が大切な日々になる。家族を大切にしようと思う。

ピーナッツさんのレビュー

7.『春にして君を離れ』 「ミステリーの女王」が贈る、日常からの解脱の物語

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティーさん『春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
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あらすじ

ジョーンは、トルコのテル・アブ・ハミド駅のレストハウスに居た。体調を崩した末娘を見舞うために、嫁ぎ先のバグダッドに赴いた帰りのことだ。乗り継ぐはずの列車を逃してしまい、悪天候でなかなか来ない次の列車を待っている。ジョーンは、ふと自分の来し方に思いを馳せるのだった。良妻賢母として理想の家庭を築き上げた自分。やがて、夫や子供との関係に疑問が生まれて——。

オススメのポイント!

「ミステリーの女王」と称されるアガサ・クリスティの、隠れた名作です。本書はミステリー作品ではなく、殺人事件や推理場面などは出てきません。主人公は、自分を良妻賢母と信じて疑わない、1人の女性・ジョーンです。ふとした拍子に、ジョーンはそれまでの日常から、放り出されてしまいます。一見、恐ろしい出来事は何も起こらないのに、徐々にうすら寒い気持ちにさせられるのが、本書の魅力であり恐ろしいところです。アガサ・クリスティの鋭い筆致、臨場感あふれる心理描写の巧みさを、ぜひ味わってみてください。

アガサ・クリスティーさんの作品一覧

タイトルがとても素敵、というところから読み始めるととんでもないことになる。ある意味殺人事件より恐ろしいクリスティの名著。本当は自分が一番可愛い、独善的な主人公に嫌気がさしつつも、どこか他人事に思えないのも恐い。ここに描かれる、気づかないことの悲劇と幸福というのも、結構日常的に転がっている問題のように思う。

kyoさんのレビュー

8.『永遠の出口』 直木賞作家が柔らかな筆致で描く、少女時代からの卒業

永遠の出口 (集英社文庫(日本))
森絵都さん『永遠の出口 (集英社文庫(日本))
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あらすじ

「私は<永遠>という言葉にめっぽう弱い子供だった——」。小学生の紀子は、どこにでもいる普通の少女だ。小学校では、誕生日会をめぐるちょっとした事件や、黒魔女のような担任との闘いがあった。中学校ではグレかかり、高校ではアルバイトや恋に忙しい日々を過ごす……。紀子という少女の、小学3年生から高校卒業までを描いた青春小説。

オススメのポイント!

直木賞作家・森絵都さんによる、1人の少女の成長をみずみずしい感性で描いた長編小説です。紀子という少女の9年間を、疑似体験できます。何気ない日常シーンから、繰り返し訪れる出会いと別れ、さまざまなものからの「卒業」シーンまでを、温かい筆致で切り取った読み応えのある作品です。読んでいるうちに、誰もが自分の幼少期を思い出し、懐かしい気分になれることでしょう。過ぎ去りし少年少女時代を、もう一度味わいたい人におススメの作品です。

森絵都さんの作品一覧

小学校から高校卒業まで、岸本紀子という普通の女の子の青春を優しく寄り添うように描かれた作品です。小さなことで一喜一憂する小学校時代、「正しい」友人や大人たちに反発する中学校時代、初めての恋にのめりこみ打ちのめされる高校時代など、どの章も単体で読んでもとても面白いです。
そして冒頭の「永遠という響きにめっぽう弱い子供だった」というモノローグから始まった物語が「限りあるものほど愛おしく思える」と締められる流れもとてもきれいです。ぜひじっくりと時間をかけて読んでほしい一冊。

tsuyudayflowerさんのレビュー

9.『空より高く』 新たな一歩を踏み出す勇気をくれる、爽やか青春小説

空より高く
重松清さん『空より高く
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あらすじ

廃校目前の東玉川高校、通称・トンタマ。トンタマ最後の生徒であるネタロー、ヒコザ、ドカ、ムクちゃんは、平凡な高校生として、ごく普通に暮らしていた。しかし、熱血中年オヤジのジン先生が赴任してきたのをきっかけに、4人組の学校生活は変化し始める。ジン先生の「レッツ・ビギン!」を合言葉に、ネタローたちは思いがけず転がり込んだ「セーシュン」に巻き込まれていく——。

オススメのポイント!

「ザ・青春!」を味わえる、キラキラした物語です。高校生4人組の平凡な毎日が、ジン先生によってがらりと変わっていく様子に、ワクワクさせられます。ジン先生の熱血ぶりは、最初は少しうっとうしく感じるかもしれません。しかし、読み進めるうちに、きっとあなたもネタローたちと一緒に、ジン先生の「熱」に感染してしまうはず。高校時代の楽しかった思い出や、甘酸っぱい気持ちなど、さまざまな感情を呼び起こす作品です。読後感は爽やかで、「明日もがんばろう!」と思える、パワーあふれる1冊だといえます。

重松清さんの作品一覧

『レッツ、ビギン!』
この言葉は、今の歳になって身に染みて大切さがよく分かる。何かを始めること、その時その時に自分がしてきたことの証があることはとっても素敵なことだ。大人の一歩手前にいる高校生たちが、少しずつ先生の影響を受けて精神的に変わって行く様がいい!大人に言われてすると言うことに反発しがちなのに……。『大人』を受け入れてこそ、『大人』になれるのかもしれない。親子愛を描く重松さんの作品もいいけど、たまにこんな青春ものもいいかも。

yulu0202さんのレビュー

10.『少女は卒業しない』 卒業式の空気を閉じ込めた、甘く切ない短編集

少女は卒業しない (集英社文庫)
朝井リョウさん『少女は卒業しない (集英社文庫)
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あらすじ

取り壊しの決まった高校で、最後の卒業式を迎える7人の少女たち。男性教師への秘めた想いを抱えたまま、卒業していく少女。卒業の日にした、先生との最後のやり取りは——(『エンドロールが始まる』)。立ち入り禁止の屋上で、幼馴染と会話している少女。高校中退した幼馴染と、大学へ進む自分の生き方について考え始めて——(『屋上は青』)。7人の視点から描かれる、卒業の日の物語。

オススメのポイント!

リアルな高校生の姿を描く名手、朝井リョウさんの短編集です。とある高校の卒業式の日を舞台に、7人の少女のそれぞれの過ごし方が切り取られています。お話ごとに、語り手と時間が変化していくのが特徴です。少女たちの想いや決意、卒業式前後の出来事が情景豊かに描き出され、まるで映画を見ているような感覚で楽しめます。高校時代に多くの人が経験したような甘酸っぱい気持ちを、朝井さんならではの美しい文章で描き出している点も、この本の魅力の1つです。「卒業」に伴う寂しさ、将来への不安、未来への希望といったエモーショナルな感情が一気に呼び起こされる、胸キュン必至の青春群像劇となっています。

朝井リョウさんの作品一覧

取り壊しの決まっている地方の高校。最後の卒業式の一日を切り取った7つの別れ。高校を卒業してかなり経っているので話についていけるかな……と読み始めた1話目で心を持っていかれました。私の卒業した同じ、地方の共学校へ。先輩への憧れ、同級生との恋と別れ、同性の友達とのやり取り……すべてが一瞬で押し寄せてきて、懐かしくて、切なくて、哀しくて。たった一日の卒業式の出来事を、こんなにも新鮮な言葉で描いていく朝井リョウがやっぱり好きだ!

gabrielpetajirioさんのレビュー

「卒業」や「別れ」は、決して悲しいだけのものではありません。今回ご紹介した作品を通して、懐かしいあの頃やあの人への気持ちを、もう一度思い出してみませんか?読後には、きっと前向きな気持ちになれますよ。