こんにちは、ブクログ通信です。
東山彰良さんは台湾出身の小説家です。2002年に「タード・オン・ザ・ラン」で第1回「このミステリーがすごい!」大賞の銀賞と読者賞を受賞し、本格的に作家活動を開始しました。同作は翌年『逃亡作法 – TURD ON THE RUN』に改題して出版され、20万部を越えるベストセラーとなります。
2009年には『路傍』で第11回「大藪春彦賞」受賞、2015年に『流』で第153回「直木三十五賞」を受賞しました。その後も精力的に執筆活動を続け、『罪の終わり』で第11回「中央公論文芸賞」を受賞します。2017年に出版された『僕が殺した人と僕を殺した人』では、織田作之助賞、読売文学賞、渡辺淳一文学賞の3冠を達成し、大きな話題となりました。
ブクログから、そんな東山さんのオススメ作品を5作紹介いたします。台湾の文化や情景を取り入れた、どこか懐かしいような作品を多数発表している東山さん。一度読んだら忘れられない繊細な筆致を、ぜひ一度味わってみてください。
『東山彰良(ひがしやま あきら)さんの経歴を見る』
1.東山彰良『流』 1970年代の台湾を疑似体験できる骨太な長編作品

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あらすじ
1975年の台北。偉大なる総統の死の直後、不死身のはずの祖父が殺された。犯人は不明。孫である17歳の葉秋生は、無軌道に過ごしていた日々から一変、自分のルーツをたどる旅に出た。台湾から日本、そして大陸へ——。訪れる地で初めて気づかされる祖父の真の姿とは?恋と友情、一家の流浪と決断の歴史、人生と命を見つめる、書き下ろし長編小説。
おすすめのポイント!
「祖父の謎めいた死」から始まる、壮大な物語です。日中戦争や中国と台湾の関係、さらに日本との関係などをベースに、ノンフィクションのような読み応えのある作品となっています。この作品を読むと、地理的には近いのに歴史や社会情勢という面では遠い地・台湾について、より深く知ることができます。主人公と共に、1970年代の台湾の空気を味わってみてください。心に深い感動を呼び起こす物語です。
東山さんのサイン入りだったので何となく購入したのですが、とても良かった!男なら読んで欲しい青春小説です!是非映画化してもらいたい!
2.東山彰良『逃亡作法 TURD ON THE RUN』疾走感がたまらない!著者代表作

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あらすじ
近未来の日本。死刑制度が廃止され、重罪犯には「目が飛び出す装置」が付けられることになった。刑務所は「キャンプ」と呼ばれ、犯罪被害者の遺族たちは復讐のため襲撃を企み、囚人たちは脱獄を試みるのだった。自分第一がモットーの男・ツバメは、ひょんなことから装置を無効化し、脱獄に成功する。友人でもない凶悪犯、私的制裁を与えようとする遺族たち、警察などが入り乱れる、大混乱の逃走劇が開幕!
おすすめのポイント!
第1回「このミステリーがすごい!」大賞の銀賞と読者賞をダブル受賞した作品です。当時まだ新人だった東山さんですが、卓越したセンスとクールな語り口が絶賛され、ベストセラーとなりました。主人公が「モラルなき悪党」という点が面白く、何でもありの逃走劇は刺激的で、難しいことを考えずに楽しめるエンタメ性の高い作品だといえます。どこか海外を思わせる情景描写も魅力的で、日本なのに日本じゃない、不思議な雰囲気を味わえる作品です。
最高に面白かった!!皆の川原の扱いが雑(笑)東山彰良さんにしては(??)笑いのツボが沢山あって、私はドンピシャで面白かった。ツバメの一瞬にして空気読んで相手を丸め込んじゃう所とか、モモやツバメの変な間で一言放つジョークとか、菊池も良かったし、東山彰良作品のファンとしては、満足な一冊でした。
3.東山彰良『僕が殺した人と僕を殺した人』 少年たちの激動の日々に感動必至の青春ミステリー

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あらすじ
1984年の台湾。両親と離れて過ごすことになったユン、幼馴染みのアガン、気が短いジェイが出会う。3人の少年たちはケンカしながらも友情を育んだ。それから30年が経ち、アメリカで「サックマン」という連続殺人鬼が逮捕された。デトロイトの街並みを眺めながら、「わたし」は台湾で過ごした日々を思い出す。「わたし」はサックマンを知っていた……。
おすすめのポイント!
深い余韻を残す、青春ミステリー作品です。台湾を舞台に描かれる、少年たちのまばゆい日々。30年後のアメリカを舞台に描かれる、現実的でほろ苦い日々。2つの時代の対比が鮮やかで、感情を揺さぶられてしまいます。少年時代の友情と連続殺人鬼という、一見まったく結びつかなそうなモチーフを見事にかけ合わせた、切なくも美しい物語です。誰もが、自分の青春時代を思い出し、感情移入してしまうことでしょう。連続殺人鬼は一体誰なのか、なぜ罪を犯したのか。真実が明らかになるとき、大きな感動があなたを待っています。
両親と別れて過ごすことになったユン、幼馴染みのでぶのアガン、喧嘩っ早いジェイ。3人少年が出会い、かけがえのない日々をともに過ごす。30年の時を経て、彼らは連続殺人鬼、国際弁護士、成功した商売人となり再び人生が交錯する。それぞれが複雑な家庭環境のなかでもがき苦しみながらも精一杯生きていくが、同時に両親もまた日々の苦しみにもがき続けている様が綴られる。ミステリーというより、友情や孤独を描く青春小説。面白かった。
4.東山彰良『ブラックライダー』 文明が滅びた世界で紡がれる斬新かつ勢いのある物語

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あらすじ
地球の歴史は終わり、新しい世界が始まった。牛と人間を交配させた2足歩行の牛が誕生し、人はそれを食糧とした。人を食糧とする者と、それを許さない者。カウボーイと保安官。蔓延する蟲と異形の王、慈悲による虐殺と大討伐軍。文明が一度滅びた世界で繰り広げられる、前人未到のめくるめく物語。
おすすめのポイント!
現在の文明が滅びた世界を舞台に、さまざまな生き物や特殊な人間が登場するSFエンタメ作品です。日本人離れしたスタイリッシュな世界観が魅力で、多種多様なキャラクターが登場する面白さにもご注目ください。本作を一言で表すなら、西部劇をベースにした「近未来活劇」という印象です。まるでハリウッド映画のような壮大な物語を楽しめるので、ぜひ手に取ってみて下さい!
ちょっと古い翻訳調の文章で、途中まで読みにくかったけど、登場人物になじんでからはおもしろかった。世界の汚っぽい感じ、科学の未発達な感じが好きかな。
5.東山彰良『罪の終わり』 「神」はいかにして生まれたか?哲学的な問いに応える革新的作品

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あらすじ
小惑星が衝突した世界。恐怖と暴力が蔓延し、人々は信じる力を失っていた。罪だけが増え続ける絶望的な世界に、「彼」が降り立つ。後の世で神と呼ばれたその男は、それまでの価値観を破壊し、悩める者を救うのだった。圧倒的な力を持ち、数々の奇跡を起こす「彼」の人生を描いた長編小説。
おすすめのポイント!
アメリカを舞台に描かれる、ディストピア小説です。「神」の誕生と人生を描くという、斬新な発想にご注目ください。一見、ファンタジックでとっつきにくい印象もある作品かもしれません。しかし、読んでいくうちにその面白さが感じられるようになっていきます。ぜひ物語が軌道に乗るまで読み続けてみてください。東山さんならではの文章力、独特な比喩表現が冴えわたる作品でもあります。
2173.6.16ナイチンゲール小惑星破片の衝突で破壊された北米大陸では食人が生きるすべとなっていた。この世界観に入り込むの時間がかかり、前半はてこずった。序文で概略が示されているので、途中で戻ってもういちど読みこむべきだった。後から知ったのだが、ブラックライダーという作品で設定された世界らしい。その世界で神格化されていくナサニエル・ヘイレンの贖罪の旅のはなしが、イエスキリストの行跡にも重ねられていく。
数々の文学賞を受賞し、注目度高めの作家の1人である東山さん。読む人の感情に訴えかける文章は、一見の価値ありです。東山さんの作品をまだ読んだことがない人は、ぜひこの機会にチェックしてみてくださいね!