こんにちは、ブクログ通信です。
1985年に『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家デビューを果たした東野圭吾さん。エンジニア出身という異色の経歴の持ち主で、科学的なテーマを多く扱うことでも有名です。2006年に『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞、2013年に『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞など、数々の文学賞を受賞しています。東野さんといえば、「加賀恭一郎」や「ガリレオ」など、人気シリーズも数多く抱えている、大人気作家の1人です。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『マスカレード・ホテル』をはじめ、作品のメディアミックスも相次いでいます。
ブクログから、そんな東野さんのオススメ作品を5つ紹介いたします。スリル満点のサスペンスから、新感覚のエンタメミステリーまで、幅広いジャンルから取り揃えました。東野さんの作品をまだ読んだことがない人にも、おすすめのものばかりです。ぜひチェックしてみてください。
『東野圭吾(ひがしの けいご)さんの経歴を見る』
1.『天空の蜂』 20年経っても色褪せない面白さ!手に汗握るサスペンス小説

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あらすじ
最新鋭の特殊大型ヘリが、何者かに奪われた。遠隔操作されたヘリは、稼働中の原子力発電所の真上でホバリングしている。犯人の要求は、「日本にある全ての原発を使用不可にすること。さもなくば、ヘリをこのまま落とす」。日本国民を人質に取った、大胆不敵な脅迫が行われた。しかも、ヘリの中には誤って乗り込んだ子供までいるという。果たして、子供の救出は上手くいくのか。原発の行く末は——。
オススメのポイント!
この作品は1995年に刊行された、書き下ろし長編小説です。遠隔操作ヘリや原発など、社会的テーマを扱っている点も特徴となっています。刊行から20年以上たった今でも色褪せない、スリル満点の展開と、緻密な情景描写が魅力のクライシスサスペンス作品です。本作は、第17回吉川英治文学新人賞の候補作となり話題を集めました。2015年には、堤幸彦監督により、江口洋介さん主演で映画化されています。
非常に読み応えがあった。この時代に原発を題材にそのリスクや社会的な矛盾を突いて一石を投じているのは奥深いものを感じた。
2.『流星の絆』 まさかの結末に心揺さぶられる、三兄妹の復讐劇

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あらすじ
14年前、洋食店「アリアケ」のオーナー夫婦が惨殺された。残された三兄妹は、流星に仇討ちを誓う。やがて、大人になった3人は、結婚詐欺をして暮らしていた。狙うは、レストラン「とがみ亭」の御曹司だ。一方で、両親を殺した犯人を突き止める最大のチャンスが訪れる。3人で練り上げた完璧な復讐計画が実行されるはずだった。しかし、思わぬ誤算が生じて——。
オススメのポイント!
この作品では、さまざまな「絆」が印象的に描かれています。互いだけを信じて生きる三兄妹の絆。儚くも途切れた、両親と子供たちの絆。そして、三兄弟と周囲の人々の絆です。両親を殺した犯人をめぐるスリリングな展開と、登場人物をつなぐ温かい絆が、絶妙なバランスで描かれています。この作品は2008年にテレビドラマ化されました。脚本を宮藤官九郎さんが担当し、主演を二宮和也さん、弟役を錦戸亮さん、妹役を戸田恵梨香さんが演じた話題作です。原作とは一味違った魅力を楽しめるテレビ版も、ぜひチェックしてみてください。
久しぶりの東野圭吾!3兄妹の復讐劇。そこに恋愛が絡むとか、面白かった!
ラストはまさかの大どんでん返し!満足しました。
3.『夢幻花』 可憐な花をめぐる、宿命の物語。柴田錬三郎賞受賞作!

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あらすじ
秋山周治という老人が殺された。花を育てながら余生を送っていた、ごく普通の老人だ。第一発見者で孫娘の梨乃は、祖父の庭にあった鉢植えが消えていることに気づく。なくなった黄色い花の鉢植えのことをブログに書くと、ある男が近づいてきた。実はその男は、警視庁勤務のエリート・蒲生要介だった。とあるきっかけで、蒲生の弟である蒼太と仲良くなった梨乃は、2人で真相解明に乗り出す——。
オススメのポイント!
本作は、第二十六回柴田錬三郎賞を受賞しました。物語冒頭からスピーディな展開に惹き込まれ、一気読みしたくなる作品です。さまざまな人間の思惑が絡まり合う、緊張感のある展開と緻密な心理描写が冴えています。幾重にも張り巡らされた謎が、物語後半に向けて一気につながっていく構成の見事さは、数々の名作を生み出した東野さんならではの筆力だといえるでしょう。結末へ向けて、怒涛の伏線回収と驚きの展開が待っています。スリリングなミステリー作品を読みたいときに、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
最初は謎を残したまま関連性のない話が続き、出てくるのは不審な人で不安だし単調だし挫折しかけました。しかし後半少しずつ話が繋がりだしてからは予想もつかなかった展開と無駄なものは何ひとつないといった伏線回収にのめり込みました。社会問題も繋がって回収していかれるのにはもう素晴らしいとしか言えない。素晴らしい作品に出会えました。
4.『虚ろな十字架』 罪は命で償うべきか?全ての人に問いかける、社会派ミステリー

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あらすじ
ある日、中原道正のもとに刑事がやって来た。別れた妻・小夜子が事件に巻き込まれ亡くなったことを、知らせに来たという。11年前、道正と小夜子の娘が殺され、犯人が死刑になった。その後、2人は離婚し、別々の道を歩んでいる。遺族会に入り、ルポライターをしていたという小夜子。道正は小夜子の老いた両親を支え、小夜子の生きてきた道を調べてみることにした……。
オススメのポイント!
この作品の大きなテーマは「死刑制度の是非」です。犯罪被害者と加害者、両方の視点から死刑について問いかける物語となっています。複数の事件が絡み合い、そこで繰り広げられる重厚な人間ドラマは、きっと読む人の心の深くに響くことでしょう。作中では、11年前と現在、これからという3つの時間軸で物語が展開していきます。それに伴い、読者も犯罪と死刑をめぐる過去・現在・未来について考えさせられる作品です。扱うテーマが重いため、時に読み進めるのがつらいシーンもあります。しかし、読後には他では味わえないような余韻を残す、上質な社会派ミステリ作品ですので、ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。
死刑制度の意味を考えさせられる作品。序盤より、この物語の終着点はどこだろうと思いながら読んでいたが、読後はさすが東野圭吾だなと重いテーマにも関わらずすっきりした。死刑を刑罰と捉えるか、運命と捉えるか…。遺族にしてみればどういう答えなら満足なのか。色々と考えさせられた。家族みんな元気で一緒にいられる日常が、何よりも幸せなのだと改めて実感した。
5.『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』 新時代到来を感じさせる、エンタメ・ミステリー

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あらすじ
ここは、名もなき町。ほとんどの人は訪れたことがないであろう、寂れた観光地だ。世界中を襲ったコロナウイルスのせいで、期待の町おこし計画も頓挫してしまった。ある日、元中学校教師の神尾英一が殺された。結婚式を控えていた娘の真世は、警察から知らせを受け、東京から舞い戻る。そこで待っていたのは、マジシャンをしている叔父・武史だった。事件の真相を探るべく、真世と武史は手を組むが——。
オススメのポイント!
叔父と姪のコンビによる、謎解きエンタメ作品です。コロナ禍の世界を舞台に、マジシャンの武史がアッと驚く手法で謎解きをする、異色のミステリーとなっています。本作の見どころは、なんといっても武史の魅力的なキャラクターです。巧みな話術とマジシャンならではの技術を活かし捜査を進める姿は、探偵と呼ぶにはうさん臭いものの、不思議な魅力があふれています。いつの間にか、事件の真相も読者の心も、武史の手玉に取られてしまうこと必至!現実世界とリンクする世界観も魅力の、新たな東野ワールドをぜひ堪能してください。
幅広い世代が楽しめる明快ミステリでした。いつもながら伏線の回収も見事で、読者を飽きさせない展開にも満足。引っ掛かりを散りばめるのが上手い。
今回は、初期作品から最近の作品まで、幅広く取り揃えました。ご紹介した順に読むと、東野さんの作風の移り変わりなどもわかります。読者を翻弄する東野さんのミステリーワールドを、ぜひお楽しみください!