平野啓一郎さん作品5選!~美しい文章と世界観にのめり込む~

こんにちは、ブクログ通信です。

平野啓一郎さんは、京都大学在学中に執筆した処女作『日蝕』で第120回「芥川賞」を受賞しました。当時最年少の23歳での受賞です。その後、幻想譚『一月物語』や19世紀パリを舞台にした『葬送』などを発表し、重厚かつ繊細な物語で多くのファンを獲得します。

高瀬川』『顔のない裸体たち』など、新作を発表する度に大きな話題となる平野さんは、2009年に『決壊』が「織田作之助賞」候補となり、「芸術選奨文部科学大臣新人賞」を受賞しました。2020年3月には芥川賞選考委員に選任されています。

そんな平野さんの作品の中から、ブクログ内で特に人気の高い作品をご紹介いたします。初期作から最近の作品まで幅広く揃えました。平野さんの筆力を堪能できる5選です。ぜひチェックしてみてくださいね。

『平野啓一郎(ひらの けいいちろう)さんの経歴を見る』

平野啓一郎さんの作品一覧

1.平野啓一郎『マチネの終わりに』しっとりと心に響く大人のラブストーリー

マチネの終わりに (文春文庫)
平野啓一郎『マチネの終わりに (文春文庫)
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あらすじ

クラシックギタリストの蒔野聡史は、ある日、海外の通信社で働くジャーナリスト・小峰洋子と出会う。初めて会ったときから互いに強く惹かれあう二人だったが、実は洋子には婚約者がいた。東京・ニューヨーク・パリ・バグダッドを舞台に、出会ってはすれ違う2人の恋の行方は……。

おすすめのポイント!

第2回「渡辺淳一文学賞」受賞作で、2019年には福山雅治さん主演で映画化されています。ヒロインを務めた石田ゆり子さんとの切なくも美しい大人のラブストーリーが話題を呼びました。平野さんの繊細で抒情的な文章で紡がれる物語は、芸術やグローバリズム、生と死といった多層的なテーマも含み、読み応えがあります。10代20代の情熱的な恋とは少し違う、しっとりと大人な恋愛模様をお楽しみください。

感動した。テーマ(40歳の危機とか、未来が過去の記憶を変えるとか、情報過多で疲れた現代人とか、グローバル化した巨大なシステムの中での運命論と自由意志とか)も興味深かったが、それ以上に物語に心揺さぶられた。読者に、哲学的なテーマについて正面から意識させるのではなく、物語に浸かる中で無意識にテーマを感じさせるという、小説の真髄を味わった気がした。

サラダチキンさんのレビュー

2.平野啓一郎『本心』愛する人の本心に触れる時、衝撃の秘密が暴かれる

本心
平野啓一郎『本心
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あらすじ

「自由死(安楽死)」が合法化された世界。29歳の石川朔也は、自由死を選んだ母親の”本心”を探ろうとしていた。最新技術を使って生前そっくりの母の姿を再生し、母と親しかった人たちに会い話を聞く。やがて朔也は、それまで全く知らなかった母の姿を知るのだった。そして、母が隠していた衝撃の事実が明らかになる——。

おすすめのポイント!

シングル家庭、生と死、格差社会といった現代的なテーマを内包した物語です。自分で死のタイミングを選べる「自由死」が合法化された近未来を描いており、読者に「理想的な死とは」「自由死の是非は」といった疑問を投げかけます。愛する人の死をめぐり、孤独に苦しみ、少しずつ再生へと歩き出す主人公の姿に、きっと誰もが自分を重ねてしまうことでしょう。誰にでも死が訪れるからこそ、本作が向き合うテーマは誰もが避けて通れない問題なのです。心の奥へ奥へと下りていくような、静かで感動的な物語です。ぜひ手に取ってみてください。

舞台は2040年代。主人公・朔也は、自分の体の感覚を他人に提供する、「リアル・アバター」の仕事に従事している。そして、母一人子一人で暮らして来た彼は、亡き母をARとAIの技術を使って、死者を本物そっくりに再現するヴァーチャル・フィギュア(VF)のサービスで甦らせる。そんなSF的なフレームを使いながら、平野さんが書きたかったのは、もちろん、単なるSFエンターテインメントではない。健康でも医学的に死を選択できる「自由死」を希望しながら、結局は、事故死した母の「本心」は何だったのか。人間の心に鋭く踏み込む小説。

いたろうさんのレビュー

3.平野啓一郎『空白を満たしなさい』新たな死生観を提示する哲学的作品

空白を満たしなさい
平野啓一郎『空白を満たしなさい
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あらすじ

36歳の土屋徹生は、ある日、勤務先の会議室で目覚めた。同僚が言うには、徹生は3年前に自殺したのだという。実は、徹生のように死んだはずの人間がよみがえる「復生者」のニュースが世界各地で伝えられていた。妻と息子がいて幸せに暮らしていた自分が自殺するはずがない——。そう考えた徹生は、自らの死の真相を探り始めるのだった。

おすすめのポイント!

「死んだ人間がよみがえる」というユニークな設定が魅力の物語です。ファンタジックな設定に思えますが、本作は「生と死」という普遍的なテーマに真摯に向き合った意欲作となっています。本作では、「主人公の死は本当に自殺なのか、それとも他殺なのか」というミステリー要素や、「復生者」が抱える苦悩と葛藤なども描かれ、物語に深みを持たせている点が特徴です。生きる意味とは、死の意味とは、そして本当の幸福とは、といった問いについて考えさせる味わい深い長編小説です。

平野さんの小説。しっかり文を読んだのは初めてかもしれない。今回は飛ばさずに読めた気がする。分人の下りは新書で読んでいたから、結構すんなり入ってきた。それによって救われる様子も登場人物の描写でわかる。それよりも、生きていることの特異性の方が今回は心に残った。考えるとブラックホールに落ちていく感覚になる。正直読み返したいと思う本ではないけど、20年経って自分が歳を取って、この本ともう一度向き合ったときに、その感覚が少し変わって感じるのか、確かめてみたい本だと思う。

ぽんさんのレビュー

4.平野啓一郎『ある男』一人の男の死によって暴かれる究極の秘密

ある男
平野啓一郎『ある男
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あらすじ

弁護士の城戸は、かつての依頼者・里枝からある相談を受ける。再婚相手の「大祐」についての相談だ。宮崎に住む里枝は、前の夫と別れた後、故郷に戻っていた。「大祐」と再婚し、家族4人で幸せに暮らしていたが、ある日「大祐」は事故で命を落としてしまう。悲しみに暮れる一家に、「大祐」が全くの別人だったという事実がもたらされるのだった。

おすすめのポイント!

2022年11月18日に妻夫木聡さん主演で映画化され、安藤サクラさんや窪田正孝さんら豪華なキャスト陣が話題を集めている作品です。「夫が全くの別人だった」というミステリアスなストーリーを軸に、現代日本社会が抱える様々な問題にも切り込んだ意欲作となっています。夫婦の在り方、人としての生き方についても考えさせられる、奥深い人間ドラマです。読んでいると、「自分とは何か」「個人としてのあり方は何で決まるか」といったことを考えずにはいられません。全てが明らかになった時、深い余韻が残ります。

事故で亡くなった後に全くの別人だと発覚したある男について、弁護士の城戸が、男の妻の依頼に基づき正体を解き明かしていく作品。ブクログランキングでよく見かけたので、手にとってみた。言い回しを難しく感じるところがあったものの、全体的に「ある男」が誰なのかというミステリーを軸に書かれており、楽しく読むことが出来た。どんなに辛い人生であっても、自分の人生を自分のものとして、ありのままに過ごせることの有り難みを気付かせてくれた。また、自分の価値は、親や人種等の自分を取り巻く境遇によってではなく、自分自身がどう生きるかによって決まるのだと考えさせられた。しっかりと自分自身に向き合おうという気持ちにさせられる1冊だった。

keisk0915さんのレビュー

5.平野啓一郎『本の読み方 スロー・リーディングの実践』読書をもっと深く楽しみたい人へ

本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)
平野啓一郎『本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)
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あらすじ

忙しい現代において、「本を早く読む」ということは多くの人の夢かもしれない。しかし、本当に「速読」には効果があるのだろうか。巷であふれる速読法を使った読書は、自身を取り巻く情報の渦にただ巻き込まれているだけに過ぎないのではないか——。本書では、そんな思いを抱く著者が、一冊の本を手間と時間をかけてじっくり読む方法「スロー・リーディング」を提唱する。

おすすめのポイント!

作家であり読者でもある平野さんが、本をより楽しむための読書法「スロー・リーディング」について紹介している本です。ブクログユーザーのみなさんの中にも、『もっと早く本を読めたらいいのに』『短時間でもっとたくさん本を読みたい』と思う人は多いかと思います。いわゆる「速読」に興味がある人も多いかもしれません。本書は、そんな人にこそぜひ手に取ってほしい1冊です。早く読むことよりもじっくり読むことを大切にしてほしいという、平野さんの読書にかける熱い思いが込められています。

自分の読み方がいかに浅かったに気がつく一冊となった。最後の方では、名作を解説しながら読み方を教えてくれる。文字を追っているだけ、ただ読んだだけ、本を持っているだけの読書にサヨナラをしたい。

とまと編集長さんのレビュー


平野さんの作品は、物語を通して読者の心に様々な問いを投げかけてきます。今回ご紹介した5作は、特に読後の余韻が深い作品ばかりです。気になる作品は、ぜひこの機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?