こんにちは、ブクログ通信です。
歴史・時代小説において、いくつもの金字塔を打ち立てた司馬遼太郎と池波正太郎。それぞれのおすすめ作品を、比較形式でご紹介しています。後編は、【大河ドラマ原作】【ブクログユーザー高評価】【池波正太郎作品で必読】の3テーマで、司馬、池波作品の魅力に迫ります!ぜひ最後までお楽しみください。
『司馬遼太郎(しば りょうたろう)の経歴を見る』
『池波正太郎(いけなみ しょうたろう)の経歴を見る』
【大河ドラマ原作】
6.司馬遼太郎『功名が辻』 ぼんくら武士と賢妻が駆け抜ける、痛快出世物語
あらすじ
戦国の動乱期。天下の織田信長の家中に、ぼろぼろ伊右衛門と呼ばれる武士がいた。うだつの上がらない伊右衛門のところに、賢く美しい嫁が来るという。嫁いできたのは聡明で知略に長けた女性・千代だった。普通の武士の1人に過ぎなかった伊右衛門は、千代の励ましを受け、功名目指して駆けてゆく——。夫婦手を取り合い、土佐一国の大名にまで登りつめた山内一豊の出世物語。
おすすめのポイント!
1960年代に書かれた小説で、2006年にNHKにて大河ドラマ化されました。ドラマでは仲間由紀恵さんと上川隆也さんがダブル主演を務め、大胆な歴史解釈による脚本が話題を集めます。本作は、うだつの上がらない夫・伊右衛門と知恵者の妻による立身出世物語です。時にはぶつかり合いながらも、夫婦力を合わせて出世する伊右衛門たちの姿が、痛快に描かれています。戦国時代が舞台なので、日本史で習う著名人が続々と登場するのも本作の楽しみの1つ。歴史が苦手な人もぐいぐい引き込まれる面白さを、ぜひ体験してください。
山内一豊の話。内助の功という言葉の語源にもなった千代との掛け合いが面白い。夫である一豊は功名を挙げるの一点のみで極めて普通の侍なのだが、それを支え、出世へと手綱を握っているのが妻の千代。一豊は千代のことが大好きなんだなぁとほのぼのと読めた。夫婦の形はこういうのも面白いと思った。
7.池波正太郎『真田太平記(一)天魔の夏』 真田一族の存続を賭けた物語に胸が熱くなる
あらすじ
天正10年3月、織田と徳川の連合軍によって、戦国随一と謳われた武田軍団が滅ぼされた。宿将真田昌幸は上・信二州に孤立し、試練の時を迎える。昌幸は真田忍びを四方に飛ばし、天下の帰趨を探るのだった。一度は織田信長に臣従する昌幸だが、その夏、思いもよらない事態に見舞われる。果たして、真田家存続の道は拓けるのか——。
おすすめのポイント!
池波作品の中でも、特に高い人気を誇る本作。池波正太郎の「真田もの」の集大成とも呼ばれ、史実と創作を巧みに織り交ぜた屈指の名作です。1985年に大河ドラマ(当時のNHK新大型時代劇)として放送され、主人公・真田信之は渡瀬恒彦さんが演じました。丁寧に描かれた時代背景、熱量を持った魅力的な登場人物たち、臨場感あふれる合戦シーンなど、池波さんの筆力が存分に発揮されています。また、真田忍びの活躍が多めに描かれている点も、本作の魅力の1つだといえるでしょう。武士と忍びの活躍に心躍る作品です。
序章。時代小説はとにかく難しいイメージがあったけど、面白い。大河ドラマと違うところもあるし、昌幸像も見方が変わった。またまだ物語が始まったばかり。源三郎と源二郎の書かれ方もきになる
【ブクログユーザー高評価作品対決】
8.司馬遼太郎『燃えよ剣』 著者代表作の1つ!新撰組副長の実像に迫る長編小説
あらすじ
幕末の動乱期。新撰組副長として剣に生き、剣に死んだ男・土方歳三。武州石田村の百姓の子であった土方は、「バラガキ(乱暴者)のトシ」と呼ばれていた。生来の喧嘩好きで、組織づくりの才に恵まれた土方。浪人や百姓上がりの寄せ集めだった新選組を、当時最強の人間集団へと作り上げていく。やがて土方は、自身も思いもよらない波紋を、日本の歴史へと投じていくのだった……。
おすすめのポイント!
新撰組の中でも有名かつ人気の高い、土方歳三を主人公に据えた物語です。烏合の衆であった新選組を強くするため、憎まれ役を買って出ることもいとわない土方。非情な冷血漢といったイメージがあるかもしれませんが、本作で描かれる土方像は職人気質でどこか不器用な男気溢れる人物です。本作は司馬遼太郎の代表作の1つであり、映画、テレビドラマ、舞台とたびたびメディアミックスされている人気作でもあります。
最初の方は抵抗あるかもしれないけど、ほんとに最初だけ。残りは一気読みした。地の文には歴史小説らしい堅苦しい単語が並び、会話文には人柄のよく出るやさしい言葉。読み応えは抜群、やはり名作は違う!
9.池波正太郎『剣客商売』 凸凹親子コンビが江戸の町で大活躍する、痛快時代小説
あらすじ
秋山小兵衛は剣術ひとすじに生きる白髪頭の粋な小男だ。一方、息子の大治郎は浅黒く巌のようにたくましいが、生真面目な男である。剣の腕はどちらも一流だが、性格は正反対の親子2人。江戸の町を舞台に、ばっさばっさと悪事を斬る——。著者代表作シリーズ第1作にして、全7編を収録の痛快時代劇短編集。
おすすめのポイント!
吉川英治文学賞受賞作で人気シリーズ第一作です。とにかく痛快!とにかく面白い!読み進めるほどに、先へ先へとページをめくる手が止まらなくなります。池波作品の中でも明るく娯楽色の強い作品なので、時代小説を普段読まないという人にもおすすめです。見た目も女性への接し方も正反対な親子コンビが、いざというときは剣術の腕を発揮し大活躍……そんな姿が見ていて楽しく、シビレます。マンガ化、テレビドラマ化をそれぞれ複数回果たしている人気作で、故・藤田まことさん主演のテレビドラマシリーズは再現度が高く必見です!
とうとう手を出してしまった感。母方の祖母がずっと読んでたのを、そんなに面白いのかと見ていたのは20年以上昔のこと。自分で読んでみたら、なんとも面白い。一話一話ちょうど良い長さなので、ちょこちょこ読みやすい。ぱっと見、そうは見えないのに実はものすごく強いというヒーローが大好物なのかもしれない。そんな小兵衛と生真面目そうな息子の大治郎(こちらも強い)をにやにやしながら読み進めました。しばらく楽しみが続きそうです。
【池波正太郎作品を読むならまずはこちら!】
10.池波正太郎『鬼平犯科帳』 悪に厳しく、義理人情に厚い「鬼の平蔵」の魅力にハマる大人気シリーズ
あらすじ
幕府の火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵は、盗賊たちに「鬼の平蔵」と恐れられている。斬り捨て御免の権限を持ち、その豪腕ぶりは広く知られているほどだ。そんな平蔵だが、実は「妾腹の子」として生まれ育ち、義理人情を心得た苦労人でもある。かつては大いに遊び、暴力沙汰やら女遊びやら、一通りの悪さは経験した。今ではすっかり穏やかな顔つきになり、江戸の盗人たちに日々睨みをきかせている。
おすすめのポイント!
2021年2月までに累計発行部数3000万部を突破した、池波正太郎の代名詞ともいえる作品です。長年構想を練った上で満を持しての長期連載小説化という経緯があり、著者の思い入れも深い作品だといえるでしょう。この作品では、8編の物語にさまざまな盗賊が登場します。罪を犯し、平蔵に裁かれる彼らの姿からは、人間の業の深さを感じずにはいられません。読むほどに心に沁みる名作です。また、ときに厳しく、ときに温かく公平な裁きを下す平蔵のあり方がとてもかっこいいので、ぜひご自身の目で確かめてみてはいかがでしょうか。
ドラマを見たことがないのだが、図書館で目についたので読んでみた。読む前は取っつきにくくて難しい作品かと思っていたが、想像以上に読みやすく、どこかしらユーモラスなところもある楽しい作品だった。想像と異なっていたのは、それほど鬼平が前面に出ているのではないこと。むしろ裁きを受ける盗賊の方が主役である。その盗賊同士のつながりが物語に深みを与え、扇の要のように鬼平が存在することで、作品全体に重厚感が出る。鬼平ファンは多い。その理由が分かった気がした。江戸時代の古地図を用意して読んでみたい作品だ。日本酒を呑みながら読んでも楽しいだろう。
今回は歴史・時代小説の巨匠2人の作品を比較してみました。独特な歴史観が魅力の司馬作品、起伏に富む話作りが巧みな池波作品、どちらも読まないと損の面白さです。ぜひこの冬の読書リストにぜひ加えてみては?