夏の季節に読みたい、おすすめホラー小説 〜前編〜
こんにちは、ブクログ通信です。
連日の猛暑で、すでに夏バテ状態という人も多いのではないでしょうか。エアコンをつけていても寝苦しい夜、簡単に涼しくなれたらいいですよね。または、目もくらむような陽射しの強い日に、ひんやりとした快適な時間を過ごせたらいいと思いませんか?そこで、ブクログから夏の季節におすすめの、ヒヤッとするホラー小説をご紹介します。
ブクログのみなさんからもお墨付きの、怖くて背筋がひんやりする、とっておきのホラー作品を10選(前編5作・後編5作)ご紹介します。一人きりのときに読むと、後ろを振り返ることができなくなるかもしれません。読後にはきっと、部屋の温度が2〜3度くらいは下がって感じられることでしょう。夏の暑さを吹き飛ばす、極上ホラー作品ばかりです。この夏、ぜひ手に取ってみてくださいね!
1.澤村伊智『恐怖小説 キリカ』 言葉を失う恐ろしさ!トラウマ級のサイコホラー小説

ブクログでレビューを見る
あらすじ
ホラー小説の新人賞を受賞した「僕」は、出版準備を始めた。隣には、最愛の妻・キリカがいる。順風満帆な日々を送っていた「僕」だが、ある時友人の1人が「作家とは人格破綻者である」「作家は不幸であるべき」と、一方的な妄想を押し付けてきた。さらに、嫌がらせまで始まってしまった。ストーカー行為に誹謗中傷、最悪の贈り物といった、手に負えない嫌がらせの数々。やがて、「僕」とキリカの秘密が暴き出されてしまい——。
おすすめのポイント!
作者自身の体験談かと思うような、リアルな描写が恐ろしさを倍増させるホラー小説です。読み進めるうちに、思ってもみなかった恐怖にじわじわと絡め取られていく感覚を味わえます。もしかすると、怖くて最後まで読むのをためらってしまうかもしれません。心の底までひんやりとするホラー小説を読みたいとき、ぜひ本作を手に取ってみてください。作者・澤村さんのデビュー作『ぼぎわんが、来る』『ずうのめ人形』も併せて読むと、恐ろしさと面白さがさらに深まります。
これはなかなか!実際の出来事とうまく合わさってるというか、っていうかこれが事実なのか?とかそういう絡み合いで余計にホラー。「ぼぎわん」読んでみたい。
2.乙一『暗黒童話』左眼の記憶に導かれ、「私」の命がけの冒険が始まる

ブクログでレビューを見る
あらすじ
女子高生の「私」は、事故により記憶と左眼を失い、臓器移植で死者の眼球を提供された「私」。ある時から、左眼が不思議なものを見るようになる。どうやら脳裏に浮かぶその映像は、左眼が見てきた風景の「記憶」らしい。左眼の記憶に導かれた「私」は眼球の提供者が住んでいた町を訪ねることにするのだった……。
おすすめのポイント!
ホラー小説の名手・乙一さんが贈る、グロテスクで恐ろしい作品です。ミステリ要素もあり、ドキドキハラハラの展開に、読む手が止まらなくなるでしょう。気づけば夜通し一気読み——なんてこともあり得るので、読み始める時間にはぜひお気を付けください。ホラー小説でありながら、幻想的な雰囲気も魅力の作品です。ただ怖いだけでなく、読んだ後に深い余韻を残す物語に仕上がっています。ホラーが苦手という方にもおすすめです。
あぁ、盛大に騙された。読了後の最初の感想はその一言につきる。推理ものというわけではないが、童話作者の正体を、裏をかいてこいつだ!と推理してみると、その推理すら予測されさらに裏をかかれる。悔しいが完敗。クライマックスから、バッドエンドかと思いつつ、ハッピー(?)エンド。この裏の裏をかかれる感じ。惨敗だが面白かった。
3.道尾秀介『鬼の跫音』 誰の心にもある「悪意」を暴き出す、6つの物語

ブクログでレビューを見る
あらすじ
崖下から、友人Sの遺体が発見された。11年前、Sの恋人に想いを寄せていた「私」は、Sさえいなくなればいいと思っていた。そして、山中にSを埋めたのだった——。「私」のもとに警察がやってきて尋問を受けるも、11年の年月が全ての証拠をかき消している。「私」のしたことを見ていたのは、木陰で鳴いていた鈴虫だけのはずだった……(『鈴虫』)。人の心の闇を暴き出す、連作短編集。
おすすめのポイント!
『向日葵の咲かない夏』や『月と蟹』などで知られる直木賞作家・道尾秀介さんが贈る、背筋をひやりとさせる短編集です。6つのお話が収められており、各話は少しずつリンクしています。どのお話も、人間の心の闇や日常に潜む悪意がテーマとなっていて、読後にはなんともいえない冷え冷えとした気持ちになる1冊です。ミステリー・ホラー小説の名手である道尾さんの、高い筆力をぜひ味わってみてください。恐ろしいのに面白い、引き込まれるのにおぞましい、そんな複雑な魅力が詰まった短編集です。
道尾秀介の短篇集。テーマはなんだろう、まさに「鬼の足音」とでも言うべき人の心の闇である。技術的にも見事なら、表現力も見事。他人事ではない臨場感がぞわぞわと怖い。
4.井上宮『ぞぞのむこ』 衝撃と恐怖の結末に打ちのめされる、不条理ホラー

ブクログでレビューを見る
あらすじ
ある日、電車を乗り間違えた島本は、見知らぬ町に降り立った。部下の矢崎が、「すぐに離れた方がいい。ここは漠市です」と言われるが、何のことだかさっぱりわからない。先を急ぐ島本は、矢崎の忠告を聞かず、漠市を通り抜けて取引先へ向かった。その後、島本のもとに次々と幸運が舞い込む。大きな仕事が決まり、会社のマドンナに声をかけられ、元カノが訪ねてきた。喜ぶ島本だったが、ある異常に気が付いて——。
おすすめのポイント!
謎めいた町「漠市」をめぐる、不条理ホラー作品です。本作は、第10回小説宝石新人賞を受賞しました。漠市に関わってしまったがために、思いもよらない事態に巻き込まれていく人々を描いた、5つの物語が収められています。読み進むうちに、まるで自分も「漠市」に迷い込んでしまったかのような恐ろしさを味わえます。5つの物語の結末では、驚きと衝撃と恐怖が一度にやって来ることでしょう。夏の暑さを一瞬で忘れさせる、極上の恐怖をぜひ体験してみてください。
禍々しくて奇妙な場所「漠市」を巡る不条理ホラー短編集。各話のタイトルもなんともいえず奇妙な響きで惹きつけられるものの、読めばその不気味さにぞくぞくさせられます。漠市……行ってみたいような、行きたくないような。お気に入りは「くれのに」。ありがちな願い事とその代償、というホラーだけれど。クレとノニがなんだか可愛くって仕方ないと思えてしまうのは私だけなのでしょうか? ポップでシュール、だけれどこれは読めば読むほど恐ろしい物語。嫌だなあ、本当に。
5.秋吉理香子『絶対正義』 絶対に間違いを犯さないヒーローは、時に「悪」になる

ブクログでレビューを見る
あらすじ
範子、和樹、由美子、理穂、麗香の5人は、高校の同級生で友人だ。範子は常に礼儀正しく、決して間違いを犯さず、必ず罪を許さない。和樹ら4人は、みな範子に助けられたことがあった。正義を愛する範子に感謝し、尊敬もしていたが4人は範子を殺した。それから5年後、4人のもとに『思い出の会』への招待状が届く。差出人は、死んだはずの範子だった……。
おすすめのポイント!
「正義とは何か」「正しいことは善か」といったことを考えさせられる作品です。仲良し5人組だった女性たちが、ふとしたことから「正義」に縛られ、追い詰められていく姿を描いています。本作の見どころは、範子という圧倒的な存在です。正義を振りかざす範子の姿に、誰もが共感できる部分と嫌悪する部分、両方を感じることでしょう。驚きの結末に向けて、スリリングに展開していく物語は一気読み必至です。また、この作品は2019年には山口紗弥加さん主演で、テレビドラマ化されました。結末の異なるドラマ版も必見です。
後味の悪さがイヤミスの持ち味だけれど、こちらは前半から既にイヤ~な感じ全開。“正義”を貫くという範子の言動だけで、ここまで嫌悪感を引き出す著者の手腕にひたすら感心。正義に酔った恍惚感の暴走に太刀打ちできないのが何とも歯がゆい。人の感情や事情無視の正義は、もう迷惑通り越してホラーでしかないな。娘はともかく、範子の旦那は何を思い何を考え共に生活していたのか知りたいところ。手紙の送り主には早くから察しがついてしまったが、それでも最後までゾクリとさせられて大満足なイヤミスだった。
今回ご紹介した作品は、ブクログユーザーから高評価の名作ばかりです。「怖すぎる」といわれる作品も多く、暑さ対策にきっと役立つことでしょう。熱帯夜のお供に、ぜひお手元に揃えてみてはいかがでしょうか?後編5作品もお楽しみに!