夏にヒヤッとするホラー小説10選!【後編】〜背筋も凍りつく傑作選〜

夏の季節に読みたい!おすすめホラー小説 〜後編〜

こんにちは、ブクログ通信です。

ブクログのみなさんからもお墨付きの、怖くて背筋がひんやりする、とっておきのホラー作品を10選(前編5作・後編5作)ご紹介します。一人きりのときに読むと、後ろを振り返ることができなくなるかもしれません。読後にはきっと、部屋の温度が2~3度くらいは下がって感じられることでしょう。夏の暑さを吹き飛ばす、極上ホラー作品ばかりです。この夏、ぜひ手に取ってみてくださいね!

6.恒川光太郎『雷の季節の終わりに』 心に残る、静かな恐怖を秘めた幻想小説

雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)
恒川光太郎『雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)
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あらすじ

地図には載っていない隠れ里「隠(オン)」。そこでは、神の季節とされる雷季が存在した。雷季には、人をさらう鬼が出るといわれている。穏に暮らす少年・賢也は、ある年の雷季に姉・茜を失う。姉の失踪と前後して、「風わいわい」という精霊にとりつかれた賢也。友人たちと平和に過ごしていた賢也だが、ある事件をきっかけに、その暮らしは一変してしまうのだった——。

おすすめのポイント!

独特な世界観で人気の恒川光太郎さんによる、美しい物語です。第20回山本周五郎賞の候補作となりました。異界である「穏」の風景描写が素晴らしく、ページを開いた瞬間から惹き込まれます。精霊や鬼、妖魔などが闊歩する「穏」を舞台にした、少年の成長譚としても楽しめる作品です。美しく魅力的な世界観が楽しめる一方で、暴力的で恐ろしい描写も多々あり、心揺さぶられる小説ともいえます。一般的なホラー小説とは異なる、ふと背筋が寒くなるような怖さを味わえる作品です。

恒川光太郎さんの作品一覧

ホラーというかファンタジーというか、不思議な作品。地図に載っていない隠れ里「穏(おん)」の少年には不思議な鳥「風わいわい」が憑いていた。前半の舞台は穏。途中から、現世界と境界の地での出来事が語られ、それぞれの時間の出来事を読み進めるうちに、話が一つに繋がっていく。静かで透明で美しい、不思議な作品。とても引き込まれて良かった。

pupunao99さんのレビュー

7.小林泰三『玩具修理者』 人生を変えてしまいかねない、奇怪でグロテスクな衝撃作

玩具修理者 (角川ホラー文庫)
小林泰三『玩具修理者 (角川ホラー文庫)
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あらすじ

玩具修理者は、壊れたおもちゃを何でも直してくれるという。独楽でも、凧でも、どんなに複雑なものでも。例えば、死んだ猫だって直せるらしい。ある日、「私」はあやまって弟を死なせてしまう。親に知られないうちになんとかしなければ、と考えた「私」は、玩具修理者のもとへ弟を運び込むのだった……。表題作他、1編を収録。

おすすめのポイント!

表題作の『玩具修理者』と、『酔歩する男』の2編が収められています。前者は、日本ホラー小説大賞選考委員会で絶賛を浴び、日本ホラー史に衝撃を与えた傑作としても有名です。『酔歩する男』の方はSFホラーで、読んだ人の「日常」を根底から覆してしまう可能性もある傑作です。どちらのお話も、一度読んだら忘れられない名作だといえます。2002年に、田中麗奈さんと忍成修吾さんが主演を務め制作された映画版では、原作とひと味違った世界観が体験できます。映像作品の方もぜひチェックしてみてください。

小林泰三さんの作品一覧

表題作は改めて読むとずいぶん短く、一切の無駄なしで玩具修理者の存在感が極まる。映画化したけど、カラフルな布みたいな玩具修理者さんに、美輪明宏のナレーションで実は映画もなかなか好き。”酔歩する男”は何度読んでもクラクラするような酩酊感でホント素晴らしい。

pogoさんのレビュー

8.貴志祐介『クリムゾンの迷宮』 赤い大地でのデスゲーム!心拍数上がりっぱなしのSFホラー

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)
貴志祐介『クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)
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あらすじ

藤木芳彦は、ある日、見知らぬ場所で目を覚ました。深紅色の奇岩が連なる、この世のものとは思えない景色の中だった。視界一面を真っ赤に覆う峡谷で、藤木は自分の記憶がないことに気づく。傍らにあった携帯用ゲーム機に、謎のメッセージが届いた。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」。謎めく赤い大地で、生き残りを賭けた残酷なゲームが始まる——。

おすすめのポイント!

とにかくスリリングで、ハラハラドキドキしながら一気に読めてしまう作品です。主人公はどこから来たのか、はたして生き残れるのか、「赤い大地」は本当に火星なのか……。疑問は尽きず、時間を忘れてページをめくってしまうことでしょう。なんとも不気味な世界で繰り広げられる容赦ないデスゲームに、読み手である私たちも恐怖と絶望の底へ突き落とされてしまいます。読み進むほどに深まる謎と主人公を襲う危機の数々、さらには驚きの結末へ——と、1冊で何度も心揺さぶられる、傑作SFホラーです。

貴志祐介さんの作品一覧

この世界観がたまらなく面白い。昔あったゲームブックをまた読みたくなった。

TERUさんのレビュー

9.芦花公園『ほねがらみ』 じわりじわりと、怪異が迫る。いつの間にか、あなたのそばにも……。


ほねがらみ
芦花公園『ほねがらみ
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あらすじ

大学病院に勤めている「私」は、趣味で怪談を収集している。知人からのメールや民俗学者の手記、インタビューのテープ起こしなど、手元にはさまざまな話が集まって来る。数多の記録に登場する、呪われた村や手足のない体、白蛇の伝説。バラバラのように見えたそれらは、実は1つの線となりつながっていく。気が付けば、あなたも恐怖の沼に引きずり込まれている……。

おすすめのポイント!

SNSで話題となった物語を、大幅に加筆・修正し書籍化した作品です。一見、何のつながりもなさそうに見えるいくつかの怪談が、徐々に思いもよらない形を成していく様が、リアルに描かれています。ルポルタージュ風の語り口が、恐怖を際立たせている点にも注目です。ブクログユーザーからも「怖すぎる」との声が続出しています。一人きりの部屋で読んでいると、怖さのあまり身動きが取れなくなってしまうかもしれません。心の底までひんやりしたいとき、夏の寝苦しい夜をやり過ごしたいとき、ぜひ手に取ってみてくはいかがでしょうか。

芦花公園さんの作品一覧

完成度が凄い。口伝、都市伝説的なゾッとする話が想像を超えた展開を見せる。本当に怖い。

日本酒大好きさんのレビュー

10.小野不由美『営繕かるかや怪異譚』 読むと「家」に居られなくなるかも?新感覚怪異譚

営繕かるかや怪異譚
小野不由美『営繕かるかや怪異譚
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あらすじ

亡くなった叔母から受け継いだ町屋で、1人で住んでいる「私」。あるとき、奥座敷へ通じる障子が開いていることに気づく。何度閉めても、気づけば開いている——(『奥庭』)。祖母から受け継いだ古屋は、袋小路の奥に建っている。ある雨の日、鈴の音がした。隣家の玄関先に、喪服姿の女性が佇んでいる。見てはいけないものだ、と直感した——(『雨の鈴』)。住居にまつわる怪異を修繕する、営繕屋・尾端の物語。

おすすめのポイント!

ホラーの名手として名高い、小野不由美さんによる新感覚のホラー短編集です。本作では住居にまつわる怪異をテーマとして、怖いながらも心に沁みるような、印象的な物語が6編収められています。細部まで丁寧に描かれた情景描写と、ふと浮かび上がる怪異の姿が妖しいまでに美しく、心底ひやりとするような怪異譚です。小野さんならではの巧みな筆致で紡がれる、静かな感動を伴う恐怖を、ぜひ体験してみてください。

小野不由美さんの作品一覧

家に関する怪異と、それを解決するための改装をしてくれる営繕業者さんの話。本来心休まる場所であるはずの『家』が恐怖の対象になってしまうところがもう怖い。そして霊能者ではないけど家に憑いた霊のことまで考えた営繕をしてくれる『かるかや』の尾端さんの登場で救われる…!ホラーではあるけれど、ちょっと心が温まる短編集でした。最後の『檻の外』はちょっと泣きそうになった…

natural723さんのレビュー

今回ご紹介した作品は、ブクログユーザーから高評価の名作ばかりです。「怖すぎる」といわれる作品も多く、暑さ対策にきっと役立つことでしょう。熱帯夜のお供に、ぜひお手元に揃えてみてはいかがでしょうか?