伊吹有喜さん作品5選!~温かく少しビターな人間ドラマ傑作選~

こんにちは、ブクログ通信です。

伊吹有喜さんは出版社勤務を経てフリーライターに転身し、2008年に永島順子名義で応募した『夏の終わりのトラヴィアータ』で第3回「ポプラ社小説大賞」特別賞を受賞しました。2009年に筆名を伊吹有喜、タイトルを『風待ちのひと』に改め、同作で小説家デビューを果たします。2010年に発表した『四十九日のレシピ』はテレビドラマ、映画も制作され、伊吹さんの代表作として現在も衰えない人気を誇る作品です。

今回は、そんな伊吹さんの作品の中から、話題の5作品を紹介いたします。爽やかで少しほろ苦い人間ドラマが魅力の作品選です。ぜひ最後までご覧くださいね。

伊吹有喜さんの作品一覧

1.伊吹有喜『雲を紡ぐ』 盛岡の伝統工芸が紡ぐ心と心の物語

雲を紡ぐ
伊吹有喜『雲を紡ぐ
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あらすじ

高校生の美緒は、いじめに遭い学校に行けなくなった。唯一の心のよりどころは、祖父母にもらった赤いホームスパンのショールだ。ある日、このショールをめぐって母と口論になった美緒は、岩手県盛岡市にいる祖父の元へ家出をする。一方、美緒がいなくなった東京では、父と母の間に離婚話が持ち上がっていて……。

おすすめのポイント!

ホームスパンとは、スコットランドやアイルランドの農家でつくられてきた、羊毛を染め、紡ぎ、織りまで手仕事でこなす素朴な織物です。本作では、時代を超えて受け継がれてきた織物になぞらえて、親子3世代の家族の絆が描かれています。家族を思っているのにすれ違ってしまう登場人物たちの心模様が繊細に描写され、切なさが胸に迫る作品です。親子でも分かり合えないことはある、家族でも伝えきれないことがある——そんなもどかしさを描いた人間ドラマです。

胸にズバズバ突き刺さる言葉がたくさんある。不登校になった美緒ちゃんにお母さんが言う言葉が突き刺さる。オンナを武器にするな、と言う言葉は自分が今まで必死に耐えてきた結果、自分にもできることは子供にもできると言う思い込みなのかなー。自分は自分でたとえ子供であっても思い通りにはならない。お父さんとお母さんの関係、お父さんとおじいちゃの関係、全てがわかる、、、人間関係の全てが詰まっている一冊だった。

まるまるまるこさんのレビュー

2.伊吹有喜『犬がいた季節』一匹の犬が見守り続けた高校生たちの青い時間

犬がいた季節
伊吹有喜『犬がいた季節
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あらすじ

1988年の夏の終わり。県内有数の進学校・八稜高校に一匹の白い子犬が迷い込んだ。子犬は「コーシロー」と名付けられ、生徒たちと共に学校生活を送ることになった。桜の花が咲くたびに、コーシローは見慣れた生徒たちを見送る。そして、新しい制服に身を包んだ見知らぬ生徒たちを迎えるのだ。

おすすめのポイント!

とある高校で飼われている犬・コーシローの視点で描かれる、高校生たちの葛藤や逡巡、青春を描いた群像劇です。少年少女から大人への階段を少しずつ上がってゆく生徒たちの姿がみずみずしく描かれ、光と影を含んだ青春の風景が爽やかな感動を与えてくれます。高校生ならではの不安定な心や将来への不安、甘酸っぱい恋が丁寧に描写され、読んでいると自分自身の青春時代と重なって何とも言えない気持ちにさせられることでしょう。爽やかで少しほろ苦い余韻が心に残る作品です。

昭和の終わりにに高校の美術部に迷い込んできて高校で暮らすことになった犬のコーシローと、コーシローのお世話をした各世代の高校生たちを描く連作短編集。冒頭コーシローが飼い主に捨てられてしまう話しから始まって、高校で暮らし始めた初年度にお世話をしてくれたユウカに会いたくて『ユウカさん』と呼び続けているので、ぎゅっと胸が締めつけられたまま読み進めた。10代の頃の出会いと別れが瑞々しくて、徐々にこわばりがほぐれて、最後まで読み終わった時にはあたたかな気持ちになっていた。これから社会に出るような若い方におすすめしたい本。

いちこさんのレビュー

3.伊吹有喜『娘が巣立つ朝』

娘が巣立つ朝
伊吹有喜『娘が巣立つ朝
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あらすじ

婚約者の渡辺優吾を連れて実家に来た高梨家の一人娘・真奈。優吾はとても好青年なのだが、両親の健一と智子とはどこか会話が嚙み合わず、両親に一抹の不安がよぎる。そんな健一と智子もまた、互いに心の中にモヤモヤを抱えていた……。

おすすめのポイント!

本作は、伊吹さん初の新聞連載小説です。現代版「東京物語」と言われている通り、一人娘の結婚をきっかけに揺れ動く家族の姿が描かれています。金銭感覚も価値観も違う婚約者一家と接してゆく中で、徐々にすれ違う夫婦、親子の等身大の気持ちをありありと浮き彫りにしてゆきます。長年連れ添いながらもそれぞれに複雑な思いを抱える夫婦と、結婚におけるリアルな問題に直面してゆく娘の悲喜交々に共感させられます。一筋縄ではいかない人生の選択について考えさせられる一作です。

高梨家のひとり娘、真奈の婚約をきっかけに、喜び、不安、悲しみ、いろいろな感情を父健一、母智子、真奈のそれぞれの目線からジェットコースターのように日々が綴られていく小説です。2人の結婚にかかわる全ての人に、幸せになってほしいと願いながら…えええっ!と思う展開に、最後まで一気読みでした。

ミユキさんのレビュー

4.伊吹有喜『四十九日のレシピ』 四十九日の本当の意味を知る、温かな愛の物語

四十九日のレシピ
伊吹有喜『四十九日のレシピ
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あらすじ

熱田家の母・乙美が突然亡くなり、夫である良平はすっかり生きる気力を失ってしまう。ある日、熱田家に真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本が訪れた。乙美の教え子だったという彼女は、生前の乙美に頼まれ、四十九日までの細々とした家事などを引き受けるという。そして、井本は乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を、良平に伝えるのだった。

おすすめのポイント!

ドラマと映画も制作された、何気ない日常の尊さが心に染みる感動作です。大切な人が急にいなくなってしまったら、逆に、大切な人を残していくことになったら……そんな切ない「もしも」について考えさせられます。熱田家の母・乙美という一人の女性を中心に、家族や友人、それ以外のつながりを持つ人たちの絆や縁が描かれ、読み進めるほどに乙美の存在感が強くなる物語です。四十九日が過ぎたとき、それぞれがどんな一日を過ごすことになるのか、ぜひご自身の目で確かめてください。

食べ物をおいしそうに食べる人っていいよね。多分幸せになれるよね。
最後にもめちゃうと、後からいろいろ後悔してしまうだろうけど、毎日の積み重ねが今に至るわけだから、最後の場面だけじゃなくて今まで寄り添った気持ちすべて、奥さんの気持ち旦那さんに、旦那さんの気持ち奥さんに、最後ちゃんと伝わってたらいいなぁ。

megmilk999さんのレビュー

5.伊吹有喜『今はちょっと、ついてないだけ』人生の敗者復活戦に臨むハート・ウォーミングストーリー

今はちょっと、ついてないだけ (光文社文庫 い 60-1)
伊吹有喜『今はちょっと、ついてないだけ (光文社文庫 い 60-1)
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あらすじ

かつてタレントとして人気者だったコウキは、40代を迎え、いまだ独身だ。大学の先輩の借金を肩代わりし、がむしゃらに働いてきた。返済が終わって気づいてみれば、周りはみんな家庭を持ち充実した生活をしている。これまでの人生を悔み、これからの人生を諦めているコウキだったが、ある日、母親にとある仕事を頼まれて……。

おすすめのポイント!

ちょっとつらいことが続いたとき。なんだかついていないと感じるとき。そんなときは、ぜひこの作品を手に取ってみてください。本作では、40代を迎え、人生のどん底にいるような気持ちで日々を送る主人公の「人生の敗者復活戦」が描かれています。ドラマチックではなくても、地道に生きることの美しさがじんわりと感じられるような作品です。読み終わったとき、前向きな気持ちになれるハート・ウォーミングストーリーです。

いいじゃん。って素直に思える小説。うまくいかない、そんな日常が自然にちょっとずつ変わっていく。物語やドラマみたいに劇的じゃない、でも確かな1歩が転機になっていく。 登場人物が多く、誰が誰だったっけ?と混乱はしたものの、文字の運びがきれいなのか、話の流れはすっと入ってきた。読み終わったばかりなのに忘れた頃にまた読みたいなぁと思わせてくれる不思議。

1031nkさんのレビュー


伊吹さんの作品は、人と人とのつながりを描いた温かなストーリーが魅力です。今回ご紹介した作品は、少しほろ苦さもある、奥行きのある人間ドラマが揃っています。読書タイムのお供に、ぜひ手に取ってみてくださいね。