純文学新人賞三冠作家・今村夏子さん作品おすすめ5選!

こんにちは、ブクログ通信です。

女流作家の今村夏子さんは、29歳の時、ふと思いついて書き始めた小説「あたらしい娘」が2010年に「太宰治賞」を受賞し、鮮烈なデビューを果たします。同作を改題した「こちらあみ子」と新作「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、2011年に「三島由紀夫賞」を受賞しました。

その後、ブランク期間を経て発表した短編集『あひる』で「河合隼雄物語賞」受賞、2017年には『星の子』で芥川賞候補になると共に「野間文芸新人賞」を受賞します。2019年に『むらさきのスカートの女』で第161回「芥川賞」を受賞した今村さんは、5人目の純文学新人賞三冠作家となりました。同年、咲くやこの花賞も受賞し、作家としての地位をますます盤石なものとしています。

ブクログから、そんな今村さんのおすすめ作品を5つ紹介いたします。のどかさとほんのり漂う不穏さの絶妙なバランスが癖になる、独特な世界観をお楽しみください。

『今村夏子(いまむら なつこ)さんの経歴を見る』

今村夏子さんの作品一覧

1.今村夏子『むらさきのスカートの女』狂気と異常な愛に満ちた奇妙な物語

むらさきのスカートの女
今村夏子『むらさきのスカートの女
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あらすじ

<わたし>は近所に住んでいる「むらさきのスカートの女」が気になってしょうがない。いつもむらさきのスカートを履いて、奇行を繰り返す彼女。なんとか彼女と「ともだち」になるために、<わたし>は彼女が自分と同じ職場で働きだすよう誘導するのだった。

おすすめのポイント!

「芥川賞」受賞作にして多くの読者を虜にした作品です。あえて書き手を特定させないミステリアスな文章と、奇妙でどこかユーモラスな物語が読む人すべてに衝撃を与えます。「むらさきのスカートの女とはどんな女なのか」「登場人物たちの目的は果たされるのか」など、さまざまな謎がページをめくる手を加速させ、一気に読めてしまう作品です。ミステリーのようであり人間ドラマのようであり、どこかオカルト要素も感じられる不思議な作品となっています。パンチの効いた読後感を味わえるので、ぜひ手に取ってみてください。

はじめての今村夏子さん。幸薄い状況の時って、自分より何かと下のランクの誰かを探して、私はまだマシみたいに安心しようとしがちに思う。むらさきのスカートの女は仕事にも人間関係にも恵まれず、いかにも幸薄い感じなのだけど、その彼女を見ていた「わたし」の方が、もっとヤバかった。こんな感じ、改めて考えるとよくある事なのかもしれない。それにしても むらさきのスカートの女は どこに行っちゃったのだろう?

かみりこさんのレビュー

2.今村夏子『こちらあみ子』言葉のない叫びのような深い余韻を残す感動作

こちらあみ子 (ちくま文庫)
今村夏子『こちらあみ子 (ちくま文庫)
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あらすじ

あみ子は少し変わった女の子だ。優しい父、一緒に登下校する兄、書道教室の先生をしている母と暮らしている。母のお腹には赤ちゃんもいる。そして、あみ子は同級生の「のり君」に憧れている。純粋でいつも自分に正直なあみ子の行動は、まわりの人たちを否応なく変えていくのだった……。

おすすめのポイント!

「三島由紀夫賞」と「太宰治賞」を受賞した作品です。自由で純粋で、思うがままに生きるあみ子の姿をいきいきと明るく描き出しています。田舎のとある町で平和に暮らしているあみ子は、優しい家族がいて好きな子がいて、毎日それなりに楽しくやっているように見える少女です。しかし、本作を読み進めるほどに言いようのない不穏さが募っていきます。不穏さの正体は何なのか、ぜひご自身で確かめてみてください。心の奥深くに静かに響くような余韻を残す作品です。

全体的にもやもやとしていてハッキリとは表現されていない気持ち悪さがあった。語り手がどこか歪んでいてでもそれを当たり前のように語ってくるので一度素直に受け入れてしまう。読み進めるうちにやっぱり何かがおかしいと気づく。最後はスッキリとした解決もなくぬるっと終わるのでモヤモヤが残った。このような感情は今村夏子さんの小説でしか味わえないものだと感じた。

ぽんさんのレビュー

3.今村夏子『星の子』宗教にのめりこむ両親と娘の危うい絆を描く著者代表作

星の子 (朝日文庫)
今村夏子『星の子 (朝日文庫)
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あらすじ

中学3年生の林ちひろは幼いころから病気を繰り返している。献身的に看護の日々を過ごす両親は、ある日「金星の水」と出会った。それが「あやしい宗教」の始まり。ちひろを救いたいと思うあまり、父も母も宗教にのめり込んでいく。歪な信仰は、やがて家族の形をもゆがめていくのだった。

おすすめのポイント!

「野間文芸新人賞」受賞作です。小さい頃から病弱な少女ちひろの目を通して、新興宗教にはまっていく両親と、少しずつ壊れていく家族の姿が描かれています。この作品は「新興宗教にはまる毒親と、それに反発する常識的な娘」といったよくあるパターンの物語ではありません。「常識とは何か」「普通とはどんなことか」といったことを考えさせる深みのある作品です。さらりとした文章とのどかな雰囲気で「異質なもの」を描き出す、今村さんならではの手腕をじっくり堪能できます。

どんなにいろいろな情報が耳に入ってこようとも、子供にとっては親が全てであり、違和感も疑問も”好きだから、信じてるから”で片づけられる。星の子の主人公、ちーちゃんも世間や友人の言葉を聞き流していたわけではないけれど、それでも1番身近な人の影響を最もダイレクトに受ける。少し怖くて少し希望を感じられる作品でした。

なるみさんのレビュー

4.今村夏子『あひる』1羽のあひるによって壊れ始める、とある家族の物語

あひる (角川文庫)
今村夏子『あひる (角川文庫)
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あらすじ

資格試験の勉強をしている<わたし>の家にあひるがやってきた。あひるを目当てに、近所の子供たちもやってくるようになった。両親は子供たちをあひると遊ばせるだけでなく、居間で宿題をさせたり、お菓子をふるまったりしている。ある日、体調を崩したあひるが動物病院に連れていかれると、子供たちはぱったりと来なくなった。2週間後、戻ってきたあひるはなぜか以前より小さくなっていて……。

おすすめのポイント!

あひるを通して家族の歪さが浮き彫りになる、斬新な物語です。本作は芥川賞候補作となり、受賞は逃しましたが「河合隼雄物語賞」を受賞しました。どこにでもいそうなごく普通の家族の中で、徐々に生まれる奇妙な変化が不気味かつユーモラスに描かれています。読んでいると背中がぞわりとするのに、思わず笑ってしまう一瞬もある不思議な作品です。明るさとほの暗さが混在する、とある家族の物語をお楽しみください。

短編3編の小品だけどいかにも今村夏子さんの味わいが出ていてすんなり読了しました♪ たしかに皆さんが評するとおり、暗黙の喩えが散りばめられていますけど、それが嫌味でなくてちゃんと収まっています。表題作もいいけど、書き下ろしの2編も印象的です。

ありが亭めんべいさんのレビュー

5.今村夏子『木になった亜沙』初めて出会う異質な世界観がクセになる作品集

木になった亜沙
今村夏子『木になった亜沙
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あらすじ

自分が差し出したものを誰にも食べてもらえないと嘆く少女・亜沙。誰かに食べさせたいと願う彼女は、やがて杉の木に生まれ変わる。願いが叶ってわりばしになった亜沙は1人の若者と出会った(「木になった亜沙」)。どんなものも、なぜだか七未には当たらない。どんぐりも、ドッジボールも、空き缶も。七未が当たるよう、まわりのみんなは応援してくれるが……。(「的になった七未」)。ほか一作を含む作品集。

おすすめのポイント!

「食べてもらえない」「当たらない」など、意表を突く設定の小説3つを収めた作品集です。一見ファンタジックな物語に思えますが、シュールで少し毒っぽさのある個性的な世界観が魅力の一冊です。登場人物はみなどこか奇妙な人物なのですが、今村さんにかかると彼女たちはごく普通の共感できる人間として感じられます。普通と異質、共感と拒絶、そんな相反するものを見事に両立させた不思議な世界観を、ぜひ味わってみてください。

三遍収録。どれも童話のようなお話。出来なかったことや、遂げることが出来なかった事に執着してしまう感じすごく分かる気がする。みんなとは違う自分を受け入れることはどうしてこんなにも難しいのか。「木になった亜沙」ラストの着地に驚いた。その発想もありかな。「的になった七未」読んでてつらかった。悲しいお話。「ある夜の思い出」最後にふさわしい。ほの暖かい気持ちにさせてくれる。

あめのさんのレビュー


今村さんは日常に溶け込む異質な存在を多く描いています。常識や価値観が揺さぶられ、新しい世界に出会った気分になれる点が今村作品の魅力です。今村作品を未読の方は、ぜひこの機会にデビューしてみませんか?