こんにちは、ブクログ通信です。
気軽に海外旅行に行けなくなって久しい。そんな今だからこそ、海外作家の作品を読んで、空想旅行のように国境を越えてみるのはいかがでしょうか。
さて、海外ミステリーというと、クリスティやポーのような古典を思い浮かべる方が多いかもしれません。今回は海外ミステリーのなかでも、現代の作品を中心に、とくに評価の高いものを前後編合わせて10作品集めました。異文化に触れたい、海外の小説を読みたい、ミステリーが好き。そんな方々にとくにオススメの珠玉の10作を、ぜひ一読ください。
1.ピーター・スワンソン『そしてミランダを殺す』殺す/殺されるのは誰だ

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あらすじ
実業家のテッドは、ある日、ヒースロー空港のバーで離陸までの時間を潰していた。そこで美女・リリーに声をかけられたテッドは、酔いの勢いに任せ、妻・ミランダが浮気をしていると知ってしまったことを話し、「妻を殺したい」と漏らす。冗談半分だったテッドに対しリリーは、そんな女は殺されて当然と、殺人の協力を申し出る。計画実行の日に起きた予想外の事件。追うものと追われるものの策略が交差する、傑作ミステリ。
おすすめのポイント!
「この展開、予想できるはずがない!」という帯文句が心を惹きつける本作は、展開の読めなさが魅力的なミステリです。第一部から第二部へのショッキングな移行、そして第三部へ向けて疾走感のある怒濤の展開に、止まる間もなく読み進めてしまうでしょう。原題の「The Kind Worth Killing」は、殺されて当然の者たち、というような意味になります。共感よりもゾクゾク感を得たい人におすすめのサスペンス小説です。
ノンストップミステリー。リリーの語り口が多いので、どうしてもリリー中心に感情が入ってしまうが、サイコパスは怖い。嘘をつくと、その嘘を隠すために人を殺す。最後のオチはゾクっとくる。
2.トム・ロブスミス『チャイルド44』ソ連の実話から着想を得た惨殺事件の行方は

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あらすじ
1933年、ソビエト連邦・ウクライナにあるチェルヴォイ村の森の中で、猫を捕まえようとした兄弟のうち、兄が行方不明となった。20年の月日が経ち、スターリン体制下のソ連では幼児の行方不明事件が頻発していた。国家保安省の敏腕捜査官・レオはスパイ容疑者を拘束するが、狡猾な計略に嵌められ、妻ともども片田舎の民警へと左遷されてしまう。そしてその村でもまた、少年少女の惨殺事件が連続し……。戦慄のデビュー作。
おすすめのポイント!
ウクライナの猟奇的殺人者、アンドレイ・チカチーロをモデルに、1950年代の旧ソ連を舞台とした本作は、旧ソ連時代の社会情勢の描写が秀逸です。法が違えば正義も常識も違うのだということが、ゾッとするほど丁寧に描かれています。世界中で翻訳されていますが、日本では、「このミステリーがすごい!」2009年版海外編の第1位に選ばれ、2015年には『チャイルド44 森に消えた子どもたち』として映画化もしています。
絶望に満ちた暗い本を読み始めたと思ったが、話が転換すると希望が見えてきて面白くなってきた。
3.ケイト・モートン『湖畔荘』過去と現在がつながる超大作

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あらすじ
ロンドン警視庁の女性刑事セイディは、不本意な謹慎処分を受けていた。ロンドンを離れ、地方に住む祖父とともに暮らしはじめたセイディは、ジョギングの途中で打ち捨てられた屋敷を発見する。そこはかつて、エダウェイン家の人々が幸せに暮らしていた場所であり、また、末子である赤ん坊・セオが行方不明になったいわくつきの場所でもあった。暇を持て余したセイディはこの未解決事件を調べはじめるが——。
おすすめのポイント!
時間や視点を変え、パッチワークのように事件の全貌が明かされていくワクワク感のある作品です。イギリスの片田舎・コーンウォールでの描写は時にメルヘンでもあり、描写の美しさにはうっとりさせられます。人物描写も密に描きこまれており、ミステリ好きのみならず、文章美を求めている人にもオススメの作品になっています。各国で翻訳され、累計発行部数1000万部を超えているモートンの作品は世界中で人気を集めています。
初めてのケイトモートン。上巻の最初はダラダラしていて読みづらく面白くないなと思ってたんですが、上巻の最後あたりから急激に面白くなってきて引き込まれてしまいました。ラストにも衝撃を受けました。読後感もすっきりとして非常に気持ちの良い終わり方でした。上巻をざっと読んでしまったことがちょっと悔やまれますのでこれから読む方は我慢してでもじっくり読まれる方がいいと思います。
4.アントニイ・バークリー『第二の銃声』90年を経て、今なお鮮やかな長編

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あらすじ
高名な探偵作家・ヒルヤードの邸宅で開かれた殺人推理劇。被害者役に抜擢されたスコット=デイヴィスだが、劇が終わった後、二発の銃声が聞こえたかと思うと、彼は本物の死体となって転がっていた。彼を殺すだけの動機は、現場の関係者全員にある。劇中でも加害者役となり、事件現場の状況からも嫌疑をかけられたピンカートンは、友人の素人探偵・シェリンガムに助けを求める。二転三転する論証の末には、驚愕の真相が——。
おすすめのポイント!
常に実験的な作品を創作し続けたバークリーならではの驚きが楽しめる本作は、著者の作品のなかでは、シェリンガムシリーズの一つと位置づけられています。物語の動き、人物の性格描写など、どれ一つ取っても一級品と言えるでしょう。『毒入りチョコレート事件』『地下室の殺人』など、どの作品も一筋縄ではいきませんが、どれも極上の仕上がりになっていますので、挑戦的な作品を求めている方にぜひ読んでほしい作品群です。
面白くて一気読みしてしまった。倒叙モノならではの犯人の恐れと応戦、探偵役の捜査と追求、ロジカルに徹したストーリーの運び方、どれをとっても質が高い。 唯一ケチをつけるなら碓氷優佳と伏見以外の人物が少々間抜けで、優佳の指摘の幾つかは誰かが気づいてもよさそうなモノだ。だが本当にそれくらいしか欠点がない。 伏見には共感するところが多く自分もきっと同じような思考で行動するなと思う反面、優佳の気付くポイントにも察しが付くので「気づけ!怪しまれるぞ!」とつい応援をしてしまう。感情面でも、優佳に対する心情は痛いほど解る。
5.スティーグ・ラーソン『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』世界的大ヒット三部作の初作

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あらすじ
月刊誌『ミレニアム』の発行責任者・ミカエルは、大物実業家の不正を暴く記事を発表。だが、名誉毀損のかどで訴えられ、有罪判決が下ったミカエルは『ミレニアム』を離れることに。しかしミカエルは、大物実業家の違法行為を確信していた。そんな折、大企業の前会長・ヘンリックから過去の事件について調査を依頼される。解決すれば、大物実業家を破滅させる証拠を与えると言われ、ミカエルはこの難事件に挑むことを決めた。
おすすめのポイント!
本作は、著者の本国スウェーデンで「読まないと職場で話についていけない」と言われるほどのベストセラーとなりました。第十部まで構想を練っていたとされますが、著者が亡くなったため、出版されたのは『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』を合わせ3作です。没入感の強いこのシリーズは、「このミステリーがすごい!」2010年版海外編に3作ともランクインという快挙を果たしています。
スウェーデンのストックホルムに住むジャーナリスト・ミカエルと、社会に虐げられてきた天才的頭脳を持つ女性・リスベット・サランデルが、社会システムと表裏一体となった人権の迫害や女性への暴力と戦う物語で、圧倒的な没入感を与えてくれるエキサイティングな小説。これすごかった。
海外小説には、国内の作品にはない魅力がたくさんあります。推理がメインと思われがちなミステリーですが、書かれているのは人間の命の物語。ぜひこの記事をきっかけに、海外ミステリーを手に取ってみてくださいね。
後編5作品もお楽しみに!