読書に国境はない!おすすめ海外ミステリー小説10選【後編】

こんにちは、ブクログ通信です。

気軽に海外旅行に行けなくなって久しい。そんな今だからこそ、海外作家の作品を読んで、空想旅行のように国境を越えてみるのはいかがでしょうか。

さて、海外ミステリーというと、クリスティやポーのような古典を思い浮かべる方が多いかもしれません。今回は海外ミステリーのなかでも、近現代の作品を中心に、とくに評価の高いものを前後編合わせて10作品集めました。異文化に触れたい海外の小説を読みたいミステリーが好き。そんな方々にとくにオススメの珠玉の10作を、ぜひ一読ください。

6.アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』構想15年!クリスティを彷彿とさせるオマージュ作品

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)
アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)
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あらすじ

1955年7月、サマセット州の片田舎にあるパイ屋敷の、家政婦の葬儀がしめやかに執り行われた。鍵のかかった屋敷の階段から落ちて倒れていた彼女を見つけたのは庭園管理人のネヴィル。事故死として処理された彼女の死の数日後、今後は屋敷の主人が首を刎ねられ死んでいるのが発見された。燃やされた肖像画、消えた毒薬、謎の男とカササギの群れ。余命宣告を受けた名探偵アティカスは、この事件をどう推理するのか——。

おすすめのポイント!

「一羽なら悲しみ、二羽なら喜び。……七羽ならそれは、明かされたことのない秘密」というカササギの数え唄になぞらえた章題を付けられた上巻で「ふむふむなるほど」と期待感を高めていた読者を驚愕させる、下巻のストーリーには脱帽です。誰もやったことのないことに挑みたかったという著者の本気度が伺える渾身の作品でしょう。日本国内のミステリ・ランキングを総なめした本作は、クリスティ好きにはとくに嬉しい一作です。

アンソニー・ホロヴィッツさんの作品一覧

アガサ・クリスティー好きにはたまらない、古典的な探偵小説であり、完成度の高いフーダニット(犯人当て)。前半は海外ミステリあるあるだけど、登場人物が多くて「えーと、、この人誰だっけ?」と人物紹介ページを行ったり来たり。エンジンかかりだしたら、読み終えるのが惜しいくらい楽しめました。特に下巻が素晴らしい。

ほーちーさんのレビュー

7.ドン・ウィンズロウ『犬の力』2010年度「このミス!」受賞の骨太本格ミステリー

犬の力 上 (角川文庫)
ドン・ウィンズロウ『犬の力 上 (角川文庫)
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あらすじ

アメリカ麻薬取締局(DEA)の捜査官・アートは、メキシコの麻薬撲滅に取り憑かれていた。アートは、派遣先のメキシコ・シロアナ州で、麻薬カルテルの後継者となるアダン・バレーラと出会う。友情はやがて憎しみへと変わり、彼らは30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争に巻きこまれていく。米国政府、マフィア、麻薬カルテルと、それぞれの組織の思惑が交錯し、無法地帯となった物語上では多くの血が惜しげもなく流される。

おすすめのポイント!

「犬の力」という不思議なタイトルは、原題の「The Power of The Dog」から直訳されましたが、本作には犬は出てきません。謎を深めるタイトルを持つ本作は、金・暴力・麻薬が絡み合うだけでなく、中南米が抱える多くの問題を抉りだしています。不条理ものや血なまぐさい作品を読みたいときにオススメの作品。本作は「犬の力シリーズ」として、『ザ・カルテル』『ザ・ボーダー』と続編が刊行されています。

ドン・ウィンズロウさんの作品一覧

メキシコ麻薬組織との戦いを描いた本作は僕の知っている作者のこれまでの作品とは全く異なる作風だが素晴らしい読み応えがある。「高く孤独な道を行け」のようなユーモア溢れるものも好きだがこれはこれで読みだしたら止まらない魅力がある。

hossy33さんのレビュー

8.ミシェル・ビュッシ『黒い睡蓮』印象派を思わせる文章美

黒い睡蓮 (集英社文庫)
ミシェル・ビュッシ『黒い睡蓮 (集英社文庫)
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あらすじ

印象派を代表する画家・モネが、その半生を過ごしたというフランスのジヴェルニー。そこで、浮気性の眼科医の他殺死体が見つかった。美人教師のステファニー、絵画への情熱と才能に溢れた少女・ファネット、魔女の水車小屋に住む、正体不明の老女である「わたし」。三人の女性が語る人生が、事件の真相を明瞭に浮かびあがらせていく。『彼女のいない飛行機』で世界中のファンを魅了した著者が迷宮へといざなう極上ミステリ。

おすすめのポイント!

モネの「睡蓮」で有名なジヴェルニーを舞台にした本作は、魅惑的で洗練された文章が連なっています。始まりから心を掴まれた!という読者が多いのも頷けるでしょう。さまざまな仮設を頭のなかに立てながら読ませる作品ですが、きちんと裏切る驚きの結末が待っています。モネが好き、ジヴェルニーに興味があるという方は、日本の作家・原田マハさんの『ジヴェルニーの食卓』も合わせてオススメします。

ミシェル・ビュッシさんの作品一覧

予想もしなかった大どんでん返し!でもちゃんと納得できる。すごいの一言です。なんていう人生。表現するのが本当に困難だけど、読み終わって万感の思いとでというのでしょうか、こみ上げてくるものがありました。

marumaruchanさんのレビュー

9.ジョン・ハート『ラスト・チャイルド』影が濃いほど、光もまた強くなる

ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン・ハート『ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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あらすじ

ある日、双子の妹・アリッサが失踪したことで、少年・ジョニーの平穏で幸福な日々は一変した。相次いで失踪した父、酒と薬物に浸る母。家庭は崩壊し、多くの人々はアリッサの命を諦めた。しかし、ジョニーはくじけない。心のなかでは悲鳴をあげながらも、家族の再生と妹の無事を信じ、親友とともにアリッサを探し続けるジョニー。愛と赦し。深い絶望と苦しみの闇をもがく少年は、妹との再会を果たすことができるのか。

おすすめのポイント!

少年を主人公に描いた本作は、情景描写の細やかさ、テンポの良さが秀逸で、重いテーマを扱っているにもかかわらず、グイグイと読ませる力があります。早く読みたいという欲求と裏腹に、読み終えたくないという真逆の感情が溢れだしそうな一作。胸をかきむしられるようなジョニーの苦しみを追体験し、ラストは号泣。感情を激しく揺さぶられる重厚な作品。前作『川は静かに流れ』もブクログのみなさんから人気の高い作品です。

ジョン・ハートさんの作品一覧

本書はジョン・ハート作品の3作目。相変わらず、情念のこもった作品を描く。ユーモアは欠片もない。粘着質の男たちが煩わしく感じるくらい、脇目も振らず一直線に行動する。行動のエネルギーとなっているのは愛情。一途さに、人間の愛情とはいったい何に裏打ちされているのだろう? という疑問も湧いた。事件をきっかけに、愛する人を守ろうとする者たちがもがき苦しみながらも進んでいく姿を克明に描く、上質なエンターテインメント作品だ。愛情の裏表、様々なかたちを提示し、読む者に熟考を強いる。気合を入れて読みたくなった。

trade-windさんのレビュー

10.ボストン・テラン『音もなく少女は』深い感動をもたらす、「心に残る」ミステリ

音もなく少女は (文春文庫)
ボストン・テラン『音もなく少女は (文春文庫)
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あらすじ

第二次世界大戦直後のニューヨークで、貧しいイタリア系女性・クラリッサは夫とともに過ごしていた。夫・ロメインはチンピラで、今でいうDV夫である。墓掘り人夫をして埋葬品を盗み売っているロメインは、のちに麻薬の密売にも手を出す。そんな二人の間に生まれたのは、耳の聞こえない娘・イヴであった。ロメインの暴力から逃れるため、母娘は数奇な出会いで知り合った女性経営者・フランを頼り——。

おすすめのポイント!

苦難のなかにあっても支えあい、悲しみや不運に打ちのめされることなく自由を渇望する女性たちの姿は凜々しく、読み終えたあとに残るのは深い感動でしょう。ミステリというジャンルでカテゴライズされてはいるものの、ジャンルやあらすじなんて何でもいいと思わせるほどの、絶大な存在感を持つ作品です。「WOMAN」という原題も、邦題も、どちらもこの作品を強く印象づけています。深みのある読書体験がしたい方におすすめです。

ボストン・テランさんの作品一覧

自分の中にこびり付き、侵食してゆく相手。――その恐怖を思うと、クラリッサの決意と行動には胸が締め付けられるようだった。イヴとフランとクラリッサ。彼女たちを深みから救ったのは、出会いだった。傷をなかったものとはしない。人生から逃げない。餌食にはならない。それらの「正面に立つ強さ」を得たのも、やはり互いがいてこそだと思った。ボストン・テラン。デビュー作も気になってきた。

pponさんのレビュー


海外小説には、国内の作品にはない魅力がたくさんあります。推理がメインと思われがちなミステリーですが、書かれているのは人間の命の物語。ぜひこの記事をきっかけに、海外ミステリーを手に取ってみてくださいね。
前編5作品はこちら!