こんにちは、ブクログ通信です。
2023年も早いところ上半期が過ぎましたね。ブクログユーザーのみなさんは、上半期どのような読書ライフを楽しまれましたか?
ブクログでは、2023年上半期の月間「登録者数」上位となった作品をご紹介いたします!ぜひチェックしてみてくださいね。
1月:小西マサテル『名探偵のままでいて』(『このミス』大賞シリーズ)
あらすじ
「認知症の老人」が「名探偵」たりうるのか?孫娘の持ち込む様々な「謎」に挑む老人。認知症の祖父が安楽椅子探偵となり、不可能犯罪に対する名推理を披露する連作ミステリー!
おすすめのポイント!
「ナインティナインのANN」など人気ラジオの番組構成作家が手掛ける本作は、2023年1月に発売されて以降、累計発行部数7万部(2023年3月時点)を突破しました。27歳の主人公・楓が、知識人であった認知症の祖父に身近な謎解きを依頼する日常系ミステリーです。複雑に絡み合った糸を一つずつ紐解いてゆく本作は、ミステリー初心者の方にも読みやすい内容になっています。1話完結でありながら、一貫して提示される大きな「謎」に注目してみてください。
第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。レビー小体型認知症を患う祖父が、孫娘・楓の持ち込む謎をミステリーにして鮮やかに解き明かす。祖父と楓の謎解きの会話が楽しめるという素敵さもあって、さくさくと読み進められた。そして、楓の同僚である岩田とその後輩であり役者をしている四季のキャラクターにとても好感が持てる。四季との会話の中でのミステリー話もワクワクさせてくれる。全体的にすっきりとしたおさまりかたで安心感があった。
2月:町田そのこ『あなたはここにいなくとも』
あらすじ
恋人に紹介できない家族、職場での対人恐怖、人間関係をリセットしたくなる衝動、不倫、幼馴染との別れ……。人生の迷子になり、今は分からないかもしれない。だけど、あなたの道標はきっとある。
おすすめのポイント!
人生に行き詰まる若い女性たちの背中を、先人たちが優しい導きで押してゆく短編集です。長く生きているお婆ちゃんたちの言葉は深みがあり、自分の抱えている悩みがどれほどのものなのか、改めて考えさせられます。誰かに助けてもらいながらも一歩を踏み出すことで、いずれは誰かの支えになれる。別れは悲しいことばかりではなく、遺された人々に希望を与えることもある。人生に迷った人々にエールを贈るような共感必至の内容になっています。
誰かの心に種を撒く『粋』なひとになりたいと著者が言っているように、様々な「粋」なおばあちゃんが登場する5つの短編集。夫に浮気されたと言う孫のために、弱いくせに酒ばかり飲む父とスロットが趣味の母が恥ずかしくて彼を紹介できないと思っている孫のために、夫の浮気や暴言をじっとガマンする嫁のため…祖母は心から嫁や孫たちを思って策を練り、もしかしたら家族の問題を全て解決してから亡くなったのかも。明るくユーモアがあるばあちゃんの優しさに泣いた。
3月:青山美智子『お探し物は図書室まで』
あらすじ
仕事や人生に行き詰まる五人が訪れた、町の小さな図書室。不愛想だけど聞き上手な司書さんが、訪れた彼らの背中を思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で後押し。自分が本当に「探している物」が見つかるハートウォーミング小説。
おすすめのポイント!
年齢も抱えるものもバラバラな五人の登場人物たちは、どこにでもいそうな等身大のキャラクターです。そんな彼らが新たな本との出会い、本が生み出す“縁”や体験を通じて、生きることへの希望を見出す姿には、読み手側も励まされた気分になリます。将来の不安に苛まれ、自分を見失いがちになる現代社会の中で、自分にとっての「お探し物」とは何か考えさせられます。人生のモラトリアムから脱却できずモヤモヤした時、手に取ってみてはいかがでしょうか。
この作品は本の可能性を最大限に感じられる、本好きにとってのバイブルかもしれない。5人の登場人物はそれぞれ少し苦しさを抱えていて、特に本好きでもない。そんな状況を図書室と本が変えていく物語に思えるが、そうではない。自分なら選ばない本との出会いを通じて自分の置かれた状況を認識し、自ら変化をもたらす様子が丁寧に描かれているのだが、ある人物は詩の一節から、またある人物は装丁から気づきを得ているのだ。本の持つ価値が一面でないと示しつつ、我々の価値を肯定してくれる。そんな清々しい作品でした。
4月:西加奈子『くもをさがす』
あらすじ
これは、たったひとりの「あなた」への物語——。2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された西加奈子さんが、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。
おすすめのポイント!
ブクログ週間本ランキングで4週連続1位を獲得した注目作です。人気番組「アメトーーク!」で、ヒコロヒーさんが紹介したことでも話題になりました。本作ではカナダで乳がんが発覚した西さんが、その闘病期を赤裸々に明かしています。壮絶な闘病生活が描かれていると思いきや、ユーモラスに周囲の人々とのやりとりを描く西さんの力強さが感じられます。病気を通じて改めて自分の体と対峙し、生きることを諦めない西さんの姿に、誰もが励まされることでしょう。
すごくよかった。自分の気持ちに正直に思ったことを思ったままに記述している。異国で暮らし始めて間もなくがんに罹患してしまう。その治療に至り予後の自分の思いを率直に綴っている。私はがん患者ではないが、がん患者の家族なので、すごく身近に感じた。
5月:朝井リョウ『正欲』(新潮文庫)
あらすじ
不登校の息子がいる検事・啓喜。初めての恋に気づいた女子大生・八重子。一つの秘密を抱える契約社員・夏月。ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。その繋がりは、”多様性を尊重する時代”にはひどく不都合なものだった——。
おすすめのポイント!
「共感を呼ぶ傑作か?目を背けたくなる問題作か?」。朝井リョウさんデビュー10周年の意欲作です。2023年秋に稲垣吾郎さん、新垣結衣さん出演で映画化も決定しました。「正」しい「欲」とは何かを追求する本作は、読者の心を突き刺すメッセージ性があります。やたらに「多様性」を強要する現代において、本当の意味で「多様性」を理解できているのか考えさせられます。人との違いを恐れる若者たち、様々な人と触れ合う社会人に読んでほしい作品です。
多様性が大切とよくいうけど、自分が想像できないような欲を持つ人のことは確かにキチガイ扱いするよなぁと思いました。世間のマイノリティにさえ分類されない人たちは、マイノリティがマジョリティに見えるんだなぁと。世間一般的な性欲を持たない人の生きづらさを知り、考えさせられる本でした。
6月:町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中公文庫)
あらすじ
人生を家族に奪われてきた女性・貴瑚と、母親に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。裏切られ続けてきた彼らが出会う時、新たな物語が動き出す……。
おすすめのポイント!
他の鯨にも聞き取れない52Hzの周波数で鳴く「世界で一番孤独なクジラ」を元に、”誰にも気づかれない孤独な人々”を描いた本作。辛い境遇に置かれ、心に深い傷を負った登場人物たちが、それでも真っ直ぐに生きようとする姿に心揺さぶられる作品です。一人で生きようとしていた主人公の心の変化が、繊細かつ臨場感あふれる文章で描かれている点も見どころです。読む人の心に深い余韻を残す名作の一つと言えるでしょう。2024年春に映画化も決定しました。
自分自身の過去があったからこそ、愛に寄り添い、共に歩もうとできたんだなと思った。現実の世界にもSOSを出したいけど出せない人がいて、もしかしたら人生を終えてしまう人もいるんではないかと思うとゾッとしたけど、それが現実なんだなと実感した。人間の醜いところ、弱いところが描かれていて、リアリティがあると感じた。涙なしでは読めなかった良い作品。
ブクログユーザーさんが注目した2023年上半期のハイライト作品をご紹介しました!
気になる作品には出会えましたか?ぜひ読書生活の参考にしてくださいね!