辻村深月さん×住野よるさん〜感動・泣ける作家10選 前編〜

こんにちは、ブクログ通信です。

心に響く感動作や思わず涙がこぼれる号泣必至の作品は、何度も読み返したくなる名作が多いですよね。人気小説作家の名前を挙げればキリがありませんが、感動作・泣ける小説の名手となると、辻村深月さんと住野よるさん抜きには語れないでしょう。メディア化作品も多数の、今人気も注目度も高い作家2人です。

そこで今回は、感動作・泣ける小説をテーマに、辻村深月さんと住野よるさんの作品を前後編に分けて5作品ずつご紹介します。前編では、【映画版も大ヒット】【号泣必至の作品】【辻村深月作品で必読】の3テーマをお楽しみください!

辻村深月(つじむら みづき)さんの経歴を見る

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』など著書多数。 

「2021年 『闇祓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

【映画版も大ヒット!の作品】

辻村深月『ツナグ』生者と死者を「ツナグ」切なくも温かい物語

ツナグ (新潮文庫)
辻村深月『ツナグ (新潮文庫)
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あらすじ

冴えないOLの平瀬愛美は、ネットの情報をたどりにたどって、とある人物に行きついた。彼は「使者」だ。生者と死者が再会する機会をつくる者——「ツナグ」と呼ばれる存在。愛美には会いたい人がいるのだ。その人に会うために、回りくどいことをしたし、随分とお金も使った。愛美の前に現れたツナグの少年は、「死んでしまった人と愛美を会わせることができる」と断言するが——。

おすすめのポイント!

大人になるにつれて、誰にも「もう会えないけれど、もう一度会いたいあの人」という存在はいるのではないでしょうか。この作品では、そんな儚い願いを叶えてくれる存在「ツナグ」が登場します。映画版では『ROOKIES ―卒業―』の平川雄一朗監督のもと、主人公の渋谷歩美を松坂桃李さん、歩美の祖母を樹木希林さんが演じています。原作を踏襲しながらも、美しい映像やキャストたちの味わい深い演技でひと味ちがった作品世界を実現した映画版は、複数の映画賞を受賞する大ヒット作となりました。

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれる使者(ツナグ)。私がツナグに出会ったら、誰との再会を望むだろうか、逆に誰か私との再会を望んでくれる人がいるのだろうか。そんなことを考えながら読み進めました。けど”親友の心得”を読んだあたりから、たった一度の再会の機会が、必ずしもお互い気持ちのいい本当の最後の別れになるとは限らないよな…と思ってしまいました。人との別れは突然にやってくるものだから、なるべく後悔のないように大切な人には思いを伝えながら生きていきたいです。

あやみさんのレビュー

住野よる『君の膵臓をたべたい』青春のきらめきが詰めこまれた珠玉の1冊

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)
住野よる『君の膵臓をたべたい (双葉文庫)
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あらすじ

高校生の「僕」は、クラスでは目立たない地味な存在だ。誰もやりたがらない図書委員を1人でやっている。ある日、病院で忘れ物の本を拾った僕は、それがクラスメイトである桜良のものだと知る。本のタイトルは「共病文庫」。膵臓を患っている桜良の日記のようなものだった。その日から、学校の人気者である桜良と冴えない僕の交流が始まった……。

おすすめのポイント!

難病を患っている少女・桜良と、人と関わらないよう生きている「僕」の、心の交流を描いた物語です。タイトルからある結末が予期されるように、2人の未来には儚さがつきまといます。それでも1日1日を明るく普通に過ごす2人の姿に、心揺さぶられること必至。実写とアニメで映画化されており、実写版では浜辺美波さんと北村匠海さんが主演を務め、みずみずしく繊細な演技が感動を呼びました。実写映画版では原作にない未来の描写が登場し、原作ファンも新たな気持ちで楽しめる名作となっています。

映画にもアニメにもなって…そんなにいい話なのぉ?と変に勘繰って読むことを敬遠してた。バカでした。久しぶりに読みながら涙してしまった。名前のない僕と桜良の距離感だからこそ、お互いのことを深く考えられる。「好き」なんて言葉が軽く感じてしまうほど必要としあった二人。生きるって事は…読みながら涙しながら本当色々考えた。読んで良かった。

かみりこさんのレビュー

【号泣必至!の作品】

辻村深月『鏡の孤城』孤独を感じたとき読んでほしい、涙腺崩壊の幻想小説

かがみの孤城
辻村深月『かがみの孤城
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あらすじ

学校での居場所をなくし、不登校になってしまった少女・こころ。ある日、突然光り始めたた部屋の鏡を通り抜け、こころは不思議な建物に居た。まるで城のようなその場所には、こころと似た境遇の7人が集められていたのだった。9時から17時までという制限の中、願いを叶えるために隠された鍵を探すことになったこころたち。なぜこの7人なのか、なぜこの場所なのか。すべての謎が解けたとき、驚きと感動に包まれる——。

おすすめのポイント!

生きづらさを抱え、孤独を味わっている主人公のこころ。そんなこころと似た境遇の中学生7人が不思議な城で鍵を探すという、ミステリアスな出だしにグッと惹き込まれる物語です。こころたちが思春期ならではのさまざまな悩みにぶつかり、揺れる心模様が痛々しいほどにリアルに描き出されています。大人と子供のぶつかり合いや葛藤も描かれ、かつて子供だった読者は昔の自分を見ているような気持ちを感じさせるでしょう。徐々に明らかになる「謎」、そして意外な結末には、きっと涙をこらえきれなくなるはず。読む場所注意の傑作です。

それぞれの事情で心に傷を負った7人の中学生。行き場所を失くした彼女らに突如現れた鏡の中の世界。現代と幻想の世界を行き来しながら物語は進んでいく。少し心が痛むも温まるファンタジー。それぞれこの不思議な世界に呼ばれた理由。それぞれ抱える痛み。そして7人の真相。驚かされました。終盤の物語もまた心温まりますね。同じ年代の若い人たちはもちろん。僕のようなおじさんと呼ばれる世代にも心打たれる作品でした。

o.c.beats aka K.YOKOYAMAさんのレビュー

住野よる『また同じ夢を見ていた』1人の少女と1匹の猫が運ぶ、不思議な巡り合わせ

また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)
住野よる『また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)
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あらすじ

小学生の小柳奈ノ花は、とても賢い。賢いから、学校では先生の言いなりにならないし、学校に友達がいなくても困らないし、両親が家に居なくて寂しいなんて口にしない。そんな奈ノ花はある雨の日、河川敷で1匹の猫を見つけた。ケガをした彼女を助けたことで、奈ノ花は格好いい女性の「アバズレさん」や女子高生の「南さん」と出会い、さまざまな話をするようになって……。

おすすめのポイント!

賢いけれど頭でっかちな少女・奈ノ花と、不思議な縁でつながった女性たちの絆を描く物語です。奈ノ花をはじめ、本作に登場する女性たちはみな可愛らしさとカッコよさを兼ね備えています。しかし、複雑な過去を抱えてもいるのです。必ずしも恵まれているとは言えない環境で、自分らしく幸せに生きていこうとする彼女たちの姿にきっと魅了されてしまうはず。意外な結末を迎えたとき、きっとあなたの心にも深い感動と爽やかな希望が灯っていることでしょう。

本を読み進める中で、思わず「え?」と声が出てしまうくらい不思議でしたが、最後には伏線が回収されて、ほんわかした気持ちで読み終わることが出来ました。人生についての例えが秀逸で、自分なりの幸せについてもゆっくり考えていきたいと思います。何度も何度も読み直したい作品の一つ。何度読んでも見え方、解釈が変わってくると思う作品です。住野さんの本好きだなぁ。

読書初心者さんのレビュー

辻村深月『鍵のない夢を見る』第147回直木賞受賞作!人間の性を鋭く切り取った短編集

鍵のない夢を見る
辻村深月『鍵のない夢を見る
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あらすじ

ごく普通の町で暮らす、ごく普通の人々。犯罪の種はどこにでも眠っている。恋人がほしい、結婚したい、幸せになりたい——そんなありふれた願いを叶えたくて、偶然にも犯罪に遭遇してしまった5人の女性。ふと魔が差すその瞬間、彼女たちは奈落へと落ちてゆくのだった。平凡な女性たちが、何気ない瞬間に堕ちていく姿を鋭く切り取った短編集。

おすすめのポイント!

若者を中心に絶大な人気を誇る辻村深月さんですが、「白辻村」「黒辻村」という呼び方があることをご存じですか?爽やかな青春小説は「白」、ダークな作風を「黒」とし、どちらの作品も大変人気があります。本作は「黒」の中でも真っ黒な辻村作品で、ごく普通な女性5人が小さな願いを叶えるために、思いがけず犯罪に堕ちていく姿を描き出しました。人間の悲しい性、宿命ともいうべき部分を容赦なくさらけ出し、読者に衝撃を与える作品です。辻村さんの作品を読むなら、本作もぜひ読書リストに加えてみてはいかがでしょうか。

夢見ボーイと自意識過剰女の話が良かった。そうなんだよな、若いうちは大きなこと言う男が眩しいんだよな……側から見ると完全アウトなのに離れない女の心情がリアルでした

ktrmnさんのレビュー

前編では、辻村さん3作品、住野さん2作品をご紹介しました。どの作品も、多くの読者を魅了している上に泣ける・感動できる作品です。まだ読んだことがない人も、一度読んだという人も、改めてじっくりと読んでみてはいかがでしょうか?後編もお楽しみに!