辻村深月さん×住野よるさん〜感動・泣ける作家10選 後編〜

こんにちは、ブクログ通信です。

これまでに数多くの読者を感動と涙の渦に巻き込んできた辻村深月さんと住野よるさん。それぞれのおすすめ作品を、比較形式でご紹介しています。後編は、【特殊な能力を持った主人公の泣ける物語】【深い感動を味わえる恋愛長編】【住野よる作品で必読】の3テーマで、辻村さんと住野さんの作品の魅力に迫ります!ぜひ最後までお楽しみください。

住野よる(すみの よる)さん

高校時代より執筆活動を開始。デビュー作『君の膵臓をたべたい』がベストセラーとなり、2016年の本屋大賞第2位にランクイン。他の著書に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』『青くて痛くて脆い』『この気持ちもいつか忘れる』がある。香り箱が好き。

「2021年 『麦本三歩の好きなもの 第二集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

【特殊な能力を持った主人公の泣ける物語】

住野よる『よるのばけもの』少年少女が持つ二面性を鮮やかに描き出す、ほろ苦い物語

よるのばけもの
住野よる『よるのばけもの
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あらすじ

僕は、夜になると化け物に変身する。寝ていようが起きていようが、座っていようが、それは突然やって来る。ある日の深夜、僕は化け物の姿で学校に忍び込んだ。忘れ物を取りに行ったのだ。誰もいないはずの夜の教室。しかし、そこにはなぜかクラスメイトの矢野さつきがいた。その日から、僕と矢野さんは夜に1時間だけ一緒に過ごすようになるのだった。

おすすめのポイント!

閉塞的な学校、クラス内のいじめ、人には言えない秘密——中高生の頃に誰もが抱えていたような苦しさを思い出させる作品です。思春期の子供たちが持つ優しさや残酷さ、矛盾などを繊細に描き出す、住野さんならではの筆致が光ります。夜にだけ訪れる矢野さんと「僕」の2人だけの時間と、昼間のにぎやかな学校風景の対比がどうしようもなく切なく、心揺さぶられるはず。読後に深い余韻を残す作品です。

昼は普通の男の子なのですが、夜になると何故か化け物のような姿になり、夜の学校へ行くと、普段いじめられている子がいて、昼とは違う話をしたり、態度をとったりします。しかし、昼は話さない、むしろ、クラスの自分の立場を守るため、いじめを無視したり、逆にクラスメートに試されていじめのようなことをやったりします。どっちの彼が本当の彼なのか。その質問をぶつけられた時、彼はとても悩みます。そして、答えを出します。イジメって、見て見ぬふりしている人達が1番たちが悪いですね。

トッチさんのレビュー

辻村深月『ぼくのメジャースプーン』人の心の深い部分に問いかけてくる名作

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)
辻村深月『ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)
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あらすじ

小学4年生の「ぼく」には不思議な力がある。一定の条件を満たせば、一度だけ相手を「縛る」ことができるのだ。ある日、学校の飼育室のうさぎが惨殺される事件が起きた。うさぎをかわいがっていた幼馴染のふみちゃんは、ショックで口がきけなくなってしまう。「ぼく」は他の人にはない力を使って、犯人に罰を与えようと決意するが——。

おすすめのポイント!

罪と罰、愛と憎しみ、命の重さとは……そんな、人間にとって永遠のテーマともいえる問いかけを、読者に投げかけてくる作品です。大好きなふみちゃんのために犯人に対峙する「ぼく」の姿を通して、誰もが「正義とは何か」「命の重さはどれくらいか」と改めて考えずにはいられません。この物語のテーマは重く苦しいものですが、辻村さんならではの軽やかな文章がそれを感じさせないのはさすがです。先へ先へと読む手が進んでしまいます。結末に辿り着いたときには、きっと心に熱いものが満ちていることでしょう。

苦しい。誠実であり続けること、人は自分のためにしか泣けないのではないのかということへの向き合い。誰かに反省を促すことの難しさ、覚悟。人の悪意、自分のことは棚に上げられる自分勝手さ。何が正しいかなんて正解はないし変化し続ける中で、何を信じて、一番恥じない自分として、何を置くのか。それは自分の意志で選択するもの。エゴって、愛って、て、読了後もずっと泣いている

あず:脳みそ新世界さんのレビュー

【深い感動を味わえる恋愛長編】

住野よる『この気持ちもいつか忘れる』憧れの人に胸焦がれた中高生時代を思い出せる1冊

この気持ちもいつか忘れる
住野よる『この気持ちもいつか忘れる
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あらすじ

高校生のカヤは毎日を退屈に過ごしていた。16歳の誕生日が過ぎたある日、カヤは深夜のバス停でまばゆい光に遭遇する。爪と目しか見えないそれは、異世界の少女・チカだった。真夜中のチカとの出会いを重ねるうち、2人は互いの世界が不思議にシンクロしていることに気付く。そこで、2人はとある実験を始めるが——。

おすすめのポイント!

この作品では、主人公の少年時代と大人になった現在という、2つの時代を巧みに描き出しています。また、異世界の少女・チカの描写がかなり独創的な点にも注目です。カヤとチカの神秘的な交流シーンでは、誰もが思わずドキドキワクワクしてしまうはず。対して、カヤが大人になった時代では現実に向き合うほろ苦さや、時間の残酷さが鋭い筆致で描かれ胸に刺さります。住野さん初の恋愛長編なので、ぜひチェックしてみてください。

難しい。が、とても印象に残る一冊。前半のミステリアスな展開から一転、後半では苦いような切ないような、シリアス(現実的?)な描写になっていくところが印象的。回収されていない伏線が気になっているが(自分が気づいていないだけ?)、そこがこの本の良いところなのだろうか。

わしおさんのレビュー

辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』 思春期の不安定な気持ちを呼び覚ます青春小説

オーダーメイド殺人クラブ (集英社文庫)
辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ (集英社文庫)
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あらすじ

中学2年生の美少女・中村アンは、スクールカースト上位の「リア充」グループの1人だ。本当や死や猟奇的なものに興味があるが、誰にも知られないようにしている。些細なことで激変する友達関係に悩んでいるアンは、家にも学校にも絶望していた。ある日、アンはクラスの冴えない「昆虫系」男子・徳川にある依頼をする。自分自身を殺害してほしい、という依頼だ。アンの依頼はどんな結末を迎えるのか——。

おすすめのポイント!

「中二病」全開の作品で、読めば心揺さぶられること必至。家でも学校でも自分らしく居られず苦しむアンと、冴えないクラスメイトの男子・徳川の風変わりな友情が描かれています。読んでいるうちに自分の中学生時代を思い出し、懐かしいような、たまらないような、何とも言えない気持ちにさせられることでしょう。中学2年生という年頃を、辻村さんは痛々しいまでにリアルに描き出します。読み終わったとき、あなたの心もきっと震えているはずです。

2度目の読破。ほんま好き。中2の複雑な心情とか、アンの徳川が自分をみんなと違うものにしてくれるから大丈夫と奮い立つ気持ちとか、徳川の心の葛藤とか。ほんっまに好きな本。この二人の心の繋がりほど尊いものはないと思ってる。やっぱり究極に好きな物語。

しょーさんのレビュー

【住野よる作品を読むならまずはこちら!】

住野よる『青くて痛くて脆い』20代から絶大な支持を得ている感動作

青くて痛くて脆い
住野よる『青くて痛くて脆い
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あらすじ

田端楓は「人に不用意に近づきすぎない」が信条だ。大学1年の春、楓は秋好寿乃に出会う。空気の読めない発言をし、周囲から浮いている秋好。けれど、彼女は素直で純粋な少女なのだった。「みんなを幸せにしたい」という理想に燃える秋好に感化され、2人は「モアイ」という秘密結社を作り上げる。いつしか「モアイ」は強大な学生組織へと成長し、楓と秋好の心もすれ違い始めて——。

おすすめのポイント!

平凡でちょっと拗らせ気味の男子大学生・楓と、青臭くて周囲から「イタイ」と見られがちな女子大学生・秋好の、青春のひと時を描いた作品です。子供ではなく、かといって大人にもなりきれていない大学生という年代ならではの感情が、痛々しいまでにリアルに切り取られています。人間関係で生じる感情のうねり、心の機微、自分では抑制できない衝動といったものが細やかに描写され、思わず心を持って行かれるような感覚を味わえる作品です。「まさに青春」と唸らされる名作なので、ぜひ手に取ってみてください。

脱力感。。。誰にでも心の奥底に眠っていそうな体験をみごとに文字に起こしている。大学なのか、高校なのか、はたまた小学校なのか、それは個人の成熟度なのだろうが。読み応えもあったし、自分の黒歴史を振り返り、懺悔の気持ちもあり、これからの未来を丁寧に生きようと思えた一冊。

kazu09さんのレビュー

今回は感動・泣ける小説の大人気作家・辻村さん住野さんを比較してみました。比べてみることで、2つの作品世界の新たな魅力が浮かび上がりますよね。まだお2人の作品を読んだことがない方は、ぜひ両方合わせて手に取ってみてはいかがでしょうか?前編はこちら!