川上未映子さんおすすめ5選!~言葉の美しさに魅了される珠玉の名作選~

こんにちは、ブクログ通信です。

川上未映子さんは、2006年に自身のブログをまとめたエッセイ『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』を出版し、作家としての第一歩を踏み出しました。2007年に処女作『わたくし率 イン 歯ー、または世界』を刊行、2008年には『乳と卵』で第138回「芥川龍之介賞」を受賞し、作家としての地位を確立します。

2010年には、『ヘヴン』で 「芸術選奨文部科学大臣新人賞」と「紫式部文学賞」を受賞し注目を集めました。その後も、『愛の夢とか』で「谷崎潤一郎賞」、『夏物語』で「毎日出版文化賞」を受賞するなど、多くの文学賞を受賞しています。

ブクログから、そんな川上さんのおすすめ作品を5選紹介いたします。みずみずしい感性が光る印象的な作品ばかりです。ぜひこの機会にチェックしてみてくださいね!

『川上未映子(かわかみ みえこ)さんの経歴を見る』

川上未映子さんの作品一覧

1.川上未映子『乳と卵』芥川賞受賞作!「女の性(さが)」を見つめる衝撃的作品

乳と卵 (文春文庫)
川上未映子『乳と卵 (文春文庫)
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あらすじ

姉の巻子が大阪から上京してきた。娘の緑子も一緒だ。巻子はとある理由から、豊胸手術を受けることしか頭にない。一方、思春期真っただ中の緑子は言葉を発することを拒否しているため、コミュニケーションの手段は筆談だ。「私」は巻子や親子の会話を見て、心を痛めている。ある日、豊胸手術のカウンセリングを受けに行った巻子が帰ってこなかった。それをきっかけに、巻子と緑子の関係に変化が起こるが……。

おすすめのポイント!

「改行なし、読点によって区切られた延々と続く文体」という、独特な構成の作品です。芥川賞選考委員の池澤夏樹さんに絶賛され、読んだ人に強い衝撃を与えること間違いなしの1冊だといえます。最初のうちは独特な書き方に読み慣れないかもしれません。しかし、徐々に加速していくストーリー、個性的で味わい深い文章、意外な結末が待っているので、ぜひ最後まで読み進めてほしいと思います。読み終わったとき、深い余韻も味わえます。川上さんの作品を読んだことがない人にもおすすめです。

初めてこんなに女性目線での内側の心境に迫った小説を読んで、さいきん”女性であること、女性としての体を持っていること”の社会的な大変さや諸々を考えたりしてたけど、それでも後ろから殴られたような、どこまでいっても理解することはできないんじゃないかみたいな不安や罪悪感のドロっとした気持ちになった いろんな手段でもっていろんな人に共感したい

koshiさんのレビュー

2.川上未映子『春のこわいもの』コロナ禍の不安やおそれに向き合う意欲的短編集

春のこわいもの
川上未映子『春のこわいもの
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あらすじ

感染症が大流行する直前の東京で、6人の男女が体験する地獄めぐり。1人はギャラ飲み志願の女性、1人は深夜の学校に忍び込む高校生、そしてまた1人は寝たきりのベッドで人生を回顧する老女……。彼ら、彼女らの前で、世界は冷たく変貌していく。これが夢なら、目を覚ませば済むことなのに——。

おすすめのポイント!

コロナ禍初期が舞台の短編集です。誰もが不安だったあの時期を、川上さんならではの視点で描き出しています。本書では、感染症の大流行をきっかけに浮き彫りとなる、人間のさまざまな感情にフォーカスしている点が特徴です。例えば他者への嫉妬、非日常性への不安、変化する死生観などを、川上さんならではの美しい文章で描写しています。コロナ禍で多くの人が体験した、言葉にできないモヤモヤした不安や「こわさ」が、見事に言語化された作品です。どこか詩的で哲学的でさえある本書、ファンでなくても必読の1冊だといえます。

この短編集が描いているのは、コロナ禍のはじまり、2020年の春のこと。読んでいて、志村けんさんがコロナで亡くなられたことを思い出した。あの春は本当に辛い春だった。「春のこわいもの」ーコロナの最初期。昨日までの平和な世界は、どこへ消えてしまったのか?どこに逃げこめば良いのかわからず、何を信じればいいのかもわからない。今日をどう生き延びれば良いのか?先を見通せず、底知れぬ恐怖の日々。川上未映子さんの美しく流れる文章は相変わらず完璧で、読む人の胸を突き刺してくる。まるで鋭利なナイフのように。(中略)「ブルー・インク」は逆ギレで何もかもぶち壊したくなる男子高校生の心情が非常にリアルに描写されている。女性作家が書いたということにかなりの驚きを感じた。

punchmeさんのレビュー

3.川上未映子『ヘヴン』善悪の根源について問いかける著者初の長編小説

ヘヴン (講談社文庫)
川上未映子『ヘヴン (講談社文庫)
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あらすじ

14歳の「僕」は、斜視を理由にクラスの男子たちからいじめを受けている。日常的な暴力に耐え続けるある日、『わたしたちは仲間です』と書かれた手紙を受け取った。差出人は同じクラスの女子・コジマだった。彼女もまた、家が貧乏で身なりが不潔という理由で、クラスの女子からいじめられているのだ。それ以来、「僕」とコジマの秘密の通信が始まる。「僕」は次第にコジマの言葉を支えに感じ始めるが……。

おすすめのポイント!

本作は、「芸術選奨文部科学大臣新人賞」と「紫式部文学賞」をダブル受賞し、大きな話題となりました。この作品は中学生のいじめを扱っており、物語は決して明るいとはいえません。しかし、一度読むと定期的に読み返したくなる、不思議な引力を持つ作品です。大人になるほど「わかったふり」「理解したふり」をしてしまう人間の根源的な問題に、真っ向から切り込んだ作品でもあります。心にガツンと来る傑作なので、ぜひ手に取ってみてください。

脆くて不安定な思春期を描いた、痛々しくて生々しくて、哲学的な本だった。嫌なことからただ逃げるのではなく、つらくてどうしようもない、他に術がないのだとしたら、そこから逃げたっていい。自分の世界は自分で守らないといけない。壊れてしまう前に。壊してしまう前に。そして、自分を支えるもの、生きていく糧になるもの、軸になるものをゆっくりと見つけていけばいい。大人になった今だからそう思える。それを知らない子供達に少しでも伝わることを願って。

れいちぇるさんのレビュー

4.川上未映子『愛の夢とか』谷崎潤一郎賞受賞作!美しい文章が心を魅了する短編集

愛の夢とか (講談社文庫)
川上未映子『愛の夢とか (講談社文庫)
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あらすじ

アイスクリーム屋でアルバイトする「私」と、いつも同じメニューを頼む男性客とのつかの間の交流を描く「アイスクリーム熱」。大きな地震をきっかけに憂鬱な日々を過ごしていた女性が、ふとしたきっかけで隣家の女性と親交を深めていく「愛の夢とか」。なにげない日常の中できらめく時間を淡く切り取った7つの物語を収めた著者初の短編集。

おすすめのポイント!

7つの小説から成る短編集である本作は「谷崎潤一郎賞」を受賞しました。平凡な日常の中で一瞬だけ光り輝く、人と人との出会いやふとした感情の発露を、繊細に切り取っています。川上さんの文体はひらがなを多く使用しているため、柔らかでどこかあどけない雰囲気を醸し出すのが特徴です。本作では、そんな川上さんならではの文体が物語をよりひき立たせ、読んでいると登場人物の心にするりと入り込んだような気分になれます。大きな事件は起こらないのに、読後は静かな余韻が残る、美しい短編集です。

面白かった。「十三月怪談」がいちばん好きだったな。正常な判断ができていないのではと思わせる主人公の描写でも思考として逆にリアルに感じてしまうし、危うく見えて練られた文章なのだって分かる。すごいなあ。これでご自分では「技術が圧倒的に足りない」と思われてるんだもんな……(当時のどこかのインタビュー読みました)。もっともっと読みたいな。

しづきさんのレビュー

5.川上未映子『きみは赤ちゃん』笑って泣いて感動する!出産体験を描く異色エッセイ

きみは赤ちゃん (文春文庫)
川上未映子『きみは赤ちゃん (文春文庫)
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あらすじ

35歳で初めての出産を経験した川上さんの、妊娠判明から出産、初めての育児を赤裸々に描いたエッセイ。つわりやマタニティブルー、分娩時の苦しみや産後クライシスといったデリケートなシーンにも言及。妊娠・出産における己の身体と精神を、作家ならではの鋭い観察眼でユーモラスに描き出す。「きみに会えて本当にうれしい」——号泣して爆笑して、命の愛おしさを感じられる1冊。

おすすめのポイント!

川上さん自身の出産体験を記録した、感動必至のエッセイです。初めての妊娠・出産・子育てに戸惑う姿、悩む姿、翻弄される姿がリアルに描き出されています。子育て中の人にとっては共感必至で、出産経験のない人にとっては興味深い未知の世界を教えてくれる1冊として楽しめるはずです。特に注目すべきは、産後、子供へのあふれる愛情をつづった文章だといえます。読むだけで川上さんの愛情豊かな心が伝わってきて、心が温かくなる作品です。

めちゃくちゃ子育ての大変さが分かると同時に、作者の人間臭いところやユーモラスなところにめちゃくちゃ惹かれる作品。文章の表現方法が面白いし、飽きない。子供を持つことの素晴らしさを学んだ。この作家のファンになった。

りょすけさんのレビュー


川上さんの作品は、独特な言葉遣いとみずみずしく美しい文章が魅力です。初めて読む人には柔らかな感動を、2回目以上の人には心の奥に深く響く余韻を、きっと残してくれます。ぜひ手に取ってみてくださいね!