こんにちは、ブクログ通信です。
仕事や勉強のくりかえしで、毎日が単調に思えてしまうときには、SF小説の沼にハマってみてはいかがでしょうか。SFの世界は想像を超える刺激に満ちあふれています。
さて、SF小説のなかでも今回は、国内編と海外編に分け、合わせて10作をご紹介します。ディストピア的なものから、一周回って既視感を覚えるような作品まで。驚きの連続に、想像力が追いつかない!と思うような作品もあります。ドキドキを求めているみなさん、ぜひチェックしてみてください。
1.貴志祐介『新世界より』構想30年!世界は偽りに満ちている
あらすじ
1000年後の人類は、「呪力」と呼ばれる神の力を手にしていた。日本のある集落、豊かな自然に抱かれた神栖66町で、人々は平和な暮らしを送っている。その町は注連縄に囲まれ、外からの穢れの侵入を防いでいた。町で生まれ育った早季は、同級生と出かけた町外で、先史文明の遺構である「ミノシロモドキ」と遭遇する。隠された歴史を知ることとなった早季たちは、自分を取り巻く平和が、かりそめのものであることに気付き——。
おすすめのポイント!
ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』に由来する本作は、同曲をモチーフに描かれています。現代日本とまったく異なる価値観を持った登場人物たちや、存在しない生物に戸惑いを覚えるかもしれませんが、読み進めるうち、著者の構想力の凄まじさに圧倒されるでしょう。文庫では上・中・下の3巻構成となる長編ですが、ノンストップで読みたくなります。第29回「日本SF大賞」受賞作。2012年にはアニメ化も果たしました。
貴志祐介先生ならではの、すごく読みやすい描写。1000年後の世界。呪力という超能力を使える人間、人の真似事をするハダカデバネズミ。幼少期の人間達をキツく縛る禁忌。とにかく未知の世界観、想像の斜め上をいく物語に終始圧倒される。自分の想像力が試される。豊かであれば、小説を。乏しければ、アニメを観てほしい。私の大好きなアニメ、小説の内の1つなのは間違いない。
2.上田早夕里『華竜の宮』人類滅亡?!ダイナミックな世界観に引きこまれる!
あらすじ
時は25世紀。ホットプルームの活性化による海底隆起で、陸地のほとんどは水没していた。しぶとくも生き残った人類は、わずかな陸地に残り高度な情報社会を維持する陸上民と、人間由来の遺伝子を持つ生物船「魚舟」を駆って生活をする海上民とに分かれている。日本の政府外交官・青澄誠司は、苦い過去を持ちながらも、アジア海域での海上民との摩擦を解消するため交渉を始める。しかし、人類にはさらなる試練が待ち受けていた。
おすすめのポイント!
温暖化や気候変動が世界的な課題となっている今こそ読みたい作品です。人類とは何か、生きるとは何か、鋭い問いかけを感じさせられます。「SFが読みたい!2011年版」国内篇1位、第10回「センス・オブ・ジェンダー賞」大賞、第32回「日本SF大賞」受賞と、各賞を総なめにした本作。物語と割り切ることのできない現在を生きる私たちは、この作品を読むことで、自分がどう生きたいかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。
予想以上のハードSF。期待以上の面白さ。陸地の多くが水没した未来が舞台。陸上民と海上民の対立が進む。さらに近い将来に大規模な環境変動が予測され・・・。下巻でどのような結末を迎えるのか、楽しみで仕方がない。
3.小川一水『天冥の標 メニー・メニー・シープ』歴史の果てを見よ
あらすじ
西暦2803年、植民星「メニー・メニー・シープ」は入植300周年を迎えようとしていた。しかし、臨時総督・ユレイン三世は、発電炉不良を理由に度重なる配電制限や窒素統制を行っており、市民の間では革命の声があがっている。改造人類「海の一統」やアンドロイド集団などと協力しながら進む革命運動だが、とある医師の元に、街で謎の疫病が蔓延していると緊急の要請が入り―。全10巻計17冊に及ぶスペースオペラ、開幕。
おすすめのポイント!
10年以上をかけて書かれたこのシリーズは、2020年に第40回「日本SF大賞」、第51回「星雲賞」日本長編部門(小説)を受賞するなど、日本のSF界に大きな功績をもたらしています。重層的に練り込まれた構成で、開幕篇である本作からもう、謎と伏線が次々に投下されていきます。次作となる『天冥の標 2 救世群』ではパンデミックが描かれ、既視感を覚える内容となっています。完結した長編シリーズを読みたい方にもおすすめです。
SF。2803年。植民星メニー・メニー・シープ。各章ごとに中心人物が代わり、物語が広がりまくり。想像力が追いつかないぞ…。五章のアクリラたちの冒険は鳥肌モノでした。イサリ、クレヴ、カヨ、ベンクト…。人間以外のキャラクターが好きすぎる。早くも傑作の予感しかない。絶対にシリーズ全冊読むぞ!
4.野崎まど『know』「知っている」のは幸か不幸か
あらすじ
超情報化社会となった日本では、あまりの膨大な情報量に対し、人間の脳の脆弱性が課題となっていた。その課題を解決するため、人造の脳葉「電子葉」の移植が義務づけされることに。2081年、情報庁で働く御野連レルは、宇宙規模のネットワークシステムのなかに、行方不明となった恩師が14年前に書き残した暗号を見つける。連レルは、啓示の先に待っていた少女と出会い、世界が変わる四日間の始まりに立った。
おすすめのポイント!
電子葉が埋めこまれた人間は、「思う」と同時に「調べる」を脳内で行えるため、ネットに出ているすべての情報は、「知っている」こととなります。SFらしい着想に思えますが、手に持ったスマホですぐに検索をする現代人にも通ずるものがあるのかもしれません。「知る」ことは、安心にも成長にもつながりますが、一方で、「全知」であるとはどういうことか、考えながら読ませられる作品になっています。
全てを調べることができる世界線で知ることについてをテーマにした小説。この世の全てを知りたい知識欲と知識を使う側の存在とは考えさせられる。そして、知識欲の高い少女は恋愛も知りたいの一つでした。面白かったです。
5.柞刈湯葉『人間たちの話』科学と文学の超融合!こんなSFが読みたかった!
あらすじ
寒冷化が進み、雪と氷の世界と化した日本列島で、二人の青年はただひたすら南を目指す。その先には、「春の国」があると信じて……。(「冬の時代」)太陽系の片隅では、消化管のある者すべてを対象に、重油や機械繊維を材料にしたラーメンが作られていた。(「宇宙ラーメン重油味」)。ほか、「たのしい超監視社会」や表題作「人間たちの話」などを加えた6編を収録。SF界に舞い降りた奇才、初の短編集。
おすすめのポイント!
元生物学者の著者だからこその膨大な科学的知識と、人間の孤独や心の機微を描ききる文学的センスが爆発しているSF短編集です。どの作品も、世界がねじ曲がるようなユニークさがありながらも、一人ひとりの心に寄り添う繊細さを持ちあわせています。突飛な設定にもかかわらず物語にすんなり入りこめるのも魅力。また、稀有な才能と知識を持った著者の作品にハマった方には、増殖する横浜駅を描いた『横浜駅SF』もおすすめです。
飄々とした文章で実にSF短編集らしくてよかった。個人的には「楽しい超監視社会」が気に入りました。まったく荒唐無稽な設定のようで、それでいてリアルをゆるく反映している。そのうえでユーモラスに皮肉を交えてる。実にSFらしい。全部読んでから表紙を見ると、各キャラのイメージがわかって面白い。
柔軟な想像力だけでなく、物語として成立させるだけの構成力、文章力、すべてが揃って描きだされる圧巻のSF小説をご紹介しました。ぜひこの記事を参考に、気になった作品を手に取ってみてくださいね。
【海外編】もお楽しみに。