こんにちは、ブクログ通信です。
近藤史恵さんは、1993年に『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞し作家デビューしました。歌舞伎の研究をしていた経験を活かし、1994年発表の『ねむりねずみ』をはじめとする、歌舞伎をテーマにした作品を多く生み出しています。他にも、「整体師<合田力>」や「女清掃員探偵 キリコ」といったお仕事ミステリーシリーズも人気です。2008年には『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞を受賞し、ミステリ作家としての人気と地位を確立しました。
ブクログから、近藤さんのおすすめ作5選をご紹介します。心理描写の巧みさに定評があり、奥深い人間ドラマで多くの読者を虜にしている近藤さん。スリリングな展開と爽やかな余韻を残す名作たちを、ぜひ手に取ってみてください。
『近藤史恵(こんどう ふみえ)さんの経歴を見る』
1.近藤史恵『ときどき旅に出るカフェ』 世界を旅した気分になれるコージー・ミステリー

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あらすじ
37歳のOL・瑛子は、ある日自宅の近くで1軒のカフェを見つける。「カフェ・ルーズ」という名の小さなその店は、瑛子の元同僚・葛井円が経営していたのだった。カフェ・ルーズでは、円が国内外を旅して出会った美味しいものがメニューに取り入れられている。店を気に入った瑛子は、会社の後輩とその婚約者を連れていく。しかしその後、円は瑛子に意外なことを告げるのだった——。
おすすめのポイント!
小さいながらも個性的で居心地の良いカフェ・ルーズにもたらされる、ちょっとした「謎」と美味しいものを描いた短編集です。名前からは味も見た目も想像できない、海外の美味しいものがたくさん登場します。各話では、カフェにやって来るお客たちの、悲喜こもごもを軽やかな文章で描き出している本作。時に甘酸っぱく、時にほろ苦い、あと引く味わいの1冊に仕上がっています。読んだ後には爽やかな余韻が残り、素敵なカフェでひと時を過ごしたような気分になれますよ。
この本を読むと自分もカフェ•ルーズにいるような気持ちになり、旅をしたような気持ちになれる。その非日常が普段の淡々と過ぎる毎日を彩ってくれるような気がして、また明日も頑張ろうと思える。カフェを通した様々な人との繋がりから、誰もが抱えてる生きづらさを共感してもらったような気持ちになり、自分の中でうまく消化できるように助けてくれる。人間関係でストレスが溜まったとき、誰にも愚痴を言えない、言いたくないときそっと寄り添ってくれるような本。
2.近藤史恵『胡蝶殺し』 歌舞伎初心者も惹き込まれる、愛憎渦巻く人間ドラマ

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あらすじ
蘇芳屋を率いる歌舞伎役者の市川萩太郎は、花田屋の中村竜胆急逝により、その息子・秋司の後見人になった。萩太郎には秋司と同学年の息子・俊介がいるが、歌舞伎にはあまり興味がない。稽古を始めてみると、秋司は俊介よりも格段に踊りが上手く、歌舞伎に対する情熱も持っていた。そんな2人を見て、萩太はとある思いを抱くのだった……。
おすすめのポイント!
梨園を舞台にした、読み応えのある人間ドラマです。共に歌舞伎役者の子でありながら、対照的な少年2人の奇妙な縁とその行く末を描いています。作者の近藤さんは大学時代歌舞伎の研究をしていたということで、梨園の内情がリアルに、わかりやすく描写されているのが本作の特徴です。歌舞伎に詳しくない人も、本作を読み終わる頃には歌舞伎に興味が湧いてくることでしょう。思いもよらない運命に翻弄される2人の少年がどうなるのか、ハラハラドキドキの展開をお楽しみください。
一番ものを考えているのは、子どもかも知れない。真実が見えているのも。親として身につまされる。
3.近藤史恵『シャルロットの憂鬱』 犬好きにはたまらない!ライトなミステリー短編集

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あらすじ
元警察犬のシャルロットは、4歳のとき池上家にやって来た。池上夫婦は犬を飼うのは初めてだったが、穏やかな日常を過ごすうち、家族としての強い絆が生まれていく。シャルロットの散歩などを通して、犬同士、飼い主同士の連帯も深まるのだった。シャルロットと池上夫婦が出会った、何気ない日常に潜む小さな謎の数々を描く短編集。
おすすめのポイント!
とにかくシャルロットがかわいいので、犬好きの人はぜひ読んでほしい作品です。もちろん、「猫派」の人も楽しめます。シャルロットと池上夫妻の絆が深まっていく様子が、丁寧な心理描写と温かい視点から描かれており、心が温まる物語です。軽やかな読み心地のミステリー短編集なので、休日の読書やリラックスタイムにぜひ読んでみてください。シャルロットの仕草や表情が目に浮かんでくるような、いきいきとした描写も見どころです。読み終わったとき、犬を飼っていない人は「犬を飼いたい!」という衝動に駆られます。
めっちゃ良い!シャルロット可愛すぎる・・・賢いと思いきや、案外自分本位なとことか!笑。犬を通して、その角度から色んな問題に直面して解決していくのは新鮮。私も犬と暮らしたい・・・けど覚悟が出来ないw
4.近藤史恵『賢者はベンチで思索する』 年の差コンビが謎を解く!爽やか日常系ストーリー

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あらすじ
21歳の久里子は、専門学校を卒業したものの望むような就職先が見つからず、フリーターをしている。バイト先のファミレスによくやって来る国枝さんは、コーヒー1杯で何時間も粘る常連客だ。ある日、近所で毒入りの犬のエサがまかれる事件が連続して起きた。久里子の愛犬・アンも、毒入りのエサを誤って食べてしまう。犯人は一体誰なのか——。事件解決に乗り出したのは、なんとあの国枝さんで……。
おすすめのポイント!
フリーターの久里子と、謎多き老人・国枝が、日常の中で起こる「謎」を解き明かしていきます。最初はファミレスと店員と常連客というだけの関係だった2人が、ひょんなことから親しくなり、心を通わせていく様子が丁寧に描かれていきます。自分の理想とする生き方ができず葛藤する久里子の姿に、きっと誰もが共感できるはずです。そんな久里子を優しく導いてくれる国枝が、また魅力的に描かれてます。2人と一緒に謎解きしている気分になれる、爽やかな物語です。
びっくりするぐらいに久里子の考えているところに共感してしまった。どうありたいのか、どこにいきたいのか答えに迷っている感じに分かる、と頭を抱えたくなった。国枝さんはひたすらかっこいい。最後の落ちに驚いた。
5.近藤史恵『サクリファイス』 スポーツ×青春×ミステリー!一気読み必至の著者代表作

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あらすじ
陸上選手だった白石誓は、自転車競技に転向し、プロのロードレースチームに所属している。誓の使命は、エースのために尽くすことだ。仲間のために体を張り、捨て駒となってチームを勝利へと導くのだ。そんな誓は、ヨーロッパ遠征中とある悲劇に襲われる。かつての恋人との再会やライバルたちとの駆け引き、胸に刻印された死——。誓を待ち受ける運命とは……。
おすすめのポイント!
自転車ロードレースをテーマにしたスポーツ・ミステリーです。本作は大藪春彦賞を受賞しています。この作品のユニークな点は、主人公が「アシスト」に徹していることです。主役ではなくアシスト、だからこそ自転車ロードレースの奥深さと面白さが際立ちます。登場人物の心理描写も深く掘り下げられ、競技に掛ける男たちの情熱が力強く伝わってくる作品です。とある事件をきっかけに、物語はサスペンス色も強めていくので、先が気になり一気に読めてしまうことでしょう。爽やかかつビターな、異色のスポーツ小説です。
久々に一気読み。ロードレースのことは一つも知らないが、読み応え十分の作品。サクリファイスの意味、最後に大きく裏切られて読了!
近藤さんの作品は細やかで丁寧な心理描写と、予想を裏切る展開が魅力です。読み進めるほどに先が気になり、時間を忘れて読みふけってしまう名作が揃っています。ぜひ気になる作品を手に取ってみてくださいね!