窪美澄さん人気作5選!~心震える、不器用な「愛」の物語~

こんにちは、ブクログ通信です。

女流作家の窪美澄さんは、広告制作会社勤務、フリーランスの編集ライターを経て作家へと転身しました。2009年に「ミクマリ」で第8回「R-18文学賞」大賞を受賞し、デビューを果たした窪さん。2011年には『ふがいない僕は空を見た』で第24回「山本周五郎賞」受賞、第8回「本屋大賞」第2位を獲得しダブル受賞となりました。2018年以降、度々「直木賞」候補となってきた窪さんは、2022年7月に晴れて「直木賞」を受賞、名実ともに人気作家の地位を確立しています。

ブクログから、そんな窪さんのおすすめ作品を5選ご紹介します。窪さんの持ち味といえる温かな視点と和らかな文章を堪能できる、心震わす傑作選です。ぜひこの機会に、手に取ってみてくださいね。

『窪美澄(くぼ みすみ)さんの経歴を見る』

窪美澄さんの作品一覧

1.窪美澄『夜に星を放つ』直木賞受賞作!淡い希望が星のように輝く短編集

夜に星を放つ
窪美澄『夜に星を放つ
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あらすじ

一卵性双生児の妹を亡くした綾は、アボカドを育てていて、マッチングアプリで出会った麻生から連絡がないかをチェックするのが日課だ。麻生はフリーのプログラマーで、とても忙しい人だ。少しずつ縮まる綾と麻生の距離に比例するように、アボカドに根が生えて成長が見えてきた。ある日、そんな綾の元に妹の元恋人・村瀬から連絡がきて……(「真夜中のアボカド」)。ほか4編を収めた短編集。

おすすめのポイント!

大切な人を失った孤独を抱えながら、それでも人とのつながりを求める不器用な人々の姿を描いた短編集です。これまで幾度も直木賞候補に挙がった窪さんは、本作で晴れて直木賞作家となりました。コロナ禍を舞台にした作品も収録されており、現代日本のリアルな様子を描いた注目度の高い作品でもあります。コロナ禍で希薄になりつつある密度の濃い人間関係を欲しながらも、一歩踏み込めずにいる主人公たちの姿に、きっと多くの人が共感できるでしょう。読後には明るい希望を感じさせる作品ばかりなので、寝る前の1冊としてもおすすめです。

すでにひりひりと痛いのに、その痛みをそっとひと撫でして「痛みはある」とより自覚させるようなものすごい短編集とおもう。ただつらい現実を描いただけなら己の人生で事足りてしまい、小説など不要になる。そこから一歩進んで、目を開けて見えるものをみようとする者への手助けでもあると感じた。わたしたちの声なき悲鳴を著者は容赦なく拾い上げ描写するが、しかし窪美澄さんの小説では絶対に色眼鏡など感じない。ただ真っ直ぐな眼差しがあるだけ。その悲しみの寄り添いに泣き、どうしようとも滲み出る優しさに泣く。そうか、“真摯”とはこれか。

ハルノさんのレビュー

2.窪美澄『ふがいない僕は空を見た』強烈なインパクトと静かな感動を味わう

ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)
窪美澄『ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)
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あらすじ

高校2年生の斉藤卓巳は、イベントで知り合った主婦・里美と不倫している。放課後は里美の住むマンションでコスプレして愛し合い、快楽の日々を送っていた。同級生に告白されたことをきっかけに、卓巳は里美に別れを切り出す。ところが、後日偶然見かけた里美がベビー用品を見ていたことから、自分の子供ができたのではないかと動揺するのだった。一方、里美の行動を不審に思った夫・慶一郎は不倫の証拠をつかんでいた。

おすすめのポイント!

性の悦楽に溺れる男子高校生、姑との関係に疲れ果てた主婦、ヤングケアラーの高校生。家庭に複雑な事情を抱えた人々の、理性と本能のせめぎあう姿を描き出した連作短編集です。収録作の「ミクマリ」は第8回「R-18文学賞」を受賞し、本作としては第24回「山本周五郎賞」を受賞しました。過激な描写に驚く読者の方も多いかもしれませんが、ぜひ最後まで読み進めてみてください。性欲と衝動に隠れた人間の本質のようなものを、なんとなく愛おしく思えるようになるからです。俳優の永山絢斗さんが主演した映画も併せてご覧ください。

おもしろかった。あらすじ・作者のことはなにも知らずに読み始めたので官能小説…?!と病院の待合室で読み始めたことをちょっと後悔した。登場する人物みんな、烏滸がましいけど、助けてあげたい!!!と思ってしまった。どうか最悪にならないでと思いながら祈るようにぐんぐん読んでしまった。

部屋さんのレビュー

3.窪美澄『晴天の迷いクジラ』死を決めた人々が生きる勇気を見つける物語

晴天の迷いクジラ
窪美澄『晴天の迷いクジラ
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あらすじ

デザイン会社で働く由人は、年明け早々に祖母を亡くした。さらに恋人のミカを失い、勤め先も倒産してしまう。一方、デザイン会社の社長・野乃花は高三で出産するも、全てを捨てて上京し会社を興した。必死で盛り上げてきた会社が倒産し、死を決意する。女子高生の正子は、母親の過干渉に疲れ果て心が壊れかけていた。正子と由人、野乃花は、ひょんなことから入り江に迷い込んだクジラを見に行くことになるのだった。

おすすめのポイント!

問題を抱え、心身が追い詰められた3人の物語です。自分ではどうにもならない状況に追い込まれる苦しさ、死を決意する悲壮感が、淡々とした語り口で静かに描かれています。一度は「死」を覚悟した3人が、どのような結末を迎えるのかぜひご自身の目で確かめてください。人と人との出会いの不思議さ、大切に思う人がいる喜び、生きる希望といったものが、丁寧な感情描写で浮き彫りにされた作品です。本作は第3回「山田風太郎賞」受賞作でもあります。主人公3人と同じように、つらくしんどい状況にある人に、小さな勇気をくれる物語です。

登場人物がすごく近いところにいるように感じられた。ずっと読み続けていたかった。悲しく辛い出来事の方が多いけれど、そんな中で少しのいいことがありがたく身にしみて、人生捨てたもんじゃないなと思う。

ひとみんさんのレビュー

4.窪美澄『よるのふくらみ』ままならない恋愛感情を巧みな筆致で描き出す

よるのふくらみ (新潮文庫)
窪美澄『よるのふくらみ (新潮文庫)
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あらすじ

とある商店街で幼馴染として育った圭祐、裕太の兄弟とみひろ。圭祐とみひろは結婚を前提に同棲している。順調そのものに見える2人だが、実は長い間セックスレスであり、みひろは悩んでいた。みひろへの秘めた想いを断ち切れずにいた裕太は、2人がうまくいっていないことに気が付く。そんな中、みひろは裕太と衝動的に関係を持ってしまうのだった。

おすすめのポイント!

家族同然に育った幼馴染3人の恋模様と人間ドラマを描いた連作短編集です。「女性の性欲」に正面から向き合った意欲作でもあります。主人公のみひろを中心に、幼馴染の兄弟2人と3人を取り巻く人々の様子、商店街の素朴でありふれた日常が表情豊かに描き出され、臨場感を味わえる作品です。一言でいえば幼馴染3人の三角関係なのですが、三者三様の悩みや葛藤が丁寧に描かれ、良くも悪くも共感できてしまいます。等身大の大人の恋愛を楽しめる、切なくも心に響く物語です。

とにかく胸が詰まって仕方がなかった。どうにもならない悲しいことがある一方で、その裏にはそれぞれの幸せが待っているのかもしれません。

さわかめさんのレビュー

5.窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』家族の在り方を斬新な切り口で描く

水やりはいつも深夜だけど
窪美澄『水やりはいつも深夜だけど
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あらすじ

高級住宅地に暮らす5組の家族。共通点は、子供が同じ幼稚園だということ。セレブママとしてブログ投稿を続け、周囲の期待に応えようとする主婦。仕事に忙殺され、家庭から疎外されていく父親。死んだ妹と娘を重ね合わせ、娘の発達障害を疑う母親。出産を経て変わってしまった妻に戸惑い、若い女に傾く男。父が再婚し、新しい母と幼い「妹」にどう接したらいいか悩む女子高生。不器用ながらもひたむきに生きる人々を描いた短編集。

おすすめのポイント!

ありふれた日常の中で、悩みや葛藤を抱えつつもまっすぐに生きようともがく人々を描いた作品です。5つの家族が登場しますが、それぞれに「問題」を抱えており、複雑な心模様が丁寧に描写されています。本作の特徴は、どこにでもいそうなごく普通の家族の、いかにもありそうな悩みや葛藤、生きづらさをリアリティたっぷりに描いている点です。どの物語にも、きっと深い没入感を得られることでしょう。家族のあり方について今一度考えさせられる、とても印象深い作品です。

表紙に惹かれて。窪さん、読むのは初めてでした。なかなか良いです。最近、角田光代さんはダーク系になってきたし、江國香織もちょっと分からなくなってきたし。ゆるゆると続く日常のなかの、わずかな気持ちのゆらめき。大事件が起こるわけでもない。ただ、ちょっとした出来事を切り取った物語。これよー! 私はこういうのが好きなのよー!夫目線の話を読んだ後、自分の夫にちょこっとだけ優しくなれました。

くるりさんのレビュー


窪さんは、家族に対する楽しさ・愛おしさだけを描くのではなく、日常の中の一瞬をドラマチックに描き出す名手でもあります。ぜひこの機会に窪作品を手に取ってみてはいかがでしょうか?