こんにちは、ブクログ通信です。
小説を読んでいるとき、「このキャラクターを実写化するなら誰かな」とか「このシーンをアニメで見てみたい」なんて思ったことはありませんか?小説は活字ならではの豊かな表現と、想像の余地がある点が魅力です。しかし、面白い小説ほどドラマ化やアニメ化も見てみたくなりますよね。
そこで今回は、メディア化された感動小説のおすすめ作を、前後編合わせて10選ご紹介いたします!メディア化でさらに魅力を増した物語を楽しめる傑作選です。ぜひ手にとってみてくださいね。
1.大崎善生『聖の青春』難病を抱えながら将棋に人生を捧げた、ある天才の物語

ブクログでレビューを見る
あらすじ
5歳で腎臓の病気・ネフローゼを患った村山聖は、病室のベッドの上で将棋に出会う。常に死と隣り合わせの生活の中で、聖は将棋にのめりこんでいくのだった。やがて、聖は棋士となり名人を目指すことを決意する。森信雄七段に弟子入りし、大阪での同居生活を始めた聖だが、病状は少しずつ悪化していく……。
おすすめのポイント!
実在の棋士・村山聖の激動の人生を追ったノンフィクション小説です。作者の大崎善生さんは、大学卒業後に日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長も務めました。そんな大崎さんだからこそ見ることのできた聖の人物像や生き様が、無駄のない文章で鮮やかに描き出されています。2001年に藤原竜也さん主演でドラマ化、2016年に松山ケンイチさん主演で映画化されています。どちらも高い再現度とキャスト陣の素晴らしい演技が高く評価されており、ぜひ原作と併せてチェックしてほしい作品です。
彼の人生が決して綺麗に繕うことなく日常的に淡々と綴られているからこそ、将棋の世界で生きるということが、そして病と共に生きていかなければならなかった現実が彼にとっての当たり前であったのだと強く感じさせられた。「面白かった」と軽々しく言葉には出来ない。ただ、ひたすらに、彼の強い信念と人間味のある生き方に強く心が動かされた。将棋の知識が全くなかったけれど、一気に読み進めることが出来た。涙なしでは読めなかった。
2.有川浩『旅猫リポート』あたたかな感動が心に広がるロードムービー的小説

ブクログでレビューを見る
あらすじ
子どものころから引っ越しを繰り返してきたサトルには、猫のナナという相棒がいる。5年の月日を共に過ごしてきたが、ある日、サトルはナナを手放すことを決意するのだった。ナナの新しい飼い主を探すため、銀色のワゴンで旅に出るサトルとナナ。日本のあちこちに暮らす旧友のもとをめぐりながら、サトルとナナは一緒に居られる最後の旅を心に刻んでいく……。
おすすめのポイント!
猫好きの青年・サトルと元野良猫のナナの、深い絆を描いた物語です。とある事情でナナを手放さなくてはいけなくなったサトルと、一途にサトルを想うナナの愛情があたたかな筆致で描かれています。物語はナナの視点で描かれるのですが、ナナの言動や思考を通して猫になった気分も楽しめる作品です。2018年に福士蒼汰さん主演で映画化され、脚本を原作者の有川浩さんが担当したことでも話題を集めました。爽やかな感動作の映画版、好評を博した舞台版やラジオドラマなど、複数のメディアミックスを果たした人気作です。
泣けた…!猫と旅をするハートフルストーリーだと思ったのに、最後にまさかの展開。猫を飼ってる人なら、この気持ちきっと分かるはず。優しい人柄の宮脇くんと、ちょっと辛口ねこナナ。2人の温かな友情が、感動と共にジンワリ胸に沁みました。
3.小路幸也『娘の結婚』娘を想う父親の愛情に、心の奥底まで温かくなる

ブクログでレビューを見る
あらすじ
17年前、妻の佳実を事故で亡くした國枝孝彦は、以来男手一つで娘の実希を育ててきた。今年で26歳になる実希には、結婚を考えている人がいるという。相手は、幼馴染の古市真くんだ。実は、真くんの母親と佳実は折り合いが悪かったらしい。佳実と古市夫人との軋轢が気になる孝彦は、挨拶に来たいという真くんに会う決心がつかないのだった。
おすすめのポイント!
ファミリーストーリーに定評のある小路幸也さんが贈る、娘を思う父親の物語です。早くに妻を亡くし、大切に育ててきた一人娘が結婚を控えている、という父親の葛藤や感情の揺れが丁寧に描写されています。子どもがいる人は、深く感情移入して読んでしまうことでしょう。2018年にテレビドラマ化され、中井貴一さんと波留さんが父娘を演じました。中井さんの愛嬌のある父親姿や、波留さんとのテンポの良い掛け合いシーンが見どころです。ほっこりとあたたかな感動を味わいたいときに、ぜひ本作を手に取ってみてはいかがでしょうか?
娘の結婚が決まり、父親の寂しい心情を綴る…そんな予想をいい方に裏切られました。妻を早くに亡くし、男手1つで大事に育てた娘が彼氏を紹介したいと言う。相手は、妻がまだ存命だった時に住んでいたマンションのお隣さんの息子。幼馴染だ。結婚相手は申し分ないが、当時に聞かされた、彼の母親の良くない噂。彼の母親とは、実際にどんな人物なのか?この父親を案ずる友人、結婚相手、娘、様々な視点で描かれる。誰もが大事な人を思いやる、そして信頼しあう。そんな優しさや温かさがたくさん込められていました。こういう話、大好き。
4.朝井リョウ『チア男子!!』男子チアの魅力を存分に味わえる爽やかスポーツ小説

ブクログでレビューを見る
あらすじ
柔道一家の長男に生まれ、幼いころから柔道を続けてきた大学1年の晴希。晴希の親友で、認知症の祖母と暮らしている一馬。とあるきっかけでチアリ―ディングをやろうと思い立った2人は、男子チアチームの結成を目指すが……。人を応援することで主役になれるチアリーディング。そんなチアに青春をかける、個性的すぎる男子たちの汗と涙と笑いと感動の物語。
おすすめのポイント!
男子チアをテーマにした、明るく爽やかな青春小説です。チアというと、日本では女子のイメージが強いかと思います。しかし、ダイナミックかつアクロバティックなパフォーマンスが醍醐味の男子チアは、海外ではメジャーな存在です。本作では、そんな男子チアに情熱を傾ける個性豊かな男子大学生たちの姿を、みずみずしく切り取っています。アニメ、舞台、映画などにメディアミックスされており、映画版で主演を務めた横浜流星さんは本作で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しました。小説はもちろん、迫力ある映像化作品も必見です。
ザ!青春!!春希と一馬がそれぞれの思いから柔道部をやめ、男子チアリーディングチームを立ち上げるお話です。文章の端々に、朝井リョウの細やかで美しい表現が、青春を一層引き立たせていました。最後は涙が止まりませんでした!
5.よしもとばなな『デッドエンドの思い出』甘く切ない珠玉のラブストーリーを納めた短編集

ブクログでレビューを見る
あらすじ
実家のロールケーキ店を継ぎたくないという岩倉君と、実家の洋食屋を継ぐつもりでいる「私」は、バイト中に知り合った。気のいい岩倉君と話しているうち、「私」は兄のことを思い出す……(『幽霊の家』)。婚約者に手ひどく裏切られたミミは、下の階で働いている西山君に「幸せってどういう感じなの?」と聞いてみるが……(『デッドエンドの思い出』)。かけがえのない時間を切り取った4編のラブストーリーを収録。
おすすめのポイント!
数々の名作を生み出してきたよしもとばななさんが贈る、甘く切ないラブストーリー短編集です。どんなに悲しくつらい思いをしても、人はやがて再び歩き出せる、という強いメッセージが感じ取れます。言葉の1つ1つ、会話の1シーンずつが、素朴に描写されている点が特徴だといえるでしょう。何の変哲もない日々の尊さ、平凡なことのありがたさを、みずみずしい感性で表現しています。2019年に日韓共同作として映画化されました。作品の世界がどんな風に映像化されたのか、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
人の縁って、出会いって、いいなぁ。夫婦になれたとか、家族になれたとかじゃなくて、自分の心の中の宝箱にそっとしまってある温かいもの。温かさという目に見えないものを、うまーく表現して、ほろっとさせてくれる素敵な本でした。そういう想い出を、いつまでも大事にしたいです。
今回ご紹介した作品は小説として素晴らしいだけでなく、メディアミックス作品も高評価を得ています。文字で映像で、と何度も楽しめる名作たちなので、ぜひ手に取ってみてくださいね!
【後編】もお楽しみに。