宮部みゆきさん おすすめ10選・前編~ジャンルフリーに生み出される名作選~

こんにちは、ブクログ通信です。

『理由』で直木賞受賞後も、『模倣犯』や『ソロモンの偽証』など人気作を生み出しつづける宮部みゆきさん。ミステリだけでなく、ファンタジーや時代小説などジャンル問わず活躍されています。2021年には、「三島屋変調百物語」シリーズの最新作『魂手形 三島屋変調百物語七之続』が刊行されました。

多作な宮部さんの作品のなかから、前編ではデビュー作を含むさまざまなジャンルのものを、後編では時代小説をまとめました。短編から長編まで、どれも読みやすいものばかりですので、ぜひ気になったものから手に取ってみてくださいね。

『宮部みゆき(みやべ みゆき)さんの経歴を見る』

宮部みゆきさんの作品一覧

1.宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』宮部みゆきはここから始まった!デビュー作収録短編集

我らが隣人の犯罪 (文春文庫)
宮部みゆき『我らが隣人の犯罪 (文春文庫)
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あらすじ

中学一年生の誠は、両親と妹の四人家族で念願のタウンハウスへと引っ越した。しかし隣人が飼っている室内犬・ミリーはやたらとうるさく、その鳴き声に終日悩まされることに。平穏な暮らしのため、誠は妹・智子と、遊びに来た毅彦おじさんとともに、ミリー誘拐計画を遂行する。そこで彼らが見つけたものは——。(「我らが隣人の犯罪」)意外な結末、伏線の回収、引きこまれるストーリー展開に夢中になる、短編ほっこりミステリー。

おすすめのポイント!

宮部さんのデビュー作である「我らが隣人の犯罪」のほか、4編が収録された短編集です。短編ではありますが、1編1編の内容が濃く、満足度の高い作品になっています。なかでも、「サボテンの超能力」について研究したがる六年生の児童たちと教頭先生を描いた「サボテンの花」は味わい深く、テレビドラマ化や舞台作品にもなりました。宮部さんの本を何から読もうか悩んでいる方に、とくにおすすめの作品です。

宮部みゆきさんの推理短編、あっさり読んでほっこりできるから好き。この本の中では「サボテンの花」がすごく気に入った。教頭先生の信念とやさしさ、そしてそれをきちんと理解して教頭先生を想う子供たち。いい話だったなあ。

真波さんのレビュー

2.宮部みゆき『蒲生邸事件』事件は時空を超えて

蒲生邸事件 (文春文庫)
宮部みゆき『蒲生邸事件 (文春文庫)
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あらすじ

大学受験に失敗し、予備校受験のため上京した孝史は、2月26日未明、ホテル火災に遭遇してしまう。間一髪のところを同宿の男・平田に助けられるが、非難した先はなんと、昭和11年の2月26日だった。今まさに二・二六事件が起きようとしていた雪の東京。ホテルだったはずの場所は当時、蒲生憲之陸軍予備役大将の館であった。変えられぬ歴史と現代の狭間に立った孝史は、蒲生邸事件について独自の捜査を始める。

おすすめのポイント!

蒲生予備役大将の死にまつわる事件性を読み解くミステリと、タイムトリップを利用したSFをかけあわせた挑戦的な一作です。「歴史は変えられない」というタイムトリップの不文律のなかで、大胆なストーリー展開を見せてくれるところが魅力でしょう。1998年にはテレビドラマ化し、いしだ壱成さんが主人公・孝史を演じました。第18回日本SF大賞を受賞し、直木賞候補にも選ばれています。

10年ぶりくらいに再読。670ページ超の長編ながら、引き込まれて読むのが止められなくなり、長さを感じない。個人的には宮部氏の作品のTop3に入る面白さ。歴史への立ち向かい方も考えさせられる。最後の手紙の場面もいいです。文庫の新装版も出ているみたいだが、それよりこの表紙が良い。

immrmさんのレビュー

3.宮部みゆき『ICOー霧の城ー』手を握り、ともに走り出せ!

ICO-霧の城-(上) (講談社文庫)
宮部みゆき『ICO-霧の城-(上) (講談社文庫)
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あらすじ

数十年ぶりに生まれた角を持つ少年・イコは、「生贄(ニエ)」としての役目を果たす日まで村で大事に育てられ、そして時が来た。岸壁に囲まれた古城「霧の城」に連れられたイコは、石棺に幽閉される。しかし、ある不思議な力によりイコは石棺から脱出。無人と思われた城には、一人の少女が閉じこめられていた。手に手を取りあう二人は城から脱出することができるのか。宮部みゆきが自らオファーを持ちかけた初のノベライズ作品。

おすすめのポイント!

PS2用ゲームである原作「ICO」をプレイした宮部さんが、予定していた別作品の執筆を取りやめてまで切望したというノベライズ作品です。それでいて原作ゲームとは異なる展開を楽しむことができるので、原作を知っていても知らなくても楽しめるようになっています。イコが霧の城の支配を逃れられたのはなぜか、閉じこめられていた少女の正体は?そして二人は脱出できるのか。最後までドキドキが止まらない一作になっています。

ゲームを好きな人からすると賛否両論らしいけれど、私は楽しんで読めた。ゲームもしたけれど。まっすぐに健気に頑張るイコも好きだし、少女も必死なところがいい。読んでいるとその建物が目の前に広がるみたいに、楽しんだ。

あんこさんのレビュー

4.宮部みゆき『英雄の書』受け入れることは強くなること

英雄の書(上) (新潮文庫)
宮部みゆき『英雄の書(上) (新潮文庫)
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あらすじ

小学五年生の友理子の平和な暮らしは、兄・大樹が同級生を刺し殺し、失踪する事件を境に一変した。両親ともども疲弊する友理子だが、ある日、一冊の古書から声が聞こえる。その声は大樹の事件の真相に迫っていた。半信半疑の友理子は、しかしその声に導かれるまま「印を戴く者(オルキャスト)」となり、現実と空想の狭間を超えていく。友理子は大樹と再会できるのか。虚構へと転がり落ちる少女を追ったダークファンタジー。

おすすめのポイント!

「無名の地」「輪(サークル)」「印を戴く者」など、ファンタジーらしい世界間を構築するワードが頻出する一方で、現実に大樹が起こした事件など、取り返しのつかない罪についても深く斬りこんでいます。想像力と言語感覚に優れた宮部さんだからこそ書きあげられた本書は、物語の力で読者を圧倒してくれます。ガツンと心に来る作品を求めている方におすすめ。物語に振り落とされないよう、想像力を鍛えて読みたい一作です。

物語を擬人化し、それが物語を推進していくという構造なのかな。『悲嘆の門』を先に読んだのは痛恨だったけど、おかげで世界観は理解しやすかったかな。宮部さんのこの手合いの作品は大好きで、今回も楽しい時間を過ごせたかな。

hiro1548さんのレビュー

5.宮部みゆき『昨日がなければ明日もない』身勝手な女たちを切り取るハードボイルド短編集

昨日がなければ明日もない (文春文庫 み 17-15)
宮部みゆき『昨日がなければ明日もない (文春文庫 み 17-15)
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あらすじ

自殺未遂を起こした娘に会わせてもらえない。品の良いご婦人の依頼は娘夫婦の人間関係を暴き——。(「絶対零度」)成り行きで出席することになった結婚式は思わぬ事態に発展し―。(「華燭」)奔放なシングルマザーからの相談は、「子どもの命」がかかっており―。(「昨日がなければ明日もない」)ワケアリな女性たちを相手に私立探偵・杉村が奮闘する、表題作を含む三編からなる、杉村三郎シリーズ最新作。

おすすめのポイント!

2021年5月に文庫化したばかりの本書は、『名もなき毒』や『ソロモンの偽証』を含む、人気シリーズの最新作です。スッキリとした読み口ではありませんが、きれいごとでは済まされない社会の闇に、一条の光を差そうとする杉村の挑戦を見ていたいと思わせられます。シリーズ1作目である『誰かーsomebody』から順番に読むのもおすすめ。どっぷりと宮部さんの推理小説沼にハマりたい人には最適です。

やはり、宮部みゆきは現代小説がいい!「人間」を書かせたときに冴えた筆致を見せてくれることに感謝です。杉村三郎というキャラクターもますます味が出てきています。このシリーズは息長く描かれてほしいです。

kissarmy0814さんのレビュー

デビュー作から、短編から、時代ものからと、気になるものから手に取ってみてはいかがでしょうか。ジャンルに縛られず多くの作品を生み出す宮部さんの小説を、ぜひチェックしてみてくださいね。後編5作品もお楽しみに!