こんにちは、ブクログ通信です。
宮沢賢治は1896年、岩手県の稗貫郡花巻川口町(現花巻市豊沢町)に生まれました。学生時代から短歌や短編などの制作を行い、稗貫郡立稗貫農学校の教諭を務めていた頃、雑誌に『雪渡り』が掲載されます。生前発表した『心象スケツチ 春と修羅』や『注文の多い料理店』、没後発表された『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』など、多くの詩や童話作品を生み出しました。
ブクログから、そんな宮沢賢治のおすすめ作品を5選紹介いたします。幻想的でどこか懐かしい世界観を味わえる名作選です。リラックスタイムや休日の読書のお供に、ぜひ手に取ってみてください。
『宮沢賢治(みやざわ けんじ)の経歴を見る』
1.宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』 賢治の作品世界を堪能できる贅沢な童話集

ブクログでレビューを見る
あらすじ
少年ジョバンニは、北方へ漁に出たきり戻らない父を待ちながら、病気の母と暮らしている。生活は苦しく、級友たちにはからかわれ、孤独な日々を過ごしていた。祭りの夜、一人で夜空を眺めていたジョバンニは、気が付くと銀河鉄道に乗っていた。唯一心を許せる友人・カムパネルラも一緒だ。不思議な乗客たちとの出会いと別れを繰り返し、ジョバンニの旅は進んでいく。
おすすめのポイント!
言わずと知れた宮沢賢治の代表作を表題とした童話集です。宮沢賢治作品をまだ読んだことがない人には、とりあえずこの1冊をおすすめします。「オツベルと像」「セロ弾きのゴーシュ」など、有名作品が多数収録されています。また、「北守将軍と三人兄弟の医者」や「ビジテリアン大祭」といった名作も楽しめます。解説も面白いので、解説を読んだ後に再読する楽しみ方もおすすめです。宮沢賢治作の作品世界を余すことなく堪能したい人は、ぜひ本書をどうぞ!
孤独な少年ジョバンニが友人カムパネルラと銀河鉄道を旅する、言わずと知れた宮沢賢治の代表作のひとつ『銀河鉄道の夜』を表題とした宮沢賢治童話集。銀河鉄道からの美しい情景。この世ではない別の世界で、ジョバンニは不思議な出会いを数多くする。童話ならではの柔らかさをまとう夜の狭間で繰り広げられる、残る者と去る者の考え方。犠牲とは、幸福とは、命とは―何気ないやり取りの中にはさまざまなテーマが含まれている。読むたびに「生」に対し静かに、そして真摯に向き合いたくなる。決して手放しのハッピーエンドとはいえないけれど、不思議と温かい余韻が残る作品ばかり。表紙絵のように、宮沢賢治の作品には深い青色がよく似合う。
2.宮沢賢治『新編 宮沢賢治詩集』繰り返し読みたくなる、代表的な詩を集めた名作選

ブクログでレビューを見る
あらすじ
賢治の生前に唯一刊行された詩集『春と修羅』。その約70におよぶ詩作品に加えて、賢治の人生観が凝縮された詩「雨ニモ負ケズ」や歌曲などを多数収録した詩集。圧倒的な力量で描かれた、賢治の魂の訴えに触れることができる。中原中也や富永太郎などの詩人に強い影響を与えたとされる名詩集を掲載。
おすすめのポイント!
宮沢賢治の詩をたっぷり読みたい人におすすめの1冊です。生前に刊行し一定の評価を受けたとされる『春と修羅』や、妹・トシの死をきっかけに書かれた「永訣の朝」、原稿用紙に書かれていたとされる詩編などが収録されています。詩人としての賢治の力量と魅力を、存分に味わえる作品選です。童話とはまた違った、静謐で美しい世界観をぜひ味わってみてください。
以前から「告別」が好きで、もちろん、「雨ニモマケズ」も好きなんだけど。黙読か音読か悩みながらも、とりあえず気になったものを音読で読み返してみる。素晴らしい。やはり「告別」は自分の中で特別で、色あせない。
3.宮沢賢治『新編 風の又三郎』 ひとたび開けば鮮やかな幻想世界が広がる珠玉の1冊

ブクログでレビューを見る
あらすじ
「どっどど どどうど どどうど どどう」——ある風の強い日、谷川の岸の小さな小学校に転校生がやってきた。不思議な転校生をめぐって巻き起こる、子どもたちのざわめきを生き生きと描き出した表題作「風の又三郎」。「やまなし」「雁の童子」「祭の晩」を含む16編を収録した、珠玉の短編集。
おすすめのポイント!
神秘的な作風で今なお多くの人々を魅了する表題作のほか、コンパクトながらも読みごたえのある作品を取り揃えた作品集です。「風の又三郎」は度々映画化されているほか、アニメや舞台も制作されています。謎めいた転校生と、それを恐れながらも交流を深めていく子どもたちの様子が、山あいの自然豊かな風景と共にいきいきと描写された名作です。本書は表題作以外にも、誰もが一度は見聞きしたことのある有名作が多数収録されており、きっとお気に入りの作品が見つかる1冊です。
賢治の作品をちゃんと読むのは初めて。教科書でさわりの部分を知ったり、NHK教育番組で賢治の詩を題材にした映像を見たり。表題作も確かNHKで知ったはず。主に童話を集めた本書を読むと、岩手・花巻の言葉のゆったりした雰囲気や、賢治が使う擬音、オノマトペの面白さを楽しめる。
4.宮沢賢治『よだかの星』 美しい組み木絵と共に味わう、切なく悲しいよだかの物語

ブクログでレビューを見る
あらすじ
容姿がみにくい鳥・よだかは、ほかの鳥たちから疎まれ、さげすまれていた。本物の鷹からは特に嫌われ、いつも脅されている。ある日、嫌われ者の自分が平気で羽虫を食べていることに気づいたよだかは、このつらい世界を捨てようと決意した。一直線に空をかけのぼるよだかは、やがて青白く燃える星になったのだった。
おすすめのポイント!
周囲にうとまれ、誰とも打ち解けることのなかったよだかの孤独と悲しみを描いた作品です。よだかは純粋さゆえ、「他の命を奪って生きていることへの罪悪感」に耐えきれず悲しい結末を迎えました。しかし、どこか気高く美しいその姿に、共感し感情移入してしまう人は多いことでしょう。宮沢賢治の淡々とした文章が、よだかの孤独を引き立たせています。生きるとはどういうことかを、深く問いかけてくる作品だといえるでしょう。一度読んだら決して忘れられない感動作です。
よだかの星。超新星爆発をファンタジーで描いた作品。さすが賢治と思う。宇宙への捉え方に人間性や美しさが表現されている。挿絵によって、得られる印象も変わってくるので、いろいろ読み聞かせて、考えたこと、感じたことを交流したらいいと思う。私は、このイラストが結構好き。私も死を前に、雄々しく羽ばたきたいじゃないか。でも、病に立ち向かい生き残る道を選ぶべきだろうか。どちらにせよ、美しく輝く。
5.宮沢賢治『ポラーノの広場』 賢治の自伝的作品を楽しめる多彩な1冊

ブクログでレビューを見る
あらすじ
昔、モリーオ市の郊外の野原にはポラーノの広場があった。その広場では誰でも上手に歌うことができたという。博物局員のキューストはファゼーロ少年から、最近ポラーノの広場が復活したという話を聞く。興味を持ったキューストは探索を始めるが見つからない。ある日、ファゼーロ少年が広場を見つけ出したというニュースが町を駆けめぐるのだった——(「ポラーノの広場」)。表題作を含む童話17編を収録。
おすすめのポイント!
「ポラーノの広場」は、宮沢賢治の自伝的作品とされています。博物局員のキューストには賢治の生涯との共通点が多く見受けられ、賢治の分身だといわれているのです。作中では「モリーオ市」「トキーオ市」など、実在の地名を思わせる地名が登場します。幻想世界でありながら現実世界ともリンクする、不思議な世界観をお楽しみください。また、本書では「ポラーノの広場」以外にも「まなづるとダァリヤ」「ガドルフの百合」など、多彩な作品が収録されています。お話ごとに色合いを変える宮沢賢治の作品世界を、存分に堪能できる1冊です。
大人になってから読むことが多くなった宮沢賢治の短編~中編集です。子供時分には造語と難しい地名や表現がわからなくて何となく読んでいなかったのです。なんと美しい表現の数々だろう、と今はひとしきり感心しながら読んでおります。この間梅原さんの仏教の本を読んでいて、賢治が深い法華経信者で彼の童話はその精神に根ざして書かれている、とありそれでなるほど~と思うことが多々ありました。グスコーブドリの伝記なぞはまさにそういう仏教の教えなんだろうなあ、と思いました。
鉱石や星座、植物など、自然と密接に結び付いた宮沢賢治の作品世界。読むたびに心震わす名作ばかりです。賢治の希望や願いが詰まった色とりどりの物語を、ぜひお手元に揃えてみてはいかがでしょうか?