こんにちは、ブクログ通信です。
2022年9月10月は「十五夜(中秋の名月)」ですね。暑い日が続いていますが、こんな時こそ綺麗な月の下、読書で夕涼みしてみてはいかがでしょうか?
そこで今回は、十五夜にぴったりのタイトルに「月」のつくおすすめ小説をご紹介いたします!
気になった作品がありましたら、ぜひ本棚登録してみてくださいね。
1.望月麻衣『満月珈琲店の星詠み』(文春文庫)
あらすじ
満月の夜にだけ、あなたの前に現れる不思議な珈琲店があった。今日も優しい猫店主が、悩み疲れた人々を絶品のコーヒーと美しいスイーツ、そして占星術を使った「星詠み」でおもてなし。
おすすめのポイント!
イラストレーター・桜田千尋さんの幻想的なイラストと、『京都寺町三条のホームズ』の著者・望月麻衣さんの心温まる物語が楽しめる一作です。仕事や人間関係に悩む登場人物たちが、猫店主の営む珈琲店での一時と占星術に励まされ、新たな一歩を踏み出す姿にホロリと感情移入させられます。挿絵の猫たちのシルエットも可愛いらしく、ファンタジー好きの方にもおすすめの作品です。短編集のようにサラリと読めますので、シリーズ全3巻、ぜひ読破してみてくださいね。
短編集なので、さくさくと読めます。どこか今の状況に悩みがあったりもやもやしていたりする登場人物達が、不思議な満月珈琲店で占星術に導かれて前を向いていきます。すこし落ち込んだ時に満月珈琲店に私も行ってみたくなりました。きっと少し見方を変えれば、実は現状を切り抜く方法は意外と近くにあるのかな?なんて思います。お話はもちろん、巻頭にある素敵なスイーツのイラストは是非見て欲しいです。
2.佐藤正午『月の満ち欠け』
あらすじ
この7歳の娘が、今は亡き我が子?亡き妻?亡き恋人?一体この子は何者なのだろうか?「あたしは月のように死んで、生まれ変わる」——ある一人の女性の数奇なる愛の軌跡。
おすすめのポイント!
第157回「直木賞」を受賞した本作は、幾度と生まれ変わる女性の重く切ない「愛」の物語です。不可解な言葉を残して自殺した女性が、ある目的を成し遂げるまでの数奇な転生人生が描かれています。純粋な愛の物語でありながら、登場人物たちが抱く違和感や女性の執念深さはどこかホラーで、思わず身震いしてしまう、何とも不思議な魅力を持った作品です。2022年12月に大泉洋さん、有村架純さん、目黒蓮さん(Snow Man)など、豪華キャスト陣で映画化も決定しました。
あ〜、面白い小説を読んだー、という満足の読了感。途中から、登場人物達の関係や血の繋がり、年代を書き出して整理していかないと訳が分からなくなりそうでしたが、適宜会話などによる自然な形での説明が入るお陰で理解が補足され助かった。そんな構成も、読者の為にと計算されたものかと思える位、完成度の高さを感じさせられる。
3.伊与原新『月まで三キロ』
あらすじ
「月は一年に3.8センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、山奥へと誘う運転手。妻を亡くした男の営む食堂に通う女性客。彼女が小学生の娘に語った言葉の真意。科学のきらめきが、人の想いを結びつける——。
おすすめのポイント!
元地球惑星科学の研究者という異色の経歴を持つ、伊与原新さんの短編集です。第38回「新田次郎文学賞」を受賞した本作は、人生に喪失感を覚える登場人物たちが、科学の知識を持つ人々との出会いを通じ、心に些細な変化をもたらす姿が描かれています。伊与原さんならではの理学系の知識が散りばめられる本作ですが、穏やかな文調の中にさりげなく溶け込んでおり、理系でない方にも抵抗感なく読めてしまいます。何かに思い悩む人にかすかな光を照らす、優しい作品です。
初めての作家さんなので、どうかな〜と思っていたのですが、とても良かったです!!生きてくのってしんどいこともあるけれど、人との偶然の出会いが糸口になることもあるよね、と思わせてくれる。壮大な宇宙との絡みもなんだかロマンがあって素敵でした。他の作品も読んでみようと思います。
4.角田光代『紙の月』(ハルキ文庫)
あらすじ
「わかば銀行」の支店から一億円が横領された。容疑者は、41歳の梅澤梨花。梨花は25で結婚し専業主婦になるも、子供に恵まれなかった。それからパートで働き出した銀行で、真面目な勤務態度で契約社員になったが、ある日、顧客の孫で大学生の光太と出会って——?
おすすめのポイント!
第25回「柴田錬三郎賞」を受賞した本作は、宮沢りえさん主演で映画化もされました。平凡な専業主婦がある出来事をきっかけに、その人生を狂わせる様子を描いたヒューマンサスペンスです。正義感から犯罪に手を染める主人公が、次第に深みにはまり闇から抜け出せなくなる姿を、丁寧な心理描写でリアルに描き出した作品です。一見、ほっこりとする表紙とのギャップに驚かされることでしょう。じわじわと追い詰められる展開にゾクゾクし、読む手が止まらなくなります。
映画を観てからの読書。映画とはまた違う主人公、周囲の人達の気持ちが生なましい。人が秘めている気持ちの深さや闇にあきる事なくいっきに読めた。梨花はこの先どこにいくのか、自分らしく生きていけるのかもっと知りたい。
5.小田雅久仁『残月記』
あらすじ
近未来の日本、悪名高き独裁政治下。世を震撼させている感染症「月昂」に冒された男の宿命と、その傍らでひっそりと生きる女との一途な愛を描いた物語。「月」をモチーフにした異世界に足を踏み入れたら最後、もう現実には戻れない——。
おすすめのポイント!
2022年「本屋大賞」にノミネートした小田雅久仁さんの短編集です。本作では「月」をモチーフに、突如日常が豹変した主人公たちの恐怖と過酷な体験が描かれています。独創的なファンタジー要素と奇妙な世界観が見事に融合した、未知なる感覚のエンターテインメント作です。日常の中の非日常を映し出した本作ですが、その圧倒的な現実味と説得力は、小田さんの濃密な文体ならではのことでしょう。吸い込まれそうな幻想的な月の夜には、まさにぴったりの作品です。
三篇とも面白かったが、尻上がりに完成度が高くなっていった。特に最後の「残月記」の近未来感がリアルでゾクゾクした。コロナ禍と一党独裁政権に自発的に隷属しそうな現代の空気を小説の背景に据えているところ、小説はこうでなくっちゃ!現代の「誰か」を想像出来そうな下條拓という独裁者。現代に通じる恐ろしさだからこそ、ファンタジーなのにリアル。月昂というウイルスによる感染症はメタファーだ。こんな悲しい感染症を創作した作者の想像力と知性に感服した。
今回は、十五夜に読みたいタイトルに「月」のつく小説5選をご紹介しました!
気になる作品には出会えましたか?ぜひ読書生活の参考にしてくださいね。