こんにちは、ブクログ通信です。
森沢明夫さんは、大学卒業後出版社勤務やフリーライターを経て執筆活動を開始します。2006年に『ラストサムライ 片目のチャンピオン武田幸三』で第17回「ミズノスポーツライター賞」優秀賞を受賞し、2007年に『海を抱いたビー玉』で作家デビューを果たしました。
『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『あなたへ』など、数々の名作を生み出し続けている森沢さん。その作品は映画化をはじめとするメディアミックスが相次ぎ、国内のみならず海外でも高く評価されています。
ブクログから、そんな森沢さんのおすすめ作品を5選紹介いたします。心に傷を負っていたり、人知れず悩みを抱えていたりする人々の心の交流を描いた作品を集めました。癒し効果高めの作品選なので、休日の読書やリラックスタイムにおすすめです。
『森沢明夫(もりさわ あきお)さんの経歴を見る』
1.森沢明夫『虹の岬の喫茶店』小さな喫茶店で紡がれる心にしみる人間ドラマ

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あらすじ
小さな岬の先端に、1軒の喫茶店が佇んでいる。店を1人で切り盛りするのは初老の女性で、彼女は時折何かを待っているように海を眺めていた。店に引き寄せられるようにやってくるのは、心に傷を負った人々だ。女主人の言葉とおいしいコーヒーで、客たちの人生はそれぞれに大きく変化し始める。——疲れた心に染み入る、味わい深い連作短編集。
おすすめのポイント!
タイトルにもなっている喫茶店が、本作の一番の魅力です。実在の喫茶店がモデルだそうで、細部までリアリティがあり、文章描写だけでも居心地の良さが伝わってきます。物語では、暖かい人間ドラマにご注目ください。心に傷を負った人々が女性店主との交流を通して少しずつ変化していく様子が、丁寧かつぬくもりを感じる文章で描かれています。心が疲れたときに読むと、じんわり心がほぐれていく優しい短編集です。吉永小百合さん主演の映画も感動するので、併せてお楽しみください。
岬カフェ行ってみたい。そして自分に合う曲を悦子さんセレクトでかけてもらいたい。オレンジ色の中の虹も見てみたい。文章がキラキラと美しく、情景が目の前に拡がるよう。いい話だった。他の作品も読んでみたい。思いがけず好きなバンドのスピッツの曲がストーリーに登場してきて嬉しかった!
2.森沢明夫『おいしくて泣くとき』大切な人と食べる「ごはん」のおいしさ

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あらすじ
中学生の心也の家が経営する『大衆食堂かざま』は、貧困家庭の子供たちに無料で「こども飯」を提供している。心也は、時々「こども飯」を食べにくる幼馴染の夕花が気になっていた。夏のある日、学級新聞の編集委員を押し付けられたことから、心也と夕花の距離は縮まっていく。そんな中、2人はある事件に巻き込まれて……。
おすすめのポイント!
涙腺を刺激してくることの多い森沢作品の中でも、本作はハンカチ必須の作品です。中学生の心也と夕花の淡い恋模様を軸に、おいしい食事と優しい人々の物語が描かれています。本作では森沢さんの透明感のある文章で、中学生という多感な時期の揺れる心情が巧みに切り取られている点に注目です。読んでいるうちに、中学生の頃に感じたさまざまな感情がよみがえってきます。大人の世界に近づきつつある、それでいて社会的には無力な子供たちのやるせなさ、切なさ、ひたむきさが心揺さぶる作品です。
おいしくて泣ける、、小さい頃に味わったお昼ごはんや海辺で大切な人と食べたパンやおにぎり、大人になってからふとしたときに食べるなんでもない食事、そこに詰まった愛情を感じるとき、思わず泣ける。そして味わった愛情は忘れることなくその人の心に染み渡っていくものなのかもしれない。「おいしい」がつくる人の縁、かっこいい大人でいたいなと思わせてくれるいい本です、、
3.森沢明夫『エミリの小さな包丁』美しい港町でのかけがえのない夏を描く

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あらすじ
都会で働く25歳のエミリはとある出来事により、仕事もお金も恋人も、居る場所さえも失った。折り合いの悪い母には頼れない。そんなエミリに手をさしのべてくれたのは、10年以上連絡を取っていない母方の祖父だった。自然豊かな港町で、80歳の祖父・大三と過ごす日々が始まる。風鈴づくりに犬の散歩、釣り……寂れた田舎での暮らしになじめないエミリだったが、やがて小さな変化が生まれる。
おすすめのポイント!
本作を一言で表すなら「大人の夏休み」です。都会での暮らしで消耗し心に傷を負った主人公・エミリの姿に、自分を重ねる読者の方はきっと多いことでしょう。そんなエミリが、祖父と過ごす時間の中で変化していく様子が、美しい情景描写と共に描き出される作品です。港町ならではの暮らしぶりや食生活がじっくり描かれているので、ちょっとした旅気分も味わえます。そして何より本作の魅力は、祖父・大三というキャラクターです。誰もが懐かしさを覚える温かくて懐の深い存在である大三の魅力を、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
都会で傷つき母方の祖父の家に逃げてきた25歳のエミリが、おじいちゃんや周囲の人たちのやさしさに触れて、心の再生を描いた作品です。おじいちゃんの料理に癒され順調に回復かと思いきや、とある事で地元民に逃げてきた理由を知られてしまいます。そんな時、軽薄そうな心平がエミリを放っておかない。。「つらいときでも鼻歌を歌っていれば、世界は変えられなくても、気分を変えることなら出来るから」と。寡黙なおじいちゃんがぽつりぽつりと零す金言や、周囲の人たちの優しさが心に沁みます。また、エミリが素直に感謝する姿が、とても心地よくてほっこりしました。
4.森沢明夫『大事なことほど小声でささやく』悩みからスカッとしたい人へ!

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あらすじ
スナックひばりには名物ママがいる。身長2メートル超のマッチョなオカマ・ゴンママである。昼間はジムで身体を鍛え、夜は店でお客様を楽しませるのがゴンママの日常だ。ゴンママの店には、ジム仲間がよくやってくる。普段は下ネタトーク全開のゴンママだが、彼らが困っているときは特別なカクテルを作ってあげるのだった。もちろん、励ましの言葉も忘れない。明るく元気なゴンママだったが、ある日不安に襲われるのだった……。
おすすめのポイント!
読後は誰もが「スナックひばりに行ってみたい!」と強く思うに違いない、とても楽しい作品です。明るくパワフルなゴンママと個性豊かなジム仲間が集まるこの店は、とにかく魅力にあふれています。作中では、各話のテーマを象徴するカクテルが登場するのですが、どれもおいしそうで、お酒好きにはたまらない作品だといえるでしょう。お酒が飲めない人は、本作を読むことでほろ酔い気分を楽しめますよ。笑って泣けて、スカッと楽しい本を読みたいときにおすすめです!
スポーツジムを中心にし、ゴンママのお店に通うメンバー5人のストーリーがあった後、ゴンママが自分の言葉に救われる。カクテル言葉もいい感じ、なのだが、例えばブルームーンというカクテルは小説の中の意味合いのほかに「完全なる愛」というものもある。二面性があるのは人も一緒なのではないかと思う。この作品は「今を大切に生きよう」と言っているようだ。良き作品です
5.森沢明夫『本が紡いだ五つの奇跡』一冊の本がつなぐ素敵な奇跡の物語

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あらすじ
編集者の津山奈緒は、ヒット作を生み出せず悩んでいた。後輩はもうすでにヒット作を世に送り出しているというのに……。そんな中、奈緒が目を付けたのは小説家・涼元マサミだ。前担当者は有能すぎて大手出版社に引き抜かれていき、今涼元を担当する者はいない。奈緒は企画会議である提案をするが——。編集者、小説家、デザイナー、書店員、読者。1冊の本がつなぐ5人の奇跡の物語。
おすすめのポイント!
本好きにとって、「たった1冊の本が大きな影響力を持つ」ことは、実体験済みの事実かもしれません。本作は、そんな事実を改めて広く知らしめる一冊です。たかが本、されど本。一冊の本が誰かの人生を変えることだってある。そんな小さくて大きな事実を、森沢さんならではの温かな文章で綴った連作短編集です。5人の物語からなる本書は、全体で1つの長編小説としても楽しめる広がりのある作品に仕上がっています。読み終わったとき、心の底から幸せな気分になれる素敵な作品です。
一冊の本に関わる人たち‥‥編集者、小説家、デザイナー、書店員、そして読者。それぞれが抱えた事情と複雑な思い。一冊の本が持つ力を描く5つの連作短編。親の思い、子の思い、夫の気持ち、妻の気持ち、自分の立場で必ず誰かの心に寄り添いたくなる、そんな暖かくて、瑞々しい作品。デザイナー・青山哲也の章は泣けて泣けて。。森沢作品は初読みですが、もう少し読んでみたくなりました。
森沢さんの作品は、優しく温かな世界観と爽やかな読後感が魅力です。つらいとき、悲しいとき、そっと心に寄り添ってくれる名作が揃っています。まだ読んだことがない人は、ぜひチェックしてみてくださいね!