村田沙耶香さん作品おすすめ5選!~人生観を変える衝撃作~

こんにちは、ブクログ通信です。

千葉県出身の作家・エッセイストとして活躍する村田沙耶香さんは、2003年に『授乳』が「群像新人文学賞」優秀作となり、作家としてのキャリアをスタートさせました。2009年には『ギンイロノウタ』で第31回「野間文芸新人賞」を受賞します。同作をはじめ3つの作品で「三島由紀夫賞」候補となった後、2013年に『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回「三島由紀夫賞」を受賞しました。2016年には『コンビニ人間』が第155回「芥川龍之介賞」に選ばれ、人気作家としての地位を盤石なものとしています。

そんな村田さんの作品の中から、読者の人生観を変えてしまうと評判の作品を5つ紹介いたします。独自の死生観や倫理観で唯一無二の世界を紡ぎ出す村田さん。その一癖も二癖もある世界観を、ぜひ一度体験してみてください。

『村田沙耶香(むらた さやか)さんの経歴を見る』

村田沙耶香さんの作品一覧

1.村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』思春期の歪な感情とは

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)
村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)
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あらすじ

小学4年生の結佳は、クラスでは目立たない存在だ。女の子同士の複雑な友達関係を何とかやり過ごしている。ある日、習字教室で伊吹雄太という男の子と仲良くなった結佳。伊吹を「おもちゃ」にしたいという衝動が募ってゆき、ついにはキスをしてしまう。恋愛のような支配のような関係の中、2人は中学生になった……。女の子から少女へと変化する時間を巧みに描き取った静かな衝撃作。

おすすめのポイント!

2013年に第26回「三島由紀夫賞」を受賞した作品です。結佳という少女を軸に、思春期の少年少女の葛藤と成長を、リアリティ豊かに切り取っています。本書を読むと、誰もが自分の思春期、または小学生から中学生時代にかけての時期を思い出すことでしょう。初恋や複雑な人間関係、性の衝動など、思春期ならではのさまざまな感情を呼び覚ます作品です。結佳と共に思春期を疑似体験することで、これまで常識だと思っていた恋愛観ががらりと変わってしまうであろう小説となっています。

心も体も成長途中だからこその、容赦ないスクールカースト。きっと根っからのスターでもない限り、共感できる部分があると思います。わたしには「あぁわかる」「そうそうそれ」の連続でした。読み進めるうち、都合よく忘れていたあの頃の「自意識過剰な自分」を鮮明に思い出して少しモヤモヤ。昔の自分にいろいろ言ってやりたい。その当時に気付けていたら、もっと素直に過ごせたのかな。思春期独特の深い部分を描きつつ、それでいて妙にすがすがしい不思議な作品。村田沙耶香さんは、やっぱりすごい!

まなさんさんのレビュー

2.村田沙耶香『コンビニ人間』芥川賞受賞作!「普通とは何か」を問いかける

コンビニ人間 (文春文庫)
村田沙耶香『コンビニ人間 (文春文庫)
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あらすじ

古倉恵子は36歳にして未婚の彼氏なし、コンビニバイト歴は18年目だ。毎日コンビニ食を食べ、夢の中でもレジ打ちをしてしまうほど、日々の生活はコンビニに根差している。「店員」でさえいれば、世界の歯車になれる——。そんなある日、婚活目的の男・白羽がやってくる。白羽にコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられた恵子だったが……。

おすすめのポイント!

第155回「芥川賞受賞」作にして、村田さんの代表作として知られる1冊です。長年コンビニでバイトしてきた村田さんの経験が各所にちりばめられ、リアリティにあふれた作品となっています。本書は、周囲とうまく人間関係を築くことができない女性・恵子が、コンビニ店員であることで自分のアイデンティティを見つめ直す姿を描いた物語です。ときに苦悩し、ときに周囲との軋轢を生んでしまうその姿に、「普通とは何か?」と考えさせられます。恵子の物語を通して自分の生き方を振り返らずにいられない、心に響く名作です。

初めて読んだ村田沙耶香作品。コンビニのアルバイトであろうがなんであろうが、自分の居場所を見つけ、自分の活かされる場所があり、自分が満足しているのであれば、それが一番よいことである。周りにとやかく言われる筋合いなどない。とはいえ、多様性という言葉の裏側にある偏見と中傷はなくならない。ページ数は少ないのであっさり読むことができるが、なかなか浅くはない内容で良かった。そして、コンビニとコンビニ店員さんにちょっぴり愛着が湧きました。

shimejiさんのレビュー

3.村田沙耶香『信仰』村田さんの人生観・死生観を垣間見る短編集

信仰
村田沙耶香『信仰
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あらすじ

「原価いくら?」が口癖で、現実こそが正しいと固く信じている永岡。ある日、同級生からカルト商法を始めようともちかけられるが——(『信仰』)。65歳時点で生きている可能性が数値化され評価基準となった未来の日本で、生存率「C」となった私。野人になることを決意する——(『生存』)。エッセイと短編を組み合わせた、新感覚短編集。

おすすめのポイント!

SF要素の強い短編集とエッセイを集めた一冊です。8篇が収録されており宗教、人生、死といった普遍的なテーマをベースに、村田さん独自の死生観や人生観を垣間見ることができます。本作のユニークな点は、短編小説の合間にエッセイ作品が挟まれていることでしょう。村田さんならではの浮遊感ある物語の続きと思って読んでいると、不意に現実に引き戻される衝撃を味わうことができます。小説やエッセイの巧みさはもちろん、作品収録順さえも緻密に計算されているインパクトのある作品です。

村田さんでこのタイトル。このテーマをどんな風に料理するんだろうか、と読む前からワクワクしてました。表題作は期待を裏切らず村田ワールドが炸裂してました。相変わらず「ぶっ飛んで」ます。面白かったです。

たかしさんのレビュー

4.『殺人出産』少子化社会の残酷な「if」を描く、切れ味鋭い中編集

殺人出産 (講談社文庫)
村田沙耶香『殺人出産 (講談社文庫)
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あらすじ

人口が急激に減少していく世界。会社員の育子には、「産み人」となった姉がいる。「産み人」は命を作る存在として崇められていた。「殺人出生制度」により、「産み人」となり10人産めば1人殺してもいいことになっている。ある夏、姉の10人目の出産が迫っていた。人々の称賛を浴びる「産み人」に対し、複雑な感情を抱く育子。実は彼女には人には言えない秘密があるのだった……。表題作他3篇を含む中編集。

おすすめのポイント!

2014年に第14回「センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞」を受賞した本作は、結婚や出産に対する概念をぐるりと覆してしまうような衝撃作です。人類滅亡を防ぐため、条件付きで殺人が正当化された世界を舞台に、読者が持つ「正しさ」や「正義」に真っ向から挑む作品だといえます。かなり非現実的な物語であるにも関わらず、どこかリアリティもあり、「もしかしたら」と思わせる不気味さがある作品です。女性はもちろん、男性の方もぜひ読んでみてください。

正に世にも奇妙な物語のお話です。非現実的な設定なのに、これは近い将来起こりうるんじゃないの!?という錯覚に陥りそうな不思議な空気が漂っている作品です。表題作の殺人出産は、特に生々しいしい表現が使われており、それが村田さんワールドなのですがゾワゾワが止まりませんでしたね。今の常識は将来は非常識?常識ってなんだろう?とにかく常識を覆す話です。

yuko6010さんのレビュー

5.村田沙耶香『生命式』生と死について考えさせる挑戦的な作品

生命式
村田沙耶香『生命式
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あらすじ

「生命式」——それは、亡くなった人を食べて供養する儀式。生命式の席でお互い気に入った男女は、新しい命を生む……(「生命式」)。死んだ人間の骨や皮が家具やアクセサリーに使われる世界。そこでは人間を素材に使ったものこそ、最も価値が高いとされていた(「素敵な素材」)。表題作を含む12の中小篇を収めた作品集。

おすすめのポイント!

死者を食べて次の命へとつなぐ世界や、死者を素材として利用する世界など、村田さんの圧倒的筆致で描かれる狂気に満ちた物語が12篇収められた一冊です。現代を生きる私たちがいつの間にか身に着けている「命の大切さ」について、今一度考えさせられます。本書では悪夢のような舞台設定の物語がいくつもあり、グロテスクな描写もあるため、読み進めるのが難しいかもしれません。しかし、最後まで読んだとき、きっと読む前の自分とはどこか違う新しい自分に生まれ変わっていることでしょう。

今までに読んだことのないタイプの短編集で凄く引き込まれました。どの短編も面白かったですが、やはり1番印象に残ったのは「生命式」です。狂ってるし気持ち悪いし意味が分からないけれど、でも不思議と「今の自分の常識も未来や過去の誰かから見たら狂っているのか…?となると今読んでいるこの世界はなんだ…?」という気持ちになるのが面白かったです。個人的にはこの本のイメージにぴったりな芸術作品が表紙を飾っているのも好きなポイントでした。手に取ってよかったと思える作品でした。

kyometicaさんのレビュー


村田さんの作品は、SF要素ありヒューマンドラマあり、多様な側面が魅力のものばかりです。平凡な毎日を一瞬で変えてしまう衝撃作が揃っていますので、ぜひこの機会に手に取ってみてください。