音楽の世界に浸れる青春小説5選~本を開けば旋律が聴こえる~

こんにちは、ブクログ通信です。

とある研究によると、人は14歳頃に聞いた音楽によって、大人になったときの音楽の好みが形成されるというデータが出ているそうです。「音楽を通じて青春時代を思い出す」という経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。そこで今回は、音楽青春がテーマの小説をご紹介します。

ブクログのみなさんから人気の作品、メディアミックスされた話題の作品、音楽好きを唸らせる作品から、選りすぐりの小説たちを集めました。きらめく青春の日々と、思わず体が動いてしまうような音楽の魅力、どちらも見事に描き出した傑作選です。ぜひ、読書リストに加えてみてくださいね。

1.森絵都『アーモンド入りチョコレートのワルツ』 懐かしい気持を呼び覚ます、宝物のような短編集

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)
森絵都『アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)
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あらすじ

中学生の「私」と君絵は、絹子先生のピアノ教室に通っている。「私」も君絵も、絹子先生が大好きだ。ある日、レッスン中に突然見知らぬ外国人が現れた。フランスから来たという「サティのおじさん」だ。彼は絹子先生と親しげで、風変わりで、ワルツが大好きだった——(『アーモンド入りチョコレートのワルツ』)。表題作ほか2編を含む短編集。

おすすめのポイント!

『カラフル』や『DIVE!!』で知られる森絵都さんの、音楽をテーマにした短編集です。本作は、第20回「路傍の石文学賞」を受賞しました。三つのクラシック曲が、そのまま各物語の題名になっているのが特徴です。少年時代最後の夏を過ごす子供たち、旧校舎の音楽室で知り合った少年と少女、ピアノ教室で過ごしたひと時を思い出す少女。3話とも、思春期の心揺れる子供たちを軸に物語が展開してゆきます。二度と戻ることはできないきらめく時間を、クラシック曲の優しい調べに乗せて文字に閉じ込めた短編集です。

森絵都さんの作品一覧

3つの短編ともピアノ楽曲がふわっと絡んでくる。子どもの頃、ずっとピアノを習ってたのもあってクラッシック音楽が身近にあったけど、作曲者名とは繋がってなかった。改めて検索して…あぁ!この曲が!なんて思えて、とても楽しかった。BGMにそれぞれのテーマ楽曲をかけて読むと、主人公が子どもなだけに、私自身の子ども時代を色々思い出した。森絵都さんや中山七里さんとか…クラッシック楽曲を言葉で表現出来るなんてほんと天才!

かみりこさんのレビュー

2.風野潮『ビート・キッズ』 笑って、泣いて、音楽って楽しい!と思える爽快青春小説

ビート・キッズ-Beat Kids
風野潮『ビート・キッズ-Beat Kids
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あらすじ

中学生の横山英二は、体の弱い母と飲んだくれの父を持つ、貧乏中学生だ。アホで運動神経は悪いけど、結構男前でもある。そんな英二は、転校先の中学で超美形で憎たらしい性格の菅野七生と出会った。七生に無理やり引っ張り込まれた吹奏楽部で、大太鼓を担当することになった英二。最初は渋々だったものの、すぐに太鼓を叩く楽しさに魅了されるのだった。気に食わなかった七生とも、徐々に友情が芽生えて……。

おすすめのポイント!

大阪弁で書かれた文章が楽しく、「音楽やりたい!」と思わせる爽快な物語です。貧乏ゆえに多くのことを諦めていた英二が、七生との出会いを通して、心も体も成長してゆく様子が生き生きと描かれています。音楽の楽しさ、素晴らしさ、友情の温かさなど、英二を取り巻く日常を爽やかに切り取った作品です。クライマックスの演奏シーンは感動必至!大人にも子供にも読んでほしい名作だと言えます。本作は、「講談社児童文学新人賞」、「野間児童文芸新人賞」など多くの児童文学の新人賞を受賞しました。

風野潮さんの作品一覧

吹奏楽部のパーカッションのお話。自分もパーカスやってた頃に、図書館で見つけて読みました。とても共感できる部分が多くて、しかも関西弁で描かれているから親近感も湧きました。全くタイプの違う2人の男の子が、パーカスを通じて仲良くなっていく、とても心温まるお話です。

凛子さんのレビュー

3.津村記久子『ミュージック・ブレス・ユー!!』 音楽を愛する高校生たちの、等身大の日々を描く

ミュージック・ブレス・ユー!! (角川文庫)
津村記久子『ミュージック・ブレス・ユー!! (角川文庫)
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あらすじ

高校三年生のアザミは、赤い髪とメガネ、カラフルな歯列矯正器具がトレードマークの少女だ。パンクロックにのめり込んでいるアザミは、所属するガールズバンド解散の危機に面していた。周囲の女の子が進路や恋愛に悩む中、アザミだけは常に音楽のことを考えている。スクールカーストでは底辺すれすれ、成績はイマイチ、進路も決まらない。そんなアザミの、音楽と過ごす日々を等身大で描き出す長編小説。

おすすめのポイント!

音楽が好きだけれど、周囲からやや浮いているアザミの姿に、愛おしさを感じられる作品です。自分の好きな物が周囲に理解してもらえない、自分らしく居ようとすると周囲から浮いてしまう……そんな経験がある人は、ぜひ本作を手に取ってみてください。音楽が好きという気持ちを貫くアザミのもどかしくも純粋な姿に、共感や懐かしさを感じるはずです。アザミが聞いている音楽として、実在の洋楽アーティストや曲が多数登場する点にも注目してみてください。曲を聞きながら本作を読むと、より作品世界を身近に感じられますよ。

津村記久子さんの作品一覧

主人公アザミと同じように音楽を聞いていた頃のことを思い出した。ブログでの出会いとか 音楽について語ることとか。アザミの友達のチユキの 許せないことに対する行動は、妄想はすれど現実には出来ない。あぶなっかしいけど 羨ましい。アザミが友人とのこの時間がなくなっていくのを心配するように、こういう時代の気持ちはいつの間にか薄れていくけど、じぶんの中に核としてある。ということを、あの頃を思い出すことによって改めて感じた。

天さんのレビュー

4.原田マハ『永遠をさがしに』 チェロの調べが聞こえてくるような、清らかな感動作

永遠をさがしに (河出文庫)
原田マハ『永遠をさがしに (河出文庫)
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あらすじ

女子高生の和音は音楽一家に生まれた。両親は幼い頃に離婚し、今は父と二人暮らしだ。穏やかに暮らしていたある日、父のボストン交響楽団着任が決まった。和音は一人で日本に残ることを決める。そんな和音のもとに、突然フリーの音楽ライター・真弓がやって来た。元チェリストだという彼女は、和音の「新しい母」だと名乗り、和音と同居を始める。戸惑う和音だったが、やがて真弓の抱える秘密が明らかになって——。

おすすめのポイント!

音楽を中心に紡がれる、さまざまな愛の形を描いた物語です。家族愛や人間愛を描く名手として知られる原田マハさんの、温かい筆致に惹き込まれます。母親が家を出てしまい、父と二人で過ごしてきた和音の寂しさ。突然現れた新しい母への反発。好きだったチェロに対する葛藤。高校生の和音が抱える複雑で割り切れない感情を丁寧に描写する文章に、きっと誰もが心揺さぶられるはずです。音楽が人に与える影響の強さを改めて思い知らされる感動作となっています。

原田マハさんの作品一覧

久々に感情を揺すぶられたくなって原田マハを選んだ。大正解だった。物語半ばで涙をこぼし、そこからは涙腺が緩みっぱなし。それでも、ガツン系の物語が多いマハさんにしては多少緩やかで、まるでアリアの調べのような優しさが溢れていた。真弓と時依、和音が時折重なるように見える物語は、とても細やかで儚げで、どこか頼りない感じもするのだが、やはりマハさんの書く女性は誰もが強い。今回は男性陣がしっかりと脇役に徹していてくれたおかげで最後まで期待通り。感動の涙を流しながらもしっかりと勇気をもらって、読後感は期待以上のスッキリだった。

猫侍さんのレビュー

5.藤谷治『船に乗れ!』 音楽家を志す若者たちの、挫折と青春を描く長編シリーズ第1作

船に乗れ!〈1〉合奏と協奏
藤谷治『船に乗れ!〈1〉合奏と協奏
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あらすじ

音楽一族の中であまり才能に恵まれなかった津島サトルは、祖父の勧めでチェリストを目指すことにした。高校受験では名門の「芸高」を目指すものの、あえなく失敗。不本意ながらも進んだ新生学園大学附属高校音楽科で、フルート専攻の伊藤慧やヴァイオリン専攻の南枝里子らと出会う。夏休みの合宿、初舞台、トリオ演奏……サトルの高校生活は、慌ただしく過ぎてゆく。

おすすめのポイント!

主人公・サトルの成長ぶりがまぶしい青春小説です。高校の音楽科という、一般的な高校生とは少し違う日々を疑似体験できる楽しさも魅力となっています。作者・藤谷治さんの自伝的小説でもあり、細かなところまでリアリティがある作品です。自分の才能を疑わなかった幼少期から、徐々に自分の限界に気づかされる思春期にかけての描写は、音楽に限らず誰もが共感できるシーンだと言えるでしょう。サトルのその後が描かれている、続編2冊もおすすめです。

藤谷治さんの作品一覧

あぁこんな気持ちあったなぁって甘酸っぱい気持ちになる青春小説。自分では恥ずかしくて逃げだしたくなることばかり覚えてるけど,読んでいくうちにそんな気持ちも得難いものだったと思えます。チェロのことはよくわからないけど,関係なく楽しめます。個人的には倫社の金窪先生が好き。ずっと読みたかったんだけど,やっと手にとりました。続きが楽しみです。

Mさんのレビュー


今回ご紹介した5作は、読んでいるうちに音楽が聞こえてくるような、優れた情景描写が魅力の作品たちです。音楽の素晴らしさと青春時代を改めて思い出すような名作ばかりなので、ぜひ手に取ってみてくださいね!