永井紗耶子さん作品5選!~勇気と感動をもらえる時代小説選~

こんにちは、ブクログ通信です。

永井紗耶子さんは、大学卒業後に新聞記者を経てフリーランスのライターとなり、新聞や雑誌の記事を書いて筆力を磨きました。2010年、時代ミステリー小説の『絡繰り心中』で第11回「小学館文庫小説賞」を受賞します。同作は『恋の手本となりにけり』と改題して刊行され、永井さんは小説家デビューを果たしました。その後も精力的に執筆を続けている永井さんは、新作を発表する度に大きな注目を集める時代小説の名手です。

今回はそんな永井さんの作品の中から、初めて読む方にもおすすめの5作品を紹介いたします。
躍動感あふれる文章と繊細な人間模様を描いた永井さんの作品世界を、ぜひこの機会に体験してみてくださいね。

『永井紗耶子(ながい さやこ)さんの経歴を見る』

永井紗耶子さんの作品一覧

1.永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』直木賞受賞作!今話題の心揺さぶられる時代小説

木挽町のあだ討ち
永井紗耶子『木挽町のあだ討ち
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あらすじ

ある雪の夜、芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助が仇討ちを見事に果たした。父親を殺した下男を斬ったのだ。血まみれの首を高くかかげた快挙に、多くの人々は賞賛の声をあげる。——2年後、菊之助の縁者を名乗る侍が芝居小屋を訪れた。その侍は仇討ちの顚末を知りたいというのだが……。

おすすめのポイント!

第169回「直木賞」と第36回「山本周五郎賞」をW受賞した傑作です。江戸時代を舞台に、大勢が見ている前で行われたとある仇討ちの真相を、そこに関わる複数の人々の視点から描き出しています。仇討ちの背景に隠された意外な真実が徐々に明らかになってゆく様は、ミステリー小説の雰囲気もあり、時代小説を読み慣れていない人にも読みやすい作品です。江戸に生きる人々の心模様が丁寧に描かれ、読み進めるほどに感情移入してしまいます。大賞受賞作にふさわしい名作なので、ぜひこの機会に手に取ってみてください。

苦手な時代モノだったが、主人の強い勧めで読み始める。登場人物が自分の半生を語って聞かせる事でキャラが立ち、木挽町に暮らす日々が愛おしくなる。そして題名にもある、あだ討ちまでの経緯やその本当の理由と驚くべき真実に、心が湧き立つ!読んで良かった!オススメできる一冊!

kazumimiさんのレビュー

2.永井紗耶子『商う狼:江戸商人 杉本茂十郎』幅広い層から厚い支持を受ける読み応え満点の商人物語

商う狼: 江戸商人 杉本茂十郎
永井紗耶子『商う狼: 江戸商人 杉本茂十郎
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あらすじ

「いざとなれば、金は刀より強いんです」——農家生で、江戸の飛脚問屋の養子となった茂十郎は、名を揚げた矢先に事故で妻子を失うのだった。悲しみを糧に再起した茂十郎は三橋会所頭取となる。多額の費用を集め、十組問屋を再編し、菱垣廻船を立て直して流通を一新……江戸の金の流れを掌握する「狼」と恐れられた茂十郎の生涯に迫る傑作歴史小説。

おすすめのポイント!

第3回「細谷正充賞」、第10回「本屋が選ぶ時代小説」大賞、第40回「新田次郎文学賞」など、文学賞から民間の小説大賞まで幅広い支持を受けている作品です。実在の商人・杉本茂十郎の生涯を、臨場感あふれる文章で描いています。歴史小説では武士や貴族などを描いた作品が多い中、本作では商人の生き様や矜持をエンタメ作品に練り上げている点がさすがです。江戸時代の繫栄の一端を担っていた商人たちの力強さ、たくましさに感動させられること間違いなしの、読み応え満点の一冊となっています。

永井紗耶子さんの文章を好きになったので、こちらも読んでみた。江戸商人・茂十郎が悪しき慣習を打ち破り、江戸の繁栄に生涯を捧げる。とても面白かった。やっぱり永井さんの、主人公に対する深い愛情が感じられていい。

小春さんのレビュー

3.永井紗耶子『帝都東京華族少女』ミステリー×時代小説!華族社会の光と影を浮き彫りにする意欲作

帝都東京華族少女 (幻冬舎文庫)
永井紗耶子『帝都東京華族少女 (幻冬舎文庫)
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あらすじ

舞台は明治39年の東京。千武男爵家の令嬢・斗輝子の趣味は、住み込みの書生たちを弄ぶことだ。ところが、帝大生の影森にだけはなぜか馬鹿にされっぱなしなのだった。そんな二人が参加したある夜会において、殺人事件が発生した。なんと、犯人として疑われているのは斗輝子の祖父・総八郎らしい。影森と斗輝子は、総八郎の疑いを晴らすため奔走するが……。

おすすめのポイント!

きらびやかな華族の社交界を舞台に描かれる、ミステリーあり、歴史小説の趣あり、人間ドラマありの多様な魅力を持つ作品です。華族のお嬢様・斗輝子と、皮肉屋の書生・影森の異色コンビによるドタバタ小説かと思いきや、時代小説としての奥深さも感じられ、読み進めるほどに面白さが増してくる不思議な小説だと言えます。近代史や華族社会の光と影なども丁寧に描かれており、明治時代についても学べる作品です。

お嬢様と書生さんの探偵もどきの話と思ったら・・・。利権と私怨がいりくんで予想外の真相だった。面白かった。

ともりぶさんのレビュー

4.永井紗耶子『大奥づとめ』大奥で働く女性たちの凛々しい姿が印象的な連作短編集

大奥づとめ
永井紗耶子『大奥づとめ
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あらすじ

自分を磨きあげ、美しく着飾り、上様の目にとまり寵愛を受け、そして子を授かる——それこそが大奥の本望とされている。しかし、大奥には三千人もの人間がいるとされ、大所帯を管理するために文書係や衣装係、日用品の差配役など様々な職種があった……。大奥で仕事に生きた女たちの葛藤と情熱、苦楽を描く連作時代短編集。

おすすめのポイント!

徳川家斉の御世の大奥を舞台に、大奥で仕事に生きた女性たちの姿を描いた短編6作が収められています。「大奥」というと、たくさんの女性たちが閉じ込められて暮らし、「上様」の愛を勝ち取るためのドロドロした愛憎劇が繰り広げられ……というイメージがあるのではないでしょうか?しかし、本作で描かれる大奥は緻密に組織化された秩序正しい大奥です。制約の多い環境において、逆境に屈せずたくましく生きる女性たちの姿に勇気をもらえます。

美しく着飾り、上様の寵愛を受け、子を授かることこそが、出世とされていた大奥で「お手つきにならずとも、栄達の道あり」と仕事に生きた女達の、清々しい生き様。あっぱれ!

マミさんのレビュー

5.永井紗耶子『女人入眼』激動の時代に翻弄される女性たちの愛憎が胸を打つ作品

女人入眼 (単行本)
永井紗耶子『女人入眼 (単行本)
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あらすじ

建久6年、京の六条殿に仕える女房・周子は鎌倉にいた。彼女には重大な使命がある。宮中掌握の一手として、源頼朝と北条政子の娘・大姫を入内させるという使命が。大姫は繊細な心の持ち主で、気鬱の病を抱えていた。一方、母である政子は大きな野望を抱き、娘への強い圧力となっている。やがて周子は、母子の間に横たわる悲しき過去にたどり着くのだった。

おすすめのポイント!

第167回「直木三十五賞」候補作です。「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれる謎多き事件・大姫入内を、永井さんならではの斬新な切り口で描いています。鎌倉幕府の裏側で渦巻く権力争いの実情を、運命に翻弄される女性たちの目線から捉えている点が興味深い物語です。絶対的な権力を誇る北条政子と、その娘・大姫の歪んだ関係がスリリングに描かれ、武家社会の光と影が浮き彫りにされてゆきます。史実に基づきつつも永井さんならではの解釈が光る作品です。

同じ永井でも永井路子とは全く違う視点と肌理細かい心理描写で描く鎌倉初期を舞台にした傑作。周子と大姫との対峙からみえる鎌倉内と京内の御所政争が浮き彫りになる、ボトムアップでの歴史考察本であり女性小説。ほぼ知らない裏面史も多く勉強になった。

wakeさんのレビュー


永井さんの作品は、さまざまな時代を生きた人々の姿を、ドラマティックに描き出します。今回ご紹介した5作品は、読むと勇気や感動をもらえる名作揃いです。ぜひこの機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?