夏の開放感で気持ちが高まる小説10選!前編〜喜怒哀楽を揺り起こす、夏の物語〜

こんにちは、ブクログ通信です。

今年も、暑い夏がやってきました。夏といえば、夏休みに夏祭り、花火大会にプールにキャンプ……と、イベントがたくさんある季節ですね。青く高い空に真っ白な雲、うだるような暑さの中でもなぜか心浮き立つのが、夏という季節ではないでしょうか。そんな夏気分をさらに盛り上げる、夏の読書におすすめの小説をご紹介します。

子供の頃の夏を思い出させる作品。学生時代のキラキラした夏を閉じ込めた作品。そして、大人になったからこそ楽しめる夏を描いた作品。今回は、さまざまなシチュエーションで夏の開放感を味わえる、とっておきの10作を集めました。今回は前編5作品をご紹介!今年の夏は、ぜひ読書でも夏を楽しんでみてはいかがでしょうか。

1.池澤夏樹『南の島のティオ』 南の島で過ごす夏を味わえる、開放感満点の名作

南の島のティオ (文春文庫)
池澤夏樹さん『南の島のティオ (文春文庫)
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あらすじ

南の島に住む少年・ティオは、父が経営するホテルの仕事を手伝いながら、毎日穏やかに暮らしている。ある日、ホテルに「絵はがき屋さん」がやって来た。彼の作る絵はがきには、不思議な力があるらしい。ホテルや島の風景を絵はがきにすれば、それを受け取った人は必ず島に来てくれるのだという。彼の話を信じるティオに、「絵はがき屋さん」はおまけの絵はがきを1枚くれて——(『絵はがき屋さん』)。他9編を含む、連作短編集。

オススメのポイント!

児童向けに描かれた作品ですが、大人も存分に楽しめます。南の島での、のんびりとした時間を味わえる短編集で、小学館文学賞受賞作です。人と人とのつながりを温かく描きだし、爽やかな読後感を味わえます。自然に囲まれ、精霊や神々といった不思議な存在とも交流するティオの暮らしが、みずみずしい筆致で描かれた名作です。南の島で夏休みを過ごしているような、非日常の開放的な空気も味わえます。それぞれの物語には、自然の恐ろしさや人間関係の切なさなどもちりばめられており、ほどよいビターさが効いている点にもご注目ください。

池澤夏樹さんの作品一覧

心がホクホクするとても暖かい短編集ですね♪10編ともに懐かしい暖かい優しい清々しい物語です。誰しもティオの島に行きたくなり暮らしてみたくなるに違いないなぁ

ありが亭めんべいさんのレビュー

2.恩田陸『夜のピクニック』ただ歩く夜の美しさを描く。吉川英治文学新人賞受賞作

夜のピクニック (新潮文庫)
恩田陸さん『夜のピクニック (新潮文庫)
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あらすじ

甲田貴子は、高校生活最後のイベント「歩行祭」を目前に、ある決意をしていた。高校3年間、誰にも言ったことのない秘密を、その夜に清算するのだ。「歩行祭」は、全校生徒が徹夜で80キロを歩くという、北高の伝統行事である。貴子は親友たちと歩きながら、3年間の思い出や将来に夢などを語り合う。胸の中には、とある「賭け」を秘めたまま……。

オススメのポイント!

「高校生が夜通しで、ただ歩く」。それだけを描いた作品です。それなのに、とても読み応えがあり、ぐいぐい惹き込まれてしまいます。見どころは、貴子が抱える「秘密」を軸にして明らかになっていく、貴子と親友たちの友情、とある同級生との複雑な関係、家族の在り方の描写です。物語中では、大きな事件や特別な変化などは起こりません。しかし、読後には満ち足りた気持ちと開放感を味わえることでしょう。夏の夜にぴったりの青春小説です。

恩田陸さんの作品一覧

青春だなぁ~。ふわふわ、ドキドキしながらも人の内面に鋭く切り込む爽快かつ温かい小説でした。いつまでもこの世界の余韻に浸っていたい感覚…。気持ちいい時間が流れている…。

kamitakoさんのレビュー

3.大崎梢『夏のくじら』 こんな夏を過ごしてみたい!人気作家が描く、よさこい青春小説

夏のくじら (文春文庫)
大崎梢さん『夏のくじら (文春文庫)
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あらすじ

東京近郊で育った篤志は、中3の夏、祖父母やいとこたちの住む高知でよさこい祭りに参加した。偶然出会った少女とある約束をしたものの、果たせずに別れてしまう。それから4年が経ち、篤史は大学進学のため、再び高知にやって来た。いとこに誘われ、よさこいに参加することを決めた篤史だったが、実は初恋の人探しという目的もあって——。

オススメのポイント!

よさこいに情熱を注ぐ人々を、躍動感あふれる筆致で描く夏祭り小説です。高知のよさこいといえば、全国的に有名なお祭りの1つですが、よく知らないという人も多いのではないでしょうか。本作では、よさこいとはどんなものか、よさこいを踊るためにどんな準備がされているのかなど、細部まで丁寧に描かれています。読後には、きっと誰もがよさこいの魅力にはまってしまうことでしょう。また、主人公の恋の行方も注目すべきポイントの1つです。夏と祭りの熱気、甘酸っぱい恋模様で、夏気分を高めてくれる1冊です。

大崎梢さんの作品一覧

誰の中にもきっとあるあの頃の痛さや熱さをそっと受け止めてくれる小説

jungoes0128さんのレビュー

4.森絵都『DIVE!!』 飛び込みでオリンピックを目指す中高生の姿に、夏気分は最高潮!


DIVE!! 上 (角川文庫)
森絵都さん『DIVE!! 上 (角川文庫)
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あらすじ

高さ10メートルの飛び込み台から時速60キロでダイブし、1.4秒の演技の美しさを競う——それが飛び込み競技だ。ダイビングスクールに通う中学生の坂井知季は、なかなか上達しないことを悩んでいた。ある日、新しいコーチ・夏陽子がやって来る。夏陽子の指導の下、知季の実力はめきめきと伸びていく。やがて、天才ダイバーの富士谷要一、夏陽子が連れてきた野生児・沖津飛沫と共に、知季はオリンピックを目指すことになる。

オススメのポイント!

飛び込み競技に打ち込む中高生が、切磋琢磨する姿を描いた小説です。この作品を読むと、競技ルールや見どころ、選手たちの努力や葛藤について知ることができます。作者の森さんは、少年・少女のみずみずしい日々や、揺れる心情を描く力に定評のある作家さんです。本作でも、その筆力が存分に発揮されています。オリンピックを目指し飛び込み競技に打ち込む、3人の少年たちのまぶしい日々を、ぜひ体験してみてください。読後にはきっと夏気分が高まり、「今すぐ水に飛び込みたい!」という気持になってしまいますよ。

森絵都さんの作品一覧

オリンピックなどでなんとなく見ていた高飛び込みを身近にそして興味深く見れるようにしてくれた作品!一気に読み終えた!展開もテンポよくわかりやすい内容なので何も考えずに楽しめる。高飛び込みの技の名前もこの小説で勉強した。

ug7729さんのレビュー

5.マイクル・コーニイ『ハローサマー、グッドバイ』 少年と少女の恋にときめく、古典的SFの名作

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)
マイクル・コーニイさん『ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)
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あらすじ

政府高官の息子ドローヴは、夏季休暇を過ごすために港町パラークシへとやって来た。昨年知り合った宿屋の少女・ブラウンアイズに、また会えるのが楽しみだ。ドローヴの両親は、ドローヴが下層階級のブラウンアイズと親しくなることを良く思っていない。けれど、2人は少しずつ距離を縮めていくのだった。隣国との戦争の影が忍び寄る中、ドローヴとブラウンアイズのきらめく夏が始まる。

オススメのポイント!

SFの古典的名作と称される、青春小説です。ドローヴという少年を主人公にした、恋愛小説としても楽しめます。地球によく似た星で人間と同じ容姿の人々が生活していますが、惑星環境や生き物の生体はかなり独特です。また、物語前半では見えてこなかった謎や、惑星の驚きの実態が徐々に明らかになっていく展開に、ぐいぐい惹き込まれます。古い作品なのでやや読みにくい部分もありますが、SF好きではない人にもおすすめできる作品です。いつもとはひと味違った夏を過ごしたいとき、ぜひ手に取ってみてくださいね。

マイクル・コーニイさんの作品一覧

自分の文章読解能力の低さに悔しさを覚えた一作。読み終えて、首を捻って、考察サイトを見て驚愕してしまった。この作品は青春、恋愛、SF(ファンタジー)、戦争の面白い部分が凝縮されており、後半から始まる展開は目が離せない。前半~中盤辺りの少しダレる展開も、このためにあったのかと驚かされる。

kzmharaさんのレビュー

暑い日には、涼しい部屋で夏ならではの物語を楽しんでみませんか?今回ご紹介した作品では、夏気分を高めてくれる冒険やスリル、感動を味わうことができます。気になった作品は、ぜひチェックしてみてくださいね!