【後編】扉を開こう!新しい出会いや挑戦を描いた小説10選

こんにちは、ブクログ通信です。

ブクログのみなさんに、出会いや挑戦が題材の小説の中から、特におすすめの10作から【後編】5作品を紹介いたします。爽やかな風の吹くような青春を描いたもの、ディープな関係を綴ったものまで集めました。【前編】と併せて、ぜひチェックしてみてくださいね。

6.辻村深月『サクラ咲く』学校は誰のものか。10代の切なる叫びとは

サクラ咲く (光文社文庫)
辻村深月『サクラ咲く (光文社文庫)
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あらすじ

朋彦は転校生・悠と、ある秘密を共有するが、予期せぬ事故が起こり——。(「約束の場所、約束の時間」)読書家のマチが図書室で借りた本には一枚の紙が挟まっていて——。(「サクラ咲く」)映画同好会の一平、リュウ、拓史は、主演女優を依頼した女子生徒からある本を見つけてくれたら出演を検討すると、難題を突きつけられる。(「世界で一番美しい宝石」)偶然が人生を変える瞬間に立ち会う、珠玉の短編集。

おすすめのポイント!

三つの物語はそれぞれ独立していますが、登場人物のリンクしている部分があり、繋ぎあわせることで美しい模様になるパッチワークのような短編集になっています。一国の首長や、有名人になるのでなくても、一人ひとりの人生には、かけがえのない思い出や、人生を変えるようなできごとが必ずあるものです。SF要素もあり。辻村深月作品を初めて読むという方にもおすすめの読みやすい作品です。

辻村深月さんの作品一覧

甘酸っぱい中高生が舞台の短編集。タイトルにもなっているサクラサクは最高に泣ける。大人が読んでも感無量。

さなぴさんのレビュー

7.森沢明夫『青森ドロップキッカーズ』氷上の熱き友情と勇気の物語

青森ドロップキッカーズ (小学館文庫)
森沢明夫『青森ドロップキッカーズ (小学館文庫)
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あらすじ

中学生の宏海とその同級生・雄大、社会人アスリートとして行き詰まりを感じていた柚香・陽香姉妹の四人は、カーリングをきっかけに出会う。いじめに遭っている宏海、不良としても中途半端な雄大、チームメイトとの確執に悩む姉妹と、各人はそれぞれの悩みのなかで苦しんでいた。外見も性格もてんでばらばらな四人の出会いは化学反応を起こし、真の友情は心ので勇気に変わる。爽快な読後感の感動エンタメ小説。

おすすめのポイント!

津軽百年食堂』『ライアの祈り』とともに、本州最北端の青森県を舞台に描いた青森三部作として知られる本作。カーリングという、北国ならではの題材を使った青春小説になっています。人の数だけ迷いや苦しみがありますが、それらは人と人との縁によって、すんなりと解消されることもあります。登場人物たちの心の揺れ動く様子に重心を置いた作品のため、カーリングを知らない人でも読みやすく、青森に行ってみたくなる作品です。

森沢明夫さんの作品一覧

泣ける!爽やか!スッキリ!とにかく素晴らしい作品でした。カーリングにも青森にも興味がわきました。青森に行ってみたい!

fishbowlさんのレビュー

8.天沢夏月『サマー・ランサー』槍のごとく、まっすぐであれ

サマー・ランサー (メディアワークス文庫)
天沢夏月『サマー・ランサー (メディアワークス文庫)
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あらすじ

高校に入学して一週間が経とうとしているのに、天智はまだ部活を決めかねていた。神童と呼ばれ、中学生ながらも剣道界に名を馳せていたのは遙か昔のことのように思える。師である祖父に憧れて続けていた剣道は、いつしか心の枷となり、竹刀を握ることすらできなくなってしまった。そんなある日、体育館から聞こえてきた不思議な音に心奪われ、槍道という競技と出会う。剣を槍に持ち替え、天智は新たな世界に足を踏み出す。

おすすめのポイント!

強引でマイペースな同級生・羽山、口は悪いが根の優しい木村先輩など、愚直なまでにまっすぐな登場人物たちに背中を押されるように天智が成長していく姿が眩しい作品です。自分も彼らのように、まっすぐに生きたい!と前向きにさせてくれます。通学やスキマ時間に軽い読書をしたい、という方にもおすすめ。読みやすい文体ですが、しっかりと心に残ります。第19回「電撃小説大賞」〈選考委員奨励賞〉受賞作。夏空のように爽やかです。

天沢夏月さんの作品一覧

自分自身の弱い所を認めるのは簡単じゃないし辛いこと。それでも立ち向かっていくことは誰にだってできる。結果はどうあれ挑戦していくことこそに意味があり自分自身を見つめる結果になると思う。「強さを焦るな」簡単なようで簡単じゃないとてつもなく深い言葉だ。

ehrsさんのレビュー

9.石田衣良『娼年』二十歳の夏、欲望の果てには何があるのか

娼年 (集英社文庫)
石田衣良『娼年 (集英社文庫)
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あらすじ

大学生活にも女性にもセックスにも退屈していたリョウは、会員制ボーイズクラブのオーナーをしている静香に誘われ、戸惑いながらも「娼夫」の仕事を始めることに。仕事を通じてリョウは、退屈だと思っていた女性に潜む欲望の多様性や、感動するようなセックスとの出会いを経験する。そして、密かにリョウに想いを寄せ続けていた大学のゼミ生・メグミの忠告が、リョウに運命の舵を大きく切らせ——。

おすすめのポイント!

年代を問わず女性の美しさをつぶさに描いた文章はとても穏やかで、安心して読み進めることができます。娼夫の仕事を始めるにあたっての静香とショッピングや、VIP専用の娼夫・アズマとの一夜など、ベッドシーン以外でも見所満載です。人間のいびつさに寄り添う、石田さんのまなざしが感じられるでしょう。2016年には舞台化、2018年には映画化し、どちらも松坂桃李さんが主演を務めました。続編『逝年』もおすすめです。

石田衣良さんの作品一覧

見ず知らずの年上の女性と短いデートをする、その短い時間でどのくらい相手の女性を喜ばせることができるか。彼は娼夫になり自由になったという。外見、年齢、性別、仕事で判断せず、その人の話をきちんと聞くまで判断は保留する。耳を澄ますと、その人の秘密の欲望は、その人の傷ついてるところや弱いとこかにある。そう考えると、彼の娼夫という仕事は、すごく優しいのかもしれない。

yappinkunさんのレビュー

10.荻原浩『メリーゴーランド』赤字47億円。テーマパーク再建を任された役人の奔走

メリーゴーランド (新潮文庫)
荻原浩『メリーゴーランド (新潮文庫)
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あらすじ

都内の家電メーカーを辞め、Uターンした啓一は、田園都市の市役所勤めとなり、妻子とともに平穏な毎日を過ごしていた。市には「アテネ村」というテーマパークがあったが、そこは入場する者全てをげんなりさせる、がっかりテーマパーク。膨れあがった赤字は47億と絶望的だった。なんと啓一は、このアテネ村の再建対策室に出向することが決まってしまう。戸惑う一方で、「いっちまえ」と囁く心の声が聞こえ……。

おすすめのポイント!

妻からは「小心者」、子どもからも「しょうしんもも」と呼ばれるような、ごく平凡な一児のパパが、仕事に奮起する姿を爽やかに、時にほろ苦く描いたリアリティのある作品です。どんな仕事にも、まっすぐに向き合う人には苦難があり、喜びがあります。やる前から結果を決めつけて「どうせできない」と諦めるよりも、殻を破れる人の方が実りの多い人生を送るのかも、と働くということの有意義さを感じさせられる挑戦ストーリーです。

荻原浩さんの作品一覧

赤字テーマパークの再建チームに任命された主人公。その前に立ちはだかるのは慣例、癒着、事なかれ主義の壁だった。男女問わず薦めたい1冊。読書はあんまり…という人も読みやすい、爽快で笑えるお話です。

とみさんのレビュー


人生には多くの出会いと挑戦があります。【後編】5作を参考に、部活・仕事・恋愛など、気になるテーマのものから読み進めてみてはいかがでしょうか。新たな小説との出会いが、人生を豊かにする一助となれば幸いです。
前編】はこちら!