こんにちは、ブクログ通信です。
4月といえば、入学や進級、入社といった新生活の月ですよね。新生活の始まりはワクワクする一方で、不安を感じることもあるでしょう。
そこで今回は、新生活がより楽しくなる小説を5つ紹介いたします。ワクワクとドキドキが詰まった新生活をより楽しく過ごすための、スパイスになってくれるような作品を厳選しました!
新生活を迎える人はもちろん、フレッシュな気持ちで新年度を迎えたい人も、ぜひチェックしてみてくださいね。
1.山本幸久『花屋さんが言うことには』新生活が不安な人の背中を優しく押し出してくれる話題作

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あらすじ
24歳の紀久子は、ブラック企業勤務で身も心も疲れ果てていたある日、深夜のファミレスである女性と出会う。酔っぱらった勢いで、彼女が営む花屋で働くことになった紀久子。カレー作りがうまい青年や話し好きの元教師など、個性豊かな従業員と色とりどりの花に囲まれながら、少しずつ花屋の仕事に慣れてゆくが……。
おすすめのポイント!
人気の情報番組で紹介され、新生活が始まるシーズンに読みたいと話題を集めた本作。季節ごとのカラフルな花々と花言葉が登場するので、春らしく華やかで明るい気持ちになれる作品です。ブラック企業で心身ともに疲れ切った主人公が、それまでとは180度異なる新生活に飛び込み、失敗を重ねつつも成長してゆく姿に元気がもらえます。読後には、新生活や慣れない仕事にも前向きに取り組んでみようと思えるようになりますよ。
素敵な本だったー。花屋で働くことになった女性の日常の出来事が展開されていくんだけど、ストーリーの展開も心地よくて、この世界観に浸ってたくなった。良い読後感。
2.絲山秋子『御社のチャラ男』社会人の何気ない日常を等身大に描き出す連作短編集

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あらすじ
オイルやビネガーなどの商品を扱う地方の小さな会社・ジョルジュ食品。社長のコネでやってきた三芳部長は、社内でひそかに「チャラ男」と呼ばれていた。自分には自分がないと悟る三芳と、まわりの人々が語る三芳の姿を通して見えてくるのは、この社会に生きる私たちの現実だった。
おすすめのポイント!
社内で「チャラ男」と呼ばれる一人の男性と、彼を取り巻く人たちの話から、多様な生き方や価値観が浮き彫りになる連作短編集です。本作には社会人としての「あるある」が多く登場するため、社会人経験がある人は誰もが深く共感できることでしょう。これから社会に出てゆく人にとっては、「こんなことがあるのかも」と良い心構えができるようになります。組織で働く大変さと人間関係の多様さを疑似体験できる一冊です。
タイトルから、軽く読めて笑える小説かと思った。違った。なんだか不穏な空気がまとわりついた小説だぞ、と思った。奥付けを見て出版された年を知り、納得した。コロナ禍かその直前に書かれたものだった。これまでの日常が激変することへの恐れが、文章の端端から読みとれた。章ごとに主役が変わるところが群像劇のようだった。複数の人の頭の中をのぞいているようで、楽しかった。
3.中島京子『坂の中のまち』町を知り、人を知る楽しさを感じられる、ちょっと不思議な物語

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あらすじ
大学進学のため上京した坂中真智は、祖母の親友・志桜里さんの家に居候することになった。坂の中にある町で、あらゆる「坂」を熟知した志桜里さんから、延々と坂の話を聞かされる日々が始まる。ある日、文学サークルに顔を出した真智は、一人の男子学生と出会う。彼はまるで昭和初期から来た幽霊のようで……。
おすすめのポイント!
坂が多く、かつて文豪たちも多く暮らしたという「小日向」を舞台にした、ちょっと不思議なハートウォーミング・ストーリーです。東京にやってきたばかりの主人公・真智と、居候先の大家である坂マニアの志桜里さん、そしてどこか謎めいたところのある男子大学生などなど、ひとクセありつつも穏やかで温かい人々に囲まれ、少しずつ東京の町になじんでゆく真智の姿に心がほっこりするお話です。新しい町で新しい人間関係が始まるワクワクを感じられる作品となっています。
東京の坂道という写真集を見たことがあって、東京都内には結構な坂道があることはしっていた。こちらの本は実際の坂道だけではなく、青春時代の上り坂や下り坂そして迷い道や揺れる吊り橋のようなものも描かれていて久し振りに純粋な文学に触れたという満足感で満たされた。
4.伽古屋圭市『猫目荘のまかないごはん』新生活で新しい自分を見つける楽しさを教えてくれる物語

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あらすじ
建物は古いが家賃は格安の下宿屋「猫目荘」で、再就職と婚活に失敗した伊緒は、一番の新入りだ。食事は一緒、風呂場は共同、住民は個性派揃いの環境で戸惑うことばかり。しかし、2人の男性大家が作るまかないは、クリームシチューや豚キムチなどの定番料理にアレンジを加え、目もお腹も幸せにしてくれるのだった。やがて伊緒に転機が訪れるが……。
おすすめのポイント!
個性派ぞろいのオンボロ下宿を舞台に、人生につまづいた一人の女性が、少しずつ自分の中の世界を広げ変わってゆく姿が描かれた作品です。30歳にして仕事も婚活も上手くゆかない伊緒は、家賃の安さと料理をしなくて済むという理由で「猫目荘」に入居します。理想の人生とかけ離れた現実に不満ばかりの伊緒が、個性的な住人たちとの交流を通して、自分を見つめ直す姿が印象的です。読後は、「新生活で上手くいかないことがあっても、きっと大丈夫」となぜか思えることでしょう。
面白かった。表紙とか題名とかで軽いお話なのかなって思ってたら、結構深い話だった。私もバイだから少数派に入るし、結婚しても一緒には暮らしたくないって思ってるからこの本読みながら分かる分かるって思ってた。色んな人と関わって価値観が広がる。今の私に1番大事なことだなって思った。自分と向き合うのは怖いし、初めてのとこも怖いけど1歩踏み出して見なきゃ自分の今ある価値観って変わらないんだなって。
5.小野寺史宜『まち』祖父と離れて暮らす青年が、強く優しく成長する姿を描いた感動作

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あらすじ
早くに両親を亡くし、尾瀬の荷運び・歩荷を営む祖父のもとで育った瞬一。高3の春に「後を継ぎたい」と相談した祖父からは、意外にも「東京に出ろ」と諭されるのだった。それから4年、瞬一は荒川沿いのアパートに住み、隣人と交流し、バイト仲間と苦楽を共にし暮らしていた。ある日、祖父が突然東京にやってきて……?
おすすめのポイント!
祖父と二人きりで暮らしていた孤独な青年が、東京の町で成長してゆく姿を丁寧に描いた作品です。荒川沿いの風景や、そこで暮らす人々の素朴な姿がきめ細やかな描写で切り取られ、穏やかな空気感に癒されます。瞬一とじいちゃんの絆が深く感じられる一方で、東京での新生活で多くの物を得た瞬一の成長ぶりも眩しく、生きてゆくことや変わってゆくことの尊さが胸に迫る作品です。作者の他作品とのつながりもある物語なので、ぜひ他の作品と併せて読んでみてはいかがでしょうか?
幼い頃に両親を亡くし、祖父に育てられた瞬一が田舎から東京に出て暮らしていく。瞬一の優しさ、真面目さを見習って、人助けする気持ちになる。もっと人と関わろう、人とのつながりを大事にしようと思える。純粋な気持ちになれる作品。
新生活は何かと不安がつきものですが、新しい環境と新しい人間関係により、大きく成長できるチャンスです。
ぜひ今回ご紹介した作品を通じて、変わってゆく楽しさ、新生活へのワクワクを感じてみてくださいね!