【西加奈子さん】オススメ5選!~みずみずしい感性が光る感動作を選りすぐり~

こんにちは、ブクログ通信です。

西加奈子さんは、2004年に『あおい』で作家デビューしました。2005年に発表した『さくら』が20万部を超えるベストセラーとなり、一躍注目を集めます。2007年には『通天閣』で織田作之助賞大賞を受賞し、一流作家としての地位を確固たるものにしました。その後も多くの名作を発表し続け、2013年には『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞受賞、2015年には『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞します。世界最大の文芸誌「グランタ」の名物企画「Granta Best of Young Japanese Novelists 2016」にも、選出されました。

ブクログから、そんな西さんのオススメ作品を5作紹介いたします。多様な登場人物が織りなす、温かい物語世界が西さんの作品の魅力の1つです。いくつもの名作の中から、特に心に訴えるものがある、印象的な作品を取り揃えました。ぜひチェックしてみてくださいね。

『西加奈子(にし かなこ)さんの経歴を見る』

西加奈子さんの作品一覧

1.『漁港の肉子ちゃん』 笑って泣ける、母娘の絆!2021年映画化の人情物語

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)
西加奈子さん『漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)
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あらすじ

小学生のキクりんは、男に騙された母・肉子ちゃんと一緒に、北の港町までやって来た。太っていて不細工で、底抜けに明るい肉子ちゃんは、漁港の焼き肉屋で働いている。キクりんは、そんなお母さんが、最近少し恥ずかしいと思ってしまう。店主のサッサン、常連客のゼンジさんや金子さん、キクりんの同級生の二宮。2人を取り巻く人々と、港町での暮らしをいきいきと描き出す著者代表作。

オススメのポイント!

明るく、いつでも前向きな肉子ちゃんのパワフルさに、元気をもらえる作品です。母と娘の絆、漁港の人々とのつながりが丁寧に描き出されており、読後には心が温かくなります。また、この物語はキクりんの成長物語としても、多くの人の心に響くことでしょう。小学生の頃考えていたこと、不満だったことなどが、キクりんを通して描かれ、読者に懐かしさや共感を与えてくれるはずです。この作品は、2021年に明石家さんまさんプロデュースで映画化され、肉子ちゃんを女優の大竹しのぶさんが務め、話題となりました。

冒頭から声を出して笑ってしまった。
ただただ面白いだけかと思いきや、読み進めるうちにそこ、書くか⁈っていう細かい描写に惹きこまれる。わかりやすい文章で心のうちも描かれていくので感情移入しやすかった。

初めての西加奈子。
なんで今まで読んでなかったんだろう、と思わされる本。

フランジパニさんのレビュー

2.『きりこについて』悩んだとき、前を向く勇気をくれるパワフルな物語

きりこについて (角川文庫)
西加奈子さん『きりこについて (角川文庫)
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あらすじ

両親に愛され、かわいいと褒められ、自信満々で生きてきた少女・きりこ。しかし、小学5年生のある日、初恋の相手・こうた君に「ぶす」と言われ、大きなショックを受けるのだった。きりこはすっかり自信を失くし、引きこもりになってしまう。一方、きりこが小学校の体育館裏で拾った黒猫のラムセス2世は、とても賢くて、大きくなるにつれて人の言葉も覚えてしまった。やがて、ラムセス2世に励まされ、きりこは外に出る決意をするが——。

オススメのポイント!

外見や性格にコンプレックスを抱えている人に、ぜひ一度読んで欲しい作品です。主人公・きりこは「ぶす」であることに、大きなショックを受けます。しかし、黒猫のラムセス2世とのやり取りや、友人と過ごす日々の中から、容姿に対する考え方を変化させていくのです。読み手である私たちも、きりこと一緒に、これまで持っていた価値観が変わっていくのを実感できます。読後には、自分の中のコンプレックスが、少しだけ楽になっているかもしれません。

きりこは「ぶす」である。どんな物語やねん!というツッコミを入れざる得ない冒頭から始まり、この始まりから「わたし」を大切にする物語が書かれている。読み終わった後に「やられた!」と素直に思った。

しーまんさんのレビュー

3.『円卓』 円卓を囲んで食べる食事のような、にぎやかで愛にあふれた作品

円卓 (文春文庫)
西加奈子さん『円卓 (文春文庫)
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あらすじ

「こっこ」こと渦原琴子は、三つ子の姉と両親、祖父母と一緒に公団住宅で暮らしている。こっこは口を開けば悪態をつき、偏屈で硬派な性格で、孤独に憧れている小学3年生だ。何気ない日常も、こっこにとっては驚きや発見、不満や疑問で満ちている。みんなにとっての「当たり前」も、こっこにとっては特別なのだ。こっこが日々の暮らしの中で、悩んだり考えたりしながら成長していく姿を描いた、みずみずしい感動作。

オススメのポイント!

小学3年生のこっこの視点を通して、誰もがもう一度小学生を疑似体験できる、不思議でかわいい作品です。作者である西さんのキレのある文章が、「幼かったあの頃」を鮮やかに蘇らせます。こっこの日常を垣間見ると、「こんなこと考えていたな」「こんな風に思ったことあるな」と、懐かしい気持ちになることでしょう。読後には、温かく爽やかな感動が待っています。また、この作品は2014年に芦田愛菜さん主演で映画化されました。芦田さんの毒づく演技が好評を博した映画版も、おススメです。

この本は何度も読んでしまう。何度も読んで何度もこっこの成長を感じたい。あっという間に過ぎた子供時代。じっくり考えずに過ぎた子供時代。この本を読んで何度も取り戻す。そんな気持ちになれる本。

ゆたさんのレビュー

4.『きいろいゾウ』 愛することの意味を教えてくれる、切なく美しいラブストーリー


きいろいゾウ (小学館文庫)
西加奈子さん『きいろいゾウ (小学館文庫)
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あらすじ

都会から、ある若夫婦がやって来た。夫の名前は無辜歩(むこ・あゆむ)、妻の名前は妻利愛子(つまり・あいこ)だ。「ムコさん」「ツマ」と呼び合うその2人は、田舎暮らしを始めた。背中に大きな鳥のタトゥーが入っているムコさんは、売れない小説家をしている。一方、ツマは周囲の生き物の声が聞こえるという、不思議な感覚の持ち主だ。穏やかで温かい2人の暮らしに、ある日転機が訪れる……。

オススメのポイント!

「ムコさん」と「ツマ」、2人の深い愛情が優しく丁寧に描かれた物語です。まるで絵本のようなふんわりとした世界観の中で、徐々に現実の苦さが描かれ、登場人物の心の揺れが明らかになっていく展開は、西さんの作品の醍醐味といえるでしょう。人の心の機微をリアルに描き出す西さんの筆力を、堪能できる作品です。作中に登場するお話は、絵本『きいろいゾウ』としても出版されています。また、この作品は2013年に映画化されました。主演は宮崎あおいさんと向井理さんが務め、みずみずしい演技が好評を博した作品です。

この小説の影響で日記を付け始めた。ツマ側とムコさん側の視点の対比がおもしろい。
田舎の風景描写とツマとムコさんの独特な会話に数ページで引き込まれた。オノマトペが特徴的だけど、的確。ネーミングセンスが抜群。読み終わりたくなかったから、ゆっくりゆっくり読みました。ツマとムコさんはパズルのピースがぴったり合った出会いだったんだなぁ。私の大好きな世界観でした。

栞さんのレビュー

5.『サラバ!』 3か国を舞台にした、少年の成長譚!直木賞受賞作

サラバ! (上) (小学館文庫)
西加奈子さん『サラバ! (上) (小学館文庫)
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あらすじ

圷歩(あくつ・あゆむ)は、父の海外赴任先であるイランの病院で生まれた。優しい父と奔放な母、問題児の姉に囲まれ、歩はすくすくと育つ。やがて、イラン革命が起こり、一家は揃って大阪へ。いつも受け身で「いい子」な歩はすぐに周囲に馴染んだが、奇行の目立つ姉は徐々に孤立していくのだった。そんな中、父のエジプト赴任が決まる。メイド付きの豪華なマンションで、新たな生活を始める歩たち。やがて、歩はヤコブという少年と出会う——。

オススメのポイント!

この作品は、西さんの自叙伝的小説です。イラン、大阪、エジプトという3つの場所を舞台に、歩という少年の過ごした日々がみずみずしい感性で描き出されています。イランでは異国情緒にあふれる街の描写が、大阪では小気味よい大阪弁の会話と人間ドラマが、エジプトでは歩とヤコブの深い友情が見どころです。行く先々で悩み葛藤し、少しずつ大人に近づいていく歩の様子が、丁寧な心理描写で浮き彫りになっていきます。

主人公歩の小学生までの激動のストーリー。両親の考えや離婚などの都合によって、子供としては自分たちではどうすることもできない世界で、子どもたち自身の立ち位置や生き方を確立していく。個性的?普通?な圷のような家族はほんとうにありそうで、自分の周囲や経験と照らし合わせると、なんと平和で安心する部分もたくさんある。一方で、子供を持つ親としては、自分たちの行動が子供にどれほど制約を与えられているのか冷静に考えたくなった。中・下に読み進むのが楽しみになってきた。

読書家になりたい読書家さんのレビュー

西さんの作品は、孤独を感じている人に優しく寄り添う物語が多く、何度も読み返したくなる名作ばかりです。今回ご紹介した作品は、文章の美しさも魅力となっています。ぜひ手に取ってみてくださいね!