恩田陸さんおすすめ作 前編〜ファンが絶賛する隠れた名作選〜

こんにちは、ブクログ通信です。

恩田陸さんは、1992年に『六番目の小夜子』で作家デビューしました。不動産会社勤務を経て、1997年に専業作家として本格的に活動を始めます。2004年から2005年にかけて、『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞を受賞しました。2006年には『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞、2007年には『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞し、作家としての地位を確立します。2017年、『蜜蜂と遠雷』で直木三十五賞と本屋大賞をダブル受賞し、大きな話題となりました。

幻想的な世界観で多くの読者を魅了する恩田さん。今回は、ブクログから恩田さんの隠れたおすすめ10作品の前編をご紹介します。異国情緒あふれるミステリーや独創的な会話劇、ファンの間で名作と謳われる注目作まで、幅広く取り揃えました。ぜひ手に取ってみてくださいね。

『恩田陸(おんだ りく)さんの経歴を見る』

恩田陸さんの作品一覧

1.恩田陸『チョコレートコスモス』 「天才」とは何かを描き出す、異色の演劇小説

チョコレートコスモス (角川文庫)
恩田陸『チョコレートコスモス (角川文庫)
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あらすじ

芸能一家に生まれた東響子は、幼い頃から役者として活躍し、今や人気も実力も備えた若手トップクラスの女優となった。一方、地味で華奢な少女・佐々木飛鳥は、公園で練習していた学生劇団に飛び込みで入団を申し込む。演劇を始めたばかりの飛鳥だが、とてつもない才能の片鱗を見せるのだった。響子と飛鳥、2人の天才が挑むのは、伝説の映画プロデューサーが開く異色のオーディションだ——。

おすすめのポイント!

演劇をテーマにした小説で、響子と飛鳥という2人の天才を軸に物語は進みます。作者の恩田さん自身が公言している通り、『ガラスの仮面』を彷彿とさせる作品です。演劇に情熱をかける人々の姿が鮮烈に描かれています。特に、響子と飛鳥が演技をしているシーンの描写は、「鳥肌もの」と多くのブクログユーザーから評されるほど真に迫ります。恩田さんの作品の中では珍しくミステリ要素薄めで悪人の出てこない作品ですが、物語後半にかけての盛り上がりが素晴らしい傑作です。

あぁーーー幸せ!!!!私も幸福のあまり震えて、泣きだしたい気分になった。そして私も確かに行けた!!連れて行ってもらえた”あの場所”へ。天才しか行くことのできない、どこからも遠い異形の世界、果てしなく広がる宇宙のようなところへ。恩田陸さん自身があとがきに書かれてるように『ガラスの仮面』ような天才演劇少女の話。これを読んでもっともっとナマのお芝居が観てみたくなった。劇場での一体感を味わってみたい!

mao2catさんのレビュー

2.恩田陸『ネクロポリス』独特な世界観に惹き込まれる、ファンタジック・ホラー

ネクロポリス 上 (朝日文庫)
恩田陸『ネクロポリス 上 (朝日文庫)
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あらすじ

舞台は英国と日本の文化が融合した世界。「アナザー・ヒル」と呼ばれる地では、死者と交流する「ヒガン」と呼ばれる行事が毎年行われていた。日本人大学院生のジュンは、研究のために「アナザー・ヒル」を訪れた。他の人の多くは、「血塗れジャック」事件の犯人を死者に聞くために来ているようだ。突然、ジュンの前に鳥居に吊るされた死体が現れる。ジュンは犯人捜しに巻き込まれていくのだった——。

おすすめのポイント!

英国とも日本ともつかない、独特な雰囲気の世界で繰り広げられるミステリーです。本作では、「死者と生者が交流する」という場所が登場します。現実では有り得ないのに、「本当にこんな場所があるのでは」と思わされる、緻密な描写が見どころです。また、そこで繰り広げられる殺人事件と犯人捜しにより、物語は一気にミステリー色を強めていきます。ファンタジー、ホラー、ミステリーと、さまざまな楽しみ方ができる作品です。異国情緒あふれつつも、どこか懐かしい不思議な世界の物語に、ぜひ足を踏み入れてみてください。

恩田陸の上質なホラー感がとても良く出てて、面白い。世界観とその設定がすごい。舞台背景も絶妙で、単調に進みそうな雰囲気の中、中盤で開催されるガッチのスリル感がまた面白い。これからまだまだ未知の体験を期待しながら、下巻へ読み進めていきます。

harucoさんのレビュー

3.恩田陸『三月は深き紅の淵を』 本好きにはたまらない!幻の本を巡る新感覚ミステリー

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)
恩田陸『三月は深き紅の淵を (講談社文庫)
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あらすじ

鮫島巧一は読書が趣味だ。ある日、会社の会長宅に招待を受ける。通されたのは別宅で、2泊3日を過ごすことになった。彼を待っていたのは好事家たちだ。好事家たちの言うことには、屋敷内にはとある稀覯本(きこうぼん)があるらしい。『三月は深き紅の淵を』というその本は、10年以上探しても見つからないそうだ。たった1人にたった1晩だけ貸すことが許された謎の本を巡るミステリー。

おすすめのポイント!

読書好き必読の「本」を巡るミステリーです。作中には、本作と同じ題名の本が稀覯本として登場します。登場人物たちがこぞってその本について語る一方で、本そのものが登場することはありません。謎が謎を呼ぶ展開に、「その本はどんな本なの?」という疑問が膨れ上がり、次へ次へと読み進めてしまうこと必至です。作中に登場する本と、読者の手元にある本の共通点が少しずつ明らかになり、まるで自分自身も物語の世界に飛び込んでしまったかのような、不思議な感覚を味わえる作品となっています。

幻の小説「3月は深き紅の淵を」について語られる4つのお話。お話ごとにその小説の形は違うのに、どれもその小説をもう一度読みたい、追求したいという存在として描かれている。そして、この小説自体がそういう存在であり、3章まで楽しく読み進めた後の4章でぐるぐる考えている間に終わってしまい、どんどん惹きつけられる、不思議で魅力的な小説!

kaoさんのレビュー

4.恩田陸『ねじの回転』 歴史改変に挑む人々の、葛藤と欲望を描いたタイムリープ小説

ねじの回転 上 FEBRUARY MOMENT (集英社文庫)
恩田陸『ねじの回転 上 FEBRUARY MOMENT (集英社文庫)
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あらすじ

過去を改変したため、人類に大きな危機が迫りつつある世界。悲惨な運命を回避するため、時間遡行装置による歴史介入が決定された。目指す地点は1936年の2月26日東京——いわゆる「二・二六事件」の日だ。歴史を修正するため選ばれたのは、事件の中心人物であった安藤大尉、栗原中尉、石原莞爾の3人だった。さまざまな思惑が絡み合う中、果たして歴史は正しく修正されるのか……。

おすすめのポイント!

日本の歴史の大きな分岐点の1つである、「二・二六事件」をモチーフにした小説です。タイムパラドックスと日本の近代史を絡め、壮大なスケールの物語に仕上がっています。歴史を変えられるとしたらどうするか、過去と未来はどんな風につながっていくのか……。そんなSFの王道的テーマを、恩田さんならではの視点で描き出した、スリル満点の作品です。歴史を変えることの重大さや、人間の欲深さについても、鋭く切り込んでいます。「二・二六事件」をはじめ、日本の歴史についても今一度学び直したくなりますよ。

「二・二六事件」に題材をとった歴史改変SFだ。宮部みゆきも「蒲生邸事件」で同じく二・二六事件を舞台にしていて、かぶるのかなあとちょっと不安になったが、いやいやこれは恩田陸独特の世界観があって、読みごたえがあった。むしろこちらの方が断然面白い。未来からやってきた国連の人間たちが、実際の事件をもう一度なぞっていくはずなのに、誤差がいろいろと出てきて、おいおいこれで大丈夫なのか、歴史がぐちゃぐちゃになるぞと読者を不安がらせるところも上手い。先を読みたくて、すぐに下を読むこと請け合い。

goya626さんのレビュー

5.恩田陸『象と耳鳴り』 「日常の謎」好きにオススメ!恩田ワールドを堪能できる短編集

象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫 お 13-3)
恩田陸『象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫 お 13-3)
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あらすじ

判事を引退した関根多佳雄は、3人の子供を持つ愛妻家だ。子供たちはみな成人し、今は趣味の散歩を楽しむ日々を過ごしている。ある日、多佳雄と妻の桃代は、国宝の茶碗を見るため美術館を訪れた。混雑する会場で、1人の老婦人が倒れるところを目にした多佳雄は、昔見た光景を思い出す——(『曜変天目の夜』)。表題作ほか、12編を収録。

おすすめのポイント!

「日常の謎」をテーマにした短編集です。恩田さんの持ち味ともいえる幻想的でどこか恐ろしい世界を、12の物語を通して楽しめます。主人公の関根多佳雄は、恩田さんのデビュー作『6番目の小夜子』にも関係のある人物です。同作を読んだ人には、1冊で2度おいしい物語だといえるでしょう。もちろん、未読の人にも存分に楽しめる作品です。恩田さんの作品をまだ読んだことがない人には、恩田ワールドへの入門書としてもおすすめします。

恩田氏の作品に本格短編集があったとは。落ち着いた雰囲気で、適度にロジカルで、適度にサプライズも用意されており、誤解を怖れずに言うと女性作家でこんな作品を読んだのは初めてで、改めて恩田氏の多才さに驚かされました。

Bookriumさんのレビュー

ベストセラー作家として知られる恩田さん。今回は、あえてメジャー作以外をご紹介しました。どの作品も、良い意味で作者のイメージを裏切る名作ばかりです。気になった作品はぜひ読んでみてくださいね!後編5作品もお楽しみに!