こんにちは、ブクログ通信です。
幻想的な世界観で多くの読者を魅了する恩田さん。今回は、ブクログから恩田陸さんの隠れたおすすめ10作品の中から後半5選をご紹介します。異国情緒あふれるミステリーや独創的な会話劇、ファンの間で名作と謳われる注目作まで、幅広く取り揃えました。ぜひ手に取ってみてくださいね。
『恩田陸(おんだ りく)さんの経歴を見る』
6.恩田陸『黒と茶の幻想』 神秘の森を舞台にした、濃密な人間ドラマ
あらすじ
学生時代の友人である男女4人は、太古の自然が残るY島に集まった。俗世と隔絶された神秘の島で、それぞれに思い出すのは過去のとある事件だ。かつてのある夜、共通の友人である梶原憂理が姿を消したのだった。あまりに美しかった彼女のことを、4人は忘れずにいる。雨の中、深い森の奥へと進みながら語り合う4人は、島を出発するまでに真相にたどり着けるのか……。
おすすめのポイント!
本作の見どころの1つ目は、島の美しい自然描写です。太古の杉や伝説の桜など、巨樹が根を張る神秘的な森の光景は、まるで映画を見ているようにくっきりと目に浮かびます。2つ目の見どころは、ほぼ会話劇にも関わらず、鮮烈に浮かび上がる人物像です。本作には4人の男女と1人の少女が登場します。何気ない会話や回想を通じて語られる人物像は、生々しいほどの存在感です。読み進めるうちに、まるで自分も一緒に島を旅行している気分になれることでしょう。非日常感と幻想的なミステリーを楽しめる、珠玉の作品です。
独特の読感がある。屋久島の自然の中での、登場人物4人の心情描写が濃く、4人の性格を掴みながら読み進めていくのが独特な感じがあって、なかなか面白い。
7.恩田陸『蛇行する川のほとり』 4人の少女が織りなす、密やかで美しい青春ミステリー
あらすじ
高校生の毬子は、美術部の先輩である香澄と芳野から夏合宿に誘われた。演劇祭の舞台装置を描くため、香澄の家に泊まり込みで作業するというのだ。憧れの人からの誘いに有頂天になる毬子だが、香澄の家ではかつて不幸な事件があったことを知る。毬子はなぜ合宿に呼ばれたのか。香澄と吉野の間には、なぜ秘密めいた雰囲気があるのか。毬子は徐々に疑心暗鬼になっていく……。
おすすめのポイント!
少女たちが過ごす、儚くも美しい青春のひと時を切り取った作品です。大人と子供の間で揺れ動く心を、繊細に描き出しています。巧みな心理描写が冴えわたる作品なので、かつて少女だった人は感情移入必至です。先輩への憧れ、恋愛への興味、ささいなことで乱高下する感情など、中高生時代の甘酸っぱい気持ちを思い出させる要素がたっぷり詰まっています。恩田さんの作品の中では知名度はそこまで高くない1冊ですが、多くの人に読んでほしい、隠れた名作です。
恩田陸さんは、天才やなと思った。描写がすごいし、何人もの気持ちを書き分けられるってすごいなあと思った。やっぱり忙しくても小説は読みたいし、美しい文章に触れたいと思った。途中から読むスピードが加速した。
8.恩田陸『木曜組曲』 作家の死の真相は?スリリングな会話劇に惹き込まれる1冊
あらすじ
耽美派小説の巨匠であった重松時子が亡くなった。その死から4年、時子が住んでいた「うぐいす館」では、今年も偲ぶ会が催されている。集まったのは、時子と縁が深かった5人の女たちだ。食卓を囲み、和やかに故人を偲ぶ5人だが、今年はなぜかささいな事件が次々と起こるのだった。繰り広げられる会話の中から、徐々に浮かんでくる疑念。時子は、本当に自殺だったのか。それとも、殺されたのか——?
おすすめのポイント!
ベストセラー作家の死をめぐる、緊張感あふれる会話劇です。登場するのは女性ばかり、しかも全員「物書き」に関係ある仕事をしています。ほぼ会話のみで浮き彫りになる5人の思惑や感情、大作家の死の真相についての描写は、見事としか言いようがありません。恩田さんの筆力のすごさに圧倒される作品です。2002年に公開された映画版では鈴木京香さんが主演を務め、原田美枝子さんや富田靖子さんなど名だたる名女優さんがキャストに名を連ねています。凄みのある演技が見どころなので、映画版もぜひチェックしてみてください。
大好き。場面転換も登場人物も少ない会話劇。過去のある人物の死に居合わせた5人の女性が、それぞれの立場、思惑から振り返ることで新しい視点が立ち現れてくる過程が鮮やかですばらしい。登場人物は魅力的で会話はテンポよく、とても読みやすい。
9.恩田陸『上と外』 一気読み必至!遺跡とジャングルを舞台にしたサバイバル小説
あらすじ
中学生の練は、両親の離婚により祖父と暮らしている。妹の千華子は母と一緒だ。年に一度、夏休みだけは両親と練、千華子の4人で過ごす。今年は、考古学者の父・賢がいる中米のG国までやって来た。密林と遺跡を抱えた軍事政権の国で、練たち4人はクーデターに巻き込まれてしまう。避難する途中、ヘリから落下しジャングルに放り出されてしまった練と千華子。疲労困憊の身でさまよう2人に、とある異変が起きて——。
おすすめのポイント!
子供2人でのサバイバル、熱帯雨林、古代文明の遺跡……この3要素にときめきを感じたら、迷わず手に取ってみてください。恩田さんといえばミステリー小説やホラー小説のイメージが強い作家さんですが、本作はジュブナイル小説の趣です。ドキドキハラハラの展開とロマンあふれる物語で、良い意味で恩田さんのイメージや予想を裏切られることでしょう。非日常の世界を旅する気分も味わえますよ。
恩田陸には珍しい冒険サバイバルもの。南米のジャングルで彷徨う練と千華子兄弟の心理描写や、熱帯の空気感の表現がすごくて、2人と一緒に自分も冒険しているような気になる。出だしが、やや捉えどころがなくて、あまり進まなかったけれど、そこを過ぎたら一気に下巻まで読み終わってしまった。
10.恩田陸『ロミオとロミオは永遠に』 退廃的な世界を駆け抜けろ!ビターでダークなSF青春小説
あらすじ
日本人だけが住み、化学物質や産業廃棄物の処理を行っている近未来の地球。この汚れきった世界では、エリートへの道は「大東京学園」の卒業総代になることだけだ。命がけの受験戦争を勝ち抜き、晴れて学園に入学したアキラとシゲル。2人を待っていたのは、サブカルチャーが禁止され、不条理なルールに縛られた過酷な学校生活だった。あるとき、最下級とされる「新宿」クラスと接触したアキラは、学園の秘密を目にしてしまう。
おすすめのポイント!
近未来の地球で、困難な環境を生き抜こうとする少年2人の姿を描いたSF青春小説です。サブカルチャーが禁止された世界というユニークな設定で、作中にはさまざまなオマージュが散りばめられ、作品世界をより奥深いものにしています。汚染された世界、生き残りをかけたサバイバルといった、ダークな世界観も見どころの1つです。『六番目の小夜子』『夜のピクニック』が好きな人は、ぜひ手に取ってみてください。上下巻に分かれていますが、後半は物語が加速し、一気に読めてしまいます。
疾走感溢れる学園モノSF。思考をどっぷりドリップさせてくれる。今でさえ懐かしいお菓子や雑誌や歌や映画、実在のものをパロった施設や台詞が登場し、そこここに哀愁と切なさが入り交じってなぜか終始そこはかとない不安が付きまとう。でもだからこそ時々垣間見せる期待と高揚感が気持ち良く、わりと分厚い1冊をさくさく読めた。下巻が楽しみ。
ベストセラー作家として知られる恩田さん。今回は、あえてメジャー作以外をご紹介しました。どの作品も、良い意味で作者のイメージを裏切る名作ばかりです。気になった作品はぜひ読んでみてくださいね!前編5作品はこちら!