こんにちは、ブクログ通信です。
小野寺史宣さんは、2006年に短編「裏へ走り蹴り込め」で第86回オール讀物新人賞を受賞しました。2008年に『ROCKER』で第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し、単行本デビューを果たします。その後も、『ひりつく夜の音』や『ひと』、『ライフ』など多くの作品をコンスタントに発表し、読者を魅了し続けている作家の1人です。
実直に生きる人々の姿を淡々と描き、透明感のある作風で人気の小野寺さん。ブクログから、そんな小野寺さんの人気作・おすすめ作を5作紹介いたします。読んだ後に気持ちが明るくなる、明日への活力になるような作品が揃っています。今、注目の作家の1人である小野寺さんの作品世界を、ぜひ体験してみてください。
『小野寺史宣(おのでら ふみのり)さんの経歴を見る』
1.小野寺史宣『ひと』 2019年「本屋大賞」第2位受賞!生きていく勇気をくれる物語
あらすじ
調理師だった父は事故で亡くなり、女手一つで育ててくれた母も急死——。二十歳の柏木聖輔は、たった一人になった。全財産は150万円。奨学金を返せるめどが立たず、聖輔は大学をやめ、趣味のバンドもやめた。仕事を探さなければ、と思いながら行動に移せずにいた聖輔。ある日、ふと立ち寄った惣菜店で、見知らぬおばあさんにコロッケを譲ったことから、思いがけない縁に恵まれて……。
おすすめのポイント!
読み終わったとき、優しい気持ちになれる物語です。たった一人で社会に放り出されてしまった主人公が、周囲の人に支えられながら、少しずつ自分の人生を取り戻していく姿が丁寧に描かれています。大きな事件やドラマチックな展開はありませんが、だからこそリアリティがあり、心に響く物語です。物語序盤では、どこか頼りなく自己主張の乏しい若者だった聖輔が、人との触れ合いを通してどう成長していったのか。ぜひご自身の目で確かめてください。
特に大きな動きがあるわけではなく、現実にありそうな日常を外部から見ている感じ。
なのにとても面白い。厳密に言えば、面白いというよりとても良い作品だった。文章としても読みやすく、また登場人物もキャラクターがそれぞれ個性的で良かった。なんか読み終わった後、前向きになれる作品でした。
2.小野寺史宣『ホケツ!』 「レギュラー」じゃない人生だって、輝けることを教えてくれる作品
あらすじ
サッカー部に所属する高校三年生の宮島大地は、これまで一度も公式戦に出場したことがない。部からの引退を間近に控えた今も、レギュラーになれる可能性は極めて低い。そんな大地の両親は、数年前に離婚した。一緒に暮らしていた母が亡くなり、今は伯母の絹子と同居している。最後の大会が終わったら進路を決めなくてはならない。ある日、大地のもとに12年ぶりに会う実父がやって来て……。
おすすめのポイント!
部活では万年補欠、同級生からは「仏」と呼ばれるほどいいやつ——そんな男子高校生・宮島大地の青春を描いた作品です。スポーツがテーマの作品は数多くありますが、「補欠」をメインテーマにした作品は珍しいのではないでしょうか。本作では、レギュラーになれない大地だからこそ感じること、考えることが丁寧に描写されています。目立たず、大きな功績を上げるでもなく、それでも腐らずにチームの1員であり続ける大地の姿に、きっと誰もがエールを送りたくなることでしょう。爽やかな感動をもらえる作品です。
サッカーの小説は名作が多い!いや、サッカーを愛する作家に素晴らしい人が多いのか?とにかく面白かったです。主人公は万年ベンチの補欠の選手。かといってレギュラーに対して劣等感を感じ、卑屈な高校生活を送っているということではなく、それぞれの選手や登場人物が、それぞれの立場から悩んだり喜んだりしています。5月から7月までのほんの3か月の物語ですが、豊かな青春生活の貴重な体験を、一緒に過ごさせてもらって、充実感は抜群でした。
3.小野寺史宣『ROCKER』 「今」しかないこの時を、音楽と仲間と共に過ごす幸せ
あらすじ
女子高生のミミはプチ不登校だ。ギリギリの日数しか学校には行かない。ミミには、高校教師をしている「エイくん」というイトコがいる。でも、お互いの両親が離婚したから、元イトコだ。ミミは、エイくんのアパートに入り浸っている。プロのミュージシャンを父に持ち、ギターが超上手いエイくんの周りには、いろいろな人が集まって来る。音楽と仲間たちと共に、ミミの特別な時間が過ぎていく——。
おすすめのポイント!
「第3回ポプラ社小説大賞」優秀賞を受賞した作品です。主人公のミミは、とある事件から人間関係につまづき、人と仲良くなることが怖くなっています。そんなミミが、少しずつ人と近づき、心の壁を壊していく様子が穏やかな文章で描かれている物語です。本作には、ミミとエイくんをはじめ、個性豊かなキャラクターたちが登場します。世の中の「普通」からは少しずれていても、みなしっかりと自分の人生を生きている姿が印象的です。爽やかで時々ほろ苦い、青春のひと時を感じられる作品となっています。
両親が離婚して白鳥実美ではなく堀実美になった女子高生。27歳の教師、イトコの白鳥永生(えいしょう)の親も離婚していたので2人の関係は「元」イトコだった。エイくんはギターがプロのようにうまくて、ミミのストーカーをしたエイくんの学校の生徒、光倉元希がエイくんにギターを教わって、とにかくいろんな人がエイくんとミミをきっかけに絡まってく。そういうとこ、ロックだよなぁ、なんて思ってみる。最後の車が突っ込んでくるシーンは、私まで震えてしまった。
4.小野寺史宣『みつばの郵便屋さん』 町の「郵便屋さん」がお届けする、ほっこり日常ストーリー
あらすじ
25歳の平本秋宏は、蜜葉市の郵便配達員だ。年子の兄がいて、最近は人気タレントとして広く知られるようになってきた。顔は兄とそっくりな秋宏だが、地味な性格で、目立たないように暮らしている。時々、「あれ、誰かに似てない?」と聞かれるくらいだ。移ろう季節の中、郵便を届け続ける秋宏と地域の人々との交流を描く、人気シリーズ第1作。
おすすめのポイント!
ふんわりとした世界観が魅力の、ハートウォーミング・ストーリーです。主人公の秋宏が郵便配達員ということで、お仕事小説としても楽しめます。小さな町を舞台に、秋宏と住人たちとの交流、時々巻き起こるちょっとした出来事が穏やかに展開する物語です。まるで秋宏たち登場人物の日常を、そっと覗き見ているかのような感覚を味わえます。休日やリラックスタイムに、のんびりとくつろぎながら読んでほしい1冊です。
みつば地区を担当する郵便屋さんの話。まだ、人と人の交流が残っている地区のなんともない日常が描かれています。日常のよくある話なのですが、みんな良い話になっています。読み終わるとなんか心も温かくなります。この本のように人と人が交流できる環境がだんだんなくなってきているのかなと少し寂しくなりますが、もしかしたら自分だけに見えていないのかも。ちょっと疲れたと思っている人にはお勧めできます。
5.小野寺史宣『まち』 離れていても想い合う、家族の絆に感動必至の1冊
あらすじ
江藤瞬一は、小学三年生の時に火事で両親を亡くした。歩荷(ぼっか)をしていた祖父に引き取られた瞬一は、祖父の背中を見て育つ。「東京に出ろ」という祖父の言葉を受け、高校卒業と同時に上京した瞬一。日雇いバイトをしながら一人暮らしをして、もう4年が経つ。バイト仲間と他愛ない話をしたり、アパートの住人と交流したり、少しずつ町での暮らしにもなじんできた。そんなある日、祖父が東京に来ると言い出して……。
おすすめのポイント!
どこにでもいそうな若者・瞬一の、誰とも違う人生を、鮮やかに描き出した物語です。火事で両親を亡くした心の傷や、祖父から教えられた人生訓、町の人々との交流を通して育まれる若者らしい心……瞬一を構成する要素の1つ1つが、丁寧にすくい取られています。淡々としていながら心に迫る情景描写は、作者の小野寺さんの持ち味の1つです。悲しいことも嬉しいことも、瞬一と共に体験している気持ちになれることでしょう。一歩一歩、大地を踏みしめて生きていくことの尊さを、改めて教えてくれる感動作です。
故郷から出てきて東京の川沿いの町に住むようになる。何か目的があった訳ではないが、バイトや同じアパートの住人との触れ合いから、自分はどう生きていくかを探る。
周りの人々との関りも温かい。小野寺さんの以前の作品と同じ町での出来事に「まち」を身近に感じ、懐かしい人たちに再開した気分になった。
小野寺さんの作品は、いつのまにか心の琴線を震わすような感動作揃いです。ごく普通の人々の、ありきたりな日常を美しく描き出します。読後に爽やかな余韻を残す名作の数々、ぜひ手に取ってみてくださいね!