こんにちは、ブクログ通信です。
ブクログのみなさんに人気の女性作家による小説の代表作・おすすめ作を10作紹介いたします。多数の作品の中から、ブクログ内で高い評価を受けている作品、読みやすい作品、知名度のある作品を中心に集めました。ぜひ参考にしてくださいね。
1.原田マハ『キネマの神様』ギャンブル中毒の父と映画の神様に捧ぐ一作
あらすじ
39歳独身女性・歩は、父が心筋梗塞で倒れたことを知らされる。同時にギャンブル狂の父が多額の借金を抱えていることも判明した。歩はちょうど会社を辞めたところで、家族全員が思考停止状態に。しかし、退院後に父が映画雑誌「映友」のブログに投稿した歩の文章が編集者の目に留まった。父と歩が関わることになった映画ブログが次々と反響を呼び、大きなドラマが展開していく。
おすすめのポイント!
芸術に明るいことで有名な原田マハさんですが、本作ではモチーフとなる映画についての幅広い知識が、登場人物を通してユーモラスに語られます。DVDで映画を観ることが当たり前になった今こそ、劇場に足を運び、「キネマの神様」とともに笑い、泣き、驚く時間を大切にしたいと思わせられます。
ここ数年映画館に行ったこともなく、紙に書かれた文字をひたすら追っている身にとっても、この作品を読むと、映画の魅力が迫ってくる。
映画を愛する人々の思いが詰まっており、映画ファンなら、作中に出てくる映画の題名を見つけるだけで、もう満足の境地ではないか。それにしても、原田マハのフィールドワークのひろさには、感心してしまう。「楽園のカンヴァス」等で、美術関係の知識の深さに、驚いたばかりなのに、映画にも並々ならぬ造詣を持っている。今後どういった分野を、作品に見せてくれるか、楽しみである。
2.宮部みゆき『レベル7』緊迫の4日間を駆け抜ける!長編ミステリ作品
あらすじ
失踪した女子高生・みさおの手がかりは、「レベル7まで行ったら戻れない」という日記に残された言葉だけだった。一方、記憶喪失になって目覚めた1組の男女の腕には「Level7」の文字が。自分が何者かすらわからないなかで、暗号のような言葉をたよりに進められていく追跡行はやがて、過去に起こった殺人事件と結びついていく。誰が味方で誰が敵か、各人の思惑が交錯する。最後の1ページまで渾身の力で書かれた長編作品。
おすすめのポイント!
女子高生失踪と記憶喪失、まったく接点のないように思われる2つの追跡譚が、読み進めるうちに密接な関わりを持っていくストーリー展開で、読んでいて気持ちのいい作品です。次から次へとページをめくる手が止まらなくなり、本の厚みを感じさせません。「レベル7」が表すもの、失踪と記憶喪失の理由、その奥に隠されていた人間の悪意。謎解き要素の詰めこまれた、読む者すべてをヒリヒリさせる力作です。
記憶喪失になった男女がある部屋で目覚める物語と、レベル7までいったら戻れないと日記に書いて失踪した女子高生の物語があり、読み進むにつれて2つがつながっていく。誰が味方?この人何者?とどんどんはまっていった。家族の暗い部分を描いたりするのはさすが宮部みゆき。「模倣犯」に近い陰険さもあったりして面白かった。
3.湊かなえ『贖罪』イヤミスの女王が描く「罪」の物語
あらすじ
15年前、空気のきれいな田舎町で起きた女児殺人事件。居合わせた四人の女の子たちは、誰一人として犯人の顔を覚えておらず、事件は迷宮入りとなってしまう。殺された女児の母は我を見失い、四人を集め、贖罪を求める。その言葉を15年間、十字架として背負い続けた四人の女性が、次々に悲劇を起こしていき——。「罪」と「贖罪」の連鎖から目が離せない、著者三作目となるミステリー小説。
おすすめのポイント!
登場人物たちの独白によって物語が進んでいく形式は、湊かなえさんのデビュー作『告白』から引き継がれたもので、各人の視点から見た世界が細やかに描き出されています。人を殺めるまでの心の動きをとらえた作品であり、「罪を償うべきなのは誰か」考えさせられます。2012年にはWOWOWでテレビドラマ化し、豪華なキャスト陣が話題になりました。
湊かなえさんの第3作品目。著者の本に関しては、色んな本を読まさせているが、やはり心理描写が上手い!誰にでも感じたことがある、妬み、嫉み、嫉妬それらをさらに深堀りして一つの作品として完成されている。読んでいくうちに徐々に感じる、ゾクゾク感は、やめられないね笑
4.有川浩『レインツリーの国』一冊の本とネットが繋いだ恋
あらすじ
「忘れられない本」の感想を求めて、ブログ「レインツリーの国」にたどり着いた伸行。管理人である「ひとみ」とのメール交換は盛りあがり、いつしか恋心を抱くように。画面の向こうにいる「ひとみ」に直接会って話がしたいと伝えるが「ひとみ」には、会えないと言わざるを得ない理由があった。一冊の本が二人を繋ぐ、恋愛小説の名手が手がける、純愛ラブストーリー。
おすすめのポイント!
ネットでは簡単に他人を中傷できますが、顔の見える相手であっても心の中までは見えず、だからこそ、言葉は大切に扱わなければならないということに気づかされます。ネットで出会うことが当たり前になった今だからこそ、読まれるべき恋愛小説ではないでしょうか。また、本作品は「図書館戦争」シリーズ第2作目である『図書館内乱』のスピンオフ小説でもあるため、併せて読むことをおすすめします。
一冊の思い出の本を通じてブログで出会った二人。大好きな本の話は尽きず、距離が縮まっていく。当然のように彼は彼女に会いたいと思うが、彼女は会おうとしてくれない。好意があるのは伝わるのに、会ってはくれない彼女の理由とは。好きな本が同じ。これほど嬉しい共通点は私ならないなぁと思うので、うんうん頷きながら読んでました。人は基本的には自分を世界の真ん中にして考えてしまうので、見えてないもの、見えなくなるもの、ありますね。思う気持ちも葛藤も、よくよくわかります。苦しくてあったかい一冊でした。
5.角田光代『森に眠る魚』母親として生きる女性の孤独をえぐる長編小説
あらすじ
東京都、文教地区で出会った五人の母親たち。気心の知れた友人として仲良くしていた彼女たちは、子どもの受験を機に、徐々にパワーバランスを崩していく。子どもに幸福な人生を歩んでほしいと願うからこその葛藤・嫉妬・怒り・猜疑心が五人を揺さぶり、次第に追い詰められていく。正義や正解を求め、いつしか森の中をさまようように孤独を抱える女性の心をあぶりだした母子小説。
おすすめのポイント!
「お受験殺人」とも呼ばれた実際の事件をモチーフにした作品と言われていますが、「母親」である女性の孤独に焦点を当てた作品です。大きな事件は起こりませんが、日常の中に潜む小さな不満が積みあげられ、徐々に存在感を増していくような展開で、静かな緊張が作品全体に充満しています。それぞれが積みあげた不満の塔がどのように変貌を遂げていくのか、質量ともに「読ませる」小説です。
感情の描写がリアルで、ちょっと怖いくらいだった。良くありそうな話。なのだけど、登場人物それぞれの気持ちがこんなにもリアルに伝わってくるなんて。角田さん、さすが!!
6.辻村深月『ぼくのメジャースプーン』命と罰の”匙加減”を量る、ぼくの闘い!
あらすじ
ぼくらが通う学校で起こった凄惨な事件に巻き込まれ、幼なじみのふみちゃんは言葉を失ってしまった。世間では次々と新しいニュースが消費されていき、クラスメイトも徐々に笑顔を取り戻していくが、ふみちゃんは心を閉ざしたまま……。お母さんからは使うことを禁じられている、不思議な「力」を持つぼくは、たった一度、犯人と会うチャンスを得て、闘うことを決意した!
おすすめのポイント!
小学生の男の子、「ぼく」を主人公とした作品ですが、正しさとは、愛とはなにかを問う深い物語です。ふみちゃんを傷つけた犯人に対し、自分にはなにができるかと悩み、苦しみながらも前に進んでいくぼくを、いつの間にか応援しながら読んでしまいます。ぼくが闘いのために用意した「力」の内容には、思わず息が止まるでしょう。本作の登場人物が他作品で登場する仕掛けもあるため、辻村作品は何作か併せて読むのがおすすめです。
最終章で涙がこぼれた。久しぶりに泣いた小説。正義って?復讐って?命の重さって?哲学的だけども、主人公が小学生だからとても読みやすい。まあこの主人公、10歳だとはとても思えない賢さだけれど…!サンタクロースのエピソードにじーんときたな。節目節目で読み返したい一冊になりました。
7.島本理生『Red』「直木賞」作家・島本理生さん初の官能小説
あらすじ
平凡でイケメンな夫と、夫の両親と同居している塔子は、友人の結婚式で、かつて不倫関係にあった男・鞍田と再会し、転機が訪れる。自由にできるお金がないこと、気遣いばかりしていることに気づいてもらえないこと、妊娠後、セックスレスであることなど、塔子が夫に感じていた違和感は増幅していく。比例するように鞍田との関係はますます深くなっていき、塔子には歯止めが利かなくなっていく——。
おすすめのポイント!
鞍田や職場の同僚・小鷹に翻弄され、流されながらも女性としての快楽に甘やかに浸っていく塔子の心理描写には説得力があります。ラストシーンで塔子が示す結末は、数多ある選択肢の内の一つと言えるでしょう。妻や母としての役割をこなすことはできても、女として、一人の人間としての自分をないがしろにしている全ての女性に読んでほしいと思います。2020年2月には、夏帆さん、妻夫木聡さん主演で映画化されました。
まさかエピローグでこんなに泣くとは思わなかった。切なすぎて眠れないほど泣いた!自分でもびっくり!読み手の性別、既婚か独身か、子供の有無で様々な感想が生まれるんだろうなぁ、、と。
8.江國香織『神様のボート』恋に生きる母と娘の旅物語
あらすじ
骨ごと溶けるような恋をしたママは、いつまでも「必ず戻る」と言ったパパの言葉を信じている。そして、パパのいない場所にはなじまないというポリシーのもと、自らを旅がらすと称して引越しを続けていた。数年ごとに繰り返される引越しにはかならず娘・草子も一緒だったが、成長するにつれ、ママの狂気的な生き方に反感を覚えるようになっていく。
おすすめのポイント!
娘である草子と、母の葉子、二人の視点から、交互に日常が語られています。草子の父親である昔の男を忘れられず、変わることのできない葉子と、そんな母を眺めて暮らし、年相応に変わっていく草子の、考えや価値観のズレが加速度的に広がっていく様子が切なく描かれます。変わることも、変わらないでいることも、どちらも等しく苦しい。そんな人間の悲しみが透明感のある優しい筆致で書かれた作品です。
母と娘の一人称が交互に書かれているのだが、母の視点はずっと変わらないのに対して、娘が幼少期から思春期にかけてくねくねと変化していくのがおもしろい。娘、草子の思春期の描写がすごい。反発のあまり、心にあることよりもずっときついことを言葉で母に言ってしまい、その結果引き起こされることを止められず、謝ることもできず、そのモヤモヤを繰り返してしまう描写が見事。
9.桐野夏生『OUT』逸脱した主婦たちの絶望的な非日常に迫る長編
あらすじ
東京郊外にある弁当工場で深夜パートをしている四人の主婦は、介護や借金、暴力などにそれぞれ悩みを抱えていた。ある日、そのうちの一人である弥生が夫を殺害してしまう。四人はその死体をバラバラにして隠蔽を図ることに。そもそも友情でなく負の力で結びついていた四人の結束力は次第に衰えていくが、そんなとき、さらに別の死体の解体を請け負うことになり——。
おすすめのポイント!
どこにでもいそうな四人の主婦を主人公にし、誰しもが簡単に道を踏み外し、「OUT」してしまう可能性があることを示唆している作品です。会話文には人物の個性が表れており、グイグイ読み進めていくことができます。多視点で描かれる心理描写では、人の心の複雑さをえぐりだしています。グロテスクなシーンもありますが、緻密すぎる描写は、桐野さんの恐るべき想像力を思わせます。
長年読みたいと思っていた作品。圧倒的な筆力、リアリティ溢れる描写、息もつかせぬ怒涛の展開に一気読み。佐竹と雅子の、ぞっとするほど冷ややかで壮絶な攻防戦は、何かを超えた、何か。それが何なのかはわからないまま、OUTの意味を感じている。
10.畠中恵『しゃばけ』妖怪をコミカルに描いたシリーズ第1作
あらすじ
江戸有数の大店・長崎屋の跡取り息子である一太郎(若だんな)は、生まれつきの虚弱体質のため両親から過保護に育てられていた。人目を盗んで外出した夜、人殺しを目撃し、一太郎も危うく被害に遭うところ。間一髪助かったのは、なんと妖怪のおかげだった。それ以来、近辺には猟奇的な殺人が相次ぎ、一太郎は妖怪の仲間たちとともに、事件解決に乗り出すことに。人と妖怪が入り乱れる、不思議な時代劇が繰り広げられる!
おすすめのポイント!
体はひ弱でも、芯が太く優しい一太郎が、主人公として魅力的です。さまざまな妖怪が出てくるため、シリーズ作品を次々に読みたくなります。一太郎でなければ解決できなかった事件が題材になっており、妖怪とのかけあいも面白く、にぎやかな時代小説です。畠中恵さんの代名詞とも言えるシリーズの第1作目ですから、読んで損はありません。
身体の弱い大店の一人息子一太郎。回りを妖達に守られながら暮らす日々。何故妖達が守ってくれるのか、江戸で起こる薬屋ばかり狙う事件は一体なんなのか…少しずつ解き明かされる真相。話がテンポよくとても読みやすい。そして愉快な妖達がなんとも魅力的!妖達と暮らすのも楽しそうと思わず思ってしまう。
多くの女性作家がいる中で、今回は10人の人気作家を紹介しました。上記の10作を参考に、恋愛、ミステリーに時代小説とさまざまなジャンルで活躍する女性作家の作品をぜひ読み進めてみてくださいね。