美味しいもので感動を味わう食の小説5選!〜読めば空腹!夜中に読むのは厳禁です〜

こんにちは、ブクログ通信です。

美味しいものを食べると幸せな気持ちになりますよね。悲しいことがあったとき、嫌な思いをしたとき、美味しいもので気分が救われたという経験は誰しも一度はあるのではないでしょうか。外出する気持ちになれない日や美味しいものが身近にないときは、読書で美味しいものと感動を味わってみませんか?

ブクログから、心に美味しい選りすぐりの食の小説を5選紹介いたします。身近な食べ物から凝った食べ物、なかなか普段は食べられない特別なレシピまで、とっておきの美味しいものが登場する作品たちです。美味しい食べ物が登場するだけでなく、心にじんわりと沁み込む感動の物語も魅力となっています。心の栄養が足りないと感じた日は、ぜひ手に取ってみてくださいね。

1.『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』 孤独な夜も、焼きたてのパンがあれば大丈夫

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ (ポプラ文庫)
大沼紀子さん『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ (ポプラ文庫)
ブクログでレビューを見る

あらすじ

都会の片隅で、真夜中にだけオープンするパン屋「ブーランジェリークレバヤシ」。オーナーの暮林と口の悪いパン職人・弘基の2人が作るパンはまさに絶品、毎夜焼きたてのパンの香りでさまざまな客を呼び寄せる。そんな2人の元に、ワケありの女子高生・希美がやって来た。家庭の事情から、「ブーランジェリークレバヤシ」の2階に居候することになった希美。ある日、パンをめぐる事件が起きて——。

オススメのポイント!

真夜中にだけ開くパン屋、夜の街に漂う焼きたてのパンの香り……読んでいるうちにお腹が空いてくること間違いなしの一冊です。作中に登場する美味しそうなパンに魅了される一方で、読み応えのある人間ドラマにも惹き込まれます。登場人物たちはそれぞれに秘密や葛藤を抱えており、「ブーランジェリークレバヤシ」の温かくにぎやかな店内の様子と対照的に描かれています。みんなで美味しいものを食べることの幸せをしみじみと感じられる、心温まる物語です。2013年に滝沢秀明さん主演でテレビドラマ化もされています。

ちょっと気持ちが疲れているときにこの本を読んだら
とても心が温かくなってホロリと泣いてしまいました。
登場人物たちは、過去を背負って生きているんだけど
しかし、今を真っ直ぐに生きていて、
温かい気持ちで溢れたお話でした。

syuuuuyaさんのレビュー

2.『ランチのアッコちゃん』食べることは生きること、そして働くこと

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)
柚木麻子さん『ランチのアッコちゃん (双葉文庫)
ブクログでレビューを見る

あらすじ

出版社「雲と木社」で派遣社員として働く澤田三智子は、4年付き合った彼氏に振られて落ち込んでいた。そんな三智子を見かねて声をかけてきたのは、営業部長の黒川敦子・通称アッコ女史だ。アッコ女史の提案で、なぜか昼食を交換することになった三智子。1週間限定で、アッコ女史は三智子の手作り弁当を食べ、三智子はアッコ女史行きつけのランチ店に通うことになるのだった。表題作他3篇を含む、美味しい短編集。

オススメのポイント!

ミステリアスで豪快で、美味しいものをよく知る「アッコさん」がとても魅力的な作品です。こんな上司がいたら、こんな友人がいたら……と羨ましくなること間違いなし!さらに栄養と愛情がたっぷり入った美味しそうな料理がたくさん登場する点も楽しい1冊です。本作を読むと、いい仕事をするためには美味しいものを食べ、体を大切にしなしくてはいけないとしみじみ実感できます。続編もおすすめなので、ぜひ手に取ってみてください。2015年に蓮佛美沙子さんと戸田菜穂さん主演で実写化されたドラマ版も面白いですよ。

こんなに短い小説なのに、こんなに満足感を得られるものだなんて驚いた!
でも、良い小説に長編も短編もないのだと思う。むしろ短いからこそ、この小説の良さが生きるのかもしれない。読んでみてよかった。
本編はもちろん、番外編の2つも良かった。
知らず知らず縮こまって固くなっている心が、ほぐれてく感覚。この感覚を、忘れたくないと思った。

hatachu0103さんのレビュー

3.『マカン・マラン – 二十三時の夜食カフェ』 疲れきった人の前に現れる、幻のようなカフェ

マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ
古内一絵さん『マカン・マラン – 二十三時の夜食カフェ
ブクログでレビューを見る

あらすじ

「マカン・マラン」——それは夜にだけ開店する隠れ家的カフェだ。インドネシア語で「マカン」は食事、「マラン」は夜を意味する。オーナーは濃いめの化粧とピンクのウィッグを身に着けた大柄なドラァグクイーンのシャール。シャールの作る料理は時間と手間がかかっていて、素材の味を十分に引き出した体にも心にも優しい味をしている。今宵も、疲れ切った空腹な客が「マカン・マラン」へとやってくる。

オススメのポイント!

カフェの店主・シャールの温かい人柄に癒されます。カフェを訪れる客たちにかけるシャールの言葉は、豊かで重みがあり思いやりに満ちているからです。また、作中に登場する料理は手間のかかったメニューが多く、シャールの想いがこもっていることがわかります。物語後半ではシャールの意外な過去と料理に込めた想いが明らかになり、静かな感動が広がるはず。2018年にラジオドラマ化されており、西田敏行さんと竹下景子さんがキャストを務めました。

久しぶりに読後に涙が。キャラが際立っているせいか、軽いタッチで書かれているように感じるけど、実はそうじゃなくてとても大切な事をシャールは言っている。お料理の描写も美味しそうだけどその上をいくシャールの言葉にいちいち頷かずにはいられませんでした。ジャダも困った所があるけど素敵な人。義理人情に厚くて応援したくなります。ジャダがメインの最後はずっと涙腺緩いままでした。マカン・マランのようなお店があれば救われる人も増えるはず。こんな作品があったなんて…出会えて感謝です。シャールは戻ってくるはず。続きが楽しみです。

りぶれさんのレビュー

4.『キャベツ炒めに捧ぐ』 特別じゃなくても、洒落てなくても、美味しいご飯は心の栄養


キャベツ炒めに捧ぐ
井上荒野さん『キャベツ炒めに捧ぐ
ブクログでレビューを見る

あらすじ

私鉄沿線のとある商店街に、総菜のお店「ここ屋」はある。「ここ屋」を取り仕切るのは、郁子、江子、麻津子の3人組だ。江子は61歳にして離婚、60歳の麻津子には年下の彼氏がいて、一番新入りの郁子は60歳で夫にも子供にも死に別れている。それぞれの人生を抱えて、今日も3人は美味しいお惣菜を作る。ロールキャベツに肉じゃが、コロッケ、アジフライ……義理人情に厚い「ここ屋」の美味しいお惣菜、あなたもご賞味あれ!

オススメのポイント!

「ここ屋」の3人の女性がとにかく元気で楽しそう!読んでいるだけで元気がもらえる1冊です。作中では3人組が楽しそうに料理をする様子、お惣菜を買いに来たお客さんににぎやかに対応する様子などがいきいきと描かれています。まるで自分も「ここ屋」の一員になったような気分を味わえるのも本作の魅力です。美味しい家庭料理に込められた3人組の密かな想いを知るとき、きっと心の奥が温かくなるはず。心が疲れたときにおすすめの、栄養たっぷりの作品です。

いわゆるアラ還のおばさん3人の可愛いこと!
そして3人の作るお惣菜の美味しそうなこと!
皆何かを抱えている。
それを話さなくたって、わざわざ聞きださなくたっていい。
わたしもすべて抱えたまま、美味しいものを食べて生きていこうと思った。

すしこさんのレビュー

5.『それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)』 サンドイッチとスープ、それだけで「ごちそう」

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)
吉田篤弘さん『それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)
ブクログでレビューを見る

あらすじ

青年・大里は仕事を辞めて路面電車の走る街に引っ越してきたばかり。ある日、道行く人が「3」と書かれている袋を持っているのに気が付いた。よくよく見れば、それはサンドイッチ屋「トロワ」のものだった。シンプルでとても美味しいサンドイッチを求めて、「トロワ」に通うようになる大里。しかしある日、店主の安藤さんから「そろそろお客さんをやめてほしい」と言われて——。

オススメのポイント!

独特の世界観が広がる中、ファンタジックでほのぼのとした物語が展開していきます。作中ではサンドイッチとスープが重要な役割を果たすのですが、朝でも昼でも夜でも、食べたくなること必至!また、サンドイッチとスープをめぐる、登場人物たちの優しいドラマも見どころです。読後はきっと、食べてもいないスープに体の芯まで温められたような気持ちになれるはず。ゆったりとした気分で美味しいものと優しい世界を堪能できる名作です。

先日里芋のスープを作ったのですが、ずっとそのスープのことを考えながら読みました。
話の中に映画がよく出て来ましたが、この物語自体がとても映画的で、ちょうどいい時間の流れ方と起承転結とで、おいしいスープのように、するすると読むことができました。おいしいものをおいしいと感じられて、それが誰かと共感できる。これこそが幸せというんだろうなと思います。そんな幸せの物語。

macochiさんのレビュー

今回ご紹介した作品では、個性豊かな作り手たちの絶品料理を堪能できます。読んでいるうちにお腹が空いてきますが、読後は心が満たされているはず。他では味わえない特別メニューを、ぜひ味わってみてくださいね!