こんにちは、ブクログ通信です。
ブクログのみなさんから評価の高い、「読みやすい時代小説」を10作紹介いたします。多数の作品の中から、ブクログユーザーから高い評価を受けている作品、読みやすい作品、知名度のある作品を中心に時代小説ビギナーにもオススメのものを集めました。ぜひ参考にしてくださいね。
1.高田郁『八朔の雪ーみをつくし料理帖』300万部超えの大ヒットシリーズ第1作!

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あらすじ
享和2(1802)年の水害で幼い頃に両親を亡くし天涯孤独の身となった澪は、故郷の大坂を離れ、江戸で暮らしていた。縁あって働く蕎麦屋「つる家」では、洗い場や配膳をする傍ら、主人・種市に料理の腕を見込まれ、江戸でも通用する上方料理を作ることに精を出す。しかし、名店と謳われる料理屋「登龍楼」は澪の腕を妬み、妨害を仕掛ける。困難に屈することなくただ前を向く澪の心が美しい、江戸・上方料理小説。
オススメのポイント!
江戸と大坂での出汁の取り方やところてんの食べ方など、地方の特色が食を通して描かれているのが魅力的な作品です。澪の過去や周囲の人物との人情噺が小説に重みを持たせていますが、語り口は軽妙で読みやすい小説です。2020年10月に映画化を予定しており、角川春樹さんが「最後の監督作品になる」と宣言するなど、シリーズ完結後の現在も大きな話題を呼んでいます。
鰹田麩、心太、おにぎり、茶碗蒸し、酒粕汁。みんな一度は口にしたことがあるものが出てくるのがいい。不用意に飾り立てるでもなく、力いっぱいたくさんの言葉を使って味や見た目の彩りを伝えてくる文章でないので、江戸時代の慎ましい、けれども活き活きとした生活が伝わってくる。
2.冲方丁『天地明察』数々の賞を受賞!改暦を描いた傑作時代小説

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あらすじ
江戸前期・徳川四代将軍家綱の治世、ある一大プロジェクトが興った。それは、日本独自の暦を作るという事業だった。改暦の実行者に選ばれたのは、囲碁棋士でありながら、天文や算術に生きがいを見いだしていた男・渋川春海。20年にわたる春海の奮闘と挫折、「天」を相手取った壮絶な勝負と恋を追う!
オススメのポイント!
「天動説」が信じられていた時代に、北極星の測量をするという一見無謀なプロジェクトに果敢に立ち向かう春海の姿がいきいきと描かれています。決して初めからうまくいく事業ではありませんが、だからこそ応援したくなるのは、春海のまっすぐな人柄が魅力的だからにほかなりません。囲碁や測量の知識も豊富で、冲方さんの作品のなかでもブクログユーザーからの評価が高い作品です。
一生懸命っていつの時代でも、人の心を動かすことを感じました。
話のテンポもとてもよく、時代小説とは思えないほど速く読めました。
苦手だった数学の問題がこうやって先人達が試行錯誤してつくりあげてきたものだと思うと、背筋が伸びるような気がします。
3.和田竜『のぼうの城』名将かでくのぼうか!?忍城を守り抜く城代・成田長親の秘策とは?

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あらすじ
豊臣秀吉は天下統一を目前に控え、関東の雄である北条家を陥落させるべく、軍を投じることを決定した。北條家の支城である武州・忍城には、秀吉によって派遣された石田三成率いる二万の軍勢が押し寄せてくる。城代・長親は日ごろ、領民たちから「でくのぼう」に由来して「のぼう様」と呼ばれ侮られていたが、三成の使者による度重なる愚弄に耐えかね、予定していた和睦を翻し、「戦いまする」と火蓋を切った。
オススメのポイント!
長親の天然なのか実は名将なのかわからない、謎の凄みに惹きつけられます。大軍にも水攻めにも屈することなく、地の利、人の利を使って三成軍を圧倒する戦略は読んでいて痛快なものがあるでしょう。次はどうするのか!とわくわくしながら読み進められる、エンターテイメント性の高い作品です。2011年には和田さん自身が脚本を手がけ、野村萬斎さん主演で映画化も果たしました。
のぼうの城 2011年11月 野村萬斎さん主演で映画化されました
面白くて、上下とも一気に読んでしまいました。
人間味あふれる人々の姿と、それぞれの譲れない信念の強さなど 登場人物がとても魅力的でした。
とにかく一読の価値アリだと思います。歴史が苦手な方にも手放しでオススメ。
4.百田尚樹『影法師』友情と武士の美学に命をかけた男の足跡を追う、著者初の時代小説

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あらすじ
下級武士から筆頭国家老まで登りつめた勘一は、行方を追っていた男が不遇の死を遂げたことを知る。その男は頭脳明晰なうえに剣の腕も立ち、それを鼻にかけるところもない光る男。名を彦四郎と言い、勘一の竹馬の友であった。しかし二人は二十年前、ある事件をきっかけに人生の明暗を分かつことに。彦四郎の生き様を知ったとき、勘一は自らの人生を見つめ直すこととなる――。
オススメのポイント!
若い頃の勘一と彦四郎がとても爽やかで、青春小説を読んでいるような気持ちになります。読み進めていくと、真の武士とはなにかということや、彦四郎が生涯をかけて守り抜いたものがまざまざと浮かびあがります。タイトルの『影法師』が示す意味に思い至ったとき、心にじんと響く名作です。文庫版には単行本未収録の「終章」が袋とじ収録されています。
自分の何を犠牲にしてでも守りたい相手がいる人というのは、こんなにも強くなるのかと驚いた。
彦四郎の、いつ何時も迷いのない生き方、潔さがかっこいいし、それに答えるようにして生きた勘一もまぶしい。
5.あさのあつこ『弥勒の月』人間の奥底に流れる冷たい闇が混じり合う!

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あらすじ
小間物問屋「遠野屋」の若おかみ・おりんが水死体で発見された。初めはただの入水自殺と思われた事件だったが、北町定廻り同心・小暮信次郎は、検分に立ち会った、おりんの夫・清之介のまなざしに違和感を覚える。信次郎は岡っ引きの伊佐治とともに事件を追うが、新たな謎も生まれ――。幅広いジャンルで活躍する著者の時代小説第一作。
オススメのポイント!
あさのさつこさんが子育て中に読んだ、藤沢周平の著作『橋ものがたり』をきっかけに書いたという時代小説です。児童文学に長けたあさのさんならではの読みやすい文体もさながら、人物の造形やストーリーも見事な作品となっています。心理描写も丁寧で、三人の男の駆け引きには凄みがあり、時代文学に慣れない人でも、年代問わず楽しめる一作といえるでしょう。
なかなか厚みのある時代小説でした。登場人物も個性に富んでおります。闇を抱えている男たちの駆け引きを畳みかけるように転進させ、もちろん推理する展開もありまして、背景も凝っており、盛りだくさんな小説です。
6.宮部みゆき『孤宿の人』みなしご・ほうの成長に涙が止まらない!長編時代小説

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あらすじ
生まれつき不幸な境遇を背負った九歳の「ほう」は、江戸からの金毘羅代参の途中、讃岐国・丸海藩内で置き去りにされる。幸い、藩医・井上家に引き取られるが、今度はその家の娘・琴江が毒殺されたのをきっかけに家を出されてしまう。引手見習いの宇佐のもとで姉妹のように暮らすほうは、流罪となった幕府の要人・加賀殿と心を通わせるようになるが、水面下では藩の存亡をめぐり、さまざまな思惑が絡んでいた――。
オススメのポイント!
妻子と家臣を殺し、鬼・悪霊と呼ばれ流されてきた加賀殿と、物覚えが悪く疎まれて生きてきた主人公・ほうのやりとりがじわりと心に沁みます。宮部さんが「悲しいだけではない作品にしたい」と思って書いたという本作は、命の儚さと同時に、その尊さに触れることのできる、鮮烈な時代小説です。伏線の回収も見事で、宮部さんの筆力あってこその作品となっています。
丁寧に作り込まれた世界観と、登場人物一人ひとりの多彩な人間味が揃った傑作だと思います。
また、張り巡らされている伏線がしっかり回収されていくスピード感があり、あっという間の上下巻でした。
時代小説ですが、読みにくさはないので、このジャンルを避けいてる人にもおすすめです。
7.浅田次郎『壬生義士伝』第13回柴田錬三郎賞受賞作!幕末に義を貫いた男の生涯

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あらすじ
吉村貫一郎は、貧困から家族を救うため、故郷の南部藩を脱藩し、当時、壬生浪と呼ばれた新撰組に入隊した。「人斬り貫一」と恐れられるほどの剣の腕を持つ一方で、妻子への仕送りのため、極度の守銭奴として蔑まれてもいた。そんな貫一郎は、鳥羽伏見の戦いで深手を負い、慶応四年一月、満身創痍の身で大坂・南部藩蔵屋敷へと辿り着く。ところが、旧友・大野次郎右衛門に切腹を命じられ……。義士に魂を揺さぶられる長編傑作。
オススメのポイント!
文武どちらにも長けていながら、家族を食わせることしか考えていない、愚直で不器用な貫一郎の生涯が、後年、記者の聞き取り調査によって明らかにされていきます。本当に大事なものはなにか?失ってはいけない誇りとはなにか?壬生義士・吉村貫一郎をロールモデルとして生きたいと思うほど、生きることの意味を痛いほどに感じさせられる作品です。
単なる新撰組の活躍ストーリーとは一線を博す本。理不尽にまみれた時代の中で、自分を見失わず、大切なものを見失わず、ただひたすらに家族の幸せを願って戦い抜いた一人の男の人生。
自分にとって大切なものは何か、改めて考えさせられる本です。
8.畠中恵『つくもがみ貸します』古道具に宿る神様たちがにぎやかに動き回る妖怪小説

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あらすじ
江戸は深川。お紅と清次の姉弟は、小さな古道具屋兼損料屋「出雲屋」を営んでいる。鍋、釜、布団など、なんでも貸し出すこのお店には、百年という時を経て、妖として力を持つ「付喪神(つくもがみ)」となった器物たちがいた。付喪神たちは、貸し出された先でさまざまな噂話を聞いてきては出雲屋で話のタネにしているが、そのなかには四年前に失踪した、お紅の意中の相手を暗示させる噂話があり――。
オススメのポイント!
漫画・アニメ化もされた作品で、付喪神たちがワイワイやっている姿が読んでいてもすぐに想像できます。いたずら好きでおせっかい、そのくせプライドが高い付喪神たちと、お紅と清次の姉弟の掛けあいがほのぼのとしていて、羨ましくなります。「付喪神借りたい!」という気持ちになる読者も多いでしょう。『つくもがみ、遊ぼうよ』など、シリーズ化もされているため、本作をきっかけに畠中ワールドに浸ってみるのもオススメです。
一生懸命っていつの時代でも、人の心を動かすことを感じました。
話のテンポもとてもよく、時代小説とは思えないほど速く読めました。
苦手だった数学の問題がこうやって先人達が試行錯誤してつくりあげてきたものだと思うと、背筋が伸びるような気がします。
9.宮木あや子『花宵道中』第5回「女による女のためのR-18文学賞」大賞&読者賞のW受賞作

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あらすじ
江戸末期の新吉原にある小見世・山田屋の女郎たちには、人には言えぬ過去と、恋がある。美しさゆえに京都・島原の大見世で嫉妬を買い吉原へ売られた霧里は、「美しく生まれて幸せなことなどあっただろうか」と自問し、懐かしい弟を思う。その妹女郎である朝霧は、初めて愛した男の前で客に抱かれた。檻のような吉原で飼い慣らされ、儚く花を咲かせ、そして散ってゆく遊女のあわれを描く官能時代文学。
オススメのポイント!
6部からなる構成で、それぞれ別の女郎が主人公として書かれています。前話で出てきた人物が別の角度から描かれ……というふうに、通読することでどんどん深みを増していく作品です。「夢を見るのが許されてるのは男だけだ」と女郎たちは諦め、乾いた心を持つことが求められますが、そんな女郎たちの淡い恋心に、読者も夢を見せてもらうのでしょう。2014年には安達祐実さん主演でR15指定映画化もされています。
江戸時代の吉原遊郭の話みたいやから、なんか言葉とか古くて読みづらかったりしたら断念するやろな・・っておもっとったけど、そんなことはなく、むしろ言葉がすごく綺麗やから引き込まれる感めっちゃあった。
どの話も全部切なくって、もうずっと泣きそうになりながらよんどった。
目を背けたくなるくらい酷い話も出てくるげんけど、こんな辛い思いしてきた遊女たちに感情移入しすぎて、切ないながらも我慢して読んだよ。
読んでよかったと思った
10.山本一力『あかね空』第126回直木賞受賞!豆腐職人一家の家族力が試される人情噺

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あらすじ
甘いものも酒も我慢した蓄えで、上方から江戸へと下った豆腐職人の永吉は、桶屋の娘・おふみの口利きもあって、深川蛤町の裏店に店を構えることができた。江戸の豆腐とは違うが、上品でうまい豆腐の仕込みや販路拡大の手伝いをするうち、永吉とおふみは惹かれあい、祝言を迎える。三人の子どもをもうけ、一家で豆腐作りに専念するはずが、次第に心はすれ違っていき……。
オススメのポイント!
二部立ての前半では、永吉とおふみの出会いから、確執が生まれ、すれ違っていく物語が、後半ではその両親のもとで育った三人の兄妹が中心となって物語が進んでいきます。思いあっているはずが誤解を招く、家族ならではの難しさは現代にも通ずるものがあるでしょう。意固地になることもあるのが人間ですが、誰かが自分を思ってくれているのかも、と人と人との繋がりを感じさせられます。読後感は爽やかで、気持ちのいい作品です。
自分ひとりで生きているんじゃないと思わせる小説。
自分も知らないところで誰から暖かい人情をかけられているかもと思ってしまった。それは既に亡くなった人かもしれない。
多くの時代小説がありますが、今回はとくに読みやすいものを紹介しました。戦に恋に料理に妖怪と、さまざまな切り口で歴史や時代を描いた上記10作品を参考に、時代小説をぜひ読み進めてみてくださいね。
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