こんにちは、ブクログ通信です。
ブクログから青春の風を感じるような、オススメのスポーツ小説10作のうち後編5作品を紹介いたします。スポーツを扱った作品の中でもとくに人気があり、その競技について知らない人でも読みやすい作品を中心に集めました。読めば体を動かしたくなる!そんな作品ばかりです。前編5作品はこちらから
6.誉田哲也『武士道シックスティーン』剛と柔。正反対の二人の女子高生が剣道に青春をかける!
あらすじ
三歳で剣道を始めた武蔵オタクの香織は、中学最後の個人戦で無名の選手相手に敗北を喫する。勝利にこだわり負け試合の悔しさを忘れていなかった香織は、入学した高校の剣道部で同級生・早苗の構えを見てあのときの相手だと気づく。負け=死と考える勝利至上主義の香織と、剣道を純粋に楽しみたいマイペースな早苗。真逆の二人が剣道を通じて互いに成長していく様子を描いた、武士道エンターテインメイント小説。
オススメのポイント!
香織と早苗、主観が交互に描かれる章立てが、同じできごとに対する感じ方の違いなど、二人のキャラクターの好対照をくっきりと浮かびあがらせます。人生は失敗と成功、どちらも経験して当たり前。だからこそ、「できるかどうか」ではなく、「やってみたいかどうか」「好きかどうか」、自分の心に問いかけて判断するよう背中を押してくれる作品です。2010年には成海璃子さんと北乃きいさんのW主演で映画化もされました。
この本はとてもいい話だった。
はじめは、私は剣道のことなんて知らないから、この本を読んでもよく分からないのではと思っていた。しかし、剣道のことを詳しく知らなくても、女の子二人の友情や家族の思いなどにとても感動した。二人の女の子は、性格が全然違うのに、次第に相手のことを認め合っていくところがすごく良かった。
この本を通して、誰でもいろんな人に支えられながら生きているんだなと改めて感じた。
7.堂場瞬一『チーム』目指すは優勝!寄せ集めと呼ばれたチームはなんのために走るのか?
あらすじ
箱根駅伝出場を逃した大学の中で、予選会の成績が優秀なランナーを集めたチームを学連選抜という。昨年のリベンジに燃えるキャプテン浦は、膝に不安を抱えていた。走りはダントツだが人と交わろうとしないエース山城、イマイチやる気を見せない門脇と、チームは団結しているとは言いがたい。たった二日の箱根駅伝のために急造されたチームはチームと呼べるのか?ランナーたちは、なんのためにたすきを繋ぐのか?
オススメのポイント!
伝統、先輩の悔し涙、後輩の期待といったしがらみの一切を背負わずに済む学連選抜チームですが、所属する大学チームの中で自分だけが箱根を走ることへの負い目もあります。自分のためだけに走るなら、駅伝がチーム競技であることの意義はなんなのか?孤独と向きあいながら走り続ける選手たちの心の機微がリアルで、胸が熱くなります。『ヒート』『チームⅡ』と続き、2020年3月にシリーズ最新作『チームⅢ』が刊行されました。
お正月の風物詩、箱根駅伝。
箱根駅伝出場を逃した大学の中から、好タイムを出した選手が選ばれる構成チーム”学連選抜”。寄せ集めの彼らは何のために走るのか?自分のため?誰かのため?チームのため?1人1人モチベーションが違う中で、葛藤、壁にぶつかりながら成長していく様子が描かれています。
8.百田尚樹『ボックス!』恐怖を知ったうえで、克服することこそ強さ!
あらすじ
大阪にある恵比寿高校の特進クラスに通う優紀は、同じ高校の体育科に通う幼馴染み・カブちゃんの強さに憧れ、ボクシング部の門を叩いた。持ち前のセンスだけで圧勝を重ねるカブちゃんの背中を目で追い、必至に食らいつく優紀。だが、そんな二人に無敗のモンスター・稲村が立ちはだかる。本当に強いのは誰だ?二人は稲村に勝つことができるのか?戦いのゴングが高らかに鳴り響き、熱い火花を散らしあう、拳のぶつかりあいが始まる。
オススメのポイント!
説明的でなく自然と入ってくるボクシングの知識や高校生らしいやりとり、大阪弁のテンポの良さがあいまって、サクッと読みきれてしまう力作です。スポーツも人生も、挫折を知ったときに初めてスタートラインに立てるのかもしれないと考えさせられます。これまで格闘スポーツに関心のなかった人ほど手に取ってみてほしい作品。市原隼人さん、高良健吾さん主演の映画では、手に汗握るリアルファイトが見所となっています。
この本を読んでボクシングの見方が変わった。細かな解説のおかげで全くボクシングがわからなくても非常に熱い気持ちになった。対照的な2人の主人公のボクシングに対する気持ちや青春時代の様子がうまく描かれていて一気読みしてしまう。
9.朝井リョウ『チア男子!!』常識も嘲笑も葛藤も、すべてぶち壊す!
あらすじ
道場の長男として育った大学一年生の晴希は、ケガを理由に柔道部を辞める。なぜか同時期に柔道部を退部した幼馴染みの一馬は、「一発おもしろいことしようぜ」と合言葉を口にし、始めたのは男子だけのチアリーディング。冷たいまなざし、過去のトラウマ、家族とのすれ違い、経験値のなさ、ぶつかりあい。問題は山積みのまま、だけど応援したいあの人のために、そして自分自身をぶち壊すために、BREAKERSは始動した!
オススメのポイント!
個性的なメンバーばかりが集まるBREAKERSですが、個々に抱える苦しみが少しずつ明かされていき、共感するところも多い作品です。クライマックスとなる大会シーンを読むころには、競いあうだけでなく讃えあう、応援しあうことで一つになるチアリーディングの魅力に取り憑かれてしまうでしょう。漫画やテレビアニメなどメディア化を果たした本作は、2019年に横浜流星さん、中尾暢樹さんのW主演で映画化されました。
ありきたりな青春スポーツ物語(1からやりました!できました!みたいなやつ)を想像していたが、すみませんでした!面白かったです。
チアに知識がないからどうかなと思ったが、ぐんぐん読めて映像が目に浮かんだ。
主人公だけでなく、メンバーみんなの内側がしっかりと描かれていて、ひとつひとつに感動した。最後の大会のシーンはすごい。
近くにいる人のことは意外と知ってるつもりになっているだけかもしれない。自分のことも知ってるつもりになっているだけかもしれない。
10.池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』半沢直樹著者!経費削減のため廃部寸前の社会人野球部を取り巻く人間ドラマが痛快
あらすじ
中堅電子部品メーカーである青島製作所は、リーマンショックの煽りを受け業績悪化。競合他社から受ける圧力や厳しい資金繰りのため経営自体が青息吐息の状態になっていた。かつて社会人野球で強豪と知られた野球部も落ちぶれ、コストカットのために廃部の危機に晒される。マネージャー、ピッチャー、社長とさまざまな人物の視点から紡がれる物語がそれぞれの思惑をあぶりだし——。部の存続と経営難、二つの戦いから目が離せない!
オススメのポイント!
半沢直樹シリーズや『ノーサイド・ゲーム』など人気沸騰中の作家・池井戸潤さんの作品です。社会人野球をモチーフにしていますが、「野球のシーンをあまり書かないよう心がけた」という異色作。金融・経済界に精通した著者だからこそ書けるストーリーには好奇心をくすぐられるでしょう。タイトルが暗示する勧善懲悪の大逆転群像劇にも期待!2014年には唐沢寿明さん主演でテレビドラマ化されました。
リーマンショックのあおりをうけて、技術力と信念を持つ青島製作所も、人員整理の元にリストラが始まる。そんな中で、お荷物とされる野球部。前社長が設立した野球部も、監督やエースの移籍で戦力不足となるものの、まさに”ベストの戦力でなくても、みんなで120%の力をだす”。
平凡で真面目で泥臭く頑張る人達の力が合わさった時、結果以上のものが生まれる。とても日本的な話だけど、でもやっぱり日本人らしさを感じずにはいられない。
とてもいい作品だった‼︎
人がなにかに打ちこむ姿は美しく、眩しいほどです。スポーツ経験のある方には懐かしいシーンも多いでしょう。興味を持った競技や好きな作家さんのものから、ぜひスポーツ小説を手に取ってみてくださいね。前編はこちら!