【前編】警察小説おすすめ10選!~一気読み必至の名作選〜

こんにちは、ブクログ通信です。

社会秩序を守るために、昼夜休みなく活動している警察。町で見かけるヒーローの姿に、憧れたことのある人も多いのではないでしょうか。そんな「警察」は、小説でも人気のテーマの1つです。正義のヒーローである警察を描く作品がある一方、警察組織の闇を描いたダークな作品も人気があります。また、熱血刑事や警察組織のはみ出し者といったモチーフも、警察小説ならではの魅力といえるでしょう。

今回は、多彩な魅力あふれる「警察小説」を前後編合わせて10作ご紹介します。スリリングな推理ものからハートフルな日常ものまで、幅広い物語を集めました。ぜひ手にとってみてくださいね。

1.伏尾美紀『北緯43度のコールドケース』5年前の誘拐事件に挑む女性警察!

北緯43度のコールドケース
伏尾美紀『北緯43度のコールドケース
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あらすじ

北海道警察の警察官である沢村依理子は、東京有名大学卒の博士号持ちで、30歳で警察官になったノンキャリアである。ある日、少女の遺体が発見された。遺体の身元は、5年前に未解決となった誘拐事件の被害者・島崎陽菜だと判明。捜査本部が設置されるが被疑者の男はすでに死亡しており、事件は再び未解決となった。そんな中、5年前の事件の資料が漏洩し沢村に漏洩犯の疑いがかかる。果たして沢村の運命は——。

おすすめのポイント!

第67回「江戸川乱歩賞」受賞作で、選考委員からの称賛が相次いだとされる話題作です。個性豊かな登場人物と、読者の予想を見事に裏切る斬新な事件内容が本作の醍醐味といえるでしょう。ノンキャリアで異色の経歴を持つ主人公・沢村の奮闘ぶりに、ついつい感情移入してしまうはず。また、警察組織の内情がとてもリアルに描かれている点も見どころです。臨場感あふれる文章とスピーディな展開で、最後まで一気に読ませる力作となっています。

伏尾美紀さんの作品一覧

江戸川乱歩賞受賞作、最近の受賞作の中では一押しの面白さでした。事件の真相もアッと思わせるものだったし、時間軸が絡んで分かりづらいところもあったが、中盤以降は一気読みでした。警察小説としても秀逸だと思うし、登場人物も個性豊かでそれぞれの関係性もなるほどと思わせる。ラストの事実が今風のキツさもあるけれど、しんみりとエピローグに浸って読み終えることができて、これからも楽しみです。

katz21さんのレビュー

2.奥田英朗『罪の轍』昭和の大事件をモチーフにした社会派ミステリー

罪の轍
奥田英朗『罪の轍
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あらすじ

東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。北海道礼文島で漁師見習いをしていた宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるため単身上京する。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事の落合昌夫は、南千住で起きた殺人事件を捜査していた。ある日、落合は子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの男の噂を耳にする。同じころ、浅草では男児誘拐事件が発生し、日本中を震撼させるのだった——。

おすすめのポイント!

空中ブランコ』や『家日和』でおなじみの人気作家・奥田英朗さんが描く、社会派ミステリー小説です。実際に起きた誘拐事件をモチーフにしており、まるでノンフィクションのような緊迫感ある文章でぐいぐい惹きこまれます。犯罪小説を得意とする奥田さんですが、本作は特に傑作と評されることの多い作品です。昭和の日本社会を舞台に、犯罪者と警察の対決を迫力ある描写で描き出しています。衝撃のラストに、きっとあなたの心は揺さぶられることでしょう。骨太な警察小説を読みたいときにおすすめの一冊です。

奥田英朗さんの作品一覧

オリンピックを翌年に控え東京はどんどん変わろうとしていた。その最中誘拐事件が起こる。犯人を追う刑事たち。そして事件に巻き込まれる人たち。とにかく物悲しい。色々考えると辛くなるほどに。ぐいぐいとものすごい力で引き摺り込まれるように読みました。オリンピックの身代金も読み応えありましたが、この本もとにかくすごい!というしかありません。

pukuchansさんのレビュー

3.月村了衛『機龍警察』ロボット×警察!ロマンあふれる世界観が魅力の一冊

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)
月村了衛『機龍警察(ハヤカワ文庫JA)
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あらすじ

舞台は至近未来の日本。大量破壊兵器が衰退し、近接戦闘兵器体系・機甲兵装が台頭していた。警視庁特捜部は『龍機兵』と呼ばれる新型機導入を決定し、搭乗要員として姿俊之ら3人の傭兵と契約を交わす。閉鎖的な警察組織の中で、姿たちの存在は大きな軋轢をもたらすのだった。密造機甲兵装による立て籠もり事件の現場で、姿たちはSATと激しく対立する。しかし、この事件の背後には巨大な闇が広がっているのだった——。

おすすめのポイント!

日本の近未来を舞台にした、新感覚の警察小説です。見どころは、警察小説とロボットという斬新な組み合わせにあります。SF作品っぽさもありながら、王道の警察小説としての魅力も兼ね備えた本作。三人の傭兵がとにかくカッコ良く、ロボットに乗り込んで戦うシーンは臨場感たっぷりです。スピーディな物語は読む手を止まらなくさせ、丁寧に描写される登場人物の心模様にはついつい感情移入してしまうはず。警察内部の軋轢や葛藤にドキドキハラハラさせられ、気づけばあっという間に読み終わっている、極上のエンタメ小説です。

月村了衛さんの作品一覧

二足歩行する兵器のアクションはまるでガンダムのようでしたが、ベースとなっているのは一般的な警察による事件捜査なので、その組み合わせが新しいジャンルの警察小説と言えます。スピード感と緊張感に溢れた面白い作品なので、続きも読んでみようとと思います。

Bookriumさんのレビュー

4.横山秀夫『第三の時効』警察小説の最高峰!超人気シリーズの第1作

第三の時効 (集英社文庫)
横山秀夫『第三の時効 (集英社文庫)
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あらすじ

とある殺人事件の発生から15年、時効を迎えようとしていた。ところが、被害者宅には刑事たちが息をひそめて待機している。犯人からの電話を待っているのだ。現場の刑事たちにさえ知らされず、巧妙に張られた罠——「第3の時効」とは?刑事たちが犯人逮捕にかける執念、警察組織内の葛藤を、鋭い切り口で描きだす本格ミステリ短編集。全六編を収録。

おすすめのポイント!

横山さんの作品の中でも高い人気を誇る「F県警強行犯シリーズ」の第1作です。F県警の捜査第一課強行班を舞台に、一癖も二癖もある刑事たちの活躍と人間ドラマが描かれています。お話によって主人公が変わる連作短編集で、複数の事件が同時進行していく点が特徴です。ドンデン返しあり頭脳戦ありと、とにかく面白い!そして刑事たちがとにかくカッコいいので、ぜひ読んでみてください。度々ドラマ化されている人気作でもあります。シリーズ作もきっと一気読みしたくなりますよ!

横山秀夫さんの作品一覧

およそ一年ぶりの横山秀夫先生。相変わらず面白い。そして、いちいち格好良い。今作は警察物ですが、新聞記者を描いたクライマーズハイに近い、男たちの矜持を描いた物語にぐっとくるものが有ります。ミステリーとしての謎もしっかりと楽しめましたし、特に囚人のジレンマではジリジリするような心理面の描写が素晴らしい。ドラマも観たいからサブスクで探さないとね。

あきちさんさんのレビュー

5.高村薫『マークスの山』高村薫さんの代表作にして、大ベストセラー作品!

マークスの山(上) (講談社文庫)
高村薫『マークスの山(上) (講談社文庫)
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あらすじ

南アルプス夜叉神峠で親子心中事件が発生した。生き残ったのは、少年ただ1人。奇跡的に命を取り留めた少年は、重度の統合失調症となってしまう。ある日、彼の中に「マークス」という人格が現れる。やがて、「マークス」は東京で連続殺人事件を起こすのだった。共通点のなさそうな被害者たちにつながりはあるのか……?姿の見えない殺人犯を、警視庁捜査第一課七係の合田雄一郎刑事が追うのだった——。

おすすめのポイント!

高村薫さんの代表作で「直木賞」受賞作です。連続殺人犯と警察、追う者と追われる者のスリリングな対峙が緊張感みなぎる文章で描き出されています。犯罪を犯す人間の心の闇、警察内部に巣食う歪みを巧みな筆致でえぐり出す作品です。かなり重厚なサスペンス小説でもあるため、読み終わったときには、まるで映画を見たかのような満足感を味わえることでしょう。1995年に映画化、2010年にドラマ化されています。どちらも見ごたえのある作品なので、小説と併せてぜひチェックしてみてください。

高村薫さんの作品一覧

20年ぶりに再読。最初に読んだときは警察官同士の確執のすさまじさが、事件そのものよりも印象に残ったものだったが、それは変わらなかった。作者の問題意識の中に、政治的な圧力によりわれわれが真相に届かないというもどかしさというよりも怒りというのがあるが、それを刑事たちの心情にたくして、その重層さを同量の活字で表現しようとする高村節が心地よい。疲れるけど(笑。

おーい粗茶さんのレビュー


今回ご紹介したものは、「町のおまわりさん」から科学捜査官まで、さまざまな警察官の魅力を楽しめます。ドキドキハラハラ、たまにほっこり……心を揺さぶる傑作ばかりなので、ぜひ読んでみてくださいね!
後編5作品もお楽しみに。