こんにちは、ブクログ通信です。
人恋しくて。泣きたくて。長い人生、どうしても眠れない夜の一夜や二夜はあるものです。やけに長く感じられる夜は、昼間には考えないようなことばかりが思い浮かび、妙に気落ちしてしまうこともあるかもしれません。そんな時、ネガティブの沼に嵌まる前に手に取ってほしいエッセイがあります。
今回紹介するのは、眠れない夜に読んでほしい、心がほぐれるエッセイ集。最近上手く寝付けないという人も、たまには夜更かしして読書したいという人も、ぜひチェックしてみてくださいね。
1.群ようこ『忘れながら生きる 群ようこの読書日記』忘れるのは、覚えていたから

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あらすじ
血液型占いなんてと信じていなかった私が、「どれだけ嘘か」を知りたくて買った『血液型健康ダイエット』の本。しかし、その内容は思いがけず私の悩みを氷解させ……。着物、プロレス、編み物、ラジオ基礎英語まで、多様で膨大な本に囲まれる、群ようこの日常。読書を軸にシンプルで豊かな猫との暮らしを切り取った、穏やかでクスリと笑える読書エッセイ。
おすすめのポイント!
2000年に出版された『生きる読書』を改題し、文庫化させた本作。文庫化にあたり寄せられた後書きでは、20年以上を経て感じた群さんの読書への想いが記されています。そこには「忘れる」ことへのポジティブな考察も書かれていました。せっかく読んだ本の内容を覚えていられない自分にガッカリしてしまう。そんな方にぜひ読んでほしいポジティブエッセイです。また、作家が普段、どれだけの本に触れているか、その一端を垣間見ることもできる作品になっています。
(電子書籍での感想)個人的には、紹介されている本の中で読んでみたいと思うものはなかった。そう思ってしまったのは、群さんの読んだ本よりも、日常生活の方に興味を持ってしまったからかもしれない。たとえば三味線を習うお話では、三味線には民謡・義太夫・長唄・清元・新内・常磐津・小唄・端唄の種類があったり、三味線そのものにも太棹・中棹・細棹があるのも知らなかったので、とても興味深かった。他にも愛猫のお話や、フリーマーケットをしてみたものの二度とやりたくないと思うほどの経験をされたお話などもおもしろかった。
2.三浦しをん『のっけから失礼します』構想五年!?「直木賞」受賞作家の爆笑エッセイ

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あらすじ
雑誌『BAILA』での連載に大量の加筆を加えた超大作エッセイ。お仕事小説からシリアスなものまで書き分ける実力派作家の素顔に笑いが止まらない!?漫画や宝塚、EXILE一族への愛と情熱、旅先での様々なエピソード、家族との交流など、ありふれた日常を賑やかに描いたエッセイ集。自虐とノリツッコミからは温かな人柄が滲み出る、ボリューム満点の一冊です。
おすすめのポイント!
『BAILA』上で巻頭エッセイとして連載されたことに由来する本書タイトルだそうですが、「そもそも「のっけ」って何なんだろう」と辞書を引く。『舟を編む』で辞書編纂のお仕事ものを書いた三浦さんらしいエピソードではありますが、その語り口は軽妙で、こんな人だったんだと驚かされつつ笑ってしまいます。三浦しをんさんをもっと知りたい方や、気軽に読めて明るい気分になれるエッセイを探している方に、特におすすめの作品です。
ボリュームたっぷりのエッセイ本で、満足感ありました!三浦しをんさんは舟を編むなどの作品で、名前は知っていましたが、三浦さんの本を読んだことはなかったので、どんな方なのだろうと気になって読みました。肩の力を抜いて読める本で、何より三浦さんがとてもユーモアたっぷりな方で他の作品も読んでみたくなりました!
3.東村アキコ『もしもし、アッコちゃん?~漫画と電話とチキン南蛮』ノルタルジック!初の活字エッセイ

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あらすじ
電電公社勤めの一族に生まれたアッコちゃんこと、東村アキコ。宮崎の穏やかな気候の中で育まれた彼女は、利発でやんちゃで、お絵かきが大好きな少女へと成長してゆきます。お絵かきと漫画が好きだった女の子・アッコちゃんが、日本を代表する漫画家となるまでを、漫画と電話という二つの軸に沿って綴った自伝エッセイ。幼少期の爆笑エピソードなども満載です。
おすすめのポイント!
これまでにも育児エッセイ『ママはテンパリスト』や自身の半生を描いた『かくかくしかじか』を上梓し、話題を集めてきた東村さんですが、全編活字のエッセイ本の刊行は初めてです。漫画家としての爪をあえて出さず、活字で語られる東村さんの物語はどこか懐かしく、彼女が過ごした幼少期の景色や匂いが脳裏に浮かびます。昭和末期から令和までを、漫画や電話という身近なものを題材に書いているため、幅広い世代の方に楽しんでほしい一冊です。
半生を語るようなエッセイって、説教めいた話も多いですが、この本はただただ面白い。名言になるような核心を突いた言葉もあるんですけど、押し付けがましくないし。保健の先生の話とか、声を出して笑いました。小ネタが多い作風なのは子ども時代の理不尽な経験とかを冷静に観察して、それを笑いにするエネルギーがあるからなんだろうなぁ、と。電話の進化についても語られてますが、当時を知ってる者としては、懐かしい話が多く、こういう記録も大事だよな、と思います。
4.川上和人『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』出張先は火山?!「鳥愛」漏れまくりのユーモラスエッセイ

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あらすじ
スマートな頭脳と、過酷なフィールドワークに耐えうる体力。鳥類学者とは、その両方を併せ持つ、神に選ばれし稀有な存在である。火山にジャングル、孤島への出張では、巨大な蛾の襲来や吸血カラスとの遭遇も。サバイバルな調査から地味な研究の日々までをセンスフルな言葉で語った、笑って泣けてタメになる、鳥類学者による自然科学エンターテインメントエッセイ。
おすすめのポイント!
鳥類学者の生態に詳しくなれると、ユーザーさん達のオタク心をくすぐる本書。著者・川上さんの幅広い知識に圧倒され、鳥好きさんもそうでない人も楽しめるようになっています。鳥に詳しいのは当然と言えば当然なのですが、一体この文才はどこで習得したの……?と思うような独特の表現が散見され、刺激的な内容に笑いを織り交ぜた作風が特徴です。実際に川上さんのお話しを聞いてみたくなるような、魅力的で親しみやすいエッセイ。眠れない夜を、眠りたくない夜に変えてくれる作品です。
面白かった!親しみやすい語り口で鳥類学者がどんなことをしているか語ってくれる。くすりと笑えるような部分が多かったけど研究がいかに過酷か描写から伝わってくるし、タイトルの通り筆者は鳥が好きなわけではないと言ってるけどなんだかんだ好きだと思う。ポップなデザインの表紙とタイトルだから内容はライトめなのかなと思ったけど、初めて知るようなことも沢山出てきて内容もしっかりしている。
5.燃え殻『ブルーハワイ』燃え殻中毒者、爆増中!

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あらすじ
『僕はそのときずっと天井を見ていた』『仕事はできないが、嫌いになりきれない後輩』『「来年になったら忘れそうな日しかないよね」と彼女は言った』など、リアル感のある章タイトルが散りばめられたエッセイ集。ふとした瞬間に甦る記憶、日常の些細な出来事までもが、魅力的な何かに見える。日々の息苦しさから解放してくれる、『週刊新潮』連載の大人気エッセイ、書籍化。
おすすめのポイント!
デビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』から、その文章の「エモさ」が話題となってきた燃え殻さん。本書もまた、エモさ全開の日常が紡がれています。音楽グループBE:FIRSTのLEOさんが「心のマーカーペンでそっと線を引きたい」と推奨するなど、影響力のある作品です。夏の終わりに感じる、もの寂しさにも似た余韻のある読後感も人気の一因。燃え殻さんの本を初めて読む方にもおすすめです。心が癒され、満たされるエッセイ集になっています。
燃え殻さんのエッセイ本はいつもおもしろい。周りの人からみたら何でもない日々の出来事。鍵をかけていない日記のような文章と燃え殻さん自身も例えていたが、非常に的を得た表現だと思う。共感できる話や、思わず声に出して笑ってしまうような話、なんだか寂しい気持ちになる話、昔のことを思い出して懐かしくなるような話。一つ一つの話が濾過された水の一滴のように染み渡り、色々な感情が詰め込まれた一冊だった。自分の過ごす何気ない日々も、周りの人から見たら面白い日々なのかもしれないと思って、日記が書きたくなった。
著者の生活の一端を追体験できるエッセイは、創作とは違った体温を感じます。
眠れなかったはずが、読書に夢中になっている。気付けば何だか心が明るくなっている。
眠れない夜を、エッセイと共に過ごしてみてはいかがでしょうか。