こんにちは、ブクログ通信です。
2021年、今年こそ本を読みたい、去年よりたくさんの本と出会いたいと思っている方も多いのではないでしょうか。そこで、本との出会いのきっかけとなるような、「本」がモチーフになっている小説を集めました。
今回は「本」がモチーフの小説の中でも、特におすすめの5作紹介いたします。多数の作品の中から、次に読みたい本が見つかったり、本や読書の素晴らしさに改めて気づいたりできる作品を中心に集めました。たくさんの素敵な本と出会うきっかけになればと思います。
1.三上延『ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~』人々の秘密を解き明かす古書ミステリ

ブクログでレビューを見る
あらすじ
ある日、五浦大輔は母から頼みごとをされた。それは、祖母の蔵書『漱石全集』に書かれた著者サインが本物かどうか調べてほしいというものだった。訪れたのは北鎌倉の片隅にある古書店「ビブリア古書堂」。若く美しい女店主・篠川栞子は、接客業を営む者としては深刻なレベルの人見知りだったが、古書については膨大な知識と好奇心を持っていた。栞子はその本にまつわる祖母の秘密を紐解いていき——。700万部突破シリーズ第1作。
おすすめのポイント!
毎話、さまざまな本が登場しますが、その本についての知識がなくても読める間口の広い作品です。次に読みたい本に出会えることもオススメのポイントでしょう。本の内容だけでなく、「本そのもの」に関係する人々の、歴史を感じさせる、新刊書店ではなく古書店ならではのストーリーに魅力があります。本を愛するすべての人に読んでほしい一冊。2018年には黒木華さん・野村周平さん主演で実写映画化も果たしました。
本好きはもちろん,本が好きではない人に読んでもらいたい一冊。事件といっても殺人事件のような凶悪なものや暴力などないから安心して読めます。読み終えてあったかい気持ちになれるので,子どもにも薦めたいです。
2.角田光代『さがしもの』本と縁を描いた傑作短編集

ブクログでレビューを見る
あらすじ
本も人も旅をして、出会いと別れをくりかえす「旅する本」。気になる男の子の本棚には、自分の本棚と同じ本ばかりが置いてあり——「彼と私の本棚」。持ち主のわからない詩集には、別れの言葉が挟まっていて——「手紙」。病床の祖母に頼まれた一冊の本を探し続ける孫娘を追った「さがしもの」など、本を軸に書かれた9つの物語。直木賞作家・角田光代が言葉を尽くして丁寧に紡いだ、本への愛を感じる短編集。
おすすめのポイント!
短編でありながら、ハッとさせられるような文章に何度も出会える読みごたえのある作品です。最近本を読めていないという人にも、読書愛を再熱させるだけの力があるでしょう。一気読みもいいですが、じっくりと一編ずつ読むのもおすすめです。巻末「あとがきエッセイ」まで読ませる力作。また、2020年11月に刊行した、本と食についての散文集『私的読食録』でも、本をどう味わうかについて書かれています。
人それぞれに、別々の本との付き合い方があって面白い。自分自身の物語の中に、自分だけの本とのエピソードがあるってとても素敵なことだと思う。私にもいつかそんな出会いがあるかな。誰かに語りたくなる、蜜月を過ごせるような本との出会い。
3.三浦しをん『舟を編む』言葉の大海原へと漕ぎ出でよ!

ブクログでレビューを見る
あらすじ
出版社・玄武書房では、中型国語辞典『大渡海』を新たに刊行しようと計画していた。定年間近のベテラン編集者・荒木は、後継者として営業部員から馬締光也を引き抜く。鋭い言葉のセンスと粘り強さが武器の馬締は、個性豊かな編集部の面々とともに、辞書編纂の旅を始める。絶対的な信頼を求められる「辞書」がどのように作られていくのか、気の遠くなるような年月をかけて生み出される「舟」に、圧倒される名作。
おすすめのポイント!
どちらかというと無機質なイメージのある辞書ですが、本作品を読むと、辞書は人の創作物であり、人の血が通っているということに気づかされます。読み進めるうちに、自分の周りには言葉の海が広がっているのだとワクワクするでしょう。並行して語られる馬締の不器用な恋の行方も必見。2012年「本屋大賞」を受賞。翌2013年公開の映画では、松田龍平さんと宮崎あおいさんが主演を演じ、大きな話題になりました。
全く興味のなかった辞書を作るという仕事。読んでるうちにどんどんはまって行く自分がいた。一緒に辞書を作り上げていくような気持ちになった。時に自分にとっての仕事と照らし合わせて。舟を編むような仕事、、素敵だな。映画化しているらしいので、是非みてみたい。
4.柚木麻子『本屋さんのダイアナ』自分に立ち向かい、道を切り拓いていく二人の少女の物語

ブクログでレビューを見る
あらすじ
矢島大穴は、行方不明の父に名付けられた「ダイアナ」という名前も、顔も、境遇も、大嫌いだった。しかし小学三年生のときに出会った少女・彩子が、そのすべてを褒めてくれる。裕福な家庭で育つ彩子と大穴は、自分にないものを持つお互いに惹かれていく。正反対の二人は、読書という共通の趣味もあって仲良くなるが、あるできごとをきっかけに疎遠になってしまう。少女が大人へと成長する姿が鮮やかな友愛小説。
おすすめのポイント!
子どもの頃、周りにいるだれかに憧れたり、羨ましくなったり、自分でない誰かになりたいと思った経験のある人は多いのではないでしょうか。本作品を読むと、自分は自分のままだからこそいいのだということや、友だちという存在の大きさに気づかされます。また、「赤毛のアン」など有名作品のエッセンスが散りばめられているのも、本好きには見逃せない魅力ポイントでしょう。爽やかな読後感を楽しみたい方におすすめです。
柚木麻子の、赤毛のアンをモチーフとした小説。
綾子が恵まれた家のお嬢様でダイアナがそうでないというのが、原作と逆で面白かった。多くの女性(男性も)はアンにはなれずにダイアナだということを考えると感慨深い。
5.ガブリエル・ゼヴィン『書店主フィクリーのものがたり』本への愛を見つめ直す、本好きのための小説

ブクログでレビューを見る
あらすじ
最愛の妻を亡くして以来、偏屈者のフィクリーは島で唯一の書店を一人きりで営んでいた。ある日、所蔵していたエドガー・アラン・ポーの希少本が盗まれ、フィクリーは愛する者も財産も、なにもかも失ってしまう。そんなフィクリーのもとに現れた幼女・マヤ。マヤとの出会いをきっかけに、フィクリーの周囲は賑やかになり、頑なだった心にも変化が訪れはじめる。人生にはいつも本が寄り添ってくれると実感するハートフルストーリー。
おすすめのポイント!
意外なストーリー展開やユーモラスな文体、伏線の回収など、本好きにとってはたまらない読書のツボを刺激してくれる作品です。物語のなかで、さまざまな文学作品のレビューが出てくるのも魅力の一つ。知らない作家や知らない作品に出会う喜びが詰まっています。2016年「本屋大賞」翻訳小説部門を受賞。日本とはちがった価値観、文化圏の作品でありながら、多くの日本の読者の心を掴みました。
書店を舞台にした小説を見つけると、つい手にしてしまう。本書もそのひとつ。
島にひとつしかない書店の店主フィクリーに、数々の悲劇が降りかかる。でも、悲壮感を感じないのが、本書の魅力。いい小説に出会った。
本がモチーフの作品には、著者の本への愛にあふれていたり、読者の本への愛が掻きたてられるものが多数あります。新年もますます読書を楽しむために、ぜひこの5作を出発点に、本との出会いを見つけてくださいね。