下村敦史さん作品5選!~騙される快感を味わうミステリー名作~

こんにちは、ブクログ通信です。

下村敦史さんは、京都府出身の小説家・推理作家です。2006年から「江戸川乱歩賞」に挑戦を始め、5度目の最終候補となった『闇に香る嘘』で「第60回江戸川乱歩賞」を受賞し、小説家デビューを果たしました。デビュー作では、選考委員の有栖川有栖さんに「相対評価ではなく、絶対評価でA」といわしめたりと、作品を発表するたびに大きな話題となる注目の作家の一人です。

今回は、そんな下村さんの作品の中から、ブクログユーザーに人気の5作を紹介いたします。
ミステリー好きをも唸らせた、騙される快感を味わえる名作選、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?

下村敦史さんの作品一覧

1.下村敦史『闇に香る嘘』全盲の主人公が長年の疑惑を暴く新感覚ミステリー

闇に香る嘘 (講談社文庫)
下村敦史『闇に香る嘘 (講談社文庫)
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あらすじ

重い腎臓病を患う孫のために腎臓移植を決意する村上和久。しかし、適合しないことが判明し、兄の竜彦に移植を依頼する。ところが、兄は検査すら頑なに拒絶するのだった。全盲の和久は、中国残留孤児の兄が永住帰国をしたときすでに視力を失っていた。これまで兄だと信じてきた人物は、偽物なのか。

おすすめのポイント!

盲目の主人公が、長年兄だと信じてきた人物に疑惑を抱くことから始まるこの物語は、非常にスリリングで読み応えのあるミステリーです。腎臓移植や中国残留孤児問題など、社会的テーマも複数絡めつつ、先の読めない展開で読み手をぐいぐい惹きつけてゆきます。主人公が「見えない」ことは読み手もわからないため、タイトルの通り、闇の中を彷徨うような恐怖感や戸惑いを疑似体験できる傑作です。ブクログユーザーさんからも絶賛の声が相次ぐ著者デビュー作なので、ぜひ読んでみてください。

盲目の主人公がある出来事から目の前の男が実兄なのか疑念を抱き真相を探るお話であり、終盤のある1行の文章で声上げるくらい非常に驚きましたね。実際の歴史を織り混ぜた作品で読み応えたっぷりでした。

YAさんのレビュー

2.下村敦史『同姓同名』凶悪犯と「同姓同名」になってしまった人々の不条理と混乱を描く衝撃作

同姓同名 (幻冬舎文庫)
下村敦史『同姓同名 (幻冬舎文庫)
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あらすじ

高校生の大山正紀はプロサッカー選手を目指している。いつかスタジアムに自分の名が轟くことを夢見て、練習に励む日々だ。ある日、日本中を震撼させた女児惨殺事件の犯人が捕まった。犯人の名前は「大山正紀」その報道後、殺人犯と同姓同名となってしまった“名もなき”大山正紀たちの人生は狂い始めて……。

おすすめのポイント!

SNSが発達し、テレビのニュースや週刊誌に限らずネットでも、その日の出来事が一瞬で拡散される現代において、「同姓同名」ということの危うさにスポットを当てた作品です。作中では、事件の犯人や容疑者、不祥事を起こした人物と同姓同名というだけで降りかかる不条理が描かれています。登場人物がみな同姓同名である本作では、叙述トリックが巧みに仕掛けられており、「謎」が解けたときの爽快感はかなりの衝撃です。何気なく呼んだり呼ばれたりしている「名前」の重みを、今一度考えさせられる小説となっています。

中だるみがなく読めました。次から次へと?が… 推測しながら読みましたが見事に外れました。同性同名のひとに会いたいなあと思いました。久々のヒットです。

ゆきださんのレビュー

3.下村敦史『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』7人の犯人と7人の探偵が繰り広げる異色のミステリー

全員犯人、だけど被害者、しかも探偵
下村敦史『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵
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あらすじ

電動自転車の欠陥事故を起こした会社の社長が殺された。それに「関わる」7人が廃墟に集められる。メンバーは未亡人に記者、社員2人と運転手、清掃員、被害者遺族。彼らは監禁され、謎の声に「有毒ガスで殺す」と脅されるのだった。「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる」という声により、7人は命をかけた自供合戦を繰り広げるが……。

おすすめのポイント!

異彩を放つタイトルと、デスゲームをベースとしたスリリングなストーリー、そして自動車事故を巡るミステリーが複雑に絡み合った作品です。通常、「犯人でなければ助かる」のがセオリーですが、本作では「犯人だけが助かる」という逆転の発想が目を引きます。7人が助かるために自供を繰り広げるため、真相がどこにあるのか全く分かりません。最後までドキドキハラハラさせられる作品です。また、「犯人」と「探偵」がコロコロと入れ替わり、いくつもの推理劇が展開される面白さも見どころとなっています。

まさにタイトル通り!途中、違和感はありつつも明確な答えはわからないまま、断片的に出てくる相反する情報に振り回されました。結末知ってからすぐに2周目を一気読みしてすっきり!!他の作品も読んだことありますが、展開の仕方が上手い!

tomo@読書記録さんのレビュー

4.下村敦史『ヴィクトリアン・ホテル』老舗ホテルの「最後の夜」に繰り広げられる、どんでん返しがすごいミステリー

ヴィクトリアン・ホテル (実業之日本社文庫)
下村敦史『ヴィクトリアン・ホテル (実業之日本社文庫)
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あらすじ

100年の歴史を誇る超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」。その歴史に一旦幕を下ろすこととなり、最後の夜を迎えていた。特別な一夜を過ごすのは、女優にスリ、作家、宣伝マン、老夫婦、そしてベルマン。それぞれの思惑が交錯したとき、運命の歯車が軋み始めるのだった……。

おすすめのポイント!

老舗の伝統あるホテルを舞台に、特別な夜を過ごす人々の人間ドラマを描いています。それぞれに事情を抱え、思惑を持つ彼らの夜はどんな夜明けを迎えるのか。著者により巧みに張り巡らされた伏線が、非常に読み応えある作品となっています。物語序盤で感じる小さな違和感が徐々に大きくなり、その正体が明らかになったとき、本作の真の面白さを感じられるはずです。最後の最後で思わぬ展開が待っているので、その結末は、ぜひご自身の目で確かめてみてください。

断言する。ミステリ読みなら途中で「オチ」が見える。だが、本書の魅力はそこではない。トリックだの真犯人だのという狭い括りに閉じ込められない。先行きの見えない不安定な時代だからこそ、本書のような群像劇が必要なのだろう。ああ、そうか、どんな時代でも今日という日が時代の最先端で全ては過去になるのか。そんな当たり前を気づかせてくれた。傑作、とは言えないが思い出に残る一冊だ。とてもいい。

しんたさんのレビュー

5.下村敦史『逆転正義』驚きの逆転劇が待っているエンタメミステリ短編集

逆転正義
下村敦史『逆転正義
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あらすじ

「僕」は、教室内のいじめを「見て見ぬふりなんかできない」と担任教師に報告するが——(『見て見ぬふり』)。コンビニ前に佇むセーラー服の女性を心配した男は、彼女を家へ連れ帰るが——(『保護』)。逮捕され黙秘を貫く麻薬の売人が、再逮捕された時に口を割った理由は——(『完黙』)。常識をひっくり返す逆転劇を6話収録した短編集。

おすすめのポイント!

本作は「逆転する正義」がテーマのミステリ短編集です。収録されている六つのストーリーは、一見何気ないミステリー小説に見えて、思わず「あっ」と驚くような意表を突く展開が待ち受けています。常識や思い込みがいかにあやふやなものかを思い知らされる一冊です。「私は騙されない」と思っている人ほど深い衝撃を受ける作品なので、ぜひ覚悟して読むことをおすすめします。

自分はSNSで誹謗中傷する様な愚かな人間ではない。その自信が揺らぐ。あいつは悪人だ。だが、その罪に値する罰を受けていない気がする。納得いかない…許せない…普通の正義感を持っている誰しもが、これを読んで一度自分を疑えるようになればよいと思う。

ルークさんのレビュー


下村さんの作品は、スリリングな展開とどんでん返しが魅力です。今回は数々の名作を読んできたブクログユーザーさんも太鼓判を押す名作を揃えました。
用心するほどに騙されるその快感を、ぜひ一度味わってみてください。