塩田武士さん作品5選!~圧倒的リアリティに引き込まれる名作~

こんにちは、ブクログ通信です。

塩田武士さんは新聞記者として長く務めた後、記者として培った経験を元に執筆した『盤上のアルファ』で作家デビューを果たしました。その後は専業作家として本格的に執筆活動を始め、2016年『罪の声』で、第7回「山田風太郎賞」を受賞します。その後も新作を発表するたびに大きな話題を集め、人気作家の地位を確立しました。

今回は、そんな塩田さんの作品の中から、初めての人にもおすすめの本格ミステリー作品を5つ紹介いたします。ぜひこの機会に手に取ってみてくださいね!

塩田武士さんの作品一覧

1.塩田武士『罪の声』有名未解決事件をモチーフにした骨太ミステリー

罪の声 (講談社文庫)
塩田武士『罪の声 (講談社文庫)
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あらすじ

京都市内でテーラーを営む曽根俊也は、2015年夏のある日、父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つけた。テープには子供の声が録音されている。それは31年前に発生し今も未解決の「ギン萬事件」で、恐喝に使われたテープの音声と全く同じものだということが判明した——。

おすすめのポイント!

2016年版の「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位を獲得し、第38回「吉川英治文学新人賞」候補に選ばれるなど、文壇から高い評価を得た傑作です。昭和に実在したとある未解決事件をモチーフに据え、綿密な取材に裏打ちされた圧倒的な臨場感を体験できます。30年前に起きた事件の真相に迫るスリリングな展開で、ページをめくる手が止まらなくなることでしょう。2020年には小栗旬さん、星野源さん共演で映画化もされました。

グリコ森永事件を題材に、罪の声とはまさにその通りの内容だった。入念な取材基づき書かれている部分はノンフィクションとなっており、事件の全容を今になって知ることが出来る。登場人物が多く見返す部分もあったが、読み応え充分で昭和史を追っているようだった。

きじおさんのレビュー

2.塩田武士『存在のすべてを』 全国の書店員を唸らせる傑作社会派ミステリー

存在のすべてを
塩田武士『存在のすべてを
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あらすじ

平成3年、二児誘拐事件が発生した。一人は無事保護され、もう一人は行方知れずのまま3年が経った。ある日、行方不明だった児童が突然帰宅する。しかし、その児童がどこで何をしていたか語ることはなかった。それから30年、新聞記者の門田はひょんなことから被害男児の「今」を知る……。

おすすめのポイント!

2024年「本屋大賞」第3位。映像が浮かびあがるような鮮やかな表現力と緻密な心理描写によって、まるで大作映画を見ているような気分を味わえる作品です。一人の記者が謎めく誘拐事件の真相に少しずつ迫ってゆく本作は、かなりの読み応えを覚える分、ラストに待ち受ける感動はひとしおです。ハラハラドキドキの展開と驚きの結末を、ぜひご自身の目で体験してください。全国の書店員に支持されているのも納得の面白さです。

二児同時誘拐からはじまる物語。長いと覚悟しながら読んでいたけど、思っていたよりもサクサクと読めた。誘拐の記事から始まり、色々な人の視点へと移っていくような展開で、最後に行くにつれてページをめくる手が止まらなくなった。物事を多面的に見ることはとても難しいし、人の数だけ真実があるというのはこういうことなのかもしれないと思った。悲しいとか切ないとか、うまく言葉で表せない気持ちになったエンディングで、心をぎゅっとつかまれてしまった。まだ心に落とし込むのに時間がかかりそう…

ぱるむさんのレビュー

3.塩田武士『盤上のアルファ』プロ将棋に挑む男をアツくコミカルに描いた著者デビュー作

盤上のアルファ (講談社文庫)
塩田武士『盤上のアルファ (講談社文庫)
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あらすじ

神戸新報県警担当記者の秋葉隼介は、上司に嫌われ文化部に左遷された。将棋担当を命じられた秋葉は、小料理屋で偶然出会った男・真田信繁との奇妙な共同生活を送ることになる。プロ棋士を志す真田の姿を見るうちに、秋葉は「真田の挑戦の記録」を書き残そうと思い立つのだった。

おすすめのポイント!

第5回「小説現代長編新人賞」および第23回「将棋ペンクラブ大賞(文芸部門大賞)」を受賞した作品です。前者は選考会満場一致の「パーフェクト受賞」であり、大きな話題を集めました。著者が記者時代に得た経験を活かし、圧倒的リアリティをもって描かれている点が魅力です。夢を追い続ける男と、それを見守る夢破れた男の、アツい絆に胸が熱くなります。笑いあり涙ありの極上のエンタメを楽しめる一冊です。

前半はやや重く、中盤以降のテンポアップから終盤までの流れはとても良い。これがデビュー作とは恐れ入りました。続編があるようなので手に取ってみたい。真田、秋葉、静、加織のその後がどうなるのか、興味津々!

kamitakoさんのレビュー

4.塩田武士『騙し絵の牙』巧みな人物描写が魅力の出版業界ミステリー

騙し絵の牙 (角川文庫)
塩田武士『騙し絵の牙 (角川文庫)
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あらすじ

不況にあえぐ出版業界において、大手出版社「薫風社」では、社長急逝による次期社長争いが勃発していた。専務の東松は大改革を開始し、雑誌が次々と廃刊の危機に追いやられてゆく。カルチャー誌「トリニティ」の編集長・速水は、雑誌存続のために奔走していた。次々に新企画を提案するがどれも成果が振るわず、速水は薫風社を退社するのだった……。

おすすめのポイント!

本作の注目ポイントは、主人公の速水にあります。著者自身が、速水は俳優・大泉洋さんを当て書きしていると公言しており、実際に大泉さんを起用して映画化も果たしました。「天性の人たらし」である速水が次々と降りかかる困難に立ち向かい、奮闘する姿をコミカルかつ悲哀たっぷりに描いています。出版業界が抱える「闇」や雑誌の編集長という仕事の実態を、鋭い視点で切り取ったエンタメ作です。

読み終えたあとに、タイトルの意味が分かる。小説のあとに映画を観たけど全然違う印象でした。小説の方がリアリティに出版社の存続の危機を描いていた気がします。映画版は、大泉洋さんのキャラを生かした作品に仕上がっています。文字だけでキャラクターの性格や表情、緊張感を描く小説の言葉選びに感服です。原作がある映画は、監督がその作品をどのように捉えたのかを描写してるのかな?とも考えさせられました。

砂漠の女さんのレビュー

5.塩田武士『デルタの羊』日本アニメを取り巻く環境をキレ良く描いた情熱あふれる業界小説

デルタの羊
塩田武士『デルタの羊
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あらすじ

アニメ製作プロデューサーの渡瀬智哉は、長く夢見てきた、SF小説『アルカディアの翼』のテレビアニメ化に着手することになった。ところが、業界にはびこるさまざまな「課題」が立ちはだかり、窮地に追い込まれてしまう。一方、フリーアニメーターの文月隼人は、とある理由で “前代未聞のアニメ”に参加することを決めるが……。

おすすめのポイント!

日本のアニメ業界が抱える問題点やビジネスの実態を、プロデューサーとアニメーター、それぞれの視点から描くお仕事小説です。アニメに情熱を注ぐ男たちの人生が交錯し、一つの作品を作り上げる大変さとそこに懸ける強い思いが熱量をもって描かれています。夢をかなえようと奮闘する主人公たちのがんばりに、普段アニメを見ないという人もきっと共感できるはずです。日本アニメの力強さを感じられるアニメ愛あふれる力作となっています。

アニメ業界で奮闘するアニメーター達のリアルを描いた物語。一度は頓挫した「アルカディアの翼」のアニメ化。その実現に全てを賭ける渡瀬智哉は、アニメ化計画「デルタの羊」を引っ提げ、不可能と言われたアニメ化の実現に挑む。アニメにまつわる様々な専門用語が出てくるため、読みやすい文章ではなかったが、その分日本のアニメ界の現状がリアルに伝わってくる。アニメを心から愛する人たちの熱い挑戦は、心沸き立つものであった。

すーさんのレビュー


塩田さんの作品は、鋭い観察眼で切り取ったリアリティあふれる情景描写が魅力です。映像が目に浮かぶような名作揃いなので、まだ塩田作品を読んだことがない人は、ぜひこの機会に読み始めてみてはいかがでしょうか?