こんにちは、ブクログ通信です。
斜線堂有紀さんは、上智大学在学中の2016年に『キネマ探偵カレイドミステリー』で第23回「電撃小説大賞」メディアワークス文庫賞を受賞し、作家デビューを果たしました。本格ミステリーをベースに、歪な感情を抱える人々の心模様を丁寧に描き出す作風が特徴です。そんな斜線堂さんの作品は「死体埋め部シリーズ」など、新作でたびたび話題になります。
今回は斜線堂さんの作品の中から、特に人気の高い5作品を紹介いたします。斬新な世界観と読み応えあるミステリーが融合した、中毒性のある名作ばかりです。ぜひチェックしてみてくださいね!
『斜線堂有紀(しゃせんどう ゆうき)さんの経歴を見る』
1.斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』唯一無二の世界観に惹きこまれる

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あらすじ
1人殺した者は赦されるが、2人以上殺した者は即座に<天使>によって地獄へ連れていかれることになった世界。探偵業を営む青岸は、大富豪の常木から「天国が存在するか知りたくないか」と誘われ、天使が集まる常世島(とこよじま)を訪れる。島には他にも、実業家や記者など怪しげな面々が揃っていた。謎めいた孤島で過ごす中、起こるはずのない連続殺人事件が発生する。青岸は調査を始めるが……。
おすすめのポイント!
第21回「本格ミステリ大賞」小説部門候補作に選ばれ、大きな話題となった本格ミステリーです。<天使>の存在と殺人に関する独自のルールが面白い特殊設定ミステリーでもあります。ファンタジー、ミステリー、SF、人間ドラマなど、さまざまな要素が詰め込まれているので、万人向けエンタメ作品といえるでしょう。登場人物の心情がきめ細やかに描写されているので、深く感情移入しながら楽しめます。特殊設定を活かした推理劇がどんな結末を迎えるのか、ぜひご自身の目で確かめてください。
解決編で伏線が綺麗に回収されるのは気持ち良い。また、『楽園』は探偵の不在ではなく、善人が報われる世界だろうと思った。悪人は天使に裁かれるのではなく、人間によって裁かれるのである。
2.斜線堂有紀『恋に至る病』SNSで話題!繰り返し検証・考察したくなる一冊

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あらすじ
誰からも好かれ、誰からも慕われる美少女・寄河景。幼なじみの少年・宮嶺は、小学生の時に「景のヒーローになる」と誓った。高校生になり、恋人同士になった2人だったが、やがて驚きの事実が発覚する。実は景は、150人以上の被害者を出し、世間を震撼させる自殺教唆ゲームの主催者だったのだ。善良だったはずの景が変わっていく様を目にしながら、愛することを止められない宮嶺。2人がたどり着く先は地獄か、それとも——。
おすすめのポイント!
TikTokで話題となり若者を中心に人気を集めている本作は、狂信的な愛の物語です。誰からも愛される完璧な美少女・景と、景を盲目的に愛する宮嶺の、歪で恐ろしくも純粋な恋愛模様が描かれています。本作を読むと「恋とは」「愛するとは」といった問いが常に頭に浮かび、物語が進むほど深く考えさせられるはずです。衝撃的な結末については、人によって解釈が異なるでしょう。何度も読み返し考察したくなる一冊なので、ぜひこの機会に手に取ってみてください。
今の流行りのSNSっぽさも入れつつ、最後の終わり方は読者に考えさせる所が面白かったです。自分は、ネタバレを読むまで途中のキーワードになる言葉に気づけませんでしたが、そこもうまく見つけられるとより楽しめるかもしれません。
3.斜線堂有紀『私が大好きな小説家を殺すまで』天才小説家と少女の絆の物語

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あらすじ
人気小説家の遥川悠真が突如失踪した。実はその裏には、1人の少女が関わっている。彼女の名前は幕居梓。かつて遥川に偶然命を救われた梓は、奇妙な共生関係を結ぶことにした。ところが、遥川が小説を書けなくなったことをきっかけに、事態は思わぬ方向へ転がりだす。梓は遥川のゴーストライターになることを決意するものの、一方の遥川は徐々に落ちぶれていくのだった。そんな遥川の姿をみた梓は彼を救おうとするが……。
おすすめのポイント!
一度は死を決意した少女と、天才小説家の運命的な出会いから物語は始まります。どこか歪ながらも、お互いを強く必要とする二人の関係が繊細に描かれた傑作小説です。二人が迎える結末は早々に提示されており、本作ではそこに至るまでの人間ドラマに重きが置かれています。読み進むほどに物語は不穏な空気を増し、ページをめくる速度が増していくことでしょう。一度読んだら忘れられない、心揺さぶられる小説として多くのブクログユーザーから支持されている作品です。
『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた。だから私は、遥川悠真に死んで欲しかった』この言葉の重みが、後半になると重くのしかかる。それでも生きてくれと願うのは、私だけなのか?遥川と小学生の梓との関係性が好きだった。でも梓は大きくなり、関係性も変化していく。変化するがゆえの悲しい結末だった。
4.斜線堂有紀『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』愛する事の意味とは

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あらすじ
江都日向の暮らす町には、サナトリウムがある。そこでは「金塊病」という、体が金に変化する致死性の難病患者を受け入れていた。江都はある日、津村弥子という女子大生と出会う。彼女は金塊病患者で、その体は死後3億円で売れるのだという。弥子は1つ提案をする。ボードゲームの「チェッカー」で弥子に勝てたら、江都に自分の身体をくれるというのだ。ゲームを通じて心通わせる2人だったが、運命は少しずつ暴走を始めるのだった。
おすすめのポイント!
難病に侵された女子大生と、不幸な境遇に暮らす少年との心の交流を描いた物語です。こう書くと「不治の病に侵された女性と少年の涙の物語」というイメージを持たれるかもしれません。しかし、そんな型にはまらないのが斜線堂さんの作品です。本作のテーマは「感情の証明」だと著者自身が述べています。目には見えないけれど、確かにそこにある感情をどう証明したらいいのか。本作はそれを突き詰めた、ピュアで儚い恋愛小説です。読み終わったとき、タイトルにも納得がいき、さらに物語を奥深く味わえます。ぜひ一度読んでみてください。
斜線堂先生の作品はこれが初めてです。メディアワークス文庫の3冊のうち「どれにしようかな」で選んで買い、帰り道に読んだのだけど、駅で泣いてしまいました。なんだろう。設定自体にはそこまで惹かれなかったものの、読後感がとても良かったです。ヒビが入って割れて、尖ったガラスの破片。それが割れたあとに遠く流されて……最後には海で丸くなったシーグラスのように、きらきらと輝いていて、未来を感じました。とても素敵な読後感でした。
5.斜線堂有紀『廃遊園地の殺人』不気味な廃遊園地で命がけの宝探し

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あらすじ
20年前に起きた銃乱射事件のため閉園に追い込まれた遊園地・イリュジオンランド。廃墟コレクターの資産家・十嶋庵は、そこに訳アリの人々を招待した。廃墟マニアのコンビニ店員・眞上永太郎もその1人である。廃遊園地で待っていたのは、「このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る」という十嶋からの伝言だった。招待客たちは宝探しを始めるが、翌朝串刺しになった血まみれの着ぐるみが発見される。
おすすめのポイント!
クローズドサークル小説といえば孤島や山小屋が定番ですが、本作では廃遊園地という新鮮な設定が光ります。探偵役の主人公がコンビニ店員で、コンビニ業務の中で培ったさまざまなスキルを活かして謎解きをしていく様もユニークです。遊園地の広大な敷地やアトラクションを活かしたトリック、伏線が丁寧にちりばめられているので、じっくり推理を楽しめます。しかも、園内マップやパンフレットが作品に折り込まれているという手の込んだ一冊です。ライトな読み口でサクサク読めるので、ミステリー初心者さんもぜひ読んでみてください。
本を開くといきなり遊園地の園内マップ。これでココロを掴まれた(笑)このマップがあるおかげで園内の様子が容易に想像できで非常に良かった。話の流れもテンポよく、一気に読み切るのに丁度いい感じ。
斜線堂さんの作品は、常人では思いつかないような物語や歪な感情描写が魅力です。今回ご紹介した5作品は、特に個性的で中毒性の高い作品が揃っています。気になる一冊があったら、ぜひ手に取ってみてくださいね。