こんにちは、ブクログ通信です。
髙田郁さんは、元漫画家の小説家です。1993年に漫画原作者としてデビューし、2006年に短編『志乃の桜』で、第4回「北区 内田康夫ミステリー文学賞」区長賞の特別賞を受賞、2008年に同作を含む短編集『出世花』で小説家デビューを果たしました。2009年に第1作を発表した「みをつくし料理帖」シリーズは、大ヒットシリーズとなりました。
今回はそんな髙田さんの作品の中から、大人気シリーズ作から希少な現代小説まで、幅広く厳選した5選をご紹介いたします。
ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
1.髙田郁『星の教室』夜間中学を舞台に、学ぶ楽しさと学校の存在意義を説く意欲作

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あらすじ
潤間さやかは、中学の卒業証書を受け取っていない。不登校で義務教育すらまともに終えていないという枷が、人生に重くのしかかっていた。ある日、さやかは夜間中学の存在と、様々な事情で義務教育を終えられなかった大人たちがいることを知る。20歳の春に河堀夜間中学に入学したさやかは、やがて密かな夢を持つようになるが……。
おすすめのポイント!
時代小説の名手として知られる髙田さんが、夜間中学で「学び直し」をする大人たちを描いた現代劇です。年齢も性別も異なる学生たちに、共通するのは「義務教育を終えていない15歳以上の大人」であることで、皆複雑な事情を抱えています。いわゆる普通の中学・高校生活を送ってきた人には、良い意味でカルチャーショックを与えてくれる作品です。教育の本質や学校のあり方を、今一度考えさせられます。旧友たちとの交流を通して成長してゆく主人公の姿を、ぜひ最後まで見届けてください。
これは最高に好きな本に出会えてしまった。義務教育を終えてない人なら誰でも通える夜間中学校の生徒たちの物語。日本語読めるのは全然当然じゃない、めちゃくちゃ恵まれたことだったと気付かされる。この本は、知人に広めたい。
2.髙田郁『八朔の雪 みをつくし料理帖』一人の少女が江戸で料理人として成長する姿を描く大人気作

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あらすじ
水害で両親を亡くした少女・澪は、大坂随一の料理店「天満一兆庵」で働き始める。天性の味覚を見込まれた澪は厳しい修行に耐え料理人としての腕を磨いてゆくが、隣家からの延焼で店は焼失してしまうのだった。江戸店を頼りにやって来た澪を待ち受けていたのは、店主が散財し店を潰したという驚愕の事実だった。
おすすめのポイント!
著者代表シリーズの第1作にして、度々映像化されている大人気作です。天涯孤独な少女・澪が、数々の困難を乗り越えながら料理人として成長する姿を、情緒豊かな江戸の風景と共に書き上げています。大阪から江戸へ移動する主人公に伴い、上方と江戸の味の違いにスポットが当てられている点がユニークです。作中で登場する料理がまた魅力的で、読んでいるとお腹が空いてくること間違いなし!心に響く人間ドラマをじっくり楽しめる作品です。
面白すぎてどハマりしました。知人に教えてもらい半信半疑で読み始め、あれよあれよという間に読了。ドラマ化されていたんですね。知りませんでした。時代小説ですが、登場人物が素敵でとても読みやすいです。
3.髙田郁『あきない世傳 金と銀 源流篇』「商い」に魅了された少女を通して商売の本質に迫る!

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あらすじ
摂津国武庫郡津門村で家族と共に暮らしていた幸。学問をはじめ様々なことを教えてくれた兄が病に伏して亡くなり、父も流行りの風邪で死去してしまう。母と妹は豪農の屋敷の住み込み下女になり、幸は9歳にして大坂の呉服商に奉公に出た。丁稚の手習いが気になって仕方ない幸は、やがて商いの面白さに目覚めてゆく。
おすすめのポイント!
田舎の小さな村で生まれ育った幸が、学問を身に着け商才を発揮するようになるまでを描いた作品です。「みをつくし料理帖」シリーズと並ぶ著者の代表シリーズ作第1作であり、実在の人物をモデルにした物語であることから、発表時大きな注目を集めました。女性に学問は不要と言われた時代を舞台に、奉公先で商いの教えを受け、差別や逆境に負けずたくましく生きる幸の姿が感動的です。繊細な心理描写と波乱万丈の展開に、一気読み必至のエンタメ大作でもあります。時代小説に慣れていない人にもおすすめです。
幸が兄・父を亡くし商家に女子衆として奉公します。その前後の出会いと別れ。女性の大変さ、商売の大変さ、人間関係…いろいろ考えさせられました。賢い幸のこれからが楽しみです。
4.髙田郁『銀二貫』お金で救われた武士の子の数奇な人生を描いた人情劇

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あらすじ
安永7年、大坂の寒天問屋「井川屋」の主人である和助は、建部玄武の仇討ち場面に遭遇する。瀕死の重傷を負った男のそばで、その子・鶴乃輔が父親を守ろうとしていた。和助は、たまたま持っていた銀2貫を玄武に渡す代わりに、仇討ちを断念させる。討たれた男は亡くなり、鶴乃輔は井川屋の丁稚として新しい人生を送ることになるが……。
おすすめのポイント!
銀二貫と引き換えに命を助けられた武士の子が、大阪の商人として成長してゆく様を描いた人情劇です。「銀二貫」は現在で言うと約400万円に相当する額で、当時としていかに高額だったかがよくわかります。「お金で命を買われた」武士の子が、士分を捨て、厳しくも温かい人たちに囲まれ商人として育ってゆく姿が胸を打つ作品です。お金を何に使うか、どう使うかを考えさせられます。「商い」の本質を浮き彫りにするような奥深い物語です。
親をを仇討ちで亡くし、大坂天満の寒天問屋の主人に奉納する予定の銀二貫と引き換えに命を救われた武士の子が、商人として成長する姿を描いた人情劇。苦労して、辛抱して、心に決めた事を叶えてようやっと成功して幸せになった時の安堵感。時々読み返したくなります。舞台である時から随分時代は隔たってしまったけれど、働くということの精神的な部分を物語が教えくれるようです。物語からでも、学べるものはあると思う。ビジネス書のように要約、抽出されたものも大事ですが、物語からは情と機微も一緒に。
5.髙田郁『ふるさと銀河線 軌道春秋』故郷の風景を呼び起こす、切なくも心温まる家族の物語

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あらすじ
専業主婦の板倉佐和は、夫と大学生の息子、高校生の娘の4人家族だ。ある日、友人たちとのランチ帰りに夫の職場に立ち寄った佐和は、夫が随分前にリストラされたことを知り——。(『お弁当ふたつ』)。他8編を収録の、美しい列車の風景と共に織り成す、様々な家族の形を描いた短編集。
おすすめのポイント!
時代小説を多く執筆している髙田さんが、現代を舞台に多様な家族の姿を描いた珠玉の短編集です。生きづらさや困難を抱えながらも、遠い先にある幸せを信じてひたむきに生きる人々の姿が描かれています。登場人物たちはどこか孤独を感じさせますが、列車のある風景と合わさることでノスタルジーや儚い美しさを感じられるから不思議です。「生きづらくても生きてゆこう」という前向きな気持ちになれる作品なので、忙しい毎日に疲れたとき、ぜひ手に取ってみてください。切なくも温かい気持ちになれる一冊です。
高田さんには珍しい現代小説ですが、あとがきのような背景があったのですね。厳しい現実の生活を送っている中で、根本的な問題は簡単には解決しないものの、気持ちの持ち方を変えると少し前向きになれますよ、という内容の連作短編集。物語に少しずつ電車が絡んでくるところも特徴です。途中の他人の部屋を覗いたり、不法侵入するところなどは受け入れ難い気持ちになりましたが、それ以外はじんわり良い作品が多かったです。
髙田さんの作品は、繊細な心理描写とドラマチックな物語が魅力です。登場人物の逆境に負けない強さからは勇気をもらえます。
まだ読んだことがない人は、ぜひこの機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?