こんにちは、ブクログ通信です。
辻村深月さんは、青春ミステリーの名手として知られる大人気作家です。2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で、第31回メフィスト賞を受賞し作家デビューしました。その後も、『凍りのくじら』や『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』など数々の名作を発表し、2011年には『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞を受賞します。2012年には、『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞受賞し、一流作家としての地位を不動のものにしました。
辻村さんの作品は、思春期の揺れる心、悩みや葛藤を抱えた若者たちのリアルな姿を描き出し、読むものに感動を与え続けています。そんな辻村さんの作品の中から、ブクログのオススメを10作集めました。辻村作品ファンの方も、未読の方も、ぜひチェックしてみてください。まずは前編5作品!
『辻村深月(つじむら みづき)さんの経歴を見る』
1.『子どもたちは夜と遊ぶ』 恐ろしくて切ない、読者を翻弄するサイコ・サスペンス
あらすじ
大学生の木村浅葱は、海外留学をかけた論文コンクールに参加する。ライバルは、同じ大学に通う優等生の狐塚だ。狐塚と浅葱のどちらかが優勝すると思われていたが、海外留学の権利を獲得したのは、突然現れた謎の天才学生『i』だった。しかし、『i』は名乗り出ることなく姿を消してしまう。果たして『i』は何者なのか。実は、浅葱は『i』の正体に心当たりがあるのだが……。
オススメのポイント!
謎の学生『i』をめぐる、スリリングなミステリーです。『i』の正体に近づくため、どんな手段も厭わない浅葱の姿が、ダークな魅力を持って描かれています。先の読めない展開にドキドキさせられ、謎を深めていく『i』の正体を追ってハラハラさせられる、読み応えのある作品です。上下巻に分かれていますが、物語が進むほどに、ページをめくる手が止まらなくなります。辻村さんの初期作品の中でも、根強い人気を誇る名作なので、ぜひ手に取ってみてください。
主人公の木村浅葱が「i」という人物と再開するために危険なゲームに挑んでいく本作である。浅葱がとにかく切ない存在である。たった一人の、とうの昔に別れた弟のために殺人を積み重ね、仲間ともすれ違っていく。
2.『ぼくのメジャースプーン』小学生の『ぼく』が向き合う、命の重さを知るための物語
あらすじ
小学4年生の『ぼく』には、ふみちゃんという幼馴染がいる。明るくて優しい、憧れの女の子だ。そんなふみちゃんが可愛がっていた学校のうさぎが、何者かに惨殺された。現場を見てしまったふみちゃんは、事件のショックから口がきけなくなってしまう。『ぼく』は、他の人にはない不思議な力を使って、うさぎを殺した犯人に復讐することを決めた。まずは、同じ能力を持つ親戚の大学教授の元を訪れる『ぼく』だったが……。
オススメのポイント!
命の重さ、罪と罰について深く切り込んだミステリー作品です。「正義とは何か」「愛するとはどういうことか」といった、哲学的なテーマにも踏み込んでいます。この作品は主人公が小学生なので、子供たちの社会を意識した平易な文章で書かれているのが特徴です。しかし、物語は大人にも十分読み応えのある奥深さで、読後にはどっしりとした余韻が心に響くことでしょう。また、この作品には『子どもたちは夜と遊ぶ』の登場人物が登場している点にも注目です。クロスオーバー作品としても楽しめるので、併せてチェックしてみてくださいね。
最終章で涙がこぼれた。久しぶりに泣いた小説。正義って?復讐って?命の重さって?哲学的だけども、主人公が小学生だからとても読みやすい。まあこの主人公、10歳だとはとても思えない賢さだけれど…!サンタクロースのエピソードにじーんときたな。節目節目で読み返したい一冊になりました。「わかりあえない者同士は、無理に一緒にいる必要はない。正しいとか正しくないというのは、それを話すのが人間同士である以上、簡単に変化していくんです。けれど、そんな中でどうすることが自分の心に一番恥じないのか。何を一番いいと信じるのか。それだけはきちんと胸に置いておく必要があります」
3.『名前探しの放課後』 名前のわからない「誰か」を探す、タイムトラベル・ミステリー
あらすじ
高校生の依田いつかは、ふと違和感を感じた。撤去されたはずの看板が、まだそこにあったからだ。日付を確認すると、自分の中の日付とズレがある。「俺、もしかして過去に戻された?」——。動揺するいつかだったが、とある記憶が思い浮かぶ。今から3か月後、同級生が自殺するのだ。しかし、それが誰なのかは思い出せない。いつかは、クラスメートのあすなに相談を持ち掛け、自殺する「誰か」を探し始めるのだった。
オススメのポイント!
同級生の自殺を止めるために奔走するいつかの、爽やかでほろ苦い青春小説です。高校の
同級生たちをめぐる複雑な人間関係、思いもよらない秘密、1人1人が抱える想いが、丁寧に描かれています。緻密に張り巡らされた伏線が、後半に向けて一気に回収されていく気持ち良さをぜひ味わってみてください。本作だけでも十分に魅力がある作品ですが、『子どもたちは夜と遊ぶ』、『ぼくのメジャースプーン』を読んでから本作を読むと、より楽しめますよ。
いつかの体験はホントにタイムスリップなのか? 同級生を止めることはできるのか?でも多分どんでん返しがあるんでしょうね…と期待しています。
4.『家族シアター』 家族でも、仲良くなくていい。そんなメッセージが詰まった短編集
あらすじ
スクールカースト上位の妹と、冴えない姉。真面目な姉と、そんな姉に反発する妹。年は近いけれど全然似ていない2人は、仲の悪い姉妹だった——(『「妹」という祝福』)。ビジュアル系バンドの追っかけをしている姉と、アイドルオタクの弟。言い合いばかりしている2人だが、ある出来事をきっかけに関係性が変化していく——(『サイリウム』)。家族だからこそわかること、わからないことを、柔らかな感性で描く珠玉の短編集。
オススメのポイント!
ひと口に「家族」といっても、世の中にはさまざまな家族の形があります。親子だから、きょうだいだからといって、仲が良いとは限りません。この短編集では、時にぶつかり合い、傷つけ合い、それでもどこか温かい家族の姿が描かれています。一見、破綻しているような関係が、ふとしたきっかけで心が近づいたり、適度な距離を取れたりする様が、穏やかな筆致で丁寧に描かれた作品集です。「家族とは」「愛するとは」といったことを考えさせられる、余韻の深い7編の物語をお楽しみください。
短いながら家族の煩わしさ・面倒臭さと、それを越える愛情を描き切る7編。いずれもラストが印象的な、心温まる話ばかりだった。
5.『噛みあわない会話と、ある過去について』 言葉の重みを突き付ける、切れ味鋭い傑作集
あらすじ
学生時代の男友達・ナベちゃんが結婚するという。久しぶりに部活仲間が集まり、結婚を祝うことになった。しかし、やって来たナベちゃんの結婚相手はどこか変わった女性で……(『ナベちゃんのヨメ』)。美術教師の美穂は、国民的アイドルグループのメンバー・高輪佑の小学校時代の先生だ。ある日、テレビ番組の収録で佑が母校を訪れる。その再会がもたらすものとは——(『パッとしない子』)。他2編を含む4つの物語を収録。
オススメのポイント!
軽い気持ちで口にした言葉が、相手にとっては重大な意味を持つ、という事実を突きつけてくる物語です。言った側は深い意味がなくても、言われた側は悪意や敵意を受け取っているかもしれません。いじめた側といじめられた側、悪口を言った側と言われた側など、視点によって180度変わってしまう物事の見方を鮮やかに切り取った、4つの物語です。人の心の薄暗い部分を明るみにさらけ出す恐ろしさを、ぜひ味わってみてください。辻村作品のブラックな面を楽しめる短編集です。
どれもドキッとする話だった。自分の身に覚えにあるような、ないような。過去の捉え方って人それぞれで、同じ場面でも何が記憶に強く残ってるかによりそれに対する見方や価値観、その後にまで影響してくる。こわい。個人的にはママ・ははが1番ぞわぞわした。子育ての正解とは…
今回は、数ある辻村さんの作品の中から、初期作品を多めに選んでみました。感動作からダークな作品まで、辻村さんの多様な魅力を楽しめます。作品選びに迷ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね!後編5作品もお楽しみに!