こんにちは、ブクログ通信です。
辻村さんの作品は、思春期の揺れる心、悩みや葛藤を抱えた若者たちのリアルな姿を描き出し、読むものに感動を与え続けています。そんな辻村さんの作品の中から、後編5作品を紹介します。辻村作品ファンの方も、未読の方も、ぜひチェックしてみてください。
『辻村深月（つじむら みづき）さんの経歴を見る』
6.『ハケンアニメ！』 著者のアニメ愛があふれる！ありそうでなかったお仕事小説
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あらすじ
天才アニメ監督の王子千晴が、9年ぶりに挑む新作アニメ『運命戦線リデルライト』。有科香屋子は、念願だった王子との仕事を掴み、プロデューサーになった。同じクールには、期待の新人監督である斎藤瞳と人気プロデューサーの行城理がタッグを組む、『サウンドバック 奏の石』も放送予定だ。そんな中、突如王子が姿を消した。新作アニメの行方はどうなる？香屋子の運命は——？
オススメのポイント！
辻村さんのアニメ愛がたっぷりと詰まった、熱血お仕事小説です。アニメ業界で働く3人の女性を軸に、業界裏事情やアニメ制作の様子が描かれています。アニメ好きな人はもちろん、アニメはあまり見ないという人でも楽しめるエンタメ小説です。辻村さんというと、ミステリ作品のイメージが強いかもしれません。しかし、この『ハケンアニメ！』では、アニメ制作に情熱を注ぐ人々の群像劇が描かれ、他の作品とは一味違った辻村ワールドに出会えます。この作品は2019年に舞台化され、元AKB48の大場美奈さんが主演を務めました。
アニメーション制作の裏側を舞台にした作品。一つのアニメを作るためにあらゆる分野の人たちが関わっていることをこの本を通じて知りました。読み進めていくにつれて、アニメ「あの花」のような印象を持ち、それを想像しながら読んだので、よりリアル感があったように感じました。普段は注目される声優さんや監督、原作者だけでなく、その作品に関わった無名の人たちにもアニメのエンドロールなどを通じて、注意深くみたいなと思いました。
7.『本日は大安なり』 波乱万丈の結婚式の結末は？愛憎渦巻くパニック・ストーリー
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あらすじ
老舗の結婚式場、ホテル・アールマティ。11月のある大安の日、4組のカップルが結婚式を挙げる予定だ。美人双子の片割れで、地味で大人しい性格の花嫁は、一世一代の賭けに出るが……。クレーマー気味の花嫁、大好きな叔母の結婚式を止めるため奔走する甥っ子、浮気相手との結婚式をぶち壊そうともくろむ花婿——。それぞれの思惑が交錯する長編傑作！
オススメのポイント！
世界一幸せな日「結婚式」を舞台にした、エンタメ長編作です。4組のカップルをめぐり、波乱やトラブル、人間関係のもつれなどが、これでもかと起こります。結婚式はどうなるのか、カップルたちは無事結ばれるのか、列席する人たちは——と、ハラハラドキドキの展開です。また、結婚式の主役やゲストたちだけでなく、結婚式を裏で支えるスタッフの姿にもぜひ注目してください。辻村さんならではの温かい視点で、結婚式に関わる全ての人のひたむきな姿が描かれている作品です。2012年には、優香さん主演でテレビドラマ化されました。
結婚披露宴を迎えるカップルが数組、交差しながら進行。夢中になって読んでました。どの登場人物も応援したくなるような、魅力的な人たち。披露宴の時にお世話になったプランナーさんにもっと感謝の言葉を伝えればよかったな～
8.『オーダーメイド殺人クラブ』 死にたい彼女と殺したい彼の、秘密の計画
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あらすじ
中学2年のリア充女子・小林アンは、母親のことを美人だけれど愚かだと思っている。ふとしたきっかけで、友達を失い、クラスの底辺に転落したアン。ある日、昆虫系男子の徳川勝利の異様な行動を目にしてしまう。親や先生、友達と上手くいかず、本当の自分を抑えていたアンは、衝動的に徳川にある依頼をするのだった。「私のこと殺してくれない？」——アンと徳川の、秘密の殺人計画が始まった。
オススメのポイント！
中学2年生という不安定な年頃の、揺れる心や不安定な人間関係、大人へのイラつきといったものが、きめ細やかに描かれた作品です。読めばきっと、自分の中学生時代を思い出し、心がヒリヒリしてしまうはず。家族や友人と分かり合えない孤独、欲しいものが手に入らない怒り、思うようにいかない異性との距離感など、中学生ならではの感情が生々しく、みずみずしく詰め込まれています。直木三十五賞や、山本周五郎賞の候補作にもなった名作です。
中二男女によるオーダーメイド殺人計画。絵が上手でおとなしい男の子、バスケ部で女子力が高い女の子。二人をつなぐのは他人には言えないドス黒い趣味だった。中学生特有の未熟な人間関係や自意識の書き方に引き込まれた。
9.『盲目的な恋と友情』 恋と友情。あなたが大切にするのはどっち？
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あらすじ
一瀬蘭花は、自身の美貌に無自覚な女子大学生だ。恋をしたことも、まだない。ある日、蘭花は大学のオーケストラ部で茂実星近に出会う。若手指揮者としてやってきた茂美は特別な人間だ。茂美と出会ったことで、蘭花の人生は一変してしまう。5年間の大恋愛の末、蘭花と茂美の恋は唐突な終焉を迎える。一方で、蘭花の友人である留利絵の目から見た5年間には、異なる真実が映っているのだった——。
オススメのポイント！
恋と友情のどちらを取るか——これは、誰もが一度はぶつかったことのある、大きなテーマではないでしょうか。本作はタイトルの通り、盲目的な恋と友情の間で揺れ動く主人公の姿が描かれています。怖いけど見たい、イヤだけれど読む手が止まらない……そんな気持ちにさせる、ダークな魅力を持つ作品です。辻村さんは女性の「嫌な感情」を描く名手としても有名ですが、その筆力を存分に発揮した物語でもあります。恋と友情の良さも悪さも煮詰めた、濃くて甘く苦い傑作小説です。
題名通り、盲目的な恋と友情。本当に盲目的！刺激的な作品。人間の愚かしさがグサッとくる。それでも、盲目的というのは、他のことが見えない究極のフロー状態ではないかと思う。それにどこか憧れているからこの作品に惹かれるのだと思う。女同士の敵対も共感できる。共感できることが悲しいなぁと。次の展開が気になってどんどん読んでしまった。
10.『東京會舘とわたし』 著者初の歴史小説！どこか懐かしく温かい、建物の記憶の物語
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あらすじ
大正十一年、東京は丸の内にて創業した「東京會舘」。西洋文化が広がりつつあった世において、誰もが利用できる大衆向けの社交場として開館した建物だ。大正12年、ヴァイオリニストのフリッツ・クライスラーの音楽会が開催された。金沢から駆けつけた寺井承平は、音楽会終了後に思わぬ出会いを果たす——。大正・昭和・平成という3つの時代の中で、情熱的に生きた人々の姿を、建物の「記憶」と共に辿る物語。
オススメのポイント！
芥川賞、直木賞の会見場として有名な東京會舘を舞台にした歴史小説です。辻村さん自身も結婚式を挙げた建物で、個人的にも縁の深い建物だと公言しています。東京會舘は東京の一等地にあり、関東大震災や戦争の被害に遭いつつも、長く営業し多くの人に愛されてきました。作中には、辻村さんの実体験や、東京會舘利用者の体験談なども含まれているそうです。しみじみとした調子で、登場人物が1人ずつ丁寧に描かれたこの歴史小説は、辻村さんの新境地を開拓する作品だともいえるでしょう。
生活を送っている側にある建物の歴史を、そこに関わっていた人のドラマを通じて知ることで、日常の景色が少し違って見える気がしました。
今回は、数ある辻村さんの作品の中から、初期作品を多めに選んでみました。感動作からダークな作品まで、辻村さんの多様な魅力を楽しめます。作品選びに迷ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね！前編5作品はこちらから！
