こんにちは、ブクログ通信です。
津村記久子さんは、2005年に『マンイーター』(単行本化された際に『君は永遠にそいつらより若い』へ改題)で第21回「太宰治賞」を受賞し小説家デビューしました。当時、会社員として働いていた津村さんは、兼業作家として執筆活動を続けます。会社から帰宅後、睡眠時間を2回に分けながら執筆するというスタイルで、2008年に『ミュージック・ブレス・ユー!!』で第30回「野間文芸新人賞」を受賞しました。その後、2009年には『ポトスライムの舟』で第140回「芥川賞」を、2011年には『ワーカーズ・ダイジェスト』で第28回「織田作之助賞」を受賞するなど、数々の文学賞を受賞し実力派作家としての地位を盤石なものとします。
今回はそんな津村さんの作品の中から、ブクログ内で注目度の高い作品を5つ紹介いたします。小説からビジネス書まで、幅広いジャンルで執筆活動中の津村さんの作品を、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね!
『津村記久子(つむら きくこ)さんの経歴を見る』
1.津村記久子『ポトスライムの舟』「芥川賞」受賞作!現代社会を生きるための勇気をくれる作品

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あらすじ
29歳のナガセは、工場で契約社員として働いている。社会人8年目で、手取り年収は163万円だ。食い扶持を稼ぐために、友人のヨシカが経営するカフェでアルバイトをしたり、内職のデータ入力をしたり、パソコン教室の講師をしたりもしている。そんなナガセは、ある日、自分の年収と世界一周旅行の費用が同額だと知った。世界一周の費用を貯めるため、節約生活を始めるナガセだったが……。
おすすめのポイント!
「時間を切り売りしている」という葛藤を抱えつつも、ひたむきに実直に生きる女性を描いたお仕事小説です。第140回「芥川賞」受賞作でもあります。決して豊かとは言えない生活の中で、ささやかな楽しみや悩み、葛藤を抱えつつも前向きに生きるナガセの姿が印象的な作品です。現代社会の忙しさに疲れた心に、本作の登場人物たちは小さな勇気をくれることでしょう。働くことの大変さ、生きることのしんどさを描いているのに、読後は前向きな気分になれる一冊です。
収録されている2作とも、決して主人公の境遇が大きく好転していくわけではないのだけど、どこか解放感が漂うエンディングが気持ちいい。仕事や人生への向き合い方は人それぞれで、人それぞれの出す答えがあって、もちろんそれに正解も不正解もない。そんな当たり前のことを改めて感じた。
2.津村記久子『つまらない住宅地のすべての家』小さな住宅地で起こる大きな変化を丁寧に描く群像劇

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あらすじ
小さな町の、とある路地に面した10軒の家。ある家には、妻が出ていったことを周囲に隠している自治会長とその息子が住んでいる。ある家には、育てにくい息子を倉庫に閉じ込めている夫婦が暮らしている。またある家には、女児誘拐を企てる青年が暮らしている。鬱屈や絶望や自暴自棄を秘めた住宅地に、ある日ニュースが飛び込んだ。刑務所から脱走した女受刑者が近づいてきているというのだ。住民たちは交代で見張りを始めるが……。
おすすめのポイント!
それぞれに問題を抱えた10軒の家の住人たちが、ある事件をきっかけに交流してゆく様子を描いた群像劇です。登場人物がとても多いのですが、津村さんの巧みな文章力により、各人が個性的かつわかりやすく描かれています。一見ミステリーのような筆致ですが、物語が進むうちに本作は意外な一面を見せ始めるので、ぜひじっくり読んでみてください。ちょっとしたきっかけで人は変われるということを教えてくれる、心に響く作品です。2022年にテレビドラマ化され、井ノ原快彦さんや夏川結衣さんら豪華なキャストが話題を集めました。
芥川賞作家とも知らず新聞書評で興味を持ち読みました。話が進むにつれ面白くて読むスピードもアップしていきました。10軒の家に住む、それぞれ問題を抱えた人々が、事件を通じて少しだけ親しくなり、皆が少しずつ軽やかになる展開は救われます。人は他者との関わりを通じて成長していくのですね。今の時代の鬱屈とした気分を優しく晴らしてくれます。作者の他の作品も読みたいです。
3.津村記久子『水車小屋のネネ』ヨウムと孤独な姉妹の温かな40年の物語

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あらすじ
母親とその恋人から逃れ、姉妹二人で暮らすことを決めた18歳の理佐と8歳の律は、とある町にたどり着く。蕎麦屋で働くことになった二人は、蕎麦粉を引く水車小屋の番人・ネネと出会った。ネネは人としゃべることが得意な賢いヨウムだ。ネネと仲良くなり、蕎麦屋の店主夫婦に見守られ、律の担任の藤沢先生や画家の杉子さんら周囲の人との交流を経て、姉妹は成長してゆく……。
おすすめのポイント!
毎日新聞の夕刊に連載された長編小説です。18歳と8歳で親元を離れた姉妹が、温かい人々と巡り会い成長してゆく40年間を丁寧に描き出しています。500ページ近い大長編ですが、新聞連載だったのでまとまりが良く、スルスル読める作品です。家庭環境に恵まれなかった理佐と律の二人が、心ある人々に優しく見守られながらどのような成長を遂げるのか、ぜひ最後まで確かめてみてください。読んだ後は、心に温かい光が灯ったような気分になれる優しい物語です。
朝日新聞の文芸時評で古川日出男氏が本作品について、「一人の人間が自立するために必要なのは、周囲からの「支え」なのだという逆説を、この小説は感動的に物語っている」と評しているのに深く首肯する。この生きづらい世界をどうやって生き抜くか、それに文学的に答えようとした果敢な挑戦に大いに共感した。
4.津村記久子『やりなおし世界文学』古今東西92の名作を身近に、愉快痛快な読書感想文集

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あらすじ
ギャツビーって誰?——(『華麗なるギャツビー』)、夫人は前代未聞のダメ女?——(『ボヴァリー夫人』)など、世界の有名文学作品を歯に衣着せぬ津村節で解説します。未読作品は読みたくなり、既読作は読み返したくなること必至の読書記録的作品です。92の作品について、あらすじから見どころまでを作家・津村記久子がじっくり紹介しています。
おすすめのポイント!
古今東西の92の物語を津村さんならではの視点で切り取る、個性際立つ読書感想文集です。誰もが一度は題名を聞いたことがある名作も、津村さんの手にかかれば「クセが強くてツッコミどころの多い気になる一冊」に早変わりしてしまいます。ブクログユーザーのみなさんにも、「題名は知っているけど、読んだことはない名作」が少なからずあることでしょう。本作は、今まで敷居が高く感じた名作でもついつい読んでみたくなる、読書欲をそそる一冊です。
作家である津村記久子さんが、10代のときに読んだ文学の紹介である。その当時の名作が、よみがえるかのようだ。だが私は、10代の頃はほとんど読まなかった気がする。この中で92冊紹介されているが、10冊も満たないくらいである。なので未読が多く、興味深い。こうなると気になってしまい、また積み読本が増えることになる…。しかし、津村さんの文章を読んでいるだけで満足しているところもある。ユーモアもあり、読みやすい。図書館で借りたが、まだまだ読み足りない。
5.津村記久子『苦手から始める作文教室 文章が書けたらいいことはある?』文章を書く楽しみに目覚める指南書

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あらすじ
10代のためのノンフィクションシリーズ「ちくまQブックス」に、人気作家・津村記久子が「作文」をテーマに参加。文章を書くのが苦手な人も、作文が嫌いという人も、本書を手に取ってみてください。文章を書くためには何をしたらいいか、どうやったら良い文章を書けるのか、じっくり丁寧に指導します。読書のすすめや著者のおすすめ本紹介も収録。
おすすめのポイント!
「作文が苦手」「文章を書くのが上手くなりたい」。そんな人にぜひ読んでほしい一冊です。本書では、現役作家である津村さんが、読者に直接作文の書き方を指導してくれます。テーマの立て方や書くための準備、書き出しや見直しの方法など、初歩的なところから実践的な部分まで、丁寧に綴られた指南書です。エッセイのような親しみやすい文章で書かれているので、作文に苦手意識がある人でもサクサク読めてしまいます。読んでいると文書を書いてみたくなるので、ぜひ文房具も揃えてから本書を開いてみてくださいね。
気負わずに文章を書くことについていろんな視点をくれる。メモを取ることの現実的な実践の仕方が参考になる。どんどん忘れるから、メモしていくのって本当に大事だな! 私も本に付箋を貼るということがいまいち気が乗らないので、ここで紹介されているやり方を真似してみたい。津村さんの文章って、読みやすくて、シンプルだけど、おかしみもあり、品もあって、素敵です。
津村さんの作品は、リアルな人物像と温かな世界観が人気を集めています。また、小説以外の作品も味わい深いので要チェックです。ぜひこの機会に、津村作品をお手に取ってみてはいかがでしょうか?


