筒井康隆さんおすすめ5選!~ファンからも高評価の傑作選~

こんにちは、ブクログ通信です。

筒井康隆さんは、1960年に自費出版したSF同人誌が江戸川乱歩の目に留まり、実質的な作家デビューを飾りました。ナンセンスやブラックユーモアといった作風に加えて多彩な文体を用いた作品を発表し続け、現在に至るまで多くのファンを獲得しています。
1970年に『霊長類南へ』で第1回星雲賞受賞し、以後同賞を8度受賞するという偉業を成し遂げた筒井さん。他にも泉鏡花賞、谷崎潤一郎賞など多くの文学賞を獲得しています。さらに神戸市名誉市民勲章やフランス・芸術文化勲章シュバリエ章、紫綬褒章も授与されている筒井さんは、名実ともに日本を代表する作家の1人です。

ブクログから、そんな筒井さんのオススメ作品を5作紹介いたします。深い余韻を残す長編作品から、サクサク読める短編集まで幅広く取り揃えました。「SF御三家」の1人に数えられる筒井康隆さんの作品世界をお楽しみください。

『筒井康隆(つつい やすたか)さんの経歴を見る』

筒井康隆さんの作品一覧

1.筒井康隆『家族八景』 超能力少女が暴き出す、8つの家族のウラの顔

家族八景 (新潮文庫)
筒井康隆『家族八景 (新潮文庫)
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あらすじ

生まれつきテレパシー能力のある少女・火田七瀬は、高校を卒業後、住み込みのお手伝いさんとして働いている。目の前の人の心をすべて読み取ってしまう七瀬は、能力が露見することを恐れ、同じ場所には長く居られないのだった。そんな七瀬がめぐる8軒の家庭で、ふとしたときに明らかになる人の心の暗部。平凡な日常の裏に潜むマイホームの虚偽を、コミカルな筆致で描き出した大人気シリーズ第1作。

おすすめのポイント!

筒井康隆さんの代表作「七瀬シリーズ」の第1作です。この作品では、超能力少女・七瀬の視点を通して、人間の持つ醜悪さが浮き彫りにされていきます。ナンセンス小説に定評のある筒井さんならではの、鋭い切り口と生々しい心理描写が冴えわたる1冊です。主人公の七瀬自身も決して清廉潔白というわけではなく、ときに小悪魔的でちょっとした「毒」を含んだ人物であるところが作品の面白さを引き立てています。後味が良いとは言えない一方、読むほどに味わい深い傑作なので、ぜひ手にとってみてください。

本当に面白かった。七瀬三部作を友人に勧められ、その一作目であるこの本を手に取りました。想像の何倍も面白かったです。八つの家族それぞれが持つ不安定さと人間味に、ぐいぐい引き込まれて行く感覚でした。また、八つの家族だけでなく七瀬自身も不安定な存在であり、この後どのように話が展開して行くのか楽しみです。

よたさんのレビュー

2.筒井康隆『パプリカ』夢と現実が交錯する!独特な世界観にハマる人続出のSF作品

パプリカ (新潮文庫)
筒井康隆『パプリカ (新潮文庫)
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あらすじ

精神医学研究所勤めの千葉敦子は研究者でサイコセラピストだ。しかし、彼女にはもう1つの秘密の顔がある。夢探偵パプリカ——他人の夢とシンクロし、無意識界に潜入することで精神症を治療するのだ。敦子と同僚の時田造作は、最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」を開発する。人格の破壊も可能なほど強力な「DCミニ」をめぐる争奪戦が始まり、その激しさは刻々と増していくのだった……。

おすすめのポイント!

夢と現実が交錯する不思議な世界観と、目くるめく展開に翻弄される作品です。筒井さんが描くSF作品ならではの、ロマンあふれる物語世界を堪能してください。夢世界を自由に駆け巡るパプリカの魅力は、きっとあなたも虜にしてしまうことでしょう。この作品は2度マンガ化、1度アニメ化されています。中でも2006年に公開されたアニメ映画版は、ベネチア国際映画祭にてオフィシャルコンペティションに選出される快挙を成し遂げました。いまだ多くのファンから根強い支持を受けているアニメ版も、ぜひご覧ください。

「旅のラゴス」がおもしろかったので、「パプリカ」も読んでみた。映画は以前観たけどどんな話だったかは覚えていない状態。研究所内の政治的な人間関係も濃密だし、DCミニの効果による描写などは、「攻殻機動隊」みたいなおもしろさがあった。(主人公が女性というのもあるからだろうか?草薙素子をパプリカに重ねて読んでいた)というか攻殻機動隊や最近のVRのさらにその先を描いているような感じがする。こんな作品が93年に書かれていることに驚く。まだパソコンすら普及する前だ。どんどんメチャクチャなことが起きるわりには不思議と破綻はまったく感じず、ぐいぐい物語の世界に引き込まれた。とてもおもしろかった。

かしさんのレビュー

3.筒井康隆『佇むひと』 ページをめくれば異世界が広がる!奇想天外な20の物語)

佇むひと リリカル短篇集 (角川文庫)
筒井康隆『佇むひと リリカル短篇集 (角川文庫)
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あらすじ

とある事件を起こした「おれ」は、6年ぶりに家族が暮らす家を訪れた。癇癪持ちの親父、気が強い母、出戻りの姉と生意気な妹の顔を久しぶりに見た後で、弟の嫁を初めて目にすると——(『ぐれ健が戻った』)。社会批判をした妻が密告により逮捕され、土に植えられた。妻は次第に樹木化し感情を失っていく……。やがて訪れるのは切ない別れだった——(『佇むひと』)。20編を収録した短編集。

おすすめのポイント!

表題作をはじめ、20の作品を収めた短編集です。「リリカル」と銘打たれていますが、ときにシニカルでときにシュール、またあるときはブラックというように、さまざまな魅力の詰まった1冊となっています。どれもすぐに読み終わる短さなので、通勤・通学のお供に最適です。独特な余韻を残す作品揃いで、短編といえども読みごたえがあります。筒井さん作品を読んだことがない人にもおすすめの1冊です。凝縮された筒井康隆ワールドを楽しめますよ。

筒井康隆氏らしいシニカルさを備えつつも哀愁漂う短編集である。技法はいわゆる擬人化や象徴化といった凡庸なものだが、小説の表現手段を知り尽くしており、例えば表題作『佇むひと』のように退廃したやや悲観的な未来像と相まって、読者に不思議な感情を起こさせる(この感情がリリカルというものか)。個人的に好きな作品は『わが良き狼』『白き異邦人」で、『旅のラゴス』を思い起こさせる作品であった。

コジコジさんのレビュー

4.筒井康隆『大いなる助走』 有名文学賞と文壇に正面からケンカを挑んだ痛快小説

新装版 大いなる助走 (文春文庫)
筒井康隆『新装版 大いなる助走 (文春文庫)
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あらすじ

地方同人誌「焼畑文芸」に、ある作品が掲載された。一流企業勤めの市谷京二が書いたその小説は、自分の会社の悪事を書き連ねたものである。小説は思いがけず注目を集め、「直廾賞候補」となった。一方、社内ではあっという間に噂が広まり、市谷は会社をクビになってしまう。羨望と嫉妬にさらされ、家族から勘当された市谷は、受賞のために審査員に貢物を贈るのだが——。有名文学賞の裏事情を描いた痛快エンタメ作!

おすすめのポイント!

作品発表当時、大きな話題となった作品です。直木賞を想起させるパロディ作品で、筒井さん自身を思わせるキャラクターも登場します。本作はあくまでもフィクションですが、「もしかして」と思わせるリアルな描写と、風刺の効いた作品です。喜劇作品でありながら、文壇批判や文学をやることの不毛さについても描き、読むほどに味わい深い面白さが楽しめます。1989年には佐藤浩市さん主演で映画化され、第100回芥川賞・直木賞に合わせて公開されました。刺激的な面白さを味わえる作品なので、ぜひ一度読んでみてください。

文壇の裏側や文士気取りのエリートを戯画化して皮肉った痛快な作品。さすがに本当の文壇はこんなのじゃないよね?と思うけど、この何分の一くらいは本当にあったりして、と思ってしまうほど、突拍子のない部分と妙にリアリティーのある部分のバランスがとても良くて面白かった。

おこめさんのレビュー

5.筒井康隆『残像に口紅を』 SNSで話題に!緊急重版がかかった往年の名作

残像に口紅を (中公文庫)
筒井康隆『残像に口紅を (中公文庫)
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あらすじ

世界から、ことばが1つずつ消えていく。まずは「あ」が消えた。すると、「愛」も「あなた」も消えてしまう。ことばが消滅していく中、それでも小説家は小説を書き、飲み食いし、講演し、恋をする。愛するものを失う哀しさ、ことばを失う切なさを描く、究極の実験的小説。

おすすめのポイント!

30年以上前に実験的に書かれた本作。世界から文字が1つずつ消えていくという、不思議な設定で紡がれる物語です。文章表現や情景描写は「消えた文字」を使わないで描かれます。比喩や言い換えを巧みに使い、豊富な語彙力で「消えた文字」をカバーする筒井さんの文章力はまさに圧巻!2021年にSNSで話題となり、多くの若者に読まれ緊急重版がかかったことでも注目を集めました。未読の方は、ぜひこの機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?

高校時代に読んで、おとなになってからも再読しています。今回で3度目だと記憶しています。作家としてのチャレンジとは、このことですよね。筒井康隆さんはやっぱりすごい人だー!と何度読んでも思います。最初に読んだ時からは30年程度経過しているのですが、「大人として、作家として成功している人が、自分の扱う文字・文章という世界で文字をどんどん失っていく」というシチュエーションにチャレンジした、ということは本当に衝撃なことでした。おとなになった今、読んだ方が、その凄さがわかると思います。私も今やっている仕事に、人生に、、、ずっとずっとチャレンジしていきたいなと思います。

pippin55joyさんのレビュー

筒井さんの作品は、非凡な発想と圧倒的筆力でつくられる斬新な物語が魅力だといえます。今回ご紹介した5作は、数ある作品の中でも特に人気の高い名作なので、ぜひチェックしてみてくださいね!