少年・少女時代を思い出す小説10選!前編〜「あの頃」の気持ちを呼び覚ます名作選〜

こんにちは、ブクログ通信です。

子供の頃は、何気ないことで嬉しかったり悲しかったりしませんでしたか?大人にとっては当たり前のことが、子供の心には新鮮で驚きに満ちて感じられます。今回は、そんな子供の頃の気持ちを思い出させてくれる小説を集めました。少年・少女だった頃感じていたこと、悩んでいたこと、不思議だったことが、個性豊かな作家たちの手で鮮やかに描き出されています。

今回は、少年・少女時代を思い出す作品の中から、厳選して10作紹介いたします。ブクログの皆さんから高い評価を受けている作品、メディア化された作品、人気作家の作品を中心に集めました。ぜひチェックしてみてくださいね。

1.『ペンギン・ハイウェイ』 背伸びしていたあの頃を思い出す、SF冒険譚

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)
森見登美彦さん『ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)
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あらすじ

小学4年生の「ぼく」は、ごく普通の郊外の町に住んでいる。たくさん本を読み、毎日ノートを取るから、「ぼく」は大人に負けないくらいいろいろなことを知っている。ある日、町に突然ペンギンたちが現れた。どうやら、この事件には歯科医院のお姉さんが関わっているらしい。「ぼく」は、この事件の謎について研究することにした——。

オススメのポイント!

頭でっかちで理屈っぽい一方、無邪気でひたむきな「ぼく」の姿が、子供の頃の純粋な気持ちを思い出させてくれます。「ああ、こんな気持ちあったな」と、つい思ってしまうシーンも多く、作者の森見登美彦の筆力に唸らされる作品です。「ぼく」と歯科医院のお姉さんの、少し甘酸っぱい関係も可愛らしく、読んでいると優しい気持ちになれます。第31回日本SF大賞受賞作で、2018年にアニメ映画化されました。アニメ映画版では、女優の蒼井優さんや俳優の西島秀俊さんなどがキャスト出演しています。

森見登美彦さんの作品一覧

小学4年生の男の子を通して見る夏の鮮やかな街の様子や、「お姉さん」の柔らかい女らしさとハツラツさが新鮮でとても良かった。
自分も小学生に戻った気分で、アオヤマ君と川沿いや森を探検しているようだった。『海』については曖昧でよくわからなかったけれども、400ページ足らずで、街を取り巻く自然や、小学生の気持ちの移り変わりなどを表現しているのが素晴らしいと思った。映画もこれを機に観てみたい。

みすずさんのレビュー

2.『ミーナの行進』1970年代の空気を感じられる、ノスタルジー小説

ミーナの行進 (中公文庫)
小川洋子さん『ミーナの行進 (中公文庫)
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あらすじ

1972年の春、12歳の朋子は伯父の家を訪れた。阪急電鉄の芦屋川駅から北西、山の手に建つ伯父宅は、1500坪の敷地面積を有するスパニッシュ様式の洋館だ。朋子は、そこで1年間暮らすことになる。屋敷には、朋子の1つ年下で、ドイツ人の血が流れている従妹のミーナと、ペットのコビトカバがいた。風変わりだけど温かい家族、たくさんの本、動物たち……朋子とミーナが過ごした、優しい時間を描いた物語。

オススメのポイント!

朋子とミーナが過ごした日常を、温かく、みずみずしく描いた作品です。大きな出来事は起こりませんが、2人の過ごした日々の輝きが、胸に染み入ってきます。平和な物語なのにどこか陰りがあり、登場人物の持つちょっとした心のトゲや、悩み、葛藤なども丁寧に描写されている点も魅力です。小川さんの、淡々としていて温かい文章は、読む人の心にノスタルジーを呼び起こします。過ぎ去った時間の尊さを、改めて感じさせる作品です。

小川洋子の作品一覧

子どもの頃に経験した夢のようなひととき。その時に感じたときめきや切なさ、風景から零れ落ちる匂い、流した涙や汗の温もり。
2人で過ごした秘密の時間、家族の笑い声が響く食卓。マッチの炎、図書館の貸し出しカード……。たくさんの記憶のかけらたちが、時間が経つほどに鮮やかに蘇り胸の奥に根ざしていく……。そんな感覚、かつて子どもだった大人たちにはわかるんじゃないでしょうか。まるでミーナと朋子が芦屋の洋館で過ごした季節は、大人になってしまうととけてしまう魔法にかかっているような時間でした。時の流れは、例えば祈りのようで。崇高で尊いものに触れることを許されたような気持ちになります。物語をぎゅっと抱きしめたくなりました。

地球っこさんのレビュー

3.『緑の模様画』 少女時代の何気ない日々を呼び覚ます、優しく温かい名作

緑の模様画 (福音館創作童話シリーズ)
高楼方子さん『緑の模様画 (福音館創作童話シリーズ)
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あらすじ

中学に入る少し前、偶然出会った3人の少女、まゆ子・アミ・テト。『小公女』の話題で意気投合した3人は、深い友情を育んでいく。アミとテトが通う中学校の寮に伝わるジンクス、3人の前に繰り返し現れる謎の青年、町はずれにある塔の家——。3人が出会う不思議な出来事と、過去と現在の少女たちが過ごす美しい時間を描いた感動作。

オススメのポイント!

『十一月の扉』や『わたしたちの帽子』で知られる、人気作家・高楼方子さんの作品です。主人公のまゆ子、アミ、テトの友情と、3人が過ごす少し不思議な日々を描いています。多感な時期の揺らぎやすい心模様が繊細に描かれ、きっと3人の中の誰か、または全員に、自分自身の学生時代を投影してしまうことでしょう。作中で描かれるちょっと不思議な出来事の着地点は少し切なく、だからこそ、限られた時間の大切さが胸に迫ります。読後は心が温かくなり、何度でも読み返したくなる名作です。

高楼方子さんの作品一覧

中学生期の女の子たちの気持ちが繊細に、丁寧に描かれていた。友達を手放しに褒められるのも、気持ちを打ち明けるのに不安を覚えるのも、ままならない感情に引きづられて本意ではない行動を取ってしまうのも、彼女たちが精一杯生きているからだ。自分が世界にとって何者なのか分からない不安に押しつぶされそうになる怖さも、隣に誰かがいてくれるだけで立ち向かうことができる。

つばめさんのレビュー

4.『荒野』 もう一度、思春期のあの気持ちを感じたい人に


荒野
桜庭一樹さん『荒野
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あらすじ

鎌倉に暮らす山野内荒野は、12歳だ。小説家の父と一緒に、坂の上にある築100年の家に住んでいる。母はいない。愛人との関係を続ける父、痩せていて色気のない家政婦、通学途中で知り合った少年、人目を引くほど美しい親友たち——そんな人々に囲まれて、荒野はそれなりに楽しく暮らしている。少女から大人へと、少しずつ成長していく荒野の物語。

オススメのポイント!

主人公・荒野に魅了される、素敵な物語です。中学生になったばかりの荒野から、高校生になり自分の将来について悩む荒野まで、その成長をつぶさに見届けることができます。最初はあどけなく頼りなかった荒野が、周囲の人々との交流を経て、徐々に一人の女性として自立していく姿が鮮やかに描かれている作品です。「恋とはどんなもの?」「親子とは?」といった、誰もが思春期に感じていた疑問や葛藤を、ありありを思い出させてくれます。まるで荒野と一緒に、もう一度思春期を過ごしている気分になれる物語です。

桜庭一樹さんの作品一覧

女になっていくこと、恋をすることへの戸惑い、不安、嫌悪、憧れ。
自分もそういえばこんなことを考えていたなぁ、ととても懐かしいような気恥ずかしいような気持ちになりました。

rccraさんのレビュー

5.『ぼくらは海へ』 少年時代の友情、希望、夢、現実が詰まった衝撃作

ぼくらは海へ (文春文庫)
那須正幹さん『ぼくらは海へ (文春文庫)
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あらすじ

ぼくたちは、船を作って冒険に出ることを決めた——。それぞれに家庭の事情を抱えた小学生5人組は、塾と家との往復に疑問を抱き、埋立地の海岸で廃材を使って船づくりを始める。ケンカや意見のぶつかりあいを繰り返し、新たな仲間も加わって、船づくりは少しずつ進んでいく。やがて、船の完成が近づくが……。

オススメのポイント!

大人にコントロールされている少年たちの閉塞感、それを打ち破ろうとする意志、大人への冷めた感情など、かつて誰もが感じたことのある気持ちが真に迫って描かれています。物語の舞台はやや昔ですが、作中で描かれる少年たちの感情は、全く色褪せていません。ときに不条理で、ときに不平等な、子供たちを取り巻く環境がシビアに描かれているのも、本作の魅力です。少年たちのひたむきな情動がどんな結末を迎えるのか、ぜひ実際に読んで確かめてみてください。

那須正幹さんの作品一覧

自分も少年時代に住宅街の外れの雑木林に友達と秘密基地を作った。ぼろくてすぐ壊れてしまったようなシロモノだけど、いろいろ揉めてすんなり出来上がらなかった。少年の頃は良かっただけじゃない、生き延びなきゃいけない残酷さに溢れた時代だということを思い出させてくれた本。

hirolead10rさんのレビュー

珠玉の物語を読むことで、いつの間にか忘れていた少年・少女時代の気持ちを、もう一度思い出してみませんか?懐かしさで胸がキュンとなる、おすすめの作品ばかりです。ぜひ手に取ってみてください。後編5作品はこちらからチェック!