- 本 ・洋書 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9780008131432
感想・レビュー・書評
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2016年以来の再読。
自分の価値観だけで他人をジャッジし家族をコントロールする主婦のJoan
結婚し他国に暮らす娘を訪ねた帰り、列車に乗り遅れ砂漠の中にあるレストハウスで数日を過ごすことになる。何もすることがなくなり自分について考える時間を得たJoanは、それまで自分が信じていた世界に疑問を持ち始める。農業をやりたがっていた夫を弁護士にしたのは間違っていたのか?駅で彼女と離れるときにせいせいしていたように見えたのは気のせいか?子供たちは自分に愛情を持っているのか?気の毒と思っていた友人は本当に不幸せだったのか?
内省を繰り返し、新しい自分に生まれ変わった、これからは夫を大切にして生きていこうと誓い自宅に戻るJoanだったが…
過干渉系毒親の典型といえるようなJoanがだんだんと自分の過ちに気づく過程もよいが、最後がぞっとする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実は初のアガサクリスティ。殺人も名探偵もなし。ただ、一人の主婦が砂漠の真ん中で自分について考える話。なのに十分ミステリ、そしてこのミステリには正しい謎解きはない。
今の時代、「時間がない、デジタルデトックスでもして、ゆっくり自分に向き合って考える時間がほしい」と思っている人も多いだろう。しかし一体何を考えるのか?考えの果てに見えてくる「自分」は、よく知っている自分なのだろうか?
本作のヒロインJoanが自分の人生を振り返り、エピソードを改めてつなぎ合わせ、自分が思い込んでいた人生と全く違うストーリーが立ち上がってくる様は恐ろしい。
誰だって自分の見たいものしか見えない。自分が色眼鏡ごしに世界を見ていることに気づくのは難しい。そして、たとえ見たくない世界が見えてしまったとしても…その世界観を新たに受け入れるのはなんて困難で、もといた世界に立ち戻るのはなんて簡単なんだろう。
Joanと私の人生は全然違うけれども、自分の見ている世界って本物なのだろうかと空恐ろしくなった。そして「本物」の世界って、何…?
物語の時代背景として、「バクダッドに嫁いだ末娘」というあたりで、当時の大英帝国が眼前に立ち上がってきて、ロマンを感じる。
AgathaChristieの作品





